「地域一番局」が至上命令…フジ系列地方テレビ局、11億円所得隠しの背景に経営トップからの重圧 売り上げ確保に手段選ばず
フジテレビ系列NST新潟総合テレビ(新潟市中央区)の11億円所得隠し問題を巡り、3日に公表された外部調査委員会の報告書で、元社員が不正に手を染めた要因として指摘されたのは「売り上げ・シェア1位」を必達目標とする経営トップからの重圧だった。視聴率低下で営業が厳しさを増す中、広告代理店への商品券贈答や海外旅行招待で売り上げ確保を図ったが、税務当局の指摘などで頓挫。利益供与を社として容認し、最後は元社員が架空のCM制作発注などを通じた「裏金」を利益供与の原資に充てるという異様な社内風土が浮き彫りになった。 【表】外部調査委員会の報告書骨子 NST本社で3日夕から開かれた記者会見。外部調査委員会委員長の森本哲也弁護士は「NSTでは売り上げ、シェアといった数字の達成に絶対的な価値がおかれ、手段の是非という観点が軽んじられていたことが背景にあった」と指摘。酒井昌彦社長は表情を変えず、じっと聞いていた。 調査で明らかになったのは、NSTでトップとして君臨した大橋武紀氏の影響力の大きさだ。大橋氏は 酒井氏の前任の社長で、17年間にわたりトップの座にいた。関係者によると、「絶対権力者」で現場は発言しにくい雰囲気があったという。 「地域一番局の維持」。大橋氏が社長に就いた2008年から、こうした号令が下り、社の至上命令となった。しかし、11年ごろからキー局のフジテレビの視聴率が年々低下し、営業環境は厳しさを増していた。 特に社の稼ぎ頭である東京支社の営業担当には「相当のプレッシャーが掛かっていた」。これまでも「適正な事業活動の範囲」でゴルフや長岡花火への招待など広告代理店への接待を重ねてきたが、そこからエスカレートした。広告出稿の上乗せ額の一定割合を商品券などで広告代理店側に「返す」ことで、売り上げの拡大に走った。 商品券贈答は、17年度には2697万円に膨らんでいた。税務当局に指摘されると、今度は海外旅行に広告代理店の担当者らを招待。19年度は3回の旅行で支出は2070万円に上る。会見で金額の多さを問われると、森本弁護士は「(高額な旅行という)疑問を持つのはもっとも」とした。 新型ウイルス禍で海外旅行が難しくなると、営業担当の元社員は複数の制作会社に架空のCM制作を依頼し、親族名義の会社に還流させるなどし、広告代理店の担当者へのキャッシュバックや接待費用に充てた。 商品券の贈与や海外旅行への招待は当時社長だった大橋氏らの承認を得ていたという。架空発注について、NSTは組織的関与を否定。酒井社長は「東京支社の多くの営業部員が関わっており、それを含め組織的という批判は致し方ない」と歯切れは悪かった。 他社の不適切な会計処理などを報道するテレビ局が、所得隠しをした事実は重い。酒井社長は「報告書には地元の重要なメディアとして使命を果たしてほしいとあった。再発防止策をしっかりと形にして示したい」と声を振り絞った。