2016年、国が学校法人「森友学園」に対して払い下げた大阪府豊中市の国有地を巡り、国土交通省大阪航空局は3日、国有地に埋まるごみの推計量が約5000トンだったとする報告書を公表した。学園側との土地取引時、8億円余を値引きする根拠となった推計量の約4分の1にとどまる。大幅な値引きの妥当性や、当時の算定根拠が揺らぐ形だ。(高田みのり)
そもそも森友学園問題って?
2016年6月、財務省近畿財務局が大阪府豊中市の国有地を学校法人「森友学園」へ売却したことに伴い発覚した一連の問題。森友学園がこの国有地に開設を予定していた小学校の名誉校長には、当時の首相だった安倍晋三氏の妻である昭恵氏が就任予定だった。国有地は鑑定価格から8億円余値引いた異例の価格で売却された。
国会で取引への関与を問われた安倍首相は「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁。国会での追及を避けるため、当時の佐川宣寿財務省理財局長の指示で、同省が昭恵氏や政治家に関する決裁文書の記述を削除するなど公文書を改ざんしていたことも2018年3月発覚した。
◆総量約1万9500トンのごみがある、と推計したが
国有地を再び売りに出すにあたり、2024年10月〜25年3月に航空局が調査。ボーリング調査や地中レーダー調査などを行い、約500ページの報告書を同局のホームページで公表した。
国有地を巡っては2013年、学園側が小学校用地として財務省近畿財務局に取得を要望。地中のごみなどを理由に、国に対して度重なる値引き交渉をしていた。当時財務省から依頼を受けた航空局が試掘によるごみの深さなどから、その総量を約1万9500トンと推計。国は撤去費用など約8億2000万円を鑑定評価額から差し引いて2016年6月に約1億3400万円で売却した。ただ、土地取引を巡る一連の問題が発覚して学校の開校が困難となり、2017年6月に国が同額で買い戻した。
◆推計のもととなる地中調査の範囲を「敷地全体」に広げた
大阪航空局によると、新たな推計総量から見積もった撤去費用は約6億3000万円で、学園への土地売却時に撤去費用として値引きした額(約8億2000万円)とは約2億円の差がある。建物も含めて取得要望を募り、見積もり合わせなどを通じて随意契約を結ぶ。
ごみの推計量が4分の1に減った理由について、同局の担当者は「以前は敷地の一部を対象に、業者の試掘や過去調査をもとに算定していた。今回は敷地全体を対象に、専門業者に委託して埋設物深度や混入率を測定した」と説明。今回の調査については「埋設物がある土地は、専門業者へ調査を委託するよう定めた新制度に基づき実施したもの」と話した。
会計検査院は2017年11月、ごみの混入率や深さなどから、総量を最も少ない場合で約6200トンと試算。航空局が算出した8億円余のごみ撤去費用を「根拠不十分」としていた。
土地取引の過程では、森友学園の籠池泰典(かごいけ・やすのり)元理事長が財務局職員に、安倍晋三首相(当時)の妻・昭恵氏との写真を見せて「『いい土地ですから前に進めてください』と言われた」などと説明。財務省による公文書改ざんにもつながった。
8億円余の巨額値引き 決裁など公文書改ざんとともに、森友学園への国有地売却で解明が必要な問題。森友の問題が国会で追及される発端となった。森友側は当初、土地を買い取る前提で国と定期借地契約を結んでいた。だが、森友側は2016年3月、新たな生活ごみなどが見つかったとして、撤去費を差し引いた金額による土地購入を申し入れた。国は同年6月、鑑定価格9億5600万円から撤去費約8億1900万円などを引いた1億3400万円で売買契約を結んだ。
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