ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせ致しました。

小説パートでお送りします。





 

ATRAHASISの箱舟内部、第4エリアにて。

今までと比べても広い空間が広がっているそこでは、既に激戦が繰り広げられていた。

 

 

「絶許、オーナーの事を1度ならず2度までも!!」

「ぬるい殺気だね、無名の王女!」

「訂正要求、当機の名前はAL-1Sです!!」

 

【1人で突撃しちゃった……】

「うへ〜、元気一杯だねAL-1Sちゃん」

 

 

ミケが強制的に追放された後も着実に次元エンジンの破壊を続けていた先生達一行は、最後の1つを残すまでに至った。

急ぎ足で最後のエリアの扉を開けると既に彼女が居る。

 

状況に応じて撤退していたホシノテラーであったが、最後のエンジンを壊させる訳にもいかず、第4エリアで待ち伏せをしていたのだ。

そんなホシノテラーの姿を見たAL-1Sが開口一言。

 

 

「見敵必殺、オーナーの仇!!」

【ちょっ、待って───】

「あちゃ〜」

 

 

溜まりに溜まったフラストレーションが一気に解放され、先生の静止も虚しく単独特攻を行った。

ある程度の距離が開けた状態ならば、まだ中距離戦で連携できたのだが……。

只でさえお互い近距離で戦っているのに、やり取りが高レベル過ぎて下手な援護射撃は返って逆効果となってしまう事態に。

 

 

「ん、加勢しても足手まといになるだけ」

「もうっ勝手な事しちゃって!」

「それを抜きにしてもあの二人の実力は抜きん出てますからね〜」

 

 

しかもホシノテラーは意識の殆どをAL-1Sに割きながらも、次元エンジンの方へ向かわないように気を張っている始末。

故に、他の生徒達は戦闘から抜け出す隙を探すしかなかった。

1()()()()()を除いて。

 

 

「よっこいしょ……と。おじさんも混ざりにいこうかな?」

【大丈夫?】

「任せてよ、曲りなりにも自分の動きなんだから付いて行けるさ」

 

 

盾を背負い乱入する気満々のホシノ。

先生にもホシノならあの中へ入って戦えるという信頼があった。

次の瞬間、拳銃からとは思えない轟音が辺りに響く。

リボルバーだと言うのに銃声は6連発聞こえた気がするが……。

 

 

「全弾命中、ですが……」

「噂の無名の王女様もこの程度なのかな?」

「冗談、目にもの見せてみせます」

 

 

全ての弾丸が確かに命中した。

しかしホシノテラーには効いた感じがしない。

言わずもがな、ホシノテラーへ到達する前に弾丸が消滅しているからだ。

 

 

「(確認、これが聞いた権能の力ですか。弾丸による攻撃は殆ど無力化されると)」

 

 

銃火器でダメージを与えられる最低ラインは《禍討ツ星》位か。

アレも溜めと残しが長すぎて実戦では使いにくい。

となると残る手段は1つ、AL-1Sは拳銃をホルスターに仕舞う。

 

 

「宣言、ここからは本気(マジ)です」

「……ハッタリじゃなさそうだね、片手間じゃ首元を食い千切られちゃいそうだ」

 

 

そう言うとホシノテラーは指を鳴らす。

空間に2つの大穴が空き、そこから何体ものロボットが降下してくる。

それはエリドゥで出くわしたクリフォトと瓜二つであった。

 

 

「うわわっ、いっぱい出てきた!?」

「クリフォトとまではいかないけど相手してあげてね」

 

 

AL-1Sが用いる最速最強の型。

対するはホシノテラーの最硬最凶の型。

矛が貫くか、盾が粉砕するか。

先手を打ったのはAL-1S、文字通り真っ直ぐ突貫してきた。

 

 

「(確かに速い……けど、それだけだ)」

 

 

今まで戦った中だと断トツで一番のスピード。

しかしケセド戦で既に彼女のスピードを見たホシノテラーが、カウンターを合わせるのは容易な事であった。

拳銃の早撃ちのように、これ以上無いタイミングでSGを引き撃つ。

 

 

「残念、それは残像です」

「なっ!?」

 

 

AL-1Sが鍛えて得たのは身体能力だけでは無い。

ミケが調子に乗って教えた技術の数々には、肉弾戦で真価を発揮するモノも含まれている。

 

フェイント。

単純だが、AL-1Sのスピードが合わされば脅威になる。

AL-1Sが選択したのは右回し蹴り。

ホシノテラーは咄嗟の片腕ガードが間に合うが……。

 

 

「──ッ!(生徒が出す蹴りの威力じゃない!)」

 

 

打撃が体に浸透する感覚。

骨に響く衝撃はホシノテラーの腕を痺れさせた。

()()()()()()()

ホシノテラーがここへ来て初めて防御を手段に選んだ瞬間である。

 

 

「このっ、舐めるな!!」

 

 

拳が届くほどの距離、ましてや散弾銃、外す方が難しい。

クロスカウンターのようにお返しの散弾が放たれ、今度こそAL-1Sにヒットした。

捉えたのは体の左半身、衣服は破けAL-1Sの肌が見える。

鮮血の飛沫が上がる、左腕は使い物にならないだろう。

 

それでも彼女は止まらない。

 

 

「損傷甚大、そんなもの関係ありません!!」

ガッ!?

 

 

右拳による正拳突きが、ホシノテラーの頬へと突き刺さる。

ガードが間に合わずスウェーでいなそうとするも、ホシノテラーは大きく吹き飛ばされてしまった。

着地の瞬間体を回転させて体勢を立て直す。

 

次の瞬間、腹部に強烈な痛みを感じる。

前蹴りを食らったと分かったのはその直後だ。

内臓が裏返るかのような激痛が走る。

 

 

ゴヒュッ!?

「宣言、これがオーナーの腕の分です!!」

「(コイツ、痛みを感じないのか!?)」

 

 

《権能》がまるで意味を成さない。

追撃がいつ来ても良いように、歯を食いしばりながら息を整える。

 

……追撃が来ない。

気になって顔を上げると、見知り過ぎた顔がそこに居た。

 

 

「おじさん、君の話が聞きたいな?」

「お前は───ッ!!」

 

 


 

 

もう1人の私(小鳥遊ホシノ)!!」

 

 

もう1人の自分にすごい剣幕で睨みつけられた。

古い鏡を見てるみたいで昔の自分を思い出すよ。

銃と盾を構えながら、先に後ろのAL-1Sちゃんに声を掛ける。

 

 

「大丈夫ー?すごい事になってるけど?」

「無問題、時間をかければ修復可能です」

「ここはおじさんに任せて欲しいなー?」

「……許可、少し休憩します」

 

 

見てると徐々に傷が塞がっていくのが見える。

普通の生徒じゃないとは聞いてたけど、凄い回復速度だ。

もしかして私より強かったり?

 

そんな事を考えていると、向こうの殺気が膨れ上がるのを感じ取った。

すかさず盾に身を隠すと、威力で体が後ずさりする。

 

 

「お前と話すことなんて──ない!!」

「おおっと!?」

 

 

今度は近づいて追撃の一発。

盾はまだ無事……だけどこれを生身で受ける自信はない。

 

 

「落ち着きなよ、おじさんは話が聞きたいだけ──」

「その鼻につく話し方を今すぐやめろ!」

「なんでさ、元々は君も同じ口調だったんでしょ?」

「うるさい!!」

 

 

なんて冗談、本当は予想ついてるよ。

共鳴した時に君の記憶は私も体験してるんだから。

 

 

「そんなにこの話し方が嫌かな?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から」

「黙れッ!!何も失ってないお前に何が分かる!!」

 

 

更に攻撃が苛烈に……!!

けど、口撃の手は緩めない。

 

 

「分かるさ、私だって大切な人を無くした!」

「分からない、分かる筈が無い!だってお前にはまだ残っているじゃないか!!」

 

 

もう1人の自分の攻撃威力が上がった。

物凄くキツい……、もう言い返す力も起こらないくらい。

でもここからが正念場、必死に踏ん張って耐えてみせる!

 

 

「先生も、後輩達も、全員居なくなった!……違う、私が弱かったから殺したんだ!!」

 

「だから苛つくんだ、偶々運が良かったお前がヘラヘラとした皮を被って生活しているのが!」

 

「その幸せを当たり前のように享受出来ている事が儘ならない!」

 

「ネメシスへの憎悪さえ無ければ、お前への苛立ちが1番上だよ!」

 

「お前と私じゃ、絶望の深度が違うんだ!!」

 

 

ぐっ、そろそろヤバいかも!?

盾も限界だ、端の方からガリガリと削られて私も……。

 

ほぼ無心で盾に体重を掛ける。

もう向こうが何言ってるかも聞こえない。

けどそんな苦渋の感覚も唐突に終わりを告げた。

 

 

「弾がっ、アレを耐えきったの!?」

「へ、へへ、耐えきっちゃったもんねー……」

 

 

私が狙ってたのは弾切れ。

ミケって人が言っていた通りだ、連戦続き(アリウスチーム戦)で予備の残弾がそこを尽きた。

膝が笑ってるけど、これで同じ土俵に上がれる。

 

 

「……良いよ、教えてあげる。お前も私と同じように失ってしまえば良い!!」

「それってまさか──」

 

 

もう1人の自分が黒色のカードを掲げる。

それはどう見ても先生の持ってる《大人のカード》だ。

 

 

()()()()()()を使う!」

 

 

たちまち、もう1人の自分の威圧感が高まる。

ずるいよそんなの!!

こっちはヘロヘロだって言うのにさ!!

 

 

「お前を動けなくしたら、次は先生達を襲って真に同じ気持ちを味わわせてあげる」

「ノーサンキューだよ!」

 

 

私はまだ弾薬に余裕あったけど、もう1人の自分には弾丸が効かない。

盾と逆さ持ちした銃を構えて互いに殴り合う!

けど、パワーが違う。

せめて万全の状態だったら……!!

 

 

【《大人のカード》を使う!!】

「ッ!?」

【これが本場の《大人のカード》だよ!!】

 

 

先生!!

離れた場所でロボットと戦いながらのカード使用。

今まで他の生徒を召喚するところしか見てなかったけど、生徒の回復(コンテニュー)もできるなんて。

とにかく、これで勝負できる!!

 

 

「うおぉぉお!!」

「このっ、調子に乗るな!!」

 

 

「絶望の深度が違うって言ってたけどさ!分かるよ!だって私なんだから!!」

「そんなのただの屁理屈だ!本当に失った奴にしか私の心は分からない!」

「この石頭め!!くそっ、本当に私なんだなぁ……」

 

 

盾が重い、銃も使い物にならなくなった。

代わりに殴る拳が痛い。

 

慣れないってのもあるけど、消滅の権能で削られてる感覚が嫌すぎる。

でも、そんなの気にしてちゃ私に勝てない。

血が滲むのも気にせずに殴り続ける。

 

 

「コッチじゃ誰も死んでない!まだ引き返せる筈だよ!」

「もう戻るには遅すぎる!キヴォトスを滅ぼしておいて虫が良すぎるじゃないか!!」

「うぐっ!?」

「嫌だったさ、苦しかったさ!!あぁ、それでも──!少なくとも先生は生き返れるんだから!!」

 

 

「ゼェ、ゼェ……」

「ハァ、ハァッ、往生際の、悪い……!!」

 

 

殴り合いは最終的に素手同士へと移行した。

片目瞼が重い、息も大荒れで酷い気分だ。

向こうも酷い顔、生涯でこんなにバチバチに殴り合う事なんて無いんじゃないかな?

 

 

「完全復活!当機も加勢します!!」

「ッ!!」

 

 

体の再生が終わったのか、AL-1Sが立ち上がった。

そのままなのは服だけで、傷はしっかり癒えているようだ。

この状況、多分2人がかりなら楽に解決出来る。

けど私はどうしても我慢出来なかった。

 

 

「ごめん。おじさんの方は大丈夫だから、向こうに加勢してくれないかな?」

「………」

 

 

1人で突っ走らないでって怒られたばっかりだけど、本当にこれだけは譲れない。

コレは多分私にしか出来ない事だから。

後輩達にも、先生にも無理だろう。

 

でも多分許可してくれないんだろうなぁ。

こんなにボロボロじゃ、AL-1Sちゃんには絶対勝てない。

 

 

「許可、当機は他の場所へ加勢に向かいます」

「ははっ、借りができちゃった」

「……なんで庇うようなマネなんか」

「話を聞いてからずっと思ってたんだ、()を理解できるのは私だけなんだって」

 

 

実際、私が同じ立場なら一糸乱れず同じ結末になってるんだろう。

今の私には、後輩と先生が唯一無二の存在だから。

同時に違う立場だからこそ見えてくるものがある。

それでも、私は───。

 

 

「だから止めるよ、私がそうならない為にも。何よりあの子たちの為にも!!」

「───ッ!!」

 

 

最後の力を振り絞る。

前に進むのも億劫な足を全力で動かした。

多分私の思っている以上に速度は出てない。

 

 

「ッ!!」

 

 

もう1人の私は避ける素振りがない。

受けるつもりなのか、避けるだけの力がないのか。

どっちにしても好都合。

私の弱々しい拳は、不思議にももう1人の自分を吹っ飛ばした。

 

 

「うぐっ!?」

「ぐえっ!?」

 

 

もはや受身をとる力すらなく2人同時に地面に落ちる。

指一本も動かせる気がしない……。

立たなきゃ。

その一心で体に力を入れてると、諦めたようにもう1人の自分が話し出した。

 

 

「経験も、身体能力も、裏返っても居たのに未熟な自分にここまでコテンパンにされるなんてね」

 

 

確かに、どの要素をとっても私の方がスペックは下だった。

大人のカードによる強化に差があったとも思えない。

だから私は本心を口にした。

 

 

「心のどこかで、止まりたいって思っていたんじゃない?」

「私が言うならそうなんだろうね……」

 

 

しばらく沈黙が続くと遠くで響いていた音が止んだ。

先生達の方も決着が着いたらしい。

負けたとは思わない、AL-1Sちゃんも居るからね。

 

 

「降参、私の負けだよ」

 

 


 

 

『エリア制圧を確認、お疲れ様でした先生!』

 

 

既に勝敗は着いた。

後はこのエリアの次元エンジンを破壊するだけ。

そんな先生の元にタイミングよく彼から連絡が入る。

 

 

『私だ。今そっちに向かってるが、状況は?』

【コッチはさっき終わったよ】

 

 

ボロボロになった2人の小鳥遊ホシノを見る。

ホシノテラーの方が回復が早かったのか、ホシノを肩に担ぐという奇妙な光景があった。

そうだ、もう終わったのだ。

 

ミケもこっちに向かってるらしい。

心配性だなぁと思いつつ、話を聞く。

 

相変わらず聞きなれない単語ばかり並べられる、ゲマトリアの連中は全員こうなのだろうか?

だから先生は当然の疑問を口にした。

 

 

()()()()()()()()()()

『……何だと?』

 

 

ブツブツと怪訝な声を漏らすミケを他所に、オペレーター陣営からの連絡が入る。

アヤネからだ。

 

 

『先生、アヤネです!すみません通信の調子が悪くて』

【大丈夫、もう全部終わったから】

『はい、後は次元エンジンの破壊だけですね。その場には2()()()大きなエネルギー反応があります!』

【うーん、他3つのエリアと同じエンジンは1個しか見当たらないけど……】

 

 

適当に破壊して不味い事態になっても困る。

もう1つあるかもしれない次元エンジンを探す事にした。

終わってみれば呆気なかったような気もする。

そんな呑気な感じで先生は生徒全員に声を掛けようとした。

 

 

 

先生は気づくことなかった。

その真下に位置する箱の存在に。

そこに何が眠っているのかを。

 

()()()()()

 

 

「離れて!!」

「えっ?」

 

 

咄嗟にホシノを突き飛ばすホシノテラー。

気づいた時には()()()()()の様なもので拘束された後だ。

その後ろに位置する下手人と思わしき人物は、デスマスクを付け棺のような大きい体躯が特徴的であった。

誰もそれが先生だったものだとは思いもしないだろう。

 

唐突の出来事に全員が目を奪われる。

しかしそれは拘束されたホシノテラーに向けてでは無い。

全員の目線は更に上に────

 

 

暗い光が灯っていた。

 

 

 

その存在は意思などない──と思われていた。

 

 

 

その存在に実態はなく、観念に近い。

 

 

 

その存在はただ到来し神秘恐怖に変貌させる。

 

 

 

 

 

 

狂気の光が差し込んだ

 

 

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