高市氏「女性を先頭に立たせて」 初の女性首相へ、格差解消はなるか
自民党の新総裁に高市早苗前経済安全保障相(64)が選ばれたことで、初の女性首相が誕生する見通しとなった。高市氏は女性議員を積極的に登用すると宣言しており、世界各国と比べ大きく出遅れている政治の男女格差の解消につながるのか、注目されている。
高市氏は、総裁選の所見発表演説で「北欧の国々に比べても劣らないほど、女性がたくさんいる内閣や(党)役員会(をつくる)」と語り、閣僚や党役員に女性議員を多く登用する意向を示していた。
さらには、地方の講演で英国初の女性首相になったサッチャー氏を例に挙げ、「和製版サッチャーとは言わないが、強い信念と実行力は負けない。女性を先頭に立たせてほしい。自民党の景色を変えよう」とも訴えた。選挙戦では、自身の介護経験などから「キャリアを諦めなくてすむ社会を作りたい」とし、家事支援サービスの代金の税額控除や、女性の健康対策の必要性を訴えた。
伝統的な家族観を重視
一方、伝統的な家族観を重視する姿勢も強調する。選択的夫婦別姓の導入に慎重で、通称使用の拡大で対応すべきだとの立場を取る。
選挙期間中の講演では候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」に反対してきたと主張。「結果の平等よりも機会の平等だ」と語った。
結党70年となる自民党の総裁選に女性議員が立候補した例は極めて少ない。2008年の小池百合子・東京都知事が初めてだったが、以降は続かず、次に女性候補が出たのは21年。高市氏と野田聖子元総務相が立候補し、初めて複数の女性候補が立つ総裁選となった。
世界経済フォーラム(WEF)がまとめた25年版「ジェンダーギャップ報告書」で、日本は148カ国中118位と低迷し、特に政治分野の格差が大きい。英国では女性閣僚が50%に達し、ドイツや米国、フランスなども40%台だが、日本は1割程度とその低さが顕著となっている。
今後の主な政治日程
10月6日以降 自民党の新執行部発足
10日 石破茂首相が戦後80年の個人のメッセージ発表(調整中)
13日 大阪・関西万博の閉幕
15日 臨時国会召集、首相指名選挙、組閣(調整中)
中旬以降 新首相の所信表明演説、代表質問(同)
26日~ マレーシアで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議
27日~ トランプ米大統領が訪日(調整中)
31日~ 韓国でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議
11月15日 自民の結党70年
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- 【視点】
高市早苗総裁の誕生を受けて、はやくもネット上ではさまざまな反応がみられる。右派層からは歓喜の声が、左派リベラル層からは憤りの声があがっているが、高市早苗総裁が今後政権を預かることで日本の政治がどんな方向に導かれるかはまだ未知数だ。決選投票のうち議員票で小泉進次郎候補を議員票で上回るという予想外の結果然り、今後の党内人事や連立交渉の推移をみないと、高市政権の性格はっきりとはわからないだろう。 先はわからないということを踏まえて、以下では三点だけ指摘しておきたい。 ひとつは、高市総裁の誕生は昨年から勢いを増しているポピュリズムの追い風によるものだということだ。ポピュリズムの台頭は安倍政権時代にまとまっていた右派層を与野党に分ち、そのことが自民党の地盤沈下の一因になっていた。再来年の統一地方選挙をみすえると、この右派層を自民党に引き戻すためには高市総裁がベストだという判断が地方組織の間で働いたことが、党員と都道府県レベルでの圧勝をもたらしたのだろう。だから自民党はふたたび右派に求心力を働かせることで、一時的かもしれないが活力を取り戻すかもしれない。 もうひとつは、ポピュリズムの追い風をうけて権力を握ったことのジレンマである。高市陣営についたといわれる麻生元総理は、総裁選前に財政規律を訴え、ポピュリズム批判を展開していた。高市政権における麻生氏の影響力は大きくなると思われるが、そうなると高市支持層の財政拡張要求や減税要求とぶつかることになる。石破政権はポピュリズムを外部化し、対峙しながら森山幹事長が部分連合による多数派形成に手腕を発揮することで政権を運営していた。だが高市政権はポピュリズムを内部化することになる。現実主義的なかじ取りが求められる現在の国内外の環境のなかで、この矛盾を抱え込みつつ制御できるのかが問われる。 最後のひとつは、高市総裁は安倍元総理の後継といわれるが、ふたつの政権は似て非なるものにならざるを得ないということだ。安倍政権も右派政権といわれていたが、右派を結束させつつも制御し、今井尚哉補佐官ら官邸官僚による支配を確固たるものにしていた。つまり安倍政権は右派を従えていたのだ。他方で高市総裁には、安倍元総理のような権威はないし、有力な官邸官僚もいまのところいない。したがって右派を呼び戻せたとしても、彼らの意向にやすやすと従いかねない。高市早苗総裁の誕生を望んでいた人の多くは、安倍政権の再来を夢見ているのかもしれないが、二度目は茶番となる可能性は高い。 こんなところだろうか。ともあれ、麻生元総理がふたたびキングに返り咲き、旧安倍派が活性化し、これで裏金議員も無罪放免となれば、「自民党は変わった」と期待する一般市民はあまりいないのではないだろうか。自民党の党組織・党員と世論との乖離はますます進むと思うのだが。
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- #自民総裁選
- 【視点】
格差で社会が引き裂かれた現状にあっては、高市氏が英国のサッチャー元首相を模範に「和製サッチャー」をめざしていることに不安を感じる人も多いのではないだろうか。 「サッチャーにはシンパシーはあったがエンパシーはなかった」。サッチャーの秘書を務めたティム・ランケスターのサッチャー評だ。シンパシーとは、共感や同情といった感情のはたらきであり、作動させるのに特別な努力は必要ない。対照的にエンパシーとは、自分と相手との間に、イデオロギーや境遇の大きな断絶が存在し、共鳴や同情が自然と生まれないような場合に、それでも相手を理解しようとする知的な営みを指す。 「鉄の女」サッチャーは誰にでも冷酷で、愛されなかったわけではない。庶民の家に生まれながら首相の地位にのぼりつめた自分のように、立身出世した人々には優しかった。「成功した庶民」である自分と重ね合わせて、そうした人々には、自然にシンパシーを寄せることができたからだ。他方、社会的な弱者には冷たかった。サッチャーは、庶民の出自だったが、「努力して成功した自分」と、「真面目に働かない彼ら」とを差異化し、後者をバッシングの対象とした。現実には、いくら努力しても、いくら真面目に働いても、成功や富を掴めない人たちがごまんといるにもかかわらず。サッチャーには、自分と異なる境遇にある人へのエンパシーが欠けていた。 国内にも国外にも問題が山積する中で首相に就任する、日本初の女性首相には多くの期待が寄せられている。しかし、かつて「さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のフリをして、少しでも得をしようと、そんな国民ばかりになったら日本国は滅びてしまいます」と、痛烈な言葉で社会的弱者をバッシングしたことは簡単に忘れることはできない。高市氏が、閣僚や党役員に女性議員を多く登用する意向を示していることは歓迎し、期待したいが、それ以上に、社会で人々を苦しめるさまざまな格差への想像力とエンパシーを期待したい。
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