アイズ・クラネルになるのは間違っているだろうか


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作:Roots〆ルーツ
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ギルティ!!




青春祭のルビを変更しました。
より原作を尊重したいという意向ゆえなので、悪しからず。




 

「…………」

 

 レフィーヤは、怒っていた。

 わりと、いや、かなり怒っていた。

 とにかく、すごく怒っていた。

 

 視界に映るのは、仲睦まじく「うふふ」「あはは」といちゃこら(レフィーヤ談)しながらバベルを出てくるカップル。

 

 一人は彼女にとって憧憬の存在。

 

 そしてもう一人は──にっくき、泥棒兎である。

  

「ベル……クラネル?」

 

 自分でも、びっくりするほど低い声が出た。

   

    

 

    *

 

 

 

「「ひっ」」

 

「ベル・クラネルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「れっ、レフィーヤさんっ⁉︎怖いです怖いですから⁉︎」

 

 具体的に言うとなんか瞳が黒い!

 さらに言うと禍々しい暗黒に紛れて、猛獣みたいに妖しい光が僕を貫いてくる!

 極東の言葉の『蛇に睨まれた蛙』なんて生易しいものじゃなくって、文字通り『豹に睨まれた兎』‼︎

 

 隣にいるアイズさんなんか、ぷるぷると体を震わせて僕の腕にしがみ付いてきている。

 可愛い……ってそんな場合じゃない!

 落ち着け、僕。

 レフィーヤさんは勘違いをしてるだけで、ちゃんと話せば分かってくれ……る、か?

 

「あの、れ、レフィーヤさん……」 

「レ、フィーヤ……?えっと、これは……」

 

 僕達は、おそるおそる(オウガ)のような面持ちで仁王立ちしているその人の顔を窺う。

 

「……ティ」

 

「「えっ?」」

 

「二人きりでダンジョン……朝帰り……あ・さ・が・え・り」

 

「「…………」」

 

一線越え(ギルティ)‼︎あまりにもギルティ‼︎

 馬鹿っ、変態!女の敵っ‼︎ このッ……万年発情兎ぃ〜〜〜〜〜!!!!!!」

 

 拝啓、お祖父(じい)ちゃん。

 

「今日こそは……今日こそはッ!

 兎シチューにしてやるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」

 

「ぎぃぇゃゃゃぁぁぁああああああああああああああ⁉︎」

 

 僕は(あと数秒間は)元気です。

 だから、笑ってないで助けてください。 敬具

    

    

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

「ベル、大丈夫……?」

「はい、何とか……」

 

 なぜだろう、第一級冒険者の体力なら全く堪えない距離の逃走劇だったはずなのに、僕は盛大に息を切らしてしまった。

 

「フィルヴィスさんが止めてくれて……良かった、ね?」

「はい、でも次レフィーヤさんに会った時に何されるか……」

「だ、だいじょうぶ。レフィーヤは優しい、から、許してくれる……はず」

「自信なさげに言わないでください……!」

 

 悲しいことに、あの人が僕に優しくしてくれたことなんて数えるくらいしかない。

 きっと今頃、兎を呪う儀式とか調べてるに決まってる!

 そうじゃなくても絶対出会い頭に即刻速射(アルクス・レイ)される!

 こうなったら、ほとぼりが冷めるまでどこかに身を隠すしか……

 

「ベ〜ル〜くぅんーー?」

「ベ〜ル〜さまぁーー?」

 

 ……あ。

 

    

    

    *

 

 

 

 【ロキ・ファミリア】ホーム、『黄昏の館』。

 その庭で、ベルは正座させられていた。だらだらと汗を流していることは言うまでもない。

 隣には、アイズもいる。普段は変化に乏しいその顔が青ざめていることは言うまでも(以下略)。

 

 正面には、ヘスティア、リリ、そしてリヴェリア。

 リヴェリアはともかく、他二人は今すぐにでも審判を下す気満々であることは、腰丈で固く握られた両の拳が証明してしまっている。

 

「「説明してもらおうか(くれますよね)、ベル()?」」

 

「えっと、その、18階層の連絡路が崩れちゃって……」

 

「そんなことは知っています!リリ達が聞いているのは、なぜ【剣姫】様と一緒にダンジョンにいたのかです!ですよね、ヘスティア様?」

 

「その通りだサポーター君!いやぁ、いつになっても帰ってこないベル君を【ファミリア】総出で死ぬ気で探し回ってね。それでも見つからないものだから最後の最後にまことに不本意ながらロキのところを訪ねてみたら【九魔姫(ナイン・ヘル)】君がヴァレン何某も帰ってないって言うじゃないか。ボクは本当にびっくりしてしまったよ。さて、ベル君?まぁ〜さかとは思うけれどボク達に内緒で、ヴァレン何某君と『青春祭(アオハルフェスタ)』とかいうけしからん祭典に参加していたなんてことは……」

 

「…………」

 

「「したんだね(ですね)?」」

 

──ベルにはもう、大人しく頷くことしかできなかった。

 

 一方、アイズもアイズで、隣で交わされている問答に怯えながら、無言で腕を組むリヴェリアを前に俯くことしかできずにいた。

 

「……アイズ」

 

「な、なに……?」

 

「ダンジョンに行くときは一言伝えろと、いつも言っているだろう」

 

「ご、ごめん、リヴェリア……でも、」

 

「恥ずかしかった、か?」

 

「うん……」

 

「想い人と逢瀬をすることは、別に恥ずかしいことではない。それに、ベル・クラネルの人柄は私も知るところだ。清い交際ならば口を挟まないと、以前伝えたはずだが。それとも、何か後ろめたいことでもあるのか?」

 

「ない、けど……」

 

「なら、ちゃんと伝えてくれ。……どれだけ強くなっても、私はお前を心配してしまう」

 

「リヴェリア……うん、分かった」

 

 と、お互いに微笑みあって、穏便に説教を終わらせたところで、

 

「なんやリヴェリア、今日も今日とてママしとるなぁ」

 

 主神であるロキが、フラフラと酒瓶片手に現れた。

 

「誰がママだっ」

 

「ロキ……」

 

「おおアイズたん!朝帰りしたんやって?レフィーヤがブチギレてたでー」

 

 主神の言葉で先程の修羅と化した後輩の妖精を思い出し、びくっ、と震えるアイズ。

 それを横目に、リヴェリアは訝しげに問うた。

 

「意外だな、ロキ。お前のことだから子供のように泣き喚いて大暴れした挙句、三日三晩飲み明かすのかと思っていたぞ」

 

主神(うち)のことなんやと思ってんねん。そもそも、そこで地面に埋まってる少年にそんな度胸ないっちゅうに。

 あ、ドチビ〜!庭の整備代、五○○○○○ヴァリスな〜」

 

「まあ、冒険者としてのベル・クラネルはともかく、それもそうだな」

 

「リヴェリア、どういう意味……?」

 

「……お前はまだ知らなくていい」

 

「……?」

 

「そういえばアイズ。聞いた話によると、今日が本祭のようだが?」

 

「あっ」

 

「その様子だと忘れていたな。本祭──()()は午後から始まるらしい。それまでここでゆっくりしていけ」

 

「うん、ありがとうリヴェリア……」

 

 兎の悲鳴が響き渡る中、青春祭の開幕は刻一刻と近づいていた。 

 

 

 

 

 

おまけ『アオハル☆』

 

「イズン様!明らかにカップルじゃない二人組が受付に!」

「ひょんなことから始まる恋!うーんステキね!アオハル☆」

 

「イズン様‼︎何故か【暴喰】と【静寂】が受付に⁉︎」

「絶対強者同士の秘密の関係だなんて……アオハル☆」

 

「イズン様!男装した【疾風】が【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】の夫だと言い張ってます!」

「百合の花……それもまたアオハルね☆」

 

「イズン様!」

「アオハル☆」

「イズン様!」

「アオハル〜☆」

「イズ……」「アオハル☆」「…………」

 

 こうして、青春祭(アオハルフェスタ)の参加者は際限なく増えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

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