初代ファミコンがアズキ色である理由(ゲームウォッチ仮説)
なんてことない小さな話。
ネットオークションでゲームウォッチを買ってみて、なつかしくてずっと遊んでいるのだが、ちょっと気づいたことがあるので書きとめておく。
八十年代からの任天堂の躍進というのは、とにかく凄いものらしくて、ビジネス書だとか、教養新書みたいなシリーズで、「任天堂躍進神話」みたいなものを目にする。どのくらいホントなのかわからないけれども、まぁ、いろんな伝説がある。
そのうちの一つに、
「ファミリーコンピュータは、安価に売るために、徹底的なコストダウンが図られた。ファミコンが白とアズキ色のツートンカラーになったのは、その色のプラスチックが最も安かったからである」
というエピソードがある。
もっともらしい話で、なるほどと思う。以下、このストーリーを「仮に」正しいものとして話を進めるが、私は、このエピソードを聞くたびに、ひっかかりを覚える。
それは、
「アズキ色のプラスチックって、そんなに安いの? どうして安いの?」
ということだ。
白のプラスチックが安いのは理解できる。いろんなところに広く使われるであろうから、白のプラスチックは大量に作られる。ということは、スケールメリットがあり、また在庫が大量にあるのだから、そのぶん安く仕入れることができるだろう。
でも、アズキ色ってそんなに広く使われているだろうか。そんなことはなさそうに思う。では、何か別の理由があって、アズキ色は安く製造できるのか?
(注:この話は、「アズキ色安価説がもし正しいとしたら、それはどういう理屈でそうなるか」という思考を語るものであり、この内容を史実だと主張するものではありません! ファミコンを開発された上村雅之さんのご証言とも食い違います)
その答えがつかめないままだったのだが、今回「あ、そうか」と思ったのは、ファミコン直前の任天堂の主力商品ゲーム&ウォッチ。そのベーシックシリーズの筐体はアズキ色のプラスチックでできているのだ。ファミコンとほぼ、同じ色。
つまり、任天堂は、大ヒット商品であるゲーム&ウォッチを、アズキ色のプラスチックで作っていた。ということは、任天堂は、アズキ色のプラスチックを大量に確保していただろう、という見込みができる。
もしくは、プラスチック問屋(そういうものがあるのかどうか知らないが)は、任天堂からの大量発注を受けて、アズキ色のプラスチックを大量に製造していた。あるいは、アズキ色のプラスチックを作るための染料を大量に確保していた。
何しろ、作れば作っただけ売れるゲーム&ウォッチ。それを作るために、材料確保もビッグスケールだったことだろう。そのぶん、単価はかなり下がっていたことだろう。
その材料を、ファミコンに流用する。それはつまり、アズキ色は、「大量に発注することで、任天堂にとって最も安く手に入れることができたプラスチック」ということになる。
ということで、
「ファミコン本体を作るとき、アズキ色が選ばれたのは、ゲーム&ウォッチ特需でその色のプラスチックを任天堂が大量に確保しており、そのために単価が最も安かったから(もしくは、ゲーム&ウォッチ特需でアズキ色の需要が大幅に増えた結果、値段が安くなっていたから)」
という仮説を立てることができました。本当かどうかわからないけれど(確認のしようもないし)、この説明で私は納得することが出来ます。
気づこうと思えば、いつでも気づくことができそうなことなのに、今になるまでわからなかったのは自分でも不思議だ。
そういえば、ファミコンのコントローラーは、アズキ色のボディに金色の金属プレートを貼ったもので、これはそのままゲーム&ウォッチと同じデザインですね。任天堂的には、ファミコンを売るとき、
「このファミコンというものは、ゲーム&ウォッチの延長上にあるもの(進化したもの)と理解して欲しい」
という気持ちがあったはずです。
ということは、「意図的にゲーム&ウォッチに似せよう」という意図があって、そのために「アズキ色が選ばれた」、たまたま、アズキ色は安価に仕入れることができる材料であった、その論理がいつしか見失われて、「ファミコンはいちばん安い色のプラスチックで作った」という表面的な説明だけが残った……という可能性もあるように思う。
あるいは、「いちばん安いプラスチックだからアズキ色を選んだ」→「ゲームウォッチと同じ色だから、ついでにデザインも似せてやれば、シリーズっぽい」という発想の順番かもしれない。
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●付記・続きとして『ファミコンカラー研究その2・「任天堂伝統色」説』という記事を書きました。併せてお読み下さい。
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