転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活 作:フライパンソルジャー
イアスの体を借りたアキラは驚愕していた。理由は依頼人ロックの戦闘能力の高さ故である。
ロックが心当たりのある地点画像を送ってくれたため、近場から巡り、探索を繰り返していた。時々ホロウ内に設置された観測デートを取り出しつつも順調にナビゲートを行っていたが、次の地点の近道となる通路上にエーテリアスが居座っていた。このまま進めば間違いなく会敵することになるだろう。その数は5体で全て通常個体といったところか、幸いこちらに気づいていなさそうなので不要な戦闘を避けるべく、回り道をしようと提案したところ。
「この通路が近道なんだろう?通路上の奴ら以外にはもう周囲にいないのか?」
「え、うんまあ、そうなんだけどね。まさか戦う気かい?ああいや、決してロックさんを侮っているという訳ではないのだけども、なるべく危険は避けていこうと思ってね」
アキラの弁明に苦笑しながらロックは答える。
「ハハ、気を遣う必要はないぞ。心配してくれてうれしいよ。それにホロウで奴らに出くわさないことは無かったからな、少し恋しさを感じたのかもしれない。あの程度の数であれば問題なく俺だけで対処できる」
ここに隠れててくれと言い、ロックはエーテリアスの方へと向かっていく。その足取りは街並みを散歩するかのような軽いものであった。
当然こちらに向かってくる動く存在に気づき、エーテリアス達はゾンビものさながらに奇声を上げながら襲い掛かる。
その動きは通常個体といえども早く、あっという間に距離を縮めロックに殺到する。
そして一般人が襲われたらひとたまりもないほど大きな腕を振り下ろす。
その直後——
“バチッッ……!!!”
ロックの機械装甲の各関節から、青白い電撃が走り出し、その電流は外部へと拡張。
稲妻が大気を裂き、発生した衝撃により殺到したエーテリアスを吹き飛ばす。
「っっグゥ……!!」
エーテリアスは苦悶の声を上げ床に叩きつけられる。すぐさま体を起こそうとするが電気が流れたためか体が痺れ上手く立ち上がれない。
その隙にロックは雷を纏ったまま加速する。地面を踏み砕きながらエーテリアスの群れに突進。
電磁反応で振動し、切断力を得た伸びた右腕で全てのコアを切り裂いた瞬間、遅れながら衝撃波が四方に通る。
一瞬の硬直の後、全てのエーテリアスの体が地面に崩れ落ちた。
「……!凄い」
電光石火の殲滅に後ろで様子を窺っていたアキラは思わず呟いた。
一瞬で戦いが決着した。いや、戦いにすらならなかった。
機械人とはいえ、完全にリサイクル工場で働く者の動きではない。
初仕事で知り合った
しかし、ロックはそういう職業ではないと前もって聞いている。力仕事をしていたから力に自信があると言っていたが明らかに限度があるだろう、
それになんか放電してたし……。
先ほどのホロウに何処か慣れているかのような発言からして、もしかして身分を偽っているのだろうか。
アキラが思考しているとロックは振り向きアキラの方へ視線を向けた。
「どうだ?問題なく対処できただろ」
「ああ…とても凄まじかったよロックさん」
親指を立てこちらにハンドサインをするロックを見てアキラは考えるのをやめた。
まあトリガーだって初めはカロンと名乗っていたのだし、何かしら彼にも隠したいことがあるのだろう。深入りするべきではないし、急いでるようだから早めに案内を再開しよう。
そう思いなおし、依頼主のファーストコンタクト並みに衝撃を受けたアキラは、ロックにルートを提示しながら再びナビゲートを開始した。
ーーーーーー
ロックの戦闘能力を確認し、無理してエーテリアスを避ける必要がなくなったアキラはほとんど最短距離で目的地点を巡っていき、そしてついにお目当ての財布を発見した。
拾い確認してみると情報通りの柄の長財布。地面の上に無造作に置かれていたところ間違いないだろう。拾い上げるとずっしりと重い、給料が全額入っているというのは嘘ではないようだ。
財布を掲げロックに報告し、持ち主に返そうとするが、
それは手で遮られてしまった。
「どうしたんだい?」
不審に思いつつも顔を見上げると細められた発光する双眼と目が合う。本人は満足そうに手を叩き此方を称えていた。
「
「ええと、ありがとう……?」
ロックの雰囲気がかすかに変化したのを感じ取り、少し警戒の色を覗かせるアキラに気が付いたのか、申し訳なさそうに頬をかく。
「すまない警戒させたいわけではなかったのだ。実は私はロックという名前ではない。君に信頼を得るために、身分を偽っていたことを謝罪する。不義理な真似をしたと分かってはいるが、どうか少し話を聞いてくれないか?」
「話……かい?」
突然のカミングアウトに戸惑うアキラ、だが目の前のロックではない知能機械人は一先ず話を聞いてくれると解釈したのか続ける。
「私の名前というか、私のコードネームはエレクトロ。ホロウレイダー『ヒール』のリーダーを務めている。」
その名を聞いた瞬間、アキラの脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした。
(ホロウレイダー『ヒール』――近年、大企業の数々の不正を暴き、反社会勢力の壊滅、インターノットを騒がせている正体不明の組織。特に調査協会の零号ホロウに関するデータを盗みだしてから一気にその名が世間に轟かされた。彼らの本当の目的は不明。悪か正義かすら、判断がつかない。自分たちが所属する業界では伝説と呼ばれる存在)
「我々は主に世直しを志向としている。それに伴い10年前の旧都陥落、その真相を我々は追っている。表に出ているのは捏造された記録が多く、いくつもの真実があの日闇に葬られた。今回の依頼は我々に協力してくれる優秀なプロキシを探していたんだ。旧都を飲み込んだすべての元凶である零号ホロウを調査できるくらいの……優秀なプロキシを」
ロック改めエレクトロは軽く額に指を添える。一瞬だけ彼の両目が青く光り、電磁帯域を通じてパケットが飛んだ。
いきなりイアスにデータを送信される。
「うわ!?なにが……」
「我々が収集してきた機密データだ、ウイルスは入ってないから安心してくれ。今は全てを開示することができないが、一先ずは我々の誠意を示す。」
受信したファイルの一部を解析する。情報にアキラとリンは度肝を抜かれた。
大手製薬企業による治験データの改ざんと、その副作用による死亡隠蔽
TOPS財政ユニオンと反社会勢力によるとの裏金のやり取り、
軍上層部の不正行為、
闇に葬られしクローン兵士の小隊、
宗教団体たる讃頌会が関わった痕跡、
そして自分たちが喉から手が出るほど欲しい情報零号ホロウについての調査記録も
「これは……本当に!?」
「君が望むなら、今すぐ忘れてくれて構わない。無関係の君を巻き込むのは気が引ける。ああ、勿論断ったからと言って今回の報酬がなくなるわけじゃない、その財布には掲示した報酬の2倍のディニーが入っている。持って行ってくれたまえ。ただし、もし協力してくれるならもう無関係ではいられない。君の行動はもう、君だけのものではなくなる。
「っ……!」
突然降ってわいた貴重な情報。
自分たちの目的を成し遂げるチャンスかもしれない、
しかし、脳の冷静な部分が内側で湧き上がる感情を抑える。
「(本当に信じてしまっていいのだろうか……)」
彼とは僅かな時間だけ過ごした、まだ出会ったばかりの仲である。まだ信頼に足りえない。
しかしこの一世一隅の機会、逃すにはあまりにも大きすぎる。
ぐるぐると回る思考。数秒の沈黙が続く。
これらのデータを収集する手腕、実力に疑う余地はない。現実的に考えても二人だけで本懐を成し遂げることは不可能であると理解している。
相手の本心は分からず信頼はできなくても、この一歩を踏み出さなければならない。
アキラは、隣にいるリンに目を向ける。
リンも非常に迷っている様子だったが、ややあって此方を向き、決意を宿した表情で頷く。
やがてアキラは、かすかに言葉を吐き出す。
「……仮契約ってやつで手を打てないかな。僕も、君たちが追及する真相には興味がある。」
「……分かった、今はそれでいい。よろしく頼む”パエトーン”」
差し出された鋼鉄の手をアキラは握り返した。
リーダーの内心
シャッオラッ!! 勝った! 第三部完ッ!