ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

121 / 136

お待たせいたしました。
小説パートでお送りします。



共鳴

 

その異変に気が付いたのは、誰よりも状況把握に勤しんでいたアヤネであった。

戦闘要員が全てビナーに対応しても、予想以上の苦戦を強いられている状況下。

重症に追い込まれたホシノの身に何かあってはいけないと、周囲を警戒し全員が心置き無く戦えるように対処していた。

 

ヘイローに罅が入る程の重症を負ったホシノであったが、ついさっき《S.C.H.A.L.E》に所属したという少女の手によって応急処置をうけ、今は穏やかに眠りについている。 

謎だらけの彼女とその連れだが、自分達の大切な先輩を救ってくれたという一点だけで、アヤネはミケの事を信用していた。

 

そんな時だ、今まで身動き一つ取らなかったホシノがムクリと体を起こしたのは。

ミケによると「最低でも1日寝込むレベルの重症」だと聞いていたのだが……、やはりホシノは他とは規格が違うのか。

 

 

『ホシノ先輩!もう意識が回復したんです、ね……?』

 

 

喜びのまま声を掛けたアヤネは途中で気づく。

コイツは一体誰だ?

 

目に映る映像は彼女が自分達が慕う小鳥遊ホシノだと認識させる。

別人のはずが無い、たったさっきまでその人と共に行動してきたのだ。

 

それでも今目の前に居る先輩は自分の知るホシノ先輩では無い。

軽い火傷跡も今は見当たらず完治しており、姿形が同じだろうとアヤネは《別人》だと断言できた。

 

 

『ホシノ先輩じゃ、ない……?』

「………」

 

 

特に大きな違和感は、画面越しでも伝わる異様な雰囲気。

いつものホンワカとした雰囲気ではなく、近づく者全てに牙を向きそうな危うさ。

そんな近寄り難い雰囲気を漂わせるホシノの目には狂気じみた憤怒の念が宿っていた。

思わずアヤネも後退るレベルでだ。

 

 

 

夢を見ていた。

遠い遠い、世界の夢を。

自分とは違い、幸福が全てその手からすり抜ける様を。

恐怖化した自分の記憶を体験したホシノは、その意識を飲み込まれようとしていた。

 

共鳴状態とは、体質の似通う別世界の生徒と一時的にリンクする現象のことである。

百合園セイアの予知夢も仕組みは半分これに近い。

彼女の予知夢は別世界線の自分の末路だったのだ。

 

 

閑話休題

 

 

ホシノは共鳴状態へと陥っていた。

同例を挙げるとするなら、ナグルファルとリンクした申谷カイ、安守ミノリ、千鳥ミチルが挙げられるだろう。

だが彼女達と、ホシノとは決定的な差がある。

それは、共鳴先の意識を完全に掌握しているか否か。

 

前述の三名は時折ナグルファルの生徒がその片鱗を見せることはあっても、基本的には元の生徒が意識のベースとなっている。

多少()()()()()()事はあっても、恐らくカイは一目惚れし、ミノリは同胞と認め、ミチルは主としたであろう。

 

だがホシノテラーは違う。

暴力的なまでの記憶の刷り込みにより、悪意を持ってホシノを取り込もうとしていた。

肉体的にも、精神的にも弱っているホシノには効果抜群である。

何せ、さっきの自分と瓜二つの状況で起こった大惨事を見せつけられたのだから。

 

それでもホシノの心は簡単に折れない。

精神のアドバンテージは現在50:50と言ったところか。

 

 

私が代わりに戦ってあげる。だからもう休みなよ?

「うる、さい……ッ!あの子達は、私が守るんだ!!」

 

 

ここで問題が発生する。

生死の境が曖昧だったホシノの魂を、ミケが完璧に治療した。

つまり不完全な統合のまま、小鳥遊ホシノという人格が完成したのだ。

 

不完全故に共鳴状態には時間制限がある。

その数分間だけ、ホシノは恐怖化し権能を自在に操ることができる。

 

 

 

そして現在、意識を取り戻したホシノは周囲の光景を確認する。

砂漠を駆ける後輩、相変わらずのアビドス砂漠、骨と同じ気配を持つ少女etc……。

全て夢で見た光景と合致する。

 

擬似的な共鳴状態、感情の起伏による相乗効果、ロケーションの合致 全てが奇跡的に噛み合い、復讐神が誕生した。

 

 

「………」

 

 

いつしかの骨と同じく怒りを原動力に、暁のホルスは躍動した。

砂の足場もなんのその。

最低限かつ最大効率の動きで目標に迫る。

 

 

「ホシノ先輩!?」

「ん、流石先輩もう起き……何か違う?」

「ッ!!警告、止まりなさい!!」

 

 

突然の事態に戦場に混乱が走る。

ホシノが動けるようになったのは喜ばしい事だが、セリカ達も違和感に気がついた。

嫌な予感を感じ取ったAL-1Sが容赦なく発砲する。

 

 

「………」

「驚愕、効いてない!?」

 

 

全弾命中……した筈だった。

にも関わらずホシノは足を止めない。

廃墟で追いかけっこしたホシノテラーと同じだ。

弾がその身に当たる直前に《消滅》している。

 

 

「その姿、まさか……」

 

 

予想外の出来事にミケの動きも一瞬停止する。

AL-1Sも追いつけない速度でホシノは一直線に駆けていた。

勿論自分の敬愛するオーナーの方向へと。

 

ホシノの目標は喰代ミケ(ネメシス)────()()()()

ほんの僅かにミケを一瞥すると、大きく跳躍する。

そして見事目標の上部に着地したホシノは銃を仇敵に向けた。

 

 

お前のせいだ

───GUOOOOOO!!?

 

 

このビナーからすれば八つ当たりとも言っていい仕打ちをかました。

《消滅》の力が篭った弾丸は、いとも簡単にビナーの装甲に穴を開ける。

やはり攻守共に驚異的な権能だ。

ミケが見とれているとAL-1Sが駆け寄って来た。

 

 

「確認、ご無事ですかオーナー!!」

「問題ない」

「質問、アレは、彼女は一体何者なんですか?」

 

 

この世で意識を覚まして以来の己より速い生徒に困惑している様であった。

AL-1Sはアビドス戦力の戦闘データを確認している。

だからこそ信じられなかった、自分がタンクに足で負けた事が。

ミケはやんわりとフォローをいれる。

 

 

「この足場だ、平時なら君と同速レベルだろう」

「そう、ですか?」

「そうだ。だから今は彼女に賭けてみるとしよう」

【よし、それじゃ備えるよ皆!!作戦は──】

 

 

たかが体の一部に穴を開けられてもビナーは止まらない。

視界に映るピンク髪を1番の脅威と認識し、戦闘を再開する。

 

直後、ビナーの取った行動は身体を畝らせる事。

巨体による砂漠の大津波は脅威だ、下手をすれば生徒であろうとも死者が出る。

 

 

「ぎゃあー!!?」

「足を止めると巻き込まれますよー☆」

「肯定、速度なら負けません!!」

「ん、私だって負けない」

『張り合わなくても良いですから!』

 

 

巻き込まれぬよう必死で距離を空けるアビドス勢。

対してホシノはビナーの装甲から手を離さない。

何度も体を地面に、装甲に打ち付けられたが、全くと言っていい程にダメージを受けていない。

 

しかし次の瞬間、ホシノは上空へ跳ね飛ばされる事になった。恐らくわざとである。

標的を確実に仕留める為か、もしくは後輩達の身を思っての行動か定かではない。

とにかくホシノは上空に居る、流石のホシノも空中では身動き出来ない。

ビナーにとっては絶好のチャンスであった。

 

餌を待ち受けるかのように上へと顔を向け、その口に光を灯らせる。

からの、1拍を置いてレーザー砲。

それは赤い空を焼き、一瞬だけ元の青空へと戻す程の威力を誇っていた。

 

ビナーの真骨頂でもある最大火力、それが確実にホシノへ命中した。

さっきとは違い盾でガードもされていない。

 

 

「仕留めた」

 

 

ビナーは内心ほくそ笑んだ。

その直後であった、自身の口元に何かが落下してきたのは。

 

 

捕らえた

 

 

小鳥遊ホシノは無傷であった。

避けたわけでは無い、レーザーは確実に当たっている。

ただ、あれだけの威力を誇る攻撃でも《消滅》の権能を超えることは不可能だったのだ。

 

首筋に刃を当てられたと同義。

もはやビナーに取れる手段は存在しない。

ただ刃を受け入れる罪人のように幸運を祈るしか許されなかった。

 

 

死ね

 

───〜〜〜〜〜ッ!!?

 

 

《消滅》の力がたらふく篭った弾丸の一斉掃射。

至近距離で受けたものは死ぬ。

奇しくもビナーのコアは、レーザーの発射効率を上げるために口元へ備えられており、弱点をピンポイントで捉えていた。

 

 

──────ッ!!!!

 

 

堪らず頭部を振りホシノを落とそうとする。

その足掻きは無駄ではなく、ホシノは砂漠へと力無く落下していった。

少しすればドサリっと少量の砂埃が舞う。

 

 

「体に、力が入らない……!!」

 

 

時間切れ、共鳴状態が切れたのだ。

更に擬似的な恐怖化だろうとその身にかかる負荷は多大。

外傷こそ負ってないものの、ホシノの体はボロボロであった。

 

 

「動けよ体、何のためにこんな、私が守らないと……!!」

『いいえ、今度は私達の番です!!』

「なっ……皆!?」

 

 

倒れたホシノを守るように、盾を構えた3人が前に出てきた。

ビナーはホシノが無力化したと気づきレーザー砲の準備を始めている。

もう逃げる事は出来ない。

 

 

「なんで……」

『ッ!!ビナーのレーザー砲が来ます!!』

 

 

ホシノの疑問を置き去りに、容赦なくビナーはレーザーを放つ。

衝撃に備えて目を瞑るホシノ、だがいつまでたっても痛みは来ない。

目を開けるとそこには3人の姿が。

 

 

「踏ん張って〜!!」

「コレをホシノ先輩は1人で、流石です〜☆」

「ん、やっぱり先輩は強い」

 

 

しっかり耐えていた。

互いを支え合うことで熱線の威力を分散している。

後輩達はホシノが思っていた以上に強かった。

 

 

「なんだ、簡単な事だったじゃん……」

「ホシノ先輩!?」

「まだまだ私が守ってあげないとね」

「ん、余計なお世話!」

 

『ビナーのレーザー砲が途切れています、あと少しです!!』

 

 

ホシノも合わせて4人での防御。

無事に衝撃が和らぐまで耐え攻撃が止む、ここまで先生の作戦通り。

4人の後ろにスタンバイしていたAL-1Sが禍討ツ星を起動した。

 

 

「ナイスアシスト、遠慮なくコレを撃ち込めます!!」

「ん、大トリは譲ってあげる」

「充電100%、貫け──!!」

 

─────ッ!!!!?

 

 

朱い流星が文字通りビナーを貫いた。

フルチャージした電磁砲はビナーの顔面半分を抉り取る。

それでもビナーは機能停止しない、コアは致命傷を受けながらも稼働し続けていた。

 

 

─────!!!

『ビナー行動パターンが変動!撤退準備です!!』

 

 

ビナーが取った行動は逃走。

レーザー砲に使うエネルギーは馬鹿にならない。

故に1度撤退して態勢を立て直そうとしたのだ。

地中へ逃げてしまえば、ビナーを追跡できる者は居ない。

 

だからこそ先生は先手を打っていた。

ガツリッとビナーの体は砂中への侵入を拒まれる。

氷結により砂地はスケートリンクへと変貌を遂げていた。

 

それでも時間をかけて氷結を破れば逃走は可能であった。

残念な事にホシノは動けず、禍討ツ星は既に打ち止め。

ビナーを仕留めるにはあと一手足りない。

 

だが、ここにはまだ彼女達が居る。

 

 

ビナーの背後で一発の銃声が鳴り響く。

不思議とその音響はビナーの警戒心を最大まで引き上げられる。

 

たかが銃声、気にするような事でもない。

そんな事より一刻も早くこの場を抜け出すべきであるのに、機体は自然と銃声のした方向へと向いてしまう。

 

 

「悪いわね、美味しいところ横取りしちゃって!」

「いっけ〜アルちゃん!!」

「はぁ……」

 

 

カメラに写ったのはゲヘナの4人組。

それがビナーが見た最後の光景であった。

 

 

──ビナー、並びにアビドス砂漠のF.SCT破壊

 

 





便利屋68「ずっとスタンバってました」

次回はRTAパートの予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。