「着いた!」
「へ……?」
最初にハルカに案内されたのは、何の変哲もない森の中にある、開けた場所だった。
「……見た感じ普通の森に見えるけど、ここはどういうところなんだ?」
「へ? 普通の森だよ?」
「え?」
普通の森に案内したかったってことか……? もしかして、特に観光名所とかそういうわけではないけど、ハルカにとってのお気に入りスポットとか、そういう……?
「だってここなら、大丈夫だから!」
そう言って、ハルカはモンスターボールを取り出した。
「てことで、ポケモンバトルしよ! シバリくん!」
「……ああ、うん。そういうことね……」
とりあえず誰の邪魔にもならなくて、広い空間ならどこでも良かったってことなのね……。
「あのメールを見てから、ず〜っと楽しみにしてたの! だからやろうよ、ポケモンバトル!」
「いや、あのメール大分ハードルガン上げされてるからな……?」
「あ、そうだ。ポケモンバトル始める前に……」
「聞いて?」
ハルカはカバンからゴソゴソと何かを取り出すと、俺の方に差し出してきた。
「ダイゴさんから預かってたコレ、渡しておくね!」
「これって……?」
「キーストーンが嵌め込まれた腕輪と、
「マジ!?」
えっ!? いいのか!? これならコソ練とかされるまでもなく二人でやれるじゃんか!
「お詫びだって言ってたよ! ……ダイゴさんのことだし、どうせ元々渡す予定だった物を"お詫び"ってことにした可能性もあるけど……」
「どうなんだそれは……」
とはいえ、そういうことならこちらとしても受け取りやすい。
遠慮なくハルカから腕輪とジュカインナイトを受け取った俺は、早速腕輪を装着し、ボールからジュカインを出した。
「ジュカ?」
「おいジュカイン! ほらこれ、ジュカインナイトだってさ! これでメガシンカ出来るぞ!」
「ジュカァ!?」
急な話にジュカインも驚いた様子だったが、恐る恐る俺が手にしているメガストーンに近づいてくる。
「キーストーンとメガストーンを使って、俺達二人で力を合わせてメガシンカするんだ! やってみよう!」
「……ジュカ」
「あれ……?」
ジュカインは遠慮するように俺から離れてしまった。
なんだろう。なんというか、メガストーンを見て何かを察したというか、メガシンカをしたくないとでも言いたげな表情をしている。
「メガシンカ……したくないのか?」
「ジュカ……」
「ダイマックスのときにみたいに怖いってわけではないんだよな?」
「ジュカ」
うーん。なんでジュカインはメガシンカしたくないんだろう。どうしてそんなに不安そうな顔をしてるんだろうか。
メガシンカが怖いわけではない。でもメガシンカしたくないってのはつまり……。
「……なあハルカ」
「なーに?」
「もしかしてだけどさ、メガシンカって特性が変わっちゃうなんてことがあったりする?」
「うん! ジュカインの場合は"ひらいしん"って特性になるよ!」
「……もしかして、それか?」
「ジュカ……」
さっきメガストーンに近づいたとき、なんとなくそのことを察したのかもしれないな。
だが、俺のジュカインは"しんりょく"を常時発動するという点でアドバンテージを得ているポケモンだ。
それが無くなってしまうというのは、ジュカインにとってはアイデンティティを失うに等しいことなのかもしれない。
何より、俺がジュカインの"しんりょく"に頼っていた所が大きいこともあって、『俺に失望されるんじゃないか』なんて、思ってる可能性もある。
「……ジュカイン」
俺はジュカインに歩み寄り、優しく撫でる。その勘違いを正すために。
「ジュカインがやりたくないならメガシンカはしなくて良い。ただ、俺はお前が"しんりょく"じゃなくなったとしても失望したり、見捨てたりしないよ。そりゃ、
「ジュカァ」
「え?」
なるほど。とでも言うかのように、ジュカインは手をポンと叩いた。
いや待て、お前、もしかしてお前、まさか──!
「ジュカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ待て待て待て待て待て! まだメガストーン渡してないから! キーストーンも準備してないから! 俺の手持ちでメガシンカ出来るのお前だけなんだから、せめてセルフメガシンカだけは──!!」
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
光の晴れた先には、メガジュカインが立っていた。
あのやりきった顔、間違いない。"しんりょく"を維持してやがる。
メガシンカし始める直前、『メガシンカするときに特性を維持すれば良いじゃん!』みたいな顔してたけど、それがこんな簡単に出来たら苦労しないんだよ。
「そ、そんなのって、アリなんだ……」
ハルカも驚いた顔をしている。有りじゃないだろこんなの。
「……あれ? よく見たらあたしの知ってるメガジュカインとちょっと見た目が違うかも……」
「……多分"けんのおう"混じってるなこれ」
「"けんのおう"って何!?」
おくびょうな性格だから攻撃は不得意*1だったジュカインだけど、メガシンカでのパワーアップと"けんのおう"の相乗効果なら、むしろ特殊よりも攻撃の方が強いかもしれないな。
「ちなみに"きょじゅうざん"とか打てたりする?」
「ジュカ」
「打てるんかい」
まあ"しんりょく"あるから普通にくさタイプの技使ったほうが強いんだろうけど。
どくタイプの技と撃ち合うときなんかは全然有りかもしれないな。
「……シバリくん」
ハルカは口角を上げて、モンスターボールを構える。
「そんなの見せられちゃったらさ……期待してもいいよね?」
雰囲気が変わる。さっきまでの元気なハルカはどこにいったのか、今の彼女からは確かな強者の風格を感じる。
「こりゃ一筋縄じゃいかないな……。メガシンカデビュー戦、行くぞジュカイン」
「ジュカ」
「今回は初手には出さないけど」
「ジュカァ!?」
ジュカインには驚かれたがそのままボールに戻した。
ごめんな。でも、一方にだけ最初に使うポケモンがわかってるってのはフェアじゃないからね。
ハルカも同じように考えていたみたいで、特に何も言っては来なかった。
じゃ、場も整ったところで……。
「ホームグラウンドだ! 行って来いケッキング!」
「先陣を切って! アゲハント! 」
初手の対面は有利でも不利でもなかった。
ハルカのアゲハントと、つい先日サイトウさんとの計46連戦を戦い抜いたケッキングが向かい合う。
……ケッキング、もう少し休ませてあげてもよかったかな……。
※前回のキマワリについて補足
あのキマワリはヒマナッツの頃から"キマリ"と交友があり、彼らの度を越えた特訓に感化される形で、ヒマナッツも自分を鍛え始めたっていう感じです。
ちなみに元々シバリの手持ち予定だったけど、絵面がギャグすぎたのでジュカインを考案し、手持ちを変更。
・アゲハント
アドバンスジェネレーション見て育ったからアゲハントを持っててほしいという欲があった←
・ケッキング
46連戦やらされた。もうケッキングのスタミナはボロボロ。
でも数日休んだし……いけるよね!!
・ジュカイン
案の定セルフメガシンカした。
お前マジ許さんからな(シバリ談)
"けんのおう"による攻撃種族値補正
+
メガシンカによる攻撃種族値補正
+
"しんりょく"の維持
これで場に出て"けんのおう"補正で攻撃1段階上がるわけだし、おくびょうとは言えど特殊よりもリーフブレード連打するほうが強そう(小並感)
書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?
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いらない:そんなことより本編を書け
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いる:ルリの閑話とか
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いる:本編IF(永住ルート)とか
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いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか