高市早苗氏、初の女性総裁が語る「ワークライフバランスを捨てる」:社会的意味を心理学から考える #エキスパートトピ

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真:代表撮影/ロイター/アフロ

自民党の総裁選で、高市早苗氏新総裁に選ばれました。初の女性総裁(総理)として、歴史的な出来事です。ところが、就任の場で語った「ワークライフバランスという言葉を捨てる」、「働いて、働いて、働いて、働いて、働いて参ります」という強い表現が、大きな議論を呼んでいます。

もちろん、ワークライフバランスを否定する意味ではないでしょうが、ワークライフバランスが大切な価値観として定着してき現代社会の中で、批判の声、不安の声も上がっています。

この発言には、どのような心理や社会的背景があるのか、社会心理学の視点から考えます。

ココがポイント

ワークライフバランス捨てます 高市氏、自民議員に宣言
出典:共同通信 2025/10/4(土)

高市氏の「WLB捨てる」発言 過労死遺族は驚き「影響力考えて」
出典:朝日新聞 2025/10/4(土)

石破首相は(中略)「己を捨てて、全身全霊、国家国民のために、次の時代のためにという決意の表れだと思っている」と述べました
出典:日テレNEWS NNN 2025/10/4(土)

高市早苗氏が初の女性総裁に─「ワークライフバランスを捨てる」発言に込められた心理と社会的意味:詳細版
出典:碓井真史 2025/10/5(日)

エキスパートの補足・見解

「ワークライフバランスを捨てる」。

今回の発言は、新しい強いリーダー像を示すメッセージでしょう。

社会心理学の研究によれば、リーダーが示す「強さ」と「献身」のメッセージは、とても効果的です。特に政治家が示す「すべてを懸けて国家に尽くす」という態度は、高く評価されることも多いでしょう。小泉進次郎氏が環境大臣の時に育休をとった際には、批判もありました。

近年は、ワークライフバランスの「行き過ぎ」の声も聞こえます。就職した会社が「ホワイトすぎる」と言って、早期退職する若者もいるほどです。心身の健康を守るためにはワークライフバランスを取ることは大切ですが、勝負どきはあるものです。

高市氏は日本初の女性総裁(総理)という歴史的存在です。その言葉や行動は、多くの人々に大きな影響を与えるでしょう。「ワークライフバランスを捨てる」というメッセージは、人々にとって励ましにも、あるいはプレッシャーにもなり得ます。社会全体がどのようにこのメッセージを受け止めるかが、今後の課題です。より良い議論が生まれていくことを期待しています。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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