刀持った探索者くんは倫理観がどっか言った青春に転生した模様。 作:鋭角移動のりゅーたろー
意外と書いちゃう
「うーん……これが一体なんなのか、まったくわかりませんね。これでは壊そうにも……」
そんな少女が、目の前にいる。
「悪いけど、ちょっと離れてくれない?」
「それ、大事なものだからさ。」
「っ!?」
即座に振り向いた狐面の眉間に、抜刀体勢に入る
悪くない反射速度だ。銃の種類について詳しくはないんだけど、近距離、遠距離に対応してるから…どう対応すべきか……
俺がそのように思考を巡らせていると赤い目と仮面の隙間越しに目線が合い、暫く間が空く。
「…………」
「…………」
相手の先の先を取り合うような、静寂が続く。
「……あら?」
「……?」
ワカモが声を出す、明らかに間の抜けた声だ。
「あら、あららら……」
彼女の声が震える。
「し、し……失礼いたしましたー!!」
「は…はぁ!?!?!?」
ワカモは急に逃げ出し、俺は呆気に取られてしまう。
「何だったんだ……今のは……」
「お待たせしました」
入れ替わるようにリンが地下室へと入ってくる。
「……はぁ。」
「……? 何かありましたか?」
「なんでもない、それでここは一体なんなんだ?」
「……そうですか。ここには、連邦生徒会長が残したものが保管されています。……幸い、傷一つなく無事ですね」
そういって先ほど放り投げられたタブレットを取りに行く。
奇跡的に机の上に着地してくれたおかげで、ぶん投げられていたことには気が付いていないようだった。
多分だが………投げられ、机の上を雑巾がけした拍子についたであろう埃を手で払い、その物体を俺に差し出してきた。
……壊れてないよな?
「……受け取ってください」
「……タブレットか……こう言うのは蒼の役目なのにな……」
「はい。これが連邦生徒会長が先生に残したもの。『シッテムの箱』です」
初めて見て名称を聞いたはずなのにどこかで俺はその名前を聞いた気がしてならない。
夢か、前の世界か、はたまた【先生】からか…とにかく、俺の心は知らないという俺を否定している。
「普通のタブレット端末に見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みのすべてが不明」
「…………」
「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも……」
「……まあ、とにかく凄いもんだとは伝わった。」
「…………では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています」
俺に背を向け、リンは立ち去っていく。
「………『シッテムの箱』」
俺は知らないはずだ、それなのに
「……合言葉か……」
誰の言葉かは知らない。
何の言葉かも知らない。
ただ、これだと思い、独り言のように話す。
──我々は望む、七つの嘆きを。
──我々は覚えている、ジェリコの古則を。
『「シッテムの箱」へようこそ、海崎先生』
頭の中に声が響く
『生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムのA.R.O.N.Aに変換します』
そして、画面が真っ白になり、その眩しさで俺は目を閉じ、そして再び開けた際に映った光景に漠然とした。床は浸水し、まるで水面のように揺れており、崩落した天井や壁からは空を透き通る青に染める海が──眩しいまでの広がる青が、見える。
俺の目には………眩しいな。
『くううぅぅ……』
そして、今までこの都市で見てきたなかで一番幼いであろう子供が、寝息を立てて崩落した教室の机にうつ伏せで眠っていた。
今更だが、この都市は、女しかいないんだな…
女は大抵俺から何かを奪うのが特徴だった…が、あのリンといい、一緒にここまで来た彼女らを見るに、あの時のようなやつはいないのかもしれない。まだ疑い深いが。
あのリンの目に絆されたのかと考えていると、目の前の少女が寝言を言い始めた
『むにゃ……カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……』
ガキだな、起こすのに少し罪悪感を感じるが、……仕方ない。
肩を持って、軽く揺さぶって起こそうとする。
『えへっ……まだたくさんありますよぉ……』
「起きろ〜」
そういって今度は少し強めに揺さぶる。
『うへ……うへ……ひへ!?』
そうして、今度は意識を覚醒させたようだ。
ねぼすけじゃん…
『むにゃ……んもう……ありゃ? ありゃ、ありゃりゃ……!? え? あれ? あれれ?』
いや、まだ眠気が残っているようだな。
『じ、海崎先生!?』
そういって、水色髪のショートヘアの少女が俺に気が付いた。
こいつ意外とねぼすけか?
『この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか、本当に海崎先生……!?』
「……なんで俺の名前を?」
『う、うわああ!? もうこんな時間!?』
「落ち着け」
『うわ、わああぁ? 落ち着いて、落ち着いて……えっと……その……あっ、そうだ! まず自己紹介から!』
見た目通りの子供らしい溌剌とした声で、彼女は俺に向き直った。
『私はアロナ! この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから海崎先生をアシストする秘書です!』
メイン、OS。つまりAIってやつなのか。
機械関係はさっぱりだ…蒼に聞いておけばよかったな。
そして、察するに、ここはシッテムの箱。
……仮想空間か?
『やっと会うことができました! 私はここで次元先生をずっと、ずーっと待っていました!』
「さっきまでぐっすりしてたみたいだが、それくらい待ってたのか」
『あ、あうう……も、もちろんたまに居眠りしたこともあるけど……』
「別に責めねぇよ」
『はい! よろしくお願いします!』
『まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……これから先、頑張って色々な面で海崎先生のことをサポートしていきますね!』
これがコミックならふんす、とでも擬音が出そうなくらい全身で気合を入れる動作を行う。
………まあ、どうでもいいが。
『あ、そうだ! ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います!』
「生体認証…指紋とかか?」
『いえいえ、そういうのではありません!少しこちらに来てください』
『あ、もう少しです。うん、その辺りで。さあ、この私の指に、海崎先生の指を当ててください』
ぴっ、と突き出すように構えられたアロナの指目掛けて、俺も人差し指を当てる。
『うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?』
「指切りか、まあ約束って感じは否定しないがな」
『そうでしょう!実はですね、これで生体情報の指紋を確認することで、認証を確り行なっているんです!』
『どれどれ……うう……うーん……よく見えないかも…………まあ、これでいいですかね?』
前言撤回、やっぱりすごくはないのかもしれない。
『……はい! 確認終わりました!』
俺はそのまま事情を説明する。
何もわかんないならまずは知ってる情報から話せばいいとな。
『なるほど……海崎先生の事情は大体分かりました。連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……』
「アロナだっけ、連邦生徒会長についてなんか知ってるか?」
『私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女がどうしていなくなったのかも……。お役に立てず、すみません』
ますます疑問が浮かんでくる…
「いや、それでも少しわかった、色々と助かる」
『ですが、サンクトゥムタワーの問題は何とか解決できそうです』
さらりと、さも当然かのような口調で、いった。
「今できるのか?」
『勿論です!海崎先生が指示して頂ければいつでも!』
どうやら、ただのポンコツではないらしいな。
『先生?今何か失礼なこと考えてませんでした?』
「気のせいだ、それより、頼めるか?」
『はい! 分かりました。それではサンクトゥムタワーのアクセス権を修復します! 少々お待ちください……サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……』
それから、十数秒たったかそれよりも早く、淡々と目を瞑っていたアロナが目を開き、宣言する。
『海崎先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります』
よくわからないが、とにかくできたってことか。
『今のキヴォトスは、海崎先生の支配下にあるも同然です!』
こわっ…
『海崎先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。でも……大丈夫ですか? 連邦生徒会に制御権を渡しても……』
心配したような声で俺に聞いてくる。
俺は、そういうデカい権力ってのには興味がない、それで溺れて死んだ奴なんてどれだけいたほどか。
「……構わねぇ、承認。」
『分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!』
そういうと、視界がフェードアウトし、明かりの付いたシャーレの地下室へと戻っていた。
電話をかけ終えたリンが、こちらに歩いてくる。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」
「そうか、お疲れ様だな、リン」
「いえ、先生こそ、ありがとうございます。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」
「俺が言うのもなんだがあんまやりすぎるなよ。」
「それでは『シッテムの箱』は渡しましたし、私の役目は終わったようで……あ、もう一つありました」
「まだ何かあるのか?」
「ついてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介いたします」
そういってリンが先導しながら、地下室を出て、エレベーターに乗り込む。
「ここが、シャーレのメインロビーです。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」
感慨深い様子で、リンが言う。
ロビーの扉には『空室。近々始業予定』と書かれた紙が貼られていた。
リンの言葉の割には綺麗に掃除されていたその部屋は、大きな長机にモニターが並び、ホワイトボードにはキヴォトスの地図と見られるものが貼られている。壁に銃火器が並んでおり、どれも整備されているようだった。
「思ってたよりかは、綺麗にされてんだな」
「……ええ。業務の一環として管理していましたので」
「ここで、先生の仕事を始めると良いでしょう」
「仕事か、何をやればいいんだ?」
「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません」
目標がない……か。
「キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です。……面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特には触れていませんでした」
「連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません」
俺の返事がないことを確認しながら、リンが話し始める。
「今も連邦生徒会に寄せられる様々な苦情……。支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……」
「もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」
「……お前……」
1発だけ殴ってやりてぇよほんと…
「いい性格してるよ、ほんと。」
「それほどでもありません」
俺の皮肉を、受け流し肩をすくめて言う。
やっぱ、いい性格してるぜ。
「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください。すべては、先生の自由ですので」
気が向いたらじゃなくて必ず読めってことだろ?
そう言ってリンは身を翻して扉に向かい……最後にこちらを振り返った。
「それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡いたします」
リンの背中を見送ったのちに、俺は下にいるであろう生徒たちのもとへ向かった。
「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」
「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど……すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。あとは担当者に任せます」
「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
「……そういうのは柄じゃないんだけどな。」
「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください、先生」
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください」
「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?」
「ところで結局、先生ってここに来る前の世界では何をしていたんですか?」
「あ〜〜…………それはだな。」
ただの学生にしては剣の扱いが上手いし…、侍というには技術が足りない。
…たった一つ言えることなら…
「━━━━━━俺は少しだけ特殊な高校生だった何かさ。」
side??
「まずは序章を越えたか。」
「手ほどきはしてやった。後はお前がどの路線を迎えるか……」
「せいぜい失望させないよう踊ってくれ。」
次回予告
「アビドス高等学校から支援要請………?」
『なんでも暴力組織から襲われているとか…』
「ようこそ、アビドス高等学校へ。」
「ひぃん…酷いよホシノちゃん」
「………なんかきなくせぇな。」
第四の太刀
vol.1アビドス廃校対策委員会編
アビドスの借金…俺1人で行けるんじゃね?
次回からvol.1【アビドス廃校対策委員会】編始まります。
今回の後書きとしては海崎先生が持っている刀について。
真刀桜ノ六花
ある2人に作ってもらった刀、手に馴染むように作られていて、特殊加工が施されているのか半永久的に使える。
振刀銀ノ振連
科学の結晶と職人の技術を合わせた、伝統と科学が共存した刀、刀に特殊な振動を起こし喰らったものにM6.5クラスの地震と同じ振動を与える。
一応展開によってはさらに増えますが、今はこの2本だけ。
そして蒼と呼ばれる人物とは一体?
評価、感想お待ちしてます。