シバリの手持ちの中ではパルシェンが最下位なんですな。
パルシェンにはもうちょい無茶振りしたほうが良いか……?
「売り切れです」
「マジで言ってます???」
ようやくフエンタウンに着いたのでフエンせんべいを買おうとしたのだが、売り切れているらしい。
せ、せんべいってそんなに売り切れるもんなんかな……?
ヒウンアイスといい、こういうのにとことん縁が無いんだな俺……。
「フエンせんべいが売り切れ……? そんなことあるんだ……」
ほらもうハルカまで驚く始末じゃん。普段絶対に起こり得ないってことじゃん。
「すみませんねぇ。さっきまでは潤沢に在庫があったんですけど、試食で大変気に入っていただけたのか、お土産にとたくさん購入していった方がいらっしゃいまして……」
「そうですか……」
てことは俺と同じ旅の人だったりするんだろうか。でもそんなにたくさん買ったなら旅するのに邪魔になるんじゃ……?
「ねえシバリくん。試食用のやつは余ってるみたいだし、せめて試食くらいしていけば? 美味しかったならまた来て買えば良いと思うよ!」
「……それは、ダメだ」
「え? 何で?」
「だって絶対美味いじゃん。我慢出来なくなるだろ」
「あ、うん。そっか……」
虚しい表情で言った俺に対し、ハルカはドンマイとでも言うように肩をポンポンと叩いてくれた。
「ごめんなさいねぇ本当に。今後は購入数に制限を付けるなどして対応いたしますので……」
「あー、いえいえ。今回は仕方ないですから……」
どうやら大量に購入された事例は今までなかったらしい。マジでタイミング悪かったんだな俺。
「あっ、そうだ! 折角だし温泉くらい入っていかない!?」
「温泉……?」
「そう! フエンタウンって温泉も名物なんだよ! あたしも前に入ったことあるんだけど、気持ち良かったな〜!」
「温泉、か……」
あれ? もしかしなくても俺って温泉入ったことないよな?
フエンせんべいこそ食べられなかったけど、これはこれで良い経験になるんじゃないだろうか。
「そういうことなら入るか。行こう」
「うんうん! そうと決まれば──」
言葉の途中でハルカはハッとした表情になると、少し顔を赤らめて、胸の辺りを隠すように腕を交差させた。
「──さ、流石に混浴じゃないからねっ!?」
「入るわけないだろ」
ビンタされた。酷い。
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未だにヒリヒリと痛む頬を押さえながら、俺はハルカと一緒に温泉に向かっていた。
「……なんでさっきビンタされたの俺」
「だ、だって、あんな事言ったくせに、まるで興味無さそうに言うから……」
「……?」
なんかジム巡りの話をしてから妙にハルカがおかしいような……?
まだハルカと会ってからそんなに時間も経ってないし、気の所為かもしれないけど……。
「まあいっか。で、どこで温泉に入れるんだ?」
「へ? あ、うん。この建物で受付すれば入れるんだけど──」
言いながらハルカが建物を指差すと、中から一人の女性が出てきた。
角の生えた赤いフードを被っていて、なんとも個性的な服装をしている。
「あれ? カガリさん……?」
「……奇遇。こんなところで……会うなんて……」
「……お知り合い?」
「うん。前にちょっとね」
どうやらこの人はハルカの知り合いらしい。あれ、というか後ろの荷物って……。
「あっ、カガリさんの持ってるそれって……!」
「……これ? お土産……。マグマ団のみんなに……美味しかったから……」
「買い占めたのカガリさんだったんだぁ……」
納得したようにハルカが呟く。どうやらこの人がフエンせんべいを大量購入したらしい。
「……もしかして、キミも欲しかった……?」
「あたしというか……シバリ君がね」
「シバリ……?」
チラリと、カガリさんがこちらに視線を向けてくる。
「…………」
「あ、あの……?」
俺とハルカを交互に見たかと思ったら、なんだかこちらをジーッと見つめてくる。心なしか少し距離も詰めてきてる気がする。
「……キミ
「へ?」
そう言うと、カガリさんはフエンせんべいをいくつか取り出して、俺に差し出してきた。
「……欲しい?」
「えっと、あの……?」
「
「エク……何です?」
「キミとも……
え、エンゲ……? アナライズ……?
しまった。横文字だらけでよくわからんぞ。
とはいえ、カガリさんの要望に応えればフエンせんべいがもらえるってことでいいのか……?
それなら断る理由もないか。
「わかりました。えっと、俺は何をすれば──」
「──へぇ」
低い声が横から聞こえてきた。声の主を見ると、ハルカがジトッとこちらを見つめていた。
「あんな事言ったのに、そうやって他の女の人にホイホイ付いて行っちゃうんだ」
「へ?」
「よくないと思うな。そういうの」
「いや、あの……"あんな事"って……?」
問いかけると、ハルカは顔を赤くして、しどろもどろに口を開く。
「そ、それは……その……あ、あたしのことを、す、すっ──」
「す?」
「ばかぁ!!!!!!!」
「またぁ!?」
またビンタされた。……ひ、酷い……どうしてこんなことを……。
「もっ、もう知らないっ! あたし一人で温泉行くからね!」
「ちょっ!? なんで怒って……!?」
慌ててハルカの後を追いかける俺を見て、カガリさんは何かを呟いていたが、その言葉を聞いている余裕は俺には無かった。
「……ターゲット、ロック」
─────────────────────────
「しっかり休めたか? カガリ」
「温泉……気持ち良かった。リーダーマツブサ……ありがとう……」
ハルカとシバリが立ち去った後、カガリはマグマ団リーダーのマツブサに電話をしていた。
「お土産も買った……後で渡す……みんなにも……」
「そうか。それは皆も喜ぶだろうな」
嬉しそうな声音になったマツブサに、カガリも小さく笑った。
「……そういえば……見つけた……オモチロイ人」
「ほう? カガリが面白いと言ったのはハルカちゃんくらいだったが、他にも居るとはな。どんなヤツだ?」
「そのハルカを……射止めた人」
「ほぉ……!?」*1
言うまでもないが勘違いである。少なくとも、現時点ではハルカはシバリに恋情を持っているわけではない。
しかし、ハルカの様子が普段と違ったのも事実。なので、意識くらいはされているのかもしれないが──。
「あの天真爛漫で恋愛の"れ"の字も知らなさそうなハルカちゃんに、ついに春が来たか……」
「リーダーマツブサ……」
「みなまでいうな。ハルカちゃんには恩がある。マグマ団としても見守っていこうじゃないか」
「……
「お前……カガリ、お前……」
前の一件でマシになったとはいえ、カガリとはもう少し会話しなければならないなと、マツブサは心の中で思ったのだった。
・ハルカ
恋愛の"れ"の字も知らない女の子だよ。ホントだよ。
・シバリ
フエンせんべいお預けの上、2回ビンタされた人。かわいそう。
・カガリ
ハルカの様子が普段と違ったので、それの原因であるシバリに興味を持った。多分シバリの手持ち見たらもっと興味が出る。
・マツブサ
エピソードデルタ後を想定しているので、随分丸くなっている。
悪の組織としてのマグマ団はもう居ない。
それはそれとしてカガリとはもう少し会話の機会を増やすべきかなと思ってる。
どの手持ちポケが一番良かった?
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シバリ:ムクホーク
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シバリ:ジュカイン
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シバリ:シャンデラ
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シバリ:パルシェン
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シバリ:ゴローニャ
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シバリ:ケッキング
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ラズ:エレキブル
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ラズ:ドドゲザン
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ラズ:ギャラドス
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ラズ:ドーブル
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ラズ:カクレオン
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ラズ:メタモン
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