案内された法務局の一室で、担当の局員から5分間ほど、日本国籍帰化の関連事項を淡々と説明されて、いくつかの書類に署名しました。それで手続きは全て終わり、私はその瞬間から日本国民の一員になりました。
しかしこの時にも、日本への愛着心を問われることもなければ、日本国への忠誠を誓うような儀式もありませんでした。案内された部屋には日本の国旗すら飾られていませんでした。このような場所での、たった5分の事務的な説明と手続きで、私は日本国民の一員となったのです。
国籍を変えること、すなわち帰属する民族共同体を変えることの重大さを考えると、このような「5分間手続」はあまりにも軽くて、あまりにも拍子抜けするものでした。
これにどうしても納得できなかった私は、翌年の平成20(2008)年のお正月に、正装して伊勢神宮に参拝し、自分が日本国民の一人となったことを天照大神にご報告を申し上げました。
神宮の内宮へ向かう参道を一歩一歩歩いて行く時、そして天照大神に向かって深く頭を下げた時、私は初めて、自分が日本国民の一員となったことを実感できました。