アイズ・クラネルになるのは間違っているだろうか


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作:Roots〆ルーツ
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幕間『一緒に寝よ?』


むしろこちらが本編まである、濃密なベルアイをお届けします。


 

「あの、アイズさん……」

「……?どうしたの、ベル?」 

「その、恥ずかしいっていうか、なんというかっ」

「おいで……」

 

 ふるふる、とかぶりを振る僕。

 むっ。と頬を膨らませるアイズさん。

 

「はやく、きて?」

「でもっ」

「一緒に、寝よ?」

「っ!そ、その体勢はさすがに……」

 

 問題はそこにある。

 ここは天幕の中で、誰にも見られる心配はないとはいえ。

 アイズさんのご所望は、寝っ転がった自分に覆い被さってハグをしてほしいというなんとも悩ましいものだった。

 18階層は今、『夜』で、いくら暗闇だからといっても……いや、暗闇だからこそまずい。

 仰向けの姿勢で僕に向かって腕を広げているアイズさん。普段は真っ直ぐ伸びている金髪も左右にだらりと広がっている。

 ひかえめに言ってとてつもなく可愛い。

 可愛さが限界突破している一方で、細かい息遣いに合わせて強調される胸の膨らみが、妙に艶かしい。

 あんなところに上から飛び込んだら、まず間違いなく理性が飛ぶ。

 しかも覆い被さるって、いろんなところが重なり合うわけで……って何考えてるんだ僕!

 

 ぽんぽん。

 

「え?」

「こっち、きて」

 

 隣に寝転がって、ということのようで、どうやら許してくれるらしい。

 安堵した僕が言われた通りにすると、

 

「へっ⁉︎」

 

 がばっ!とアイズさんがいきなり抱きしめてきた。

 顔面には、むにっ。とした感触。あったかい。前が見えない。えっと、もしかしなくても。

 

「ふぁ、ふぁいずさん!?」

「ん、くすぐったい」

 

 これって、おじいちゃんが言ってた『ぱふぱふ』⁉︎しかも寝ながら⁉︎破壊力が高すぎる‼︎

 

「〜〜〜っ⁉︎」

「動かないで、ベル」

 

 仰天して暴れ出す僕の頭をアイズさんは押さえつけて、優しく撫で始めた。

 

「なでなで」

「あ、アイズさ……」

「なでなで」

「えっと……」

「なでなで」

「なんで、ずっと撫でて……」

 

 と、ようやく頭を抑える力が弱まって、アイズさんの顔を見ると、そこには見事に真っ赤になったご尊顔が。

 

「だって、付き合ってから今まであんまり恋人らしいことできないな、って……」

 

 たしかに、僕とアイズさんはお互い積極的な方ではないし、今の所せいぜい手を繋ぐ止まりで。

 あまりに消極的なものだから、僕はてっきりアイズさんがこういうスキンシップを今はまだ望んでいないのかと思っていたのだけれど。

 どうやら、違ったらしい。それにしても……

 

「これ、恋人というより小動物扱いのような……」

「えっ?」

 

 具体的に言うと、僕、兎扱いされてない?

 

「じゃ、じゃあ、恋人らしいことって、何?」

「えっと……」

 

 い、言えない。僕がお祖父ちゃんから賜った英才教育(せんのう)の数々なんて!

 恋人らしいこと……無難なのはやっぱり、

 

「キス……とか?」

「っ!」

 

 からかい半分の僕の言葉に、アイズさんは二割増しで真っ赤っ赤になる。

 ああもう、可愛い……。

 

「じゃあ、するね……」

「えっ」

 

 

 ちゅ。

 

 

 抵抗する間ももく、アイズさんは僕の前髪をかき分けて額にキスをした。

 なんだこれ、柔らかい。

 口付けされたところから脳へ、針のように快楽が刺して、なにか熱い衝動が渦巻き出す。

 

 それに突き動かされて、僕も同じようにアイズさんの額に口付けをした。

 

「ん、ありがとう……」

 

 少しくすぐったそうに笑ってから、ぎゅう。と、アイズさんは僕の首に手を回して、再び抱きしめてくる。

 ちょっと苦しいくらいだ。でもそれが、すごく幸せに感じられた。

 アイズさんの顔が、近い。

 自然と、僕の視線は一際艶やかで瑞々しい彼女の唇を捉えてしまう。

 この場面で期待してしまうのは、きっと当然のことで。

 アイズさんは僕の視線に気づいたのか、口元を緩ませて、言った。

 

「いい、よ……?」

 

 アイズさんが、両目を瞑る。

 僕は、アイズさんの肩に手を置いて、ゆっくりと唇と唇の距離を──

 

「あ」

 

「あ?」 

 

「ぐへっ⁉︎」

 

「ベルっ⁉︎わ、私っ……ごめん、大丈夫……⁉︎」

 

 首が!アイズさんが腕を回していた僕の首が!

 寸前できゅっ。と締まって……?だめだ、もう意識が……

 

「ど、どうしよう、緊張して、腕に力が入っちゃった……」

 

 大丈夫です、と言いたかったけど、僕の意識はそこで途絶えた。

 ファーストキスは、まだお預けらしい。

 

 

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