ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせいたしました。

小説パートです。
また今回、独自解釈要素が多く含まれます。



ナグルファル(死者の箱舟)

 

虚妄のSTタワーが落ち空が赤く染まった頃。

キヴォトスは思った以上に混乱しなかった。

主な理由は3つ。

 

1つ目は、本来のサンクトゥムタワーが破壊を免れた事で、D.U.の行政被害は最小限に収まったから。

2つ目は、予めリン達が計画を練ってくれてたおかげで迅速に対応することが出来たから。

既に非戦闘員の避難も完了済みである。

 

そして3つ目は、先生が帰ってきたからである。

 

そんな限りなく良いスタートで迎えたF.SCT攻略戦。

ある程度の指示を出した後、先生が向かったのはシャーレの屋上。

不吉な色の空のせいか、気持ちの良くない冷風が体を叩く。

それでも屋上へ来たのは何となく、そこへ行けば目当ての人物がいる気がしたのだ。

そしてその勘は当たっていた。

 

 

「クックック、お見苦しい姿で失礼しますよ、先生」

【黒服……】

 

 

整っていたスーツは破れ、体もボロボロとなった黒服がそこに居た。

満身創痍という訳でもなさそうだが、誰がこんな事を……。

黒服はいつもの長ったらしい挨拶もなく、いきなり本題をぶつけてきた。

 

 

「ゲマトリアは壊滅しました。色彩が、遂に到来してしまったのです──別世界線の《暁のホルス》を伴って」

 

 

暁のホルス。

黒服達によるホシノの呼称だ。

まさかホシノが……と思ったが事態は複雑らしい。

 

 

「恐怖の領域へと反転した彼女は、あらゆるもの全てを無に帰し、自身の本能が赴くままに、この世界に終焉をもたらすでしょう」

 

 

表情と言葉には出さないが、先生は大いに混乱していた。

キヴォトスの終焉は、セイアの予知夢で知っているから良いとする。

だが別世界線のホシノが関わっているとくると話は別だ。

それに──

 

 

【ゲマトリアには(ホモ)が居た。それでもダメだったの?】

「残念ながら、少し前から音信不通です」

【そんな……】

「クックック、ですが彼がタダで退場するとは思えない。そうでしょう?」

 

 

ゲマトリアの中でも別格だと思っていたホモの失踪は、先生に大きくショックを与えた。

まだこの時点では先生はホモの存命を知らない。

だが不思議なもので、あの男なら生き延びてるに違いないと思える。

癪だが、黒服と気持ちは同じだった。

 

 

【それを私に言ってどうしようってのさ?】

「我々は秘儀を奪われてしまいました。色彩が我々の手に負えないので助言をと思いまして」

【尻拭いって訳か】

「クックック、これは手厳しい」

 

 

実際、色彩を呼び寄せた張本人はベアトリーチェ(故)なのだから間違いではない。

「なにわろてんねん」という寒い視線を向けていると、黒服が喋り始めた。

 

 

「色彩について説明を──と思いましたが、どうやら知っている様子ですね?なら私は退散させて貰いますよ」

【待って】

「はい、なにか御用が?」

(ホモ)について教えて欲しい】

「………何故?」

 

 

エリドゥでは叱咤を、トリニティでは激励を。

数回程度だが交流を通じて、ゲマトリアの中でも彼が異色だと言うことが分かった。

こちらが呼びかければ彼は答えてくれる可能性が高い。

だが彼は何故かあまり自分と関わろうとしないので、頼みを聞いてくれる望みは薄い。

 

それに彼は先生という存在を神聖視している節があった。

そんな人物に「今からお前、先生ね?」と言っても恐らくキレるだけだ。

 

 

【今、彼は無職なわけでしょ?だったらシャーレに所属してもらおうと思って。何となく拒否しそうな気がするから交渉の材料が欲しいんだよ】

「なるほど……因みに私とかはどうですか?」

【寝言は寝て言え】

 

 

勝手にホモのプライバシーが侵害されそうになっている件について。

本当にそれでいいのか先生?

 

だが、これが最善手なのは確かだ。

敵の正体が不明瞭な以上、手が多いに越したことはないのだ。

サラリと即刻で不採用を言い渡された黒服は、笑いながら語りかけて来た。

 

 

「なるほど、なるほど……であれば先生。当然、対価を用意していただけるんでしょうね?」

【払えるもので頼むよ】

「クックック、要りませんよ。私はもうゲマトリアではありません。それに──彼女たちが教えてくれるかと」

「たぁー!!」

 

 

黒服がそう言うやいなや、間に割り込むように煙幕が広がる。

すわ敵襲か!?と身構えていると、煙の中から3人の人影が現れた。

内2人は先生も交流のある生徒であった。

 

 

「忍術部部長、千鳥ミチル。ここに推参にぇ!」

「話は聞かせてもらったぞ!!」

【ミチル、それにミノリに──あとは誰!?】

「初めまして先生、百鬼夜行の申谷カイ。七囚人なんて肩書きもあるよ」

 

 

その名に聞き覚えはある。

ワカモのように同時期に矯正局から脱獄した生徒だと。

1人は先生にゾッコンだしもう1人も……新・先生大好き倶楽部かな?

 

因みに気がつけば黒服は姿を消していた。

話のスピードが早すぎて迷子になりそうだが、このタイミングで彼女達が来たと言うことは……。

 

 

【君たちは、まさか(ホモ)の……?】

「お察しの通り、我々はオーナーの仲間だ」

「故に私達なら先生の願いに答えることができるんだにぇ」

 

 

違和感はあった。

ミノリは殆ど一緒だが、ミチルは先生でもニヤでもない何者かを《主殿》と呼んでいたから。

まさかホモの事だとは思わなかったが。

あの人、他校の生徒にツバつけすぎじゃないか?と思いながらも何とか状況を整理する。

 

 

【元敵対(?)関係にあったシャーレに入れようとする目的は何?】

「時間が無いから単刀直入に言うぞ、()()()()()()()()()()()

 

 

理解させる気がないと思えるレベルの唐突な告白。

だが、先生は先生であるが為に無条件で生徒の頼みに答える存在だ。

それが敵対関係といっても、夢の中でアドバイスしてくれたりする先達なら尚更である。

 

 

【なにか訳アリのようだね?良いよ、聞こう】

「その前にオーナーの事について話そうかねぇ?」

「にぇ、自己紹介は大事」

 

 

コホン、と軽く咳払いをして前に出ていたミチルが宣言する。

それは先生の予想を遥かに超える内容であった。

 

 

「───この世界にはキヴォトス以外にも箱庭が存在するにぇ」

【!!】

「先生は外の世界の住民だから知ってるかもしれないがな?」

「私達が認識している箱舟は5つだねぇ?」

 

 

殆どが海に囲まれた水の惑星で未知の脅威に立ち向かう箱庭。

 

当たり前のように神格が跳梁跋扈している卓上遊戯が盛んな箱庭。

 

【アーツ】と呼ばれる謎の技術が存在する病と災害に抗う箱庭。

 

仮想ネットワーク空間の世界でバグを解決する箱庭。

 

キヴォトスからは容易に関与できない遠い星のような世界。

ミチル達が認識している4つの箱庭だけでこれだ、他にも幾つかあるのだろう。

そして、そのもう1つこそが今回の肝。

 

 

「このように数多ある中に【ナグルファル】と呼ばれる箱庭があったんだ。それもキヴォトスと瓜二つのな?」

【待って?()()()って事は……】

「ご明察、もうその箱庭は存在しないにぇ」

 

 

先生の脳内で、今まで孤立していた点と点が線で繋がり始める。

元から()()()()()()()()という気はしていた。

だがそれはホモが自分よりも年上で、より多くの経験を積んできたのではという予測にしか過ぎない。

そこにカイのダメ押しが突き刺さる。

 

 

「オーナーはそのナグルファルで先生をしていたのさ。無論、私達もそこ出身の生徒だよ」

【!?】

「その言い方じゃ語弊が生まれるにぇ。正確にはナグルファルでの記憶を引き継いだ生徒が私達だにぇ」

【!!?】

「私達はこの状況になることを《共鳴》と呼ぶことにした」

「原理は天文学的な確率で()()()()()()()()と波長が合わさると起こるんだけどねぇ?」

【衝撃の連続すぎて何がなにやら……】

 

 

だがホモが元先生だということは理解した。

それがどうやって人の身を捨てて骨となったかはまるで見当がつかないが……。

ついでに発生した疑問を何となく聞いてみる。

 

 

【その生徒は、君達以外には居るの?】

「……多分、私たち以外には居ないと思うぞ」

「にぇ……みんな《炉》に飛び込んでったから」

 

 

少し影のある物言いだ、地雷だったらしい。

気まずさが表に出たのを感じ取ったのか、ミノリが舵を切り話を戻す。

 

 

「今話せるのはこんな所だ、これ以上は私達の提案を飲んでくれてから」

【最初から拒否しようだなんて思ってないさ。ただどうやって助けたらいいのかなって?】

 

 

音信不通状態になるほど大怪我を負ったのだろうか?

もしそうなら残念だが先生はあまり力になれそうにない。

が、どうやらそんな心配は杞憂のようだ。

 

 

「先生にはオーナーをシャーレ所属のキヴォトス住民として存在を確立させて欲しいんだにぇ!!」

【存在を、確立……?】

「彼の魂はあやふやな状態なんだ。この世界で(ホモ)を名乗る事で存命してるけど、それがいつまで続くか分からないのさ」

【それはつまり、いつ死んでもおかしくないって事じゃ……】

 

 

なにかの拍子に突然コロリといく可能性だってある。

それでもキヴォトスに居続けているのは、一体何のためなのだろうか……

いや、今大事なのは協力するか否か。そんなものとうの昔に決まっている。

 

 

【分かった、協力するよ。でもどうやって許可をもらおう?】

「それこそ、超法的措置で無理やりシャーレに引き込めば問題ないにぇ!」

【えっ、……それは良いの?】

「権力は使ってこそだ。先生は今までそれだけの義務を果たしてきた」

「本当の事さ。オーナーも裏でコソコソ手伝ってはいたみたいだけどねぇ?」

 

 

実際、クリフォト顕現も機械神教も上手く行けばラッキーくらいの狙いであった。

元々は多すぎる先生のタスクを減らすための相談教室として作ったつもりだったのだ。

今ではあのシスターフッドの長も常連である。

 

そしてホモがお膳立てした事も沢山あったが、それ以上に先生は尽力してきた。

だから誠心誠意お願いすればきっと答えてくれると、彼女たちは信じてやまない。

 

 

「でも、いきなり「先生をしてくれ!」は怒られるから、《生徒》扱いとして任命するのがいいと思うよぉ?」

「それなら丁度いいのがある。あの人、今ミレニアムで生徒として潜入している最中らしいから」

【本当に何してるんだあの人!?】

 

 

本当にフットワークが軽いなと半分呆れ、半分尊敬しながら、結局は直接お願いするしかないという結論に至った。

ダメな時はそれでどうにかするしかない。

腹は決まった、あとは伝える言葉だけ考えればいい。

 

 

【うーん、あとが怖いけど………生徒の頼みだ、頑張るぞ!!】

「頼みましたにぇ!」

 

 

ミチル達は赤い空を反射したビル群へと去っていった。

正直、ホモについてはまだ気になる事が多い。

しかしそれ等は彼女達ではなく直接本人に聞くべきだろう。

 

だから先生は敢えて、どちらとも取れる文言で書いた。

そしてそれをユウカに連絡、酷く驚いていたが彼女ならやり遂げてくれるに違いない。

果たして興味を持って来てくれるのか、それとも怒って来るのだろうか?

 

 

『喰代ミケを連邦捜査部S.C.H.A.L.Eに任命します』

 

 

 

数分後、ブチ切れたホモがシャーレオフィスに来る事を先生はまだ知らない。

 

 





次回も小説パート。
RTAパート全然書いてねぇなぁ(許し亭)
ホモと先生、2度目の対談です。

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