■5月21日 「貧乏人は麦を食え」との〝伝説の暴言〟を久々に思い出した。1950年の参院予算委員会で高騰する米価について池田勇人大蔵大臣が質問に答えた。「所得に応じ少ない人は麦を、多い人は米を食うような経済の原則に沿った方向に…」。これを一部新聞が切り取り冒頭の過激な見出しをつけ、あたかも本人の発言のように広まった。
そこへ行くと、同じ米問題でも「(私は)米を買ったことがない。支援者がくださり家に売るほどある」という江藤拓農水相の発言は、見出しでも切り取りでもない。佐賀市の講演会での生の発言だ。米の高騰に悲鳴を上げる庶民の感情を逆なで、というより庶民を愚弄するような信じられない暴言だ。
「売るほどあるは言い過ぎた。私自身スーパーで定期的に米を買っている」「家内に怒られた」などと釈明。「うけを狙った」とも言ったが、お笑い芸人でもない。講演を笑いで盛り上げるつもりなら心得違いだ。日ごろから失言が多いらしい。綸言汗の如しで一度口にした言葉は撤回したところで消えない 。
さすがに石破首相は「国民と生産者に対し大変不適切」と厳重注意した。昨年の自民党総裁選で江藤氏は2回の投票で1回も石破氏に入れなかった。それでも閣僚に迎え入れ「私が大臣になるとロクなことは起きない」と江藤氏がいう通りになった。〝獅子身中の虫〟とでもいうのか。
首相が「任命権者として責任を感じている」なら、さっさと辞めさせるべきで続投とは歯がゆい。池田勇人は発言翌日に潔く大臣を辞職し、後に首相となり「所得倍増計画」で日本を高度成長に導き名宰相とうたわれた。当時の政治家の毅然としたケジメの付け方は見習ってもらいたいものだ。(今村忠)