ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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大変お待たせいたしました。

RTAで書こうと思ったら全然進まなくなっちゃった……。
という訳で急遽小説パートです(土下座)



LOST ITEM IS ROMANCE

 

「どうしたものかな……。」

 

エンジニア部の工房の一角にて、白石ウタハは目の前の武装を弄り、観察し、そして唸っていた。

推定150kgを超えるソレは使い古されておらず、かといって新品でもない。

 

明らかに常人には扱えない重量の、用途が不明瞭なソレの名は《禍討ツ星》。

《光の剣:スーパーノヴァ》とは対極の、言わば闇の剣を思わせる配色をしている。

 

それが今ウタハの手元にある。

ほかのメンバーは休憩中だ、放ってるといつまでも剣に引っ付いているので部長命令で無理やり剥がしたのだが。

それ程まで彼女達の目には《禍討ツ星》は魅力的に映っていた。

 

元々はセミナーが()()と一緒に《禍討ツ星》を保護する予定だったが、何処から漏れたのか(ヴェリタス)情報は瞬く間に広がってしまった。

結果、秘匿は不可能だと判断したセミナーが調査を依頼する事に。

 

そんなこんなで《禍討ツ星》はエンジニア部によって解析中なのだが進捗は芳しくない。

その剣の制作方法は疎か、撃つための燃料さえ不明瞭。

何となく銃だということは分かるが、使用方法が謎のオーパーツといった扱い。

 

マイスターとしての性で分解したい欲が高まるが、恐らく二度と元に戻らないだろう。

たった一瞬の幸運の為に、この剣を捨てる気には到底なれなかった。

 

 

「これ程もどかしい思いをしたのはいつぶりだったかな?」

 

 

目の前にお宝があるのに鍵がない生殺し状態。

手にしたスパナが行き場を探し空を彷徨うといった行動が繰り返される。

 

分解すら一苦労なのも無理はない。

装填機構は存在しない、生徒の神秘を《弾丸》として発射する作りになっている。

こと神秘の分野において、他の追随を許さない男の怪作が《禍討ツ星》だ。

 

兎も角キヴォトスにない技術をふんだんに使用したソレは、彼女達に大きな衝撃をもたらした。

無論、白石ウタハも含めて。

 

 

「分からない事があって当たり前なのにね。」

 

 

これの製作者に尊敬の念と極わずかの嫉妬を抱きながら、またもや作業に没頭しているとゾロゾロと人が集まって来た。

どうやら休憩時間が過ぎたようだ。

 

「部長だけ狡いですよ!!」と言った声が散漫するが、のらりくらりと追求を逃れる。

全員が溜飲を下げると作業を開始した。

 

と言っても解決の糸口は一向に見つからない。

色々試行錯誤していると2人の人影を目にした。

1人は見知った少女、もう1人は初めてみる少女であった。

 

 

「此処がエンジニア部の部室となっています。」

「流石に広いな。」

 

 

キョロキョロと辺りを見渡す見知らぬ少女、その隣に着くのは最近よく交流するメイドであった。

飛鳥馬トキ、C&Cの5番目にしてリオ会長の懐刀。

彼女とは少々因縁があったが、今では友好な関係を築いていた。

 

ふと、ウタハに先日の記憶が過ぎる。

彼女こそユウカの説明していたインターン生ではないかと。

格好からしてミレニアムの関係者ではないだろう。

 

名残惜しいが無視する訳にもいかない、特にスポンサーだというのなら尚更。

作業を一旦止めてウタハは2人に声を掛けることにした。

 

 

「君がユウカの話していたインターン生だね?私は白石ウタハ、一応ここの部長だよ。」

「初めまして、もう知ってるかも知れないが私の名前は───」

 

 

 

 

その後軽く挨拶して、ウタハは作業へ戻った。

と言っても何分か置きにインターン生の様子を見ているが。

危ないものは置いてないが念の為である。

 

インターン生の彼女の名は【喰代ミケ】というらしい。

唯の少女にしか見えないが、カイザー企業数社の株主だと言うのだから驚き物だ。

 

 

「世の中は広いね。」

 

 

それから悪戦苦闘する事約1時間後。

分かった事は【生体ロックが掛けられている】、【装填機構が存在しない】、【あらゆる機能に鍵が掛けられている】の3点。

 

 

「(逆に分からない事が増えてしまったな。)」

 

 

内2つはヴェリタスに協力してもらってやっと判明した事だ。

更にミレニアム有数のハッカー集団でも、鍵の解錠には苦戦していると言うのだから製作者には恐れ入る。

曰く、ハッカーの沽券に関わるとかで燃え上がっていた。

気持ちは少し分かるかもしれない。

 

そんな事を考えてると、爆撃音が遠くから聞こえた。

位置的には試射場だろうか。

気になり顔を覗かせるとそこには───

 

 

「テメェ、中々にいい腕してるじゃねぇか。アタシとも勝負しろよ。」

 

 

なんか増えていた。

 

ミレニアム最強と名高い、美甘ネル。

勝負を持ちかけられて気まずそうなミケと、そんな彼女を守るように前に出てるトキが見える。

 

少なくともウタハの記憶では理由なしに噛み付くような性格ではなかった筈だが……。

試射場の方へ目を移すとその理由が分かった。

 

ここは元々新作のデータを摂るために設けた試射場だ。

つまり試射の成績が残るのだが、気になって見てみると1人の成績が異常値を叩き出していた。

 

脳天、喉仏、鳩尾、四肢、迫撃砲においては目標物

それらを寸分の違いなく撃ち抜いていた。

 

同じ武器種を使ったのならまだ頷ける。

実際に狙撃、迫撃砲関連ならウタハも熟練者を知っている。

(カリンやヒビキとか)

 

が、彼女は全く別種の銃器を難なく扱った。

好戦的な彼女が勝負を吹っかけるのも頷ける。

が、どうやら当の彼女は困っている様子。

 

本来なら自分が間に挟まる余地はないのだが、相手はスポンサー様だ。

《光の剣》で既に予算が火の車という下心もあるが、助け舟を出しても文句は言われないだろう。

ウタハは困り顔をしてる少女の元へと歩み始めた。

 

 


 

 

「へぇ、面白ぇ事してんじゃねぇか?」

 

 

ホモは内心冷や汗を流しながら、その場を去ることも出来ずにいた。

理由は言わずもがな、3番目に会いたくない相手に見つかってしまったからである。(1番はホシノ(テラー)、2番目はアスナ)

よりにもよって試射のタイミングで出くわしたのが最悪だ。

 

 

「会長から今日は不在だと聞きましたが?」

「なに、ちょっと胸騒ぎがしてな。アタシが居なくても仕事の方なら大丈夫だ。」

「胸騒ぎ、ですか?」

「そうだ、それも飛びっきりの悪い勘がな?だから帰ってきた。」

 

 

胸騒ぎとは一体何の事だろうか。

候補が多すぎて絞れないが、恐らくはGL-00の事だろう。

彼女には幾つかの枷を付けているため、暴走の心配はない筈だが……不安だ。

 

 

「そんで戻ってきてみれば面白い事してるからよ。減るもんじゃねぇんだから良いだろ?」

「この御方は会長の恩……賓客です。手を出されると言うのであれば、先輩でも容赦は致しません。」

「ハハッ、アタシは別にテメェ相手でも構わないんだぜ?」

 

 

一触即発の空気に無いはずの胃が痛くなるホモ。

いや、今は喰代ミケか。

前世での名前をキヴォトスで使う事になるとは夢にも見なかった。

 

そんな現実逃避をしていると横から待ったの声が掛かる。

この部活を纏めてる部長、白石ウタハであった。

 

 

「やり過ぎだよネル、その人スポンサーに成るんだから少し大人しくしてくれないかい?」

「あぁ?……あー、そういう事か。心配いらねぇよ、コイツは唯のスポンサーじゃねぇんだから。インターン生なんだろ?」

 

 

救いの手から一転、これはダメそうだ。

心の中で吐血したホモはそう思った。

諦めてはいけない、その場しのぎはホモの得意分野だ。

具体的には未来の自分に丸投げする感じで。

 

 

「勝負なら後で乗ってやる、今は視察の方が優先だ。」

「……まぁいいや、アタシも聞きたいことがあるしな。」

「じゃあ私は戻るけど、あんまり機嫌を損ねるような事しちゃダメだからね?」

「へーへー、分かったっての。」

 

 

仲裁に来てくれたウタハは、それだけ言うと持ち場へ戻ってしまった。

だが未だにネルとトキの間では火花が散る幻が見える。

そんな重い沈黙を先に破ったのはネルの方であった。

主に、最大級の爆弾を落とす事で。

 

 

「……さて、アンタあの時の骨だろ?ココで何するつもりだ?」

 

 

今度こそ無いはずの心臓が止まったかと思ったホモ。

自分の目から見ても《ノバター君》の性能は問題なかった。

見た目以外にも変声機能を持つコレの中身を言い当てるのは不可能に近いはず。

 

何処でバレたのか?

あくまで冷静に返答する事にした。

 

 

「何故私だと分かった?」

「足音だよ、テメェのは全然聞こえねぇ。後はカマをかけただけだ。」

「……してやられたな。」

 

 

見た目を偽ろうとも、ホモ自身の体は肉の無い骨そのもの。

ホモの体重は20kgもないのだから足音は無いに等しい。

後、普通に焦ったことでボロが出た、そういうところだぞ。

 

ニカリとイタズラが成功したかのような笑顔を見せるネル。

すわ戦闘か!と身構えていたホモだが動きは無い。

それどころか不思議な事に、ネルからは大きな敵意が感じられなかった。

 

 

「付き合いは短くとも腐れ縁だったんだ、アンタの事は何となく分かってる。少なくとも下衆の類ではない程度はな?」

「どうだかな……。」

「アンタは自分の利と損が釣り合わない行動は取らねぇタイプだ。ミレニアムの技術を奪いに来たってんなら容赦はしねぇが。多分そうじゃねぇんだろ?こんな証拠の残りそうな手段は使わねぇよな?」

 

 

事実、トキやリオに次いで関係が深いのはネルであった。

毎日拠点に襲撃(遊びに)に来たあの姿が思い出される。

はて、何処でそんなに好感度が上がったのだろうか?

 

ネルの言う通り今回はミレニアムに何かするつもりは無い。

《色彩の嚮導者》が本格的な行動を見せるまで忍ぶだけだ。

ただ、どう説明したものかと悩むホモ。

ぶっちゃけ起きた事がデタラメ過ぎるのだ。

 

 

【キヴォトスがこの後、間もなく滅びそうになる!!】

【別世界線の生徒が攻め込んできたんだ!!】

【下手しなくても最悪全員死ぬよ!!】

 

 

唐突に言われて誰が信じる?

しかもかつて敵対していた相手の言葉だ。

 

少なくとも未来視出来るような生徒でなければ、早急な友好関係は結べなかったというのに……。

 

 

ネルが信じてしまった。

確かに嘘は言ってないのだが、何故だかもどかしい気分になる。

ネルはそれを訝しむ事もなく、喜色で顔をニヤつかせる。

 

他にも自分と仲間達が別行動を起こしてる事。

その為には他校の生徒を強化する事が必須な事。

()()()()()()()からリオに匿ってもらってる事。

 

嘘は言っていない、事実だけを淡々と説明した。

よくよく考えてみなくとも嘘をつく理由は無かったから。

ふとネルの顔を見やるホモ、彼女は完全にやる気の目をしていた。

 

 

「おっし決めた、今日はアンタ達について行くぜ。」

「!?」

 

 

大きく反応したのはトキであった。

小さな疑問が浮かんだホモだが、その真意に気づくことはない。

やはり、クソボケはクソボケであった。

 

 

「アンタの追跡者がアタシの悪い勘の正体なら、アンタの近くに現れる筈だろ?護衛役も1人増えてソッチにもメリットはあると思うけどな。」

「結構です、私1人で充分ですから。」

「つってるけど、最終決定はアンタだぜ?」

 

 

正直ホモにとっては有難い尽くしだ。

ネルの強さは知っている、護衛としてはこれ以上なく心強い。

何が切っ掛けでホシノ(テラー)に追いかけられるか不明な以上、戦力が増えるのは好ましい。

 

そしてどういう訳か、今はホモの正体を暴露するつもりもないらしい。

結論を言うと断る理由などあるわけが無かった。

 

 

「へっ、そう来なくっちゃな!」

「むぅ……。」

 

 

1人増えて三人行動をとる事になったホモ達。

トキは不承不承といった感じで黙って着いてくる。

 

 

 

現在時間にして昼時前。

長い廊下を歩くホモ達は《ゲーム開発部》の部室を目指していた。

 

全ては依星ケイ、かつて破壊を目論んだ少女に会いに行くために。

 





次回こそはRTA方式で……!!
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