ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせ致しました。
完結までは多分あと3話かな……。

小説パートです。



因幡の■■兎

 

ウトナピシュティムの本船内は慌ただしかった。

理由は単純で、オペレーター陣が匙を投げるような特大の異常事態が勃発。

本業のヴェリタスの手を以てしても手こずる事態に陥ったからだ。

 

騒動の元凶である別世界線の小鳥遊ホシノを倒し、解決したと安堵したその直後の出来事であった。

ウトナピシュティムの本船、並びにATRAHASISの箱舟の自爆シーケンスが誤作動。

 

これにより自爆シーケンスを解除しなければ全員空の藻屑となる運命に。

リオの作成した避難用シーケンスがあるが、ミケ達が色彩と交戦中の為、見捨てる訳にはいかない。

現在は何とか船同士の連結を解除して、無事に帰還できる用意をしているところだが、状況は芳しくなかった。

 

 

「先生たちはまだ着かないの!?」

「湧いて出た無名の守護者達や、聖徒会の複製に手間取ってるみたい」

「先生達の到着があと10分だとすれば……、自爆制限時間には間に合わない!?」

 

 

ダメ押しと言わんばかりに、事態は更に深刻へ。

本船周りにはいつから居たのか、敵性反応で溢れかえっていた。

美食だけでなく、オペレーター陣も戦闘参加して何とか持ち堪えている状態。

何とか冷静に立ち回っているのはリンを筆頭とした司令部のお陰か。

 

そんな女たちに運は味方した……いや、必然だったのだろう。

突如、船内に大きな笑い声が響いた。

 

 

「に〜っはっはっは!お困りのようですね!!」

「この鼻につく笑い声は……!!」

 

 

いち早く気づいたのはミレニアム組。

この特徴的な笑い方は間違いない。

救世主になり得る生徒の到着に、全員の表情が明るくなる。

1番その人物の近くにいたユウカは大声で彼女に声を掛けた。

 

 

「コユキ〜!いつまで待たせるのよ!!」

「無茶言わないで下さいよ!ここに来るまでどれだけ敵が居たと思ってるんですか!?」

 

 

笑顔のユウカからキャメルクラッチを喰らうコユキ。

締まらない。

外見年齢は中等部3年から高等部1年と言ったところ。

加えて場にそぐわぬ空気感に、コユキの事を知らない他のオペレーター陣が毒づく。

 

 

「……助っ人って聞いてるけど、この子が?」

「本当に大丈夫なんですか!?」

「むっ、聞き捨てならないですね!そこまで言うならちゃちゃっと治しちゃいますよ!!」

「じゃあ早速こっちに来て貰える?悪いけどあんまり時間に余裕がないからさ」

 

 

コユキはヴェリタス一同が集まっている場所へ連れられる。

彼女達はまだチャレンジしている様子だったが、どうやら苦戦しているようだった。

うんうん唸ってるヴェリタスの横にコユキがお邪魔する。

 

 

「システムにアクセスするコンソールはこれだよ。使い方だけど──」

「にはっ、()()()()()()()()()のでお構いなく〜。では失礼しますね〜!」

「(私達でも仕組みを理解するのに少し時間が掛かったのに、この子……)」

 

 

説明もなしにコンソールを弄るコユキに驚愕するチヒロ。

生来の才能に加えて、何処かの誰か(喰代ミケ)が徹底的に強化したせいで、更に磨きが掛かってる事は言うまでもない。

因みにコユキに自覚はなく、ナニカサレタヨウダ状態である。

 

基本面倒臭がりなコユキを飽きさせないように工夫した結果、彼女の電脳に関するスキルツリーはカンストしていた。

結果、冷静沈着な彼女であっても軽くエンジニアとして嫉妬の感情が芽生える程度には腕が上達する事に。

 

 

「うーん、ここがこうなってるから……」

 

 

先程の陽気な雰囲気とは打って変わって静かになったコユキ。

初めて見るはずのキーボード操作もなんのその。

残像が見える程のタイピングで何かを凄まじい早さで入力していく。

 

見惚れる様な指の動きだ。

やがて指の動きは止まった。

 

 

「いやー、システムエンジンを破壊してくれて有難い限りです。何もして無かったらもっと時間が掛かってましたよ!」

「うそっ、もう出来たの!?」

「後はEnterすれば……にはっ、自爆シーケンス解除です!!」

「じ、自爆シーケンスの停止を確認しました……」

 

 

僅か1分半。

あれだけヴェリタスが苦戦したハッキングが完了した時間である。

 

 

「副部長、天才って居るんだね……」

「あれはコユキがおかしいだけだよ。もはや()()の域だね」

 

 


 

 

場所は変わり第4エリア。

辺りの壁は全て崩落し、床にも所々穴が空いている。

そんな状況下でも、彼らは色彩相手に物怖じせず攻めきって居た。

 

 

「デカいのが来るぞ!全員クリフォトの後ろに集まれ!!」

 

「くっくっくっ!以前は辛酸を舐めさせられたからねぇ、この時の為に改良した薬を喰らえ!!」

 

「主殿、火遁のご準備を!!」

 

 

前の箱庭での死因だ。

普通もっと慎重になると思ったが……、全員エキサイトしていた。

勿論、ミケも同じく前線で色彩をボコボコにしている。

そう、圧倒的にミケ達が優位に立ち回っているのだ。

 

()()()()

ミケの神秘量は、特攻時の神秘量より遥かに少ない。

大人のカードにより呼び出された彼女達が居るとしても、それで色彩が押される理由としては弱い。

 

 

「後ろががら空きだ、『Geburah』!!」

「よしっ──鉄山靠(ティエシャンカオ)ォッ!!」

 

 

違和感の正体は噛み合わない事。

色彩からは即死級の攻撃が初見殺し並の速度で飛んでくる。

ソレを回避出来ているのは、一重に前世の経験によるものがデカいだろう。

だから色彩の嫌がる動きを徹底したのだ。

 

色彩が高火力攻撃を望めば、クリフォトを盾に籠城。

チマチマと削ろうとすれば、一気に攻勢に。

更に炎上、氷結、薬毒という搦手フルコース。

着実に削る動きで、色彩を押さえ込むことに成功していた。

 

 

「クリフォトが壊れた!修復まで時間稼ぎ頼む!!」

「おっかないよねぇ、アレだけ硬いクリフォトでも貯めた一撃でこのザマなんだから」

 

 

しかし、色彩は腐っても崇高に辿り着いたモノ。

神秘も暁のホルスを元にした《消滅》だ。

1発でもまともに当たれば全員漏れなく確実に死ぬ。

誰か一人でも欠ければミケの負け、それも()()()()の話だが───

 

 

「思ったよりは削れるな。全員、無理はするなよ」

「色彩は《消滅》の権能でコチラの攻撃の効きがイマイチの様ですが?」

「元より色彩自体がどデカいエネルギーの塊だ。あれを消滅させる前にコッチが時間切れになる」

 

 

例えで言うなら海をバケツで干上がらせる様な無謀。

チラリと崩れ掛けの大人のカードを見る。

半分が塵となって消えている、どう考えたって色彩を完全に消滅させるのに間に合わない。

ならばこのまま時間切れでミケ達はやられてしまうのか?

 

否──勝算はある。

色彩に知能があれば、そろそろミケ達に有効打が無いと思い込んでる頃だろう。

そこで、兼ねてより温めて置いた()()()()()()を使う。

 

 

「頃合だな」

 

 

ミスは出来ない。

これまで打ってきた布石を無駄にしない為に、ミケは残り1%の神格に接続しようとした。

 

その時であった。

色彩の体が漆黒の球体に飲み込まれたのは。

 

 

「これは───ッ!?」

 

 


 

 

場面は再び箱舟内部。

先生達はまだ戻って来れていない。

オペレーター陣は現在色彩と交戦中の筈であるミケと交信していた。

 

 

「色彩の反応は消えていません、アレは変わらずそこに居ます!」

『だが黒い幕の様なモノに包まれて、コチラの攻撃が届かなくなった』

「それは──次元の共存?ですがまだ多次元抑制時間は残ってます!」

『恐らく範囲を絞ってギリギリ制御できる分を確保したんだろう』

 

 

自爆シーケンスが停止したと同時に、船内のメイン制御OSとして存在するA.R.O.N.Aは作戦を変更している。

多次元解釈の制御権剥奪。

彼女は全力をもって、先生達を詰ませに掛かっていた。

 

 

「あっ、抑制時間がみるみる減っていきますよ!?」

『悪い、コッチも通信してる余裕がなくなってきた』

『芋砂戦法とか、それだけの力を持ってて恥ずかしくないのかねぇ〜!?』

 

 

誰かの声が聞こえた気がしたが、それどころじゃない。

現状、抑制時間をどうにかできるのは依星ケイとAL-1Sが揃った時のみ。

制御時間が取り戻されたら自分たちは、ウトナピシュティムごと75000m地点から放り出されてしまう。

そうなってしまえば、打つ手が無くなる。

 

 

「あれ、私の事忘れてませんか〜?」

「コユキ……」

 

 

完全に調子に乗っている。

だが事態を改善する鍵はコユキ以外にこの場に居ないのも事実だ。

何故か先生達とは通信が上手く繋がらない。

 

 

「この超天才病弱美少女ハッカーをもってしても、力になれない事は少々……いいえ。かなり嘆かわしい事ですが、あとは頼みましたよコユキ」

「にっはっは!任せて下さい!!」

 

 

ヒマリに激励されて再びコンソール前に着くコユキ。

彼女はそこから多次元システムの方へとアクセスしキーボードを叩き続けた。

少しして指が止まる。

 

 

「RSA暗号ですか、また中々に鬼畜な暗号ですね〜」

「うわ、600桁もある。流石にこれは無理なんじゃ……?」

「舐めて貰っちゃ困りますよ!紙とペンさえあれば出来ます!!」

「えぇ……?」

 

 

ガリガリと一心不乱に候補を書き連ねていくコユキ。

その光景にヴェリタス達はドン引きしていた。

詳しい事は省くが、今コユキのやってる事はスーパーコンピュータを使っても数百年は解読に時間がかかるのだ。

ソレを紙1枚とペン1本だけで解決しようというのだから、正気の沙汰ではない。

 

だが彼女は数分程度、紙に数式を書き殴ったあとコンソールに向き直り数字を打っていく。

答えができたのだ、ものの数分で。

やはり暗号解読そのものに関してコユキの右に出る生徒は存在しないのだ。

 

 

「にはっ、これでジ・エンドです!!」

 

ブーッ!!

 

「あれ!?答えは合ってた筈ですよ!?」

 

 

だが、それは生徒に限ればの話。

合っている筈の答えが弾かれ、コユキは軽いパニックに陥っていた。

そこへ状況を見ていたヒマリが諭す。

 

 

「いいえ、答えは合っていたのでしょうね。暗号が変更されてますよ」

「えっ、この短時間で……?」

 

 

彼女が相対するは、シッテムの箱メインOSだ。

あのデカグラマトンでさえ相手にならない程のスーパーAI。

電脳関連のスキルがカンストしたコユキより、圧倒的に彼女の方がステータス的には上だろう。

 

コユキが回答するのを見越して解除されたと同時にロックしたのだ。

これでは多次元システム制御主導権を奪う時間が足りない。

 

 

「この……」

 

ブーッ!!

 

「それだったら、もっと早く」

 

ブーッ!!

 

「いい加減に……」

 

ブーッ!!

 

「あーもうっ!!!」

「お、落ち着いてコユキ」

「……ふぅ、落ち着いてます〜。最高にハイってヤツですよ!!」

「どっちよ!?」

 

 

コユキの表情から余裕の笑みが消える。

今までで初めての集中モードだ。

さっきの一連の流れで分かった事が1つある。

 

自分が暗号解読してる間は制御時間の進みが正常になる。

ならいつか隙ができるまで暗号解読を続ければいい。

向こうもコンピューターな以上、限界は必ず来る。

最早、コユキの耳には外の会話は雑音としてしか聞こえない。

 

 

「私達にも出来ることをしないと!」

「では、オペレーター陣は最低限の人数以外先生達を迎えに行くように」

「ならヴェリタスはシステムの解除後にいち早く色彩の多次元バリアが解けるように動くことね」

「コユキに良いところ貰われてばっかりじゃ格好つかないからね!!」

 

 

 

ガリガリとペンを走らせ、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

再度ガリガリとペンを走らせ、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

またまたガリガリとペンを走らせ、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

インクがかすれてきたペンを走らせ、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

もう満足に書けないペンを走らせ、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

ペンを捨て頭の中で式を作り、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

【助かったよ、もう倒しても倒しても先が見えなくって……】

「それより早くシッテムの箱を!コユキが頑張ってくれてます!!」

【直ぐ対処するよ!!】

「箱舟の起動時と同じようにシッテムの箱を装着してください。これでウトナピシュティムの制御権は強化された筈です!」

 

 

 

頭の中で何かが切れた気がしたが暗算して、答えを打つ。

──ロックされた。

 

 

 

「(ああ〜もう!本当に……こんな力(暗号解読)が役に立つとは思ってませんでしたよ!!)」

 

 

鼻から何かが滴り落ちる、それでも指と思考は止めない。

正直な話、コユキは自分の能力を過小評価している。

オーナーから提言されても、その自覚は変わらなかった。

 

 

「自覚は無いだろうが、君の暗号解読能力は天賦の才だ。磨けば必ず力になる……なに?面倒くさい?」

 

 

自分は()()()()暗号解読が得意で運のない一般の生徒なんだ。

けれども、オーナーと過ごしていく内に考えは変わった。

 

例え自分にとっては児戯に等しいものであっても、認めてくれたコレ(暗号解読)だけは誰にも負けたくないと!!

 

 

「(なんて、格好つけて見ましたけど、もう限界かも……)」

頑張れー!コユキーッ!!

 

 

閉ざしていた(求めていた)声が聞こえた。

 

 


 

 

「(唯の生徒がどうしてここまで……)」

 

 

ATRAHASISの箱舟、そのメインシステム内部。

そこはひたすら無の空間であった。

教室や青い空、砂浜何てものは存在しない。

 

ギシギシと痛み(不具合)を発する頭を抑えて次の暗号を作成するA.R.O.N.A。

例え人智を超えたAIだろうが、キツいものはキツい。

度重なる暗号制作で彼女も限界に近かった。

 

 

「(暗号解読の時間が段々長引いています。もう少しの辛抱でしょう)」

 

 

A.R.O.N.Aからはコユキの現在の状態がモニタリングできる。

彼女は脳の負荷で鼻から血が垂れ落ちていた。

あと1問でもロックに成功すれば、彼女は使い物にならなくなるだろう。

 

 

「(そうです、これで、やっと、役目を………)」

 

 

ふと、暗号を作成する指が止まる。

自分はなんの為にこんな事をしているのだろうか。

シッテムの箱から移り船のメインシステムAIとして活動したのも先生の為であったのに。

今、自分がなんの為に動いているか唐突に分からなくなってしまったのだ。

 

自分はシッテムの箱のAI、先生の命令ならなんだって聞く。

けれどその先生は色彩に乗っ取られている。

相変わらず先生からの命令は途絶えない。

これは果たして先生の命令を受けてると言えるのだろうか?

そうまでしてこの箱庭を滅ぼすべきなのだろうか?

 

疲弊、感情の矛盾、それと思考の空白。

後ろから忍び寄る彼女に気が付かなかった。

 

 

『ストーーーップです!!もうロックは掛けさせませんよ!!』

「!?」

 

 

綺麗な羽交い締め。

ここまで侵入して(走って)きたアロナが飛びつき、動きを止めた。

 

暗号はもう変わらない。

 

 


 

 

多くの声援に囲まれポツ、ポツと覚束無い動きでキーを打つコユキ。

だがその目には光と、笑顔が戻っていた。

 

 

「これで……」

 

 

因幡の幸運兎が、Enterキーを跳ねる。

 

 

「よろしく、お願いしまーーーすっ!!」

 

 

多次元システム抑制解除まで

残り──00:00:01

 

 





かなりサマーウ〇ーズだよこれ。
紛れもなく今回のMVPはコユキです。
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