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【公選法99条の2第1項について】 日本保守党さんの比例区選出議員の離党騒動で公職選挙法の不備を私が指摘したところ、一方で評価してもらったり他方で「保守党に近寄らないで」と保守党さんの支持者の方に懇願されたりしている。 もとより私は保守党さんのために発信しているわけではない。こんなことが続いたら日本の議会制民主主義が壊れてしまうと考えるからだ。保守党さんの役員の方も同じことを述べておられる。もはや保守党さんだけの問題ではないのだ。逆から言えば、今の保守党さんの離党騒動をめぐる闘いは、日本の議会制民主主義を守るための闘いなのだ。ただの権力闘争と矮小化して考えるべきではない。 比例区選出議員の離党という論点はかねてから論じられてきたものであり、今年は日本維新の会さん、昨年は国民民主党さん、一昨年は立憲民主党でも発生した。いわば年中行事だ。 そのたびに当該政党の支持者は怒り、失望し、最後には政治への関心を失くす。 まずは、現行の公選法をみてみる。99条の2第1項が「主戦場」だ。長いがまずは条文そのものを掲げる。 《衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選人(第九十六条、第九十七条の二第一項又は第百十二条第二項の規定により当選人と定められた者を除く。以下この項から第四項までにおいて同じ。)は、その選挙の期日以後において、当該当選人が衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党等以外の政党その他の政治団体で、当該選挙における衆議院名簿届出政党等であるもの(当該当選人が衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党等(当該衆議院名簿届出政党等に係る合併又は分割(二以上の政党その他の政治団体の設立を目的として一の政党その他の政治団体が解散し、当該二以上の政党その他の政治団体が設立されることをいう。)が行われた場合における当該合併後に存続する政党その他の政治団体若しくは当該合併により設立された政党その他の政治団体又は当該分割により設立された政党その他の政治団体を含む。)を含む二以上の政党その他の政治団体の合併により当該合併後に存続するものを除く。第四項において「他の衆議院名簿届出政党等」という。)に所属する者となつたときは、当選を失う。》 弁護士の私でもこのまま読むのは苦痛なので、あまり意味を持たないカッコ書き等を外して再掲する。 《衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選人は、その選挙の期日以後において、当該当選人が衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党等以外の政党で、当該選挙における衆議院名簿届出政党等であるものに所属する者となつたときは、当選を失う。》 藤原が立憲民主党の比例区で当選した場合、投票日以後に藤原が「衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党」つまり立憲民主党以外の政党かつ選挙時に存在していた政党(自民・公明・維新・国民・共産・社民・れいわ・参政・保守)に移籍した場合は当選を失う。という意味だ。 しかし余計な一文がある(①)。そして重要な要素を欠いている(②)。 ①「で、当該選挙における衆議院名簿届出政党等であるもの」という余計な一文だ。上記のとおり藤原が比例区当選をした選挙の時点では存在しなかった政党に移籍しても当選は失わない。 ②離党自体は何ら制約されない。他党への所属だけが問題とされているのだ。だから藤原が立憲民主党を離党するだけでは公選法上は何ら問題ないことになる。 したがって、多くの有権者の理解を得るためには、①を削除し、かつ②について一定の離党ケースでは直ちに当選を失うと規定する必要がある。②の規定ぶりによっては離党すれば直ちに当選を失うので移籍をめぐる①の検討自体が不要となる。 離党すればどんなケースでも直ちに当選を失うと規定することは難しい。日本国憲法43条の、国会議員が「全国民の代表」であるという規定が存在するからだ。だからどのような離党の場合に当選を失うと規定するか、丁寧に要件を決めなければならない。立法を担う国会議員の腕の見せどころとなる。 私は、一昨年の立憲民主党比例区選出議員の離党に怒り心頭に発したひとりだ。一方で他党のことになると無関心になり、また対岸の火事さながら、笑いながら眺めがちだ。 しかし、今回の保守党さんの離党騒動に声をあげなかった人は、いずれまたやってくる自分達の党の比例区選出議員の離党の際に発言権はないと断言したいと思う。 みなさんと知恵をしぼって、公選法99条の2第1項をいいものに変えたいと思う。 #弁護士