「阿部巨人」はなぜここまで弱かったのか? 優勝候補筆頭にあった″致命的弱点″
【プロ野球緊急レポート】前編
″凡事徹底″を妨げる複雑な起用法
FRIDAYの調べでは、今季の巨人の打順は約100通り。一方の阪神は約60通りだ。
「阪神は1〜5番が固定されており、近本か中野拓夢(29)が出塁し、森下、佐藤、大山悠輔(30)の誰かがランナーを返すという仕事が決まっている。他の選手は、彼らが塁にいるケースではチームバッティングに徹することができます。
ところが巨人の場合は、前日に2番だった選手が翌日には6番に座っていたりする。ましてや、慎之助は一軍で結果が出ないとすぐに交代させたりファーム行きを命じる。バント失敗で懲罰交代を命じられた泉口友汰(ゆうた)(26)のように発奮する選手もいるでしょうが、多くは萎縮して満足なプレーができなくなります」(同前)
この複雑な起用法が、2つ目のキーワードである″凡事徹底″を妨げる。阿部監督が目指すのは、守備からリズムを作り、場面に応じてバントなどの小技を使って1点をもぎ取る野球。これを成功させるには、チーム全体でその意識を共有する必要があるのだが……。
「『得点圏にランナーがいる場面ではなるべく三振を避ける』といった当たり前のことができていない。東京ドームは狭い球場なので、巨人の野手は引っ張りの意識が強い一発頼みの打撃をしてしまいがちです。
今季は多くの選手が、チャンスの打席で追い込まれた際に外へ逃げる変化球やボール球をことごとく空振りしていました。だから安打数のわりに得点が増えない。これは慎之助の理想とする野球からかけ離れています。スタメンや打順がバラバラだと、自分の成績ばかりを意識し、チームバッティングにまで気が回らなくなるんですよ」(前出・篠塚氏)
事実、阪神の四死球が479個だったのに対し、巨人は約40個少ない440個。出塁への意識の差は歴然だ。
そして、巨人が最も固定に苦しんだのは扇の要。開幕当初は巨人で長らく正捕手を務めた阿部監督が獲得を熱望した甲斐がスタメンマスクを被っていた。
「シーズン序盤こそ打ちまくりましたが、結局68試合に出場して.260、4本止まり。自慢の″甲斐キャノン″も年々衰えていて、盗塁阻止率も低い。甲斐に代わって87試合に出場した岸田行倫(28)は盗塁阻止率が4割を超え、打率も3割近く長打も狙える。
たしかにリードは甲斐のほうが上かもしれませんが、ウチなら30歳を超えた2番手捕手に15億円も払いません。配球やリードは試合に出てこそ上達するもの。結果論かもしれませんが、岸田をスタメンに据えつつ、山瀬慎之助(24)など若手有望株を併用して鍛えれば、阪神のように勝ちながら育成ができたかもしれない。
これは背広組の責任でもありますよ。阿部さんが甲斐獲得を望んだとき、フロントは甲斐の衰えや盗塁阻止率の低さに難色を示しつつも止めなかったと聞いていますから」(セ・リーグ球団フロント)
ただ、篠塚氏は阿部監督に同情的だ。
「巨人は常に強くあらねばならないというファンの期待が大きいチーム。それゆえ経験の浅い監督は、育成より目先の勝利を優先してしまうんですよ。だからこそ、慎之助の就任前には『最初の3年は結果が出なくても我慢して土台作りをしろよ』って直接伝えたんですが……」
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