ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで 作:ノートン68
お待たせいたしました。
小説パートでお送りします。
赤い空のさらに上。
空と宙の間で喰代ミケは絶賛落下中であった。
凍てついた風圧が骨身に染みる。
幸いだったのは、文字通り骨身だったお陰で即死する事はなかった事だ。
「くそっ、まんまとしてやられた……!!」
これ見よがしに構えていたショットガンはブラフ。
本命はワープを用いた先生と自分の強制追放だった。
以前相対した際に体験した銃の威力が強烈な印象として残った結果、罠に引っかかってしまったのだ。
以前自分も同じ手を使っていたという事もあり、避けれた筈の罠にミケは落ち込んだ。
だが直ぐに切り替える、最悪を回避出来ただけマシであると。
あの場で最悪だったのは2人とも宙に放り出される事。
先生ならシッテムの箱があるから生還は可能だろうが、再び敵陣に乗り込むのは不可能だ。
ワープは発動出来ない。
どうやら《ATRAHASISの箱舟》周辺にだけ阻害が掛けられてるらしい。
箱舟内部にワープして、AL-1Sに受け止めてもらうというプランは無くなってしまった。
早々にピンチだ。
落下しながらどうしようか考え、案が思いついたところでリオから通信が入る。
『───無事なら応答して!何処にいるの!?』
「ちょうど空を落下中だ、ここから箱舟の姿がよく見える」
『高度75000mよ?無事なのが不思議だわ……』
「普通の体とは程遠いからな。それより向こうの状況は?」
『AL-1S達が敵と交戦、一旦退けて第1エリアの次元エンジンは破壊したわ。
「……私の無事を向こうに伝えてくれ。すぐに戻るともな」
前回ミレニアムで再会した時はAL-1Sから突撃→鯖折りのコンボをくらい、危うくホ/モとなる所だったのだ。
自分から手を振りほどいた手前、次に何も伝えずに出会ったら確実に死んでしまう。
『戻ってこられるの?』
「考えがある」
現在ミケは高度75000mから紐なしバンジーしている状態だ。
総体重は10kg程度なので、空気抵抗など諸々を込みで最高落下時速は75kmほど。
地上に到達するには1時間近くかかる為、下手したら箱舟占領戦が終わってしまう。
「全く、ワープが無ければ詰んでいたぞ!」
恐らく先生だけでもホシノテラーと色彩の嚮導者には勝てる。
だがどうしても、それだけで終わるとは到底思えないのだ。
思いつく限りの最悪は、色彩が降臨すること。
サンクトゥムタワーを死守しているとはいえ、机上の空論である域を出ない。
だから自分があの場に居るのが安牌なのだが──。
その為にも先ずは現状を解決しなければならない。
幸いにも地上へのワープは可能なようで、バレルと接続して神秘を10人分も使用すれば、
「今からミレニアムにワープする。恐らく会長室に落ちるから君は避難してくれ」
『分かったわ、すぐ新素材開発部からクッション材を大量に貰ってくる』
「おい、別にそこまでしなくても──切れた」
何やら慌てた様子だったが、特に気にすることも無く思考の隅に追いやり、落下の感覚に身を委ねる。
ふと、思い出したかのように懐から携帯を取り出し、何処かへと電話をかけた。
「もしもし、私だが───」
程なくして、ミレニアムの会長室からボスンと力無い音が鳴った。
時速75kmと言っても所詮10kg、衝突の威力なんて高が知れている。
緩衝材を掻き分けて上へ這い上がる、着地成功だ。
辺りを見渡せば見覚えのある部屋に大量の緩衝材が敷き詰めらていた。
ふと耳をすませば、ドアの向こうに誰かがいる事に気づく。
恐らく準備してくれたリオだろうと思い声を掛けようとすると、一足先に扉が開かれた。
「オーナー!戻ってきちゃったって本当ですk──ギャーッ!?なんですかこの大量の緩衝材は!!?」
「コユキか?」
「開けるのは待ってと言ったのに……」
緩衝材の大波に飲み込まれたのは、リオではなくコユキだった。
だが緩衝材故に怪我はなく、コユキは泳ぐように掻き分けて近づいてくる。
その後を追うようにリオも開いた空間を通って部屋へ入ってきた。
てっきり山海経でカイと合流してるものと思っていたが……。
「ミレニアムに戻ってきていたのか?」
「ホド戦が終わったから休憩してました!」
デカグラマトンの預言者の一体であるホド。
元々はミレニアム最先端技術が込められた通信ユニットAIであった。
インベイドピラーによる拠点乗っ取りなど、癖のある強敵だった筈だが、それ程コユキには疲れが見えない。
「言う程疲れている様には見えないが?」
「にっはっはっ、あんなの何体も来ようとラクショーですよ!!」
原作よりも多く経験を積んだコユキは成長していた。
これなら───
ミケはニヤリと笑みを浮かべる。
「それなら……そうだな、よし」
「え、今の流れで1人で納得する要素ありましたか?」
「これから採る作戦が決まった。忙しくなるぞ」
「嫌な予感しかしないんですけど!?」
《ノバター君2号》のお陰で表情筋の付いたミケの表情から自信に満ち溢れた眼差しを感じ取る。
これはダメだ、こういう時の自分は大抵ロクな目に遭わない。
異議を申し立てて食いさがろうとするが、コユキを置いて話はドンドン進んでいく。
「同じ高度に上がるだけならミサイルで飛んで行けるけど、まさかそんな方法は取らないわよね?」
「無茶を言うな。私が作った船を改修して飛べるように改造する」
「あの暴走機関車ト〇マスをですか!?そもそも飛べるんですかアレ?」
コユキの脳裏に何回か運転ミスで死にかけた記憶が蘇る。
特に序盤なんていい思い出がない。
ブレーキが付いてないわ、タイヤは撃ち抜かれるわ、完成間近にスクラップ(直喩)になる寸前だったのだから。
「無理だから急ピッチで改造だ。コユキにはシステム面をリオと一緒に頼むぞ、因みに猶予は30分」
「「30分!?」」
「頼む」
「えぇ〜?分かりましたよー、仕方ないですねぇ」
「……私も全力を尽くすわ」
オーナーはこうなったら止まらない。
それでも本当に頼りにされてるという感じは伝わってくるので、渋々と言った感じで了承した。
自覚はないが、決して無理だと言わないコユキも確実に強かになったと言えるだろう。
「スペースシャトルの要領なら打ち上げ自体は可能でしょう。けど問題はハード側の作業時間が……」
「人員は任せておけ、エンジニア部に引けを取らない応援を呼んだからな。私は船を取りに一旦外に出る」
「エンジニア部にもって、まさか……」
アビドス砂漠に乗り捨てていた筈の《デュカリオンの箱舟》だが、何故かリベリオンの基地にあった件について。
あの場に元理事の姿は無かった筈だが一体どこで情報を仕入れたのか。
修理してくれた痕跡もあり、自分たちの足として使うつもりだったのだろう。
「元々私のモノだし、文句は言われんだろう」
また小言を言われるだろうか。
そんなことを思いながらもワープを使って船をミレニアム側へと押し込む。
見張りは車庫(?)の中身には居なかったから、安心して借りる事が出来る。
オーパーツを贅沢に使った甲斐あって、強度は問題ないだろう。
燃料は今や大量に余ってる《神名のカケラ》だからこれもまた問題ない。
残ってる問題は飛行形態への改造と発射台の準備だけだ。
「そろそろ向こうに到着している筈だが……」
ワープをくぐり抜けると、そこは見渡す限り人、人、人。
ミケの想像していた以上の人数がミレニアムに集結していた。
間違いなくレッドウィンター工務部の面々だ。
前の面子とは違い、角が生えてたり羽が生えてたりしている生徒が増えている。
船を取りに行った時にはなかったステージができている。
……雲行きが怪しい。
というのもステージを見つめる全員の目がガンギマっているからだ。
周囲を見渡し誰か居ないか探すと、ド真ん中でメガホンを持ち声を上げるミノリを見つけた。
ミケが声を掛ける前に、彼女は喉が張り裂けそうな大声で全体に司令を飛ばす。
「我らが守護神は滅びを回避する為の船を所望である!今こそ力を発揮し、我々の信仰を見せつけるときだ!!」
「「「然り!然り!然り!!」」」
「工具を持って位置につけ!安全第一、今日もご安全に!!」
「「「Урааааааааааааа!」」」
「本当にあの人が呼んだ助っ人なの?ただの宗狂団体じゃなくて?」
「にはは、腕は確かなので……」
絶叫の後に凄まじい勢いで、されど整列を組んでるかのような美しい動きで各自の持ち場へと散っていく。
確かに部員の士気をあげといてくれと頼んではいたが、ここまでしろとは頼んでいない……!!
そんな文句はミノリの清々しい笑顔にかき消された。
「オーナー、注文通り士気はうなぎ登りだ。要望の通りだと恐らく30分もあれば完成するぞ!」
「オーナーってあの小さな子が?」ヒソヒソ
「つまりあの子が教祖様って……コト!?」コソコソ
「ありがたや……ありがたや……」
「勧誘の結果大所帯になって大きい仕事が欲しかったんだ。入って浅い部員も多いが、腕に関しても自信をもって任せれる!」
「あぁ、頼りになるな……」
「どうしたんだオーナー、元気がないぞ?」
ミノリの言葉で気づいたのか、そこかしこからミケを崇めるかのような声が聞こえる。
ものすごく居心地が悪い。
陰でコソコソと怖がられるのも少々堪えたが、それとは全くの別種。
この誤解はいつか解かなければならない、ミケはそう心に決めた。
そうして少し目を離した隙に、《デュカリオンの箱舟》は見る見るうちに姿形を変えていく。
まるで倍速で映像を見ているような気分だ。
このペースなら宣言通りの時間で仕上げてくれるに違いない。
「報酬は既に振り込んである、多少色もつけておいた」
「感謝する、これでもっと部員が増やせる!」
「……もう良いんじゃ無いか?」
「何を言ってるんだ、入部希望者待ちは沢山いるんだからこれからも増えるぞ!」
「………」
説得には時間が掛かりそうだ、これ以上は作業の邪魔になる。
そもそも彼女と言論の場で争うというのが間違いだ。
彼女との口論はミケでも手に余る。
一、二言交わしてその場から立ち去る事にした。
(増えると言っても100人程度だろう)
そんな現実逃避をしながら少し歩くと、コユキ達の姿が見えた。
屋外に簡易テントを張ってモニターと睨めっこしている。
「順調そうだな?」
「あ、帰ってきてたんですね!」
「プログラム自体は30分もあれば完成するわ。問題はシミュレーションする時間があるかどうかだけれど……」
「悪いが30分以上は時間が取れん」
それ以上待てば
これはなんの根拠もない勘だ。
だが思い通りに行くことが少ないミケでも、大事な場面の大一番だけは外したことが無い。
その勘を確信へと変えるため、ミケは次の支度をする。
「また私は他所に飛ぶ。完成までには戻る」
「何処に行くんですか?」
「トリニティだよ」
「やぁ、待っていたよ。君がここに来る事は見えていたからね」
未だ赤い空の下。
広いテラスには不釣り合いに、少女と小鳥が椅子に腰掛けていた。
彼女のセリフからミケが来る事は予見していたようだ。
「他の二人が居ないようだが?」
「ナギサは例の触手が出てきた事で気絶、ミカは二日酔いでダウンさ。心当たりが無いとは言わせないよ?」
「あぁ……その、すまない」
恐らくナギサは超巨大パンちゃんに、ミカはイノケンティウスに。
どちらの誕生もミケが関わってる為、暗に「お前のせいだぞ」と言われてるのだ。
それに加えて彼女は何故か機嫌が悪かった。
「こう見えて予知夢で会えなかった時は心配したんだよ。まさかミレニアムの女のところに転がり込んでるとは思わなかったけど、ねぇ?」
「じ、事情があってだな……」
「連絡くらい後で出来たと思うけど?まぁ仕方ないよね、私は予知夢ができるだけの便利な女だよ」
凄まじい圧だ、流れない筈の冷や汗が滝のように出る錯覚を感じる。
キヴォトスに来て一番追い詰められてるかもしれない。
ジメジメフォックスに言い詰められた骨は黙るほか無かった。
「まぁ良いさ、この位で許してあげるとも。聞きに来たのはこれからの展開だね?」
「……そうだ」
自分の予想通りなら、先生だけでも今回の問題は解決できる筈なのだ。
ならこの胸騒ぎは何なのか。
ミケは珍しく自身の勘が当たらない事を祈った。
それに対しセイアは容赦なく告げる。
「タイムリミットは
感想返しが中々できてない状況ですが、全部読んでます。
最近忙しくて……でも連載が2年を上回る前には完結させたくて……。
いつも励みになっているので、これからも感想いただけると頑張れます。