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Game*Sparkレビュー: 『ゴースト・オブ・ヨウテイ』―美しいゲームだが、ややぎこちない

まさに2025年の本命。

連載・特集 Game*Sparkレビュー

【記事アップデートのお知らせ】
本記事は、2025年9月25日(木)22時00分に掲載した内容を一部修正しています。
初出記事では『ゴースト・オブ・ヨウテイ』に「表現規制」があると誤って報じておりましたが、
実際には表現規制は行われていないことが確認できました。

誤った情報を発信したことについて、Game*Spark編集部から深くお詫び申し上げます。

主な修正内容

  • 「表現規制」に関する記述を削除

  • 総合評価を8点から9点へ変更
    ※詳細な修正内容等は、記事末尾をご覧ください。


『怪盗スライ・クーパー』シリーズや『InFAMOUS』シリーズで知られる北米のサッカーパンチ・プロダクションズが手掛けた『Ghost of Tsushima』は、発売されるやいなや大きな話題になりました。時代劇の雰囲気を受け継いだ重厚で渋い世界観、そして武士の矜持と葛藤を描いたシナリオは高く評価され、その後にリリースされた歴史ゲームにも大きな影響を与えています。

この記事を読んでいるGame*Spark読者の多くは日本在住のゲーマーと思いますので、『Ghost of Tsushima』に親しみを感じた方もきっといるはず。自分も黒澤明監督の映画が好きで、前作をそれなりに楽しんだゲーマーの一人として、その魅力はよくわかります。特に海外のクリエイターが作った逆輸入的な「時代劇ゲーム」を遊べることは興味深い体験です。

前置きが長くなりましたが、今回はそんなサッカーパンチ・プロダクションズの新作『Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』のレビューをお届けします。ファンの多い作品だけに、続編でどのような変化が起きるのか楽しみな方も多いはずです。発売前の公開ということで、ストーリーのネタバレには十分配慮していますが、どうしても内容が気になる方は先にプレイしてから読んでいただくことをおすすめします。

今回のレビュー執筆においては、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから提供されたキーを利用しています。なお、本記事はメーカーによる監修は受けておらず、キーの提供を除き、ライターとGame*Spark編集部のみで制作した記事となります。

大自然の蝦夷地、広大なフィールド

本作最大の魅力は、なんと言っても広大な蝦夷地(現在の北海道とされる地域)を再現したフィールドです。いくつかのかなり広めのエリアがあり、それらを行き来しながらゲームを進めていくのですが、PlayStation 5の高速ロードのおかげで、ほぼストレスなく「オープンワールド」ゲームとして楽しめます。

タイトルこそ『ゴースト・オブ・ヨウテイ』ですが、羊蹄山周辺以外もかなり広範囲をカバー。もちろん縮尺はデフォルメされていますが、それでも相当に広いマップです。

舞台は1603年、江戸時代の初期に設定されています。ゲーム内の蝦夷地には集落や街はほとんど存在せず(何か所かはあります)、民家や宿屋、神社がぽつぽつと建っている程度です。そのため、ほぼ広大な自然の中を駆け巡ることになります。

サブクエストや収集アイテム、立ち寄るべきスポットは複数用意されていますが、現代の他のオープンワールド作品と比べるとマップ全体の情報密度はやや控えめに感じられました。

おそらくこれは、広大な大自然を馬で駆け回る体験を重視しているためでしょう。本作はとにかく景観が美しく、フォトモードが捗る仕上がりです。途中で野営もでき、『レッド・デッド・リデンプション2』の影響も感じられます。

広大なフィールドの魅力を引き立てるためか、ゲーム画面に表示される情報は極力シンプルに抑えられています。ときには上下に黒い帯があらわれる映画的なシークエンスも挿入され、とにかく「広いフィールドを駆け回るプレイ姿を見てほしい」という意図が伝わってきます。

筆者がプレイしたのは2025年9月上旬から中旬頃で、まだ暑さが残る時期。しかし荒涼とした自然の中に広がる寒々しい景色から、優れた臨場感と説得力を受け取れました。馬の走行音や鳥のさえずりなど環境音のクオリティも素晴らしく、さらにDualSenseの繊細な振動表現がゲームへの没入感を強力に高めています。

後述しますが、本作のストーリーはかなり血生臭い復讐譚です。しかし、自然の中を駆け巡る時間が多いため、どこかリラックスできる“チルい”時間が生まれるのも本作の大きな特徴と言えるでしょう。

『ゴースト・オブ・ヨウテイ』には、「黒澤モード(画面が白黒になる)」や「三池モード(血しぶきが激しくなる)」など、映画監督にちなんだ複数の演出モードが搭載されています。なかでも筆者が特に気に入ったのは、『サムライチャンプルー』で知られる渡辺信一郎監督が厳選したローファイミュージックが流れる「渡辺モード」です。

当初は一発ネタの面白モードかと思いきや、意外に場面と音楽の相性が抜群で、ゲームの後半はほぼこの「渡辺モード」をつけっぱなしでプレイしていました。もちろん重要な場面では適切な音楽に切り替わるので、場面の緊張感を損なう心配もありません。安心してオンにして楽しんでください。

フィールドの広大さと世界の美しさは、『ゴースト・オブ・ヨウテイ』の最大の魅力と言っても過言ではないでしょう。フォトモードを愛好するプレイヤーにとっては、間違いなく垂涎のタイトルだと思います。

世界観とキャラクター、ストーリー

今作のストーリーは、「羊蹄六人衆」という悪党に家族を殺され、自身も火で焼かれた女剣士・篤による復讐譚です。制作時期を考えれば偶然だと思いますが、「◯◯衆という名前の悪役に家族を奪われた女性の復讐譚」という点で、同じく今年発売された『アサシンクリード シャドウズ』とかなり似ています。


「海外スタジオが制作する、日本を舞台にした大作ゲーム」が続けて似たような題材を扱うのは、とても興味深いことです。筆者も「◯◯衆的な悪役が登場する復讐譚」のルーツについて調べてみたのですが、あまり明確な情報は見つかりませんでした。もしご存じの方がいれば、こっそりで教えてください(個人的には沙村広明のマンガ「無限の住人」の設定に近い気もしたのですが、「無限の住人」がルーツとは考えにくいので……)。

本作には賞金首が登場し、主人公の篤も手配される立場になります。このあたりの雰囲気はどちらかというと「時代劇」より「西部劇」の色合いが強いと感じました。ただし、黒澤明の時代劇自体がジョン・フォードの西部劇の影響を大きく受けており、映画「用心棒」の影響で「荒野の用心棒」が作られるなど、時代劇と西部劇はお互いに相互影響し合う関係にあります。なので、この感覚はむしろ自然なことかもしれません。


以前筆者が行った開発者インタビューでは、李相日監督の「許されざる者」の影響について触れられていました。その「許されざる者」も元々はクリント・イーストウッド監督の西部劇が日本で時代劇としてリメイクされた作品という経緯があります。

羊蹄六人衆の頭領である「斎藤」をはじめ、かなり印象深いメンバーが敵にも味方にも揃っています。詳細には言及しませんが、篤の協力者としてアイヌの「フチ」も登場します。

「ほとんど集落は登場しない」と前述しましたが、アイヌの村落である「コタン」はゲーム内でしっかり描かれています。ただし、のちの「シャクシャインの戦い」につながるような和人からの搾取などの対立構造については作中でほとんど触れられておらず、アイヌはあくまで第三者的な立ち位置で、メインストーリーへの関わりは控えめと言っていいでしょう。

あくまで主観的な感想ですが“キャラクターの個性”という点では前作の方が強めに感じられました。『Ghost of Tsushima』では「石川先生」や「政子」など、クセが強いキャラクターが多かった印象です。今作のキャラクターは比較的控えめなため、ネタ的な要素やツッコミどころがほとんどなく、全体的に重厚かつシリアスなトーンが貫かれています。

悪い見方をすれば個性が薄れているとも言えるため、物足りないと感じる人もいるかもしれません。しかし、前作よりも作品として完成度が高まった部分でもあるでしょう。薄まったと言っても、とんでもないものを楽しみにしている方の期待には答えてくれると思います。クセが無いだけで、好感を持てる魅力的なキャラクターはちゃんと登場しますしね。

ここからは、ストーリーについて少しだけ触れますので、気になる方は読み飛ばしてください。

本作は先に述べたように復讐譚であることから、基本的に物語は重く暗いトーンで進んでいきます。復讐をテーマにしたゲームや映画を少しでも経験したことがある方なら、「復讐最高!ヤッター!」という爽快な話ではないことのはご理解いただけると思いますので、プレイにはある程度の覚悟が必要かもしれません。とはいえ、『The Last of Us Part II』のように「遊んでいて心がしんどい」というほどではないので、その点は安心してください。

ストーリーはやや類型的というか、物語の結末まで大きな意外性はほとんどなく、「まあこうなるだろうな」と思える展開が続きます(それが必ずしも悪いわけではありません)。主人公の篤はもともと侍や武士道に深い興味を持たない人物として描かれているため、前作にあった「冥人と侍の葛藤」といったテーマはほとんど登場しません。

ただ、魅力的なキャラクターとの関わりや篤の心境の変化など、見どころはいくつかあるので、楽しみにしてもらえればと思います。

戦闘、アクション、

本作の戦闘はおおまかに前作を踏襲しています。「弱攻撃と強攻撃を使い分け、相手が防御しているときには強攻撃で相手を崩す」という基本的な戦闘に、ジャストタイミングで防御ボタンや回避ボタンを押すというこの手のゲームではオーソドックスな要素と、「相手の武器に合わせて自分も武器を切り替えて戦う」という『Ghost of Tsushima』でもおなじみのスタイルが組み合わさったスタンダードなものです。

難度オプションも存在しているので腕に自信があるプレイヤーは高難度で遊んでもいいでしょうし、ストーリーだけを追いかけたいプレイヤーなら「ほぼ連打だけで攻略できるほど簡単な難易度」にすることもできます。このあたりの多様性はかなり好ましいです。

また、本作では直接的な戦闘だけでなく、ステルスを使って攻略できる場面も多く用意されています。ステルスを活用することで楽に進められることも多いですが、あくまで筆者の主観では前作に比べて斬り合いの比重が増え、ステルスの重要度はやや下がっている印象を受けました。

篤は忍者でも冥人でもなく腕の立つ復讐者です。そのために“斬り合い”がロールプレイ的にしっくりきてしまい、無意識のうちにそう遊んでいたのかもしれません。

岸壁をよじ登ったり、木の枝を飛び移ったり、フックを使って移動するといったアスレチック的なパートも、前作に引き続き登場します。ほとんどの場合は開発側が想定した「正解ルート」に従って移動しなければならず、自由度はほぼありません。

プレイ中には、篤が思いもよらない方向に急に飛び出して落下するなど、事故が頻発しました。明らかに触れている岸壁を掴んでくれず、納得感のない死に方をすることもあり、「一本道なんだからもっと吸い付くようにジャンプしてくれればいいのに」とも感じました。移動先がわかりにくい場面も多くあったため、筆者にとってこのアスレチックパートはあまり楽しいものではありませんでした。

記事冒頭と末尾で述べているとおり、本作には「表現規制」が設けられていません。プレイしながら「トレイラー映像より暴力表現が薄い」と感じていましたが、あくまで筆者のプレイスタイルによるものであったことをお詫びいたします。

パブリッシャーならびにデベロッパーのご担当者にご確認いただいた結果、今後は“切断表現が起こりやすい”という「多様な技を使う戦闘スタイル」も積極的に試しながら、プレイしようと考えています。また、筆者のバージョンでは未実装ではありましたが、ゲーム発売時点からは「切断表現のオン・オフ」が選択可能です。ゴア表現は好みの分かれるものですから、切り替え可能であることは大変好ましいことです。

また血しぶきの多い「三池モード」も存在するので、例えば「血しぶきも切断もなし」から「血しぶきマシ、切断あり」まで細かく暴力表現を調整可能となります。これらは、ゲーマーとして喜ばしいオプション要素です。


『ゴースト・オブ・ヨウテイ』は期待度も高く、まさに2025年の本命とも言える作品だと思います。前作に引き続き、渋い内容と美しいフィールドが最大の魅力で、堅実なアクション要素やしっかりとしたストーリー、そしてキャラクターがそれを下支えしています。しかしアクション面にはやや難があり、本作の仕上がりに影を落としています。

Game*Spark レビュー 『Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』PS5 2025年10月2日リリース

美しいが、ややぎこちない

GOOD

  • フォトモードが捗る美しいフィールド
  • 魅力的なキャラクターも備えた王道のストーリー
  • 前作と変わらず楽しい戦闘

BAD

  • 先が予測しやすいストーリーと、アイヌにまつわる事柄に踏み込みきれていない描写
  • アクションパートにストレスを感じる


記事アップデートのお知らせ

本記事は、2025年9月25日(木)22時00分に掲載した内容を一部修正しています。初出時では、下記のような観点のレビュー記事を掲載していました。

  • トレイラー映像を見て比較する限り「本来あるべき切断表現などがオミットされた状態」で『ゴースト・オブ・ヨウテイ』をプレイしているように感じた。

  • 筆者のプレイでは「四肢の切断シーン」は一度も発生しなかった。
    「首の切断シーン」が発生したのは2回のみであり、いずれも不自然な表現であったため「(規制を施した上での)ゲーム側の不具合ではないか」と感じた。

  • これらを「表現規制による描写修正」と捉え“『ゴースト・オブ・ヨウテイ』の持つ唯一の問題点”と評価していた。

それらを総括して「表現を規制されたゲームプレイを強いられることには、いちゲーマーとして憤りすら感じる。こうした表現に否定的に向き合うことは、レビュアーならびにゲームメディアの責務である」と主張しておりましたが、記事掲載後にソニー・インタラクティブエンタテインメント様にご確認いただいたところ「表現規制は行っていない」との回答を受けました。

『ゴースト・オブ・ヨウテイ』ファンの皆様、Game*Sparkの読者の皆様、ソニー・インタラクティブエンタテインメント様ならびにサッカーパンチプロダクションズ様に、本記事の編集者から改めて深くお詫び申し上げます(キーボード打海 / 早川 夏生)。

本記事の修正内容は下記の通りです。

「ゴア表現」について

ソニー・インタラクティブエンタテインメント様ならびにサッカーパンチプロダクションズ様との厳正な確認を行った上で、ゲーム内で「四肢切断」「首が飛ぶ」などの表現を確認できなかったことはレビュアーのプレイスタイルによるものと判断して「表現規制」にまつわる段落をカットしました。

総合評価について

“BAD(悪い点)”の項目から「表現規制」の記述をカットしました。また、それに伴い総合評価の点数を「8点」から「9点」へ変更しました。



ライター:文章書く彦,編集:キーボード打海

ライター/「ラジオ善意X」聴いてね 文章書く彦

好きなガンダムは∀ガンダム、好きなマンガはレベルE、好きな映画監督はポール・トーマス・アンダーソン、好きなゲームジャンルはオープンワールドものとローグライク(ローグライト)、好きな昆虫はカマキリ、好きなバンドはFUGAZI、好きな作曲家は浜渦正志、好きな小説家はカート・ヴォネガット・ジュニアと舞城王太郎、好きなラッパーはポチョムキン、好きな焼酎は鳥飼、好きなルフィが言ってない言葉は「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!(ドン)」、好きな笑い男が書いてた言葉は「or should I?(だが、ならざるべきか?)」。

+ 続きを読む

編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Sparkの編集者。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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  • スパくんのお友達 2025-10-06 8:59:27
    記事タイトルにも誤りと修正の旨を重ねて表記するべき。
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-06 8:53:57
    以前の五輪記事からの引用ですが…

    >少なくとも自分がGame*Sparkを見るようになってからのこの4年程度で、レビューやプレイレポでプレイを実際にせずに出した記事は一つもないということだけは改めてお伝えしておきたいですし、今後もないということもあわせてお伝えします。

    本当かなぁ…遊べばすぐにわかるような間違いをしてるんだけど…
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-06 5:50:17
    さすがにおかしいなと(笑)
    5 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-06 1:02:17
    パチこいてネガキャンとはさすがのゲームメディア様といったところ
    見出しからしてわざわざフワッとしたネガティブなワード掲げてご苦労さまなことですね
    10 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-05 23:43:37
    前の記事を修正して終わりっているのが最高にあれやね
    間違ったこと(デマととらえられても仕方がない)を広めたんやから新規に訂正記事を作成してリンクを張るのが筋なのでは?
    24 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-05 22:52:54
    なんでこんなやつらがレビューしてんの?そこらの素人以下
    35 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-04 23:00:00
    血の量ってモードなの?マジか!
    まだ始めたばかりだから三池モードでやり直すか。
    1 Good
    返信
  • 編集部 2025-10-03 17:06:28
    表現規制に関するコメントは誤解を招かぬよう削除しました。
    経緯については記事中に記載の通りです。
    5 Good
    返信
    3件の返信を表示 返信を非表示
  • スパくんのお友達 2025-10-03 16:18:10
    公開してから直ぐに非公開して何日も黙りだったのはメディアとしてどうかと思うけど、表現規制がないと確定したので安心して買えます
    24 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-10-03 15:40:12
    ウィッチャーとかやってるとクビポンポンとぶもんな、正直気持ちはわかる(ゲラルトの首切りぢからがおかしいだけともいう)
    0 Good
    返信

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