朗読の世界

★宮本輝「錦繡」（全４０回）　朗読：石田ゆり子、松尾スズキ 往復書簡の形を取ったこの小説は、山形県蔵王温泉でゴンドラリフトに偶然乗り合わせた元夫婦、妻の勝沼亜紀と、元夫有馬靖明が再会するところから始まる。何不自由なく裕福に暮らしていた夫婦に、夫の幼なじみとの無理心中事件が勃発、女は死亡したものの男は瀕死の重傷ながら一命を取り留め、夫婦の人生の歯車は大きく狂い出す。結果夫婦は離婚。その後、妻亜紀は勝沼壮一郎と再婚、上京して父親の世話をした後、芦屋の自宅に戻る際、東京駅で行き先を変え、夜空の星を身体の不自由な息子に見せようと山形県蔵王温泉を訪れ、ダリア園からドッコ沼へ上るゴンドラリフトの中で、偶然分かれた元夫有馬靖明と乗り合わせ、再会する。その場はそのまま分かれたが、帰阪した亜紀は靖明に手紙をしたため、手紙のやりとりが始まる。離婚後、流転の人生を送っていた元夫、靖明は、追い立ててくる取り立て屋から逃れるため山形への特急列車に飛び乗り蔵王に向かったのだった。運命的な事件故、愛し合いながらも離婚していた二人は、１０年の歳月を隔てて再会したのだった。それぞれの、孤独を生きてきた男と女の切ない過去が綴られ織り上げられてゆく、愛と再生の物語。冬1月から晩秋の11月まで10ヶ月、長短計14通の往復書簡のやりとりで、二人の出逢いから今に至るまで、元夫婦・男と女の波乱の人生の顛末が語られ明らかになってゆく。 テキスト：宮本輝「錦繡」（新潮文庫　2023年版使用） ★朗読：石田ゆり子（いしだゆりこ） 1988年ＮＨＫドラマスペシャル『海の群星』でデビュー。以降、ドラマ・映画・舞台・執筆活動など、多岐にわたり活躍。近年の主な出演作品はＴＢＳ日曜劇場『さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～』（2024）・ＮＨＫ連続テレビ小説『虎に翼』（2024）・映画『劇場版ＴＯＫＹＯ ＭＥＲ～走る緊急救命室～南海ミッション』(2025)など。 ★朗読：松尾スズキ（まつおすずき） 1962年12月15日生まれ。1988年に大人計画を旗揚げ。多数の作品で作・演出・出演を務める。1997年岸田國士戯曲賞、2008年日本アカデミー賞最優秀脚本賞、2020年読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞。2020年よりBunkamuraシアターコクーン芸術監督、2023年より京都芸術大学舞台芸術研究センター教授に就任。 ★宮本輝（みやもとてる） 1947年兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒。広告代理店勤務を経て、1977年「泥の河」で太宰治賞受賞。翌年、「螢川」で芥川賞を受賞。２年の結核療養を経て、回復後、旺盛な執筆活動を展開。「道頓堀川」「錦繡」「青が散る」「流転の海」「優駿」（吉川英治文学賞）、「約束の冬」（芸術選奨文部科学大臣賞）「にぎやかな天地」「骸骨ビルの庭」（司馬遼太郎賞）、「水のかたち」「田園発　港行き自転車」等多数。2010年紫綬褒賞受賞。2018年、３７年の時を経て「流転の海」シリーズ全９部を完結させた。