『大昔の乱世を生きる人々の「生としへの覚悟」は現代の人と比べて深かったのでしょうか?』 ↑文章が長いですが、この2行が質問です。 昔の人はものすごく大変でしたか。 漢詩・漢文に刻まれた、乱世を生きる人々の「心」。 戦乱や不安定な社会が日常であった時代では、「いつしぬか分からない」という「生としへの覚悟」が現代よりも遥かに切実でしたか。 昔の人々は、やまい、きが、せんらんといった、より根源的なきょういの中で日々を過ごしていました。 その中で、郷愁、家族愛、そして人生の無常を深く感じる「心」は、現代人よりも遥かに重く、そして深かったのかもですか。 1. 漢詩 『静夜思』(せいやし) 作者 李白(りはく)先生 現代語訳 寝台の前に差し込んでいる月光を見つめていると、 まるで地面を覆っている白い霜かと見間違えるほどだ。 頭を上げては、山の端に浮かぶ月を眺め、頭を垂れては、故郷のことを深く思い出す。 2. 漢詩 『春望』(しゅんぼう) 作者 杜甫(とほ)先生 現代語訳 都は破壊されたが、山や河の自然はそのまま残っている。 都の城内にも春が来たが、ただ草木だけが鬱蒼(うっそう)と生い茂っている。 時の乱れを思えば、美しい花を見ても涙をこぼし、 家族との別れを悲しめば、鳥の鳴き声にも胸がどきりとする。 戦ののろしは三ヶ月もの間、絶え間なく上がり続けている。 家族からの手紙は、万金にも値するほど貴重なものだ。 白くなった髪を掻くと、ますます短く薄くなり、 ついには冠を留める簪(かんざし)も挿せなくなりそうだ。 この詩は、生としの分かれ目にある不安定な社会で、家族の安否がどれほどの希望であり、重みを持っていたかを雄弁に語っています。 3. 漢詩 『登高』(とうこう) 作者 杜甫(とほ) 先生 現代語訳 風は激しく吹き、空は高く澄みわたり、猿の鳴き声は悲しげだ。 水辺は澄んで、砂は白く、鳥が飛び交っている。 限りなく広がる景色の中、木の葉がカサカサと音を立てて絶えず舞い落ち、尽きることのない長江の水は、ごうごうと波を立てて流れてくる。 遠い故郷を離れ、悲しい秋の旅人生活が続き、人生(百年の人生)の中で病気がちの身で、一人でこの高台に登る。 苦難に満ちた生活を送り、すっかり白髪(霜が降りたように白い鬢)になってしまったのが悔しい。 病と老いのため、ついに酒を飲むこともやめたばかりだ。 4. 漢詩 『涼州詞』(りょうしゅうし) 作者 王翰(おうかん)先生 現代語訳 美しい葡萄(ぶどう)の美酒が、夜光の杯(夜光石で作られた珍しい杯)に注がれている。 さあ飲もうとすると、馬上の琵琶の音が急き立てるように響いてくる。 もし酔いつぶれて戦場に倒れ伏しても、どうか笑わないでくれ。 古(いにしえ)より、戦いに行って生きて帰ってきた者が、一体どれだけいるというのか。 5. 漢文 『漁夫の利』(ぎょふのり) 出典 戦国策(せんごくさく) 現代語訳 趙(ちょう)の国が燕(えん)の国をまさに攻めようとしていた。 燕のために蘇代(そだい)が趙の恵王(けいおう)に説いて言うには、「今回私がこちらに来る途中、易水(えきすい)という川を通り過ぎました。 その時、蛤(はまぐり)がちょうど水から出て日光に当たろうとしていると、シギ(水鳥)がその肉をつつきました。 すると蛤は殻を閉じてシギのくちばしを挟みました。 シギが言いました。 『今日雨が降らず、明日も雨が降らなければ、やがて水が干上がって死んだ蛤になってしまうぞ。』と。 蛤もまたシギに言いました。 『今日くちばしを出さず、明日も出さなければ、お前こそ死んだシギになってしまうぞ。』と。 この二匹は互いに譲り合おうとせず、そこへ漁師がやって来て、両方とも捕まえてしまいました。」 教訓(故事成語) 漁夫の利(ぎょふのり) 両者が争っているうちに、第三者が労せず利益を横取りすること。 『漁夫の利』は、教訓(第三者が利益を横取りする)として知られていますが、本来は「国と国との争いの愚かさ」を君主(恵王)に説くための政治的な寓話です。 これらの漢詩は、単なる文学作品というだけでなく、戦乱の世を生き抜いた人々の「生の声」であり、彼らが抱えていた孤独、悲嘆、そしてそれでも失われない人間的な感情の重さを今に伝えています。