日本では仕事ができると好評だが…海外では“評価されない人”の特徴。「日本流の進め方」があだに!?
All About10/1(水)7:35
日本では上司や後輩だけでなく取引先からも「優秀」と評判だとしても、海外では評価されない人はいる。一体なぜなのだろう。日本企業から海外赴任をした30代会社員の実話をもとに、その理由を考察する。※画像:PIXTA
日本の職場で「仕事ができる」と高く評価された人材が、海外では思うように評価されず、現地で苦戦するケースが珍しくない。なぜ同じ人物が、働く環境が違うだけで評価や評判に大きな差が生じるのだろうか。本稿では、その背景と対策を考察する。
■頭の痛い問題
近年、日本企業が海外市場へ進出する流れは加速しているが、現地駐在員の数自体は減少傾向にあるという。海外駐在員を置くためのコストの高さが一因であるが、ほかにも、例えばシンガポールのように労働ビザが取得しにくくなった国もあったり、ローカル化が進んだため現地で採用する社員だけで経営していたりするケースもある。
加えて、頭の痛い事例もある。それは、日本から派遣した海外駐在員のパフォーマンスが期待に及ばないという問題だ。特に高い給料やよいポストで赴任させたものの、経験やスキル不足であるばかりか、現地事情もよく理解せず、英語も苦手で周りにうまくなじめない日本からの海外駐在員を受け入れることは、現地で働くローカル社員たちにとって負担が大きい。場合によっては、任期の途中で海外駐在員を帰国させたり、退職に至ることもある。
■日本では「一人前」と称されていた先輩社員
大手メーカーに勤める河野さん(35歳男性)は、今年が海外駐在2年目になる。独身のため、一人で海外赴任をした。学生時代に海外留学をしたり長期で海外滞在をしたりした経験はなかったものの、20代から海外志向が強かった。仕事の合間を縫って英語の勉強をコツコツ進めて、休日には英会話教室にも通った。社会人3年目頃から将来海外駐在することを希望し、毎年上司との面談では、英語も堪能であることをアピールしてきた。
河野さんは日本にいた時のことを振り返り、何年にもわたり上司に言われ続けたことを語ってくれた。
「海外の駐在先では、本社にいる時のように周りにたくさん先輩社員がいるわけではないから、まずは早く国内の仕事で一人前となり、自分の仕事に自信を持てるようにならなければ、海外駐在は実現しないよ」
それ以降、河野さんは「仕事で一人前」とは何かをずっと考えながら、一生懸命に働いた。ただ、海外駐在のチャンスをつかめないまま入社10年以上が経過した。そんなある時、1つ年上の先輩が海外赴任の任期途中で急きょ帰国したことで、展開は大きく動くことに。先輩社員の代わりに河野さんが海外駐在することが決まったのだ。予想外の出来事に河野さんはとても驚いたという。
その先輩は河野さんとも親しく、海外赴任前の日本にいた頃は長時間労働を辞さず、いつも残業してたくさんの仕事をこなし、社内外ともに働き者としても知られていたそう。仕事に対して責任感の強い人だったため、上司からの評判もよかった。
そうした先輩の海外駐在が決まった時、「仕事で一人前」とは彼のような人のことを意味するのかと、河野さんは実感した。確かに彼と比較すれば、自分はまだ半人前なのかもしれない、彼ほど仕事にコミットはできていないと思ったからだ。
■日本流の進め方があだとなった
ところが、その先輩が海外に赴任してから半年後に急きょ帰国したのだ。しかも帰国したはずなのに会社を休んでいた。風のたよりでは、近いうちに退職する予定だという。
偶然にも念願だった海外赴任が決まったことはうれしかったが、河野さんは先輩の様子が気になっていた。しかし、引き継ぎや手続きなど準備に追われて余裕はなく、結局先輩に会うこともできずに、河野さんの海外赴任の日が来た。
現地に赴任する前には誰からも詳しい事情は聞けなかったが、到着後にローカル社員から少しずつ先輩の事情が聞くことができた。先輩は赴任後も、日本にいた時以上に勤勉に働いていたとのことだった。残業をする社員はほとんどいなかったが、先輩は毎日夜遅くまで残って仕事をしていたという。あまり英語が得意でなかったこともあり、一人で仕事を抱えこむことも多かった。そして、ある事件が起きたという。
ある日の夕方、工場で不具合が見つかり、その対応にローカルスタッフは奔走していた。当日中に対応できないことが分かったため、ローカルスタッフは上司にあたるその先輩社員に電話をした。ただ先輩は外出中だったためつながらず、代わりに留守電にメッセージを残して、翌日朝からの対応策を説明して終業時間になったところで帰宅した。
一方先輩は、外出先での仕事を終えた後、スタッフからの留守電メッセージに気付き、工場に急いで向かった。終業時間を2時間過ぎたあたりで工場に到着。そこで目にしたのは、発生したトラブルがそのままにされていることと、そして、その対策が当日中に取られていないことだった。そのまま先輩は深夜まで残業し、対応策を模索したが、実際は何も対策は取れなかったという。
翌朝、先輩はローカルスタッフを前に怒りをぶちまけた。なぜ対策を取らなかったのか、なぜ残業してベストを尽くそうとしなかったのか、すぐ諦めて帰宅したのは無責任ではないかなど、実際深夜まで残って対策を模索した自分の行動を例に挙げて、ローカルスタッフの無責任さを糾弾した。
しかし、この言動がローカルスタッフとの間に蓄積していた日々のわだかまりに火をつけることになってしまった。その場にいたすべてのローカルスタッフから「あなたとはいっしょに働けない」と言われたという。毎日一人だけ長時間労働を繰り返して、人の何倍も仕事をこなしている先輩の姿勢は、実は周りのローカルスタッフからは評判が悪かったのだ。
日本では、責任感の強さが上司から評価されていたし、多くの仕事をこなすことで会社へ貢献できているという自負もあった。ただしそれが海外の職場では異様な光景に映り、過剰な労働を奨励するかのような雰囲気をつくったり、人の仕事を奪っていると評価されたりしたのだ。
■その場に適した進め方を見極めていく
就労意識や職場環境は国によって大きく異なる。その中でも日本人の働き方は、かなり特殊であるとみなされることは多いようだ。日本から海外に赴任する際、日本での働き方や価値観をそのまま海外に持ち込んだことで、失敗する人は少なくないだろう。
日本の常識は世界の非常識と言われて久しいが、具体的にどのような日本の常識が世界の非常識に相当するのか、個別に確認しながら、その場に適した仕事の進め方を見極めていく必要がある。一方で、海外で経験したさまざまな働き方は、今後日本に輸入して新しい時代の働き方に改革するアイデアとして生かせる事例もあるかもしれない。
大切なのは、その場の状況や環境をよく観察し、そのうえで適した仕事の進め方を見極めていくことではないだろうか。
小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド)