雪と墨[設定資料]
October 4th, 2025 16:55・All users
【読み飛ばしてもいい制作小話】
「TOMORROW」というタイトルから始まった制作も、早3年。ああでもない、こうでもないと試行錯誤した結果、第3案はキャパオーバーによる破滅に終わった。他に考えうる要因としては、「世界観の構築を後回しにした影響」がかなり大きかったように思える。ということで、今回はそんな反省点を踏まえた第4案となる。
色々と面白くなっているはずだ。
では本編に行こう。
タイトル:雪と墨
モチーフ:墨/水生生物
[樫粗 雪]かしあらゆき
本作の主人公。
墨混じりの黒髪黒目をもつ墨子の少女。
体内に墨を保有する影響と、黒い髪が墨を中和するため、腐色の影響を受けない。この体質を活かして、普段は墨取りの仕事をしている。
黒い目は影の中に住む生き物の姿を見ることができ、彼らを観察するのが趣味にもなっている。
墨子であるが故に、差別的な扱いを受けることも多く、いじめもあり学校には通っていない。
雪の降る珍しい日に生まれたことから、「雪」と名付けられた。雪自身は、墨取りがとんでもなく大変になるので雪は好きではない。
※1枚目の写真は初期案だが、目のハイライトをもっとしっかりと入れるように変化した。
「墨」
突如として地下から湧き出した液体で、顔料の墨とよく似た性質を持つ。あらゆるものを黒く染め、やがて腐敗させてしまう。液状以外の状態になることはほぼなく、熱と電気には弱い。熱を当てると、薄い墨や軽度の浸色であれば、すぐに消えてなくなる。電気に関しては、電気を通すと発熱する性質を持つため。乾燥にも弱く、水分がなくなると固まって灰になってしまう。
現在、顔料の墨は「墨」と見分けがつかないので使用されなくなり、「黛/まゆずみ」と呼ばれる少し青みがかった顔料が使用されている。黛は浸色効果を持たない。時折「インキ」とも呼ばれる。
「煤」
墨の元となるもので、目には見えないが空気中に漂っている。湿気の多い場所や暗い場所(特に押し入れや部屋などの隅)、墨のある場所によく集まる性質を持ち、やがて墨になる。墨と同様に光と熱に弱く、本来の煤と似た性質を持つ。湿気に集まるため、綺麗な水もたちまち墨に侵食されてしまう。
煤を吸い込まないよう、外では誰も彼もがマスクをつけている。
「浸色」しんしょく
物の内部に墨が入り込み、侵されること。時間が経つほど浸色が進み、落ちにくくなる。水が浸透しにくいような物であれば、浸色されるまでに時間がかかるため、すぐに洗浄すれば元に戻る。
ただし、人の肌は一度浸色されると簡単には落ちにくい。できるだけ早めに表面を拭き取り、固形石鹸で洗うのが良い。それでも落ちない場合は、きれいな水に浸して墨抜きをすると良い。水に墨を移すようなイメージだが、それなりに時間がかかる。子どもは特に浸色しやすいので注意が必要。浸色した部位は熱にも似た朧げな痛みを伴い、重度の浸色となると、倦怠感や神経痛、感覚麻痺などを伴う。これらの症状が出始めるのが腐色の初期症状。
油とガラスは浸色されない。
「腐色」ふしょく
浸色した部分が錆びた金属のように腐敗してしまうこと。洗浄しても完全には元に戻らず、失った部分も元には戻らない。場合によっては完全に切除する必要などもある。火で焼いて灰にすれば、完全に墨を除去できる。生物においては、多少ならば自然治癒で再生する。
「墨子」すみご
生まれつき浸色を持つ子ども。自身の保有する墨では浸色や腐色に侵されることはない。体内に保有する墨は、普通の墨とは性質が異なることがあるため、稀に普通の墨での浸色や腐色の影響を受けない子もいる。日常的に差別やいじめを受けることが多い。
黒という色自体が良くないものとされているので、墨子ではなくただ髪が黒いというだけでも、差別やいじめの対象になる。
「墨付き」
重度の浸色や腐色に侵されている人。
「墨抜き器/墨受け皿/採煙皿」
家に溜まる煤を集めるための物。深さのある器がギリギリ重ならない距離で幾つも紐で括られており、一番下には受け皿がある。墨が受け皿に垂れてくる頃が交換の目安で、指定の場所へ持って行き交換する。
これがあるおかげで、家の中には墨が溜まらず、かつ煤が薄いのでサカナモドキも入ってこなくなる。ちなみに、新しく家を建てた場合などは、しばらく墨抜きをしなければ住めない。
「墨取り」すみとり
溜まっている墨を取る仕事。インフラ整備なので、大事な仕事。シアラは墨の影響をほぼ受けないが、通常、浸色や腐色のリスクが非常に高い仕事になる。そのため、成り手も少なく、常に人手不足に悩まされている。墨はとりわけ扱いが難しいこともあり、国家資格が必要。給料は良い。
街には墨を保管しておく場所がいくつもあるので、それを利用しつつ、荷車を引いて墨を回収する。回収した墨は、水道水を温めるついでに、同時にまとめて加熱処理される。
[仕事内容]
①付けペンの様な器具を用いて、取れるだけの墨を瓶に回収する。
②お湯を撒いて清め、熱風を吹きつけて乾燥させる。
「お湯の出る水道」
街の至る場所に、お湯の出る水道がある。とはいえ、水は貴重な資源なので、鍵がないと蛇口を捻ることはできない。
「水」
加熱さえすれば墨は無くなるので、基本的には水を扱う際は一度加熱する。水を保存する場合は、清潔な瓶に加熱した水をなみなみまで入れ、水をこぼして真空状態にしながら栓を閉める。
「海」
海に限らず、地上にある水は完全に浸色されてしまっている。魚は生存しているのかすら不明で、もちろん食べることは叶わなくなった。海水浴や水泳、稲作といった文化も完全に消滅してしまった。
「雨」
墨は気化しないため、雨には墨が含まれていない。墨はすぐには水に浸色することはできないため、雨は地上の墨をかなり洗い流してくれる。が、翌朝には残った雨水は全て浸色されてしまうため、雨が降った翌日の墨取りは忙しい。
墨が蔓延してからは、雪は滅多に降らなくなった。
「服」
黒い服は、墨の浸色に気がつけない可能性があるため、基本的に着ない人が多い。そもそも、黒という色自体が不吉なものとして扱われている。
「夜闇」
夜闇には墨が蔓延しているため、夜は外に出てはならない。色んな生き物が跳梁跋扈しており、闇の中で見分けるのはほぼ不可能なため大変危険。月明かりで気持ちばかり緩和はされているが、長時間の滞在は浸色のリスクを伴う。墨は暗い場所に溜まるので、夜、人のいる場所では決して光を絶やしてはならない。夜の内に溜まった墨は昼にはほぼ消えてなくなる。
「灯」
夜だけでなく、昼間でも暗い場所や影のある場所には墨が溜まりやすい。そのため、日中はランタンを持ち歩いて浸色のリスクを軽減している。
「晦夜」かいや
新月の夜のこと。この日は普段よりも墨が濃く、夜が明けても残っているため、その日の夜から2日間は外出してはいけない。
「湿度」
外は墨で溢れかえっているため、湿度が高くじめっとしている。湿度が高いと煤が溜まって墨になってしまうため、室内の除湿はマスト。
「墨溜まり」
文字通り墨が溜まっている場所。また、よく溜まる場所。腐色が進んでいることが多い。
[生き物]
「カゲ/サカナモドキ」
墨や影の中に住む水生生物の総称。煤の漂う空気の中を泳ぎ、影や墨の中を棲家とする。元々いた水生生物は軒並み絶滅しており、彼らの成れの果てとも言われている。厳密には魚ではないらしい。
墨を吐く個体も多いが、発光する墨を吐く種類もいる。
「ウミボウズ」
この世界を墨まみれにした元凶。外の世界から来た超巨大なタコのような生物。大昔に巨大な瓶の中に封印されたが、何らかのきっかけで封印が解けてしまったらしく、再び世界を墨で満たしている。
「バケダコ」
タコような生き物。墨を吐き、煙幕を張る。擬態能力が非常に高く、黒以外の体色にも変幻自在に変わるどころか、動物や人に化けたりもする。ただ、喋ることはできない。
「オオイカ」
イカのような生き物。粘性の高い墨を吐き、自身の複製を作る。複製単体では増えることはできず、やがて解けてなくなる。触腕をカエルの舌の様に伸ばして、一瞬で獲物を捕獲する。腕はかなり伸びる。胴体には硬い装甲を持つ。ロケットのような素早い泳ぎもできる。
「キリハキ」
アメフラシのような生き物。背中から霧状の墨を出し、薄い煙幕を張る。
「ウニ」
無数の長い針を持つウニのような生き物。墨溜まりを食べて針の中に溜め込むため、強い毒を持つ。無数の針をかき分けるように大きく開き、3つの目を覗かせる時がある。
「ビンガリ」
瓶を殻のようにして身を守るヤドカリのような生き物。基本的には臆病なので、近づくと瓶の中へ入ってしまう。大きな個体ほど凶暴になることが多い。
「ボウレイ」
基本的には夜間にしか姿を見ることができないクラゲのような生き物。触手には毒がある。
「オオヒドロ」
墨の中に生えている奇妙な形をした生物で、他のカゲにもくっついていることがある。
「カゲウオ」
陸上に影だけがある魚の総称で、色んな種類がいる。実際には煤の漂う空気の中を泳いでおり、シアラには本体が見える。
「ジライ」
平たく大きなヒレを持つエイのような生き物。尻尾には毒針を持つが、よく墨溜まりに潜っており見分けるのは困難。誤って踏むと大変に危険。
「ハシラ」
大量の墨を撒きながら泳ぐアカナマダのような生き物。
「スミクイ」
墨溜まりを食べる魚。
[魚以外の生き物]
「植物」
植物は、墨に浸色されると葉が黒くなる。枯れていなければすぐに腐色することはなく、綺麗な水を与えれば次第に墨は抜ける。
「墨猫」
墨の色に染まった黒猫。体が腐色されることもなければ、人が触っても浸色されることはない。墨子のような状態になっている。初めは普通の猫との差別化で「墨猫」と呼ばれていたが、次第に立場が入れ替わり、今はもう墨猫しかいなくなった。
「昆虫」
全くと言っていいほど、まず見かけなくなった。原因は不明。
【名前の由来/小ネタ】
「雪と墨」
「正反対なもの」という意味を持つ言葉。これと全く同じタイトルの漫画が、少なくともこの世に2作もあるのだが、モチーフがモチーフなだけにこの表現以外のタイトルを考えつくのはおおよそ不可能だろうとなり、採用することにした。元々ある言葉のようなので、文句は……言われないだろう。多分。
「樫粗 雪」
今回は日本語の響きに合わせて全体のネーミングを行ったため、主人公の名前が「シアラ」では違和感が出てしまう。そのため、「カシアラ」という苗字で一括りにまとめる、名前には見た目とは正反対の「雪」を当ててタイトルを仄めかす構造となっている。「樫」には「不屈/勇気/忍耐」という花言葉があり、呪われたような境遇においても強かに生きる主人公に対して相応しいだろう、ということでこの字を選んだ。
「墨」
今回は世界観を考えるだけだったので、「黒」というモチーフのみに焦点を当てて製作した。その際「墨」というワードがかなり重要な立ち回りをしていたため、モチーフを「墨」に変更し、焦点を絞って制作を進めるに至った。よって、「黒」をモチーフとしていた以前までの漠然とした感じが無くなり、かなり軸のしっかりとした完成度となった。以前の失敗の原因は全てこの「軸の甘さ」にあったようだ。
「水生生物」
魚系はまとめて紹介しよう。
・ウミボウズ → 海坊主(クラーケンではありきたりすぎる上に、横文字が浮いてしまうので海坊主を採用した)
・バケダコ → 化けるタコ
・オオイカ → 多いイカ(墨でダミーを作って増えるから)
・キリハキ → 霧を吐く(アメフラシは、墨というより霧というイメージだったので、この名を当てた)
・ウニ → ウニ、栗(似たモチーフを合わせ、中身の栗を目に見立ててみた)
・ビンガリ → ヤドカリ、瓶を借りる(瓶からこぼれるインクから着想)
・ボウレイ → 亡霊(夜闇を漂う様子を想像したら死者の魂のそれに似ていたため)
・オオヒドロ → 大きいヒドロ
・カゲウオ → 魚影、魚拓
・ジライ → 地雷(浅瀬に埋まっているエイはさながら地雷)
・ハシラ → 柱(アカナマダはリュウグウノツカイのように縦向きで泳ぐため、その様子から)
・スミクイ → スミクイウオ(ノドグロのように口内が真っ黒な魚)
と言った具合となった。
今後、設定の追加や修正もあるだろうから、その都度この記事を更新していく予定だ。
次は、物語やゲーム性などの「内容」に迫った話をできればと思う。