米価の高騰によるコメ騒動は、政府備蓄米の放出で一段落した。ところで、来年の米価はどうなるのだろうか。
本コラムで再三言及しているが、当然のことながら資本主義経済なので米価は需給で決まる。農林水産省は需給見通しを大きく外したので、「もっと精緻にやれ」と言われている。
筆者は、役人が需給見通しを当てるのはもともと不可能であると思っているので、農水省がいくら精緻にやっても需給見通しを当てるのは至難の業だろう。精緻にやれという有識者は、おそらく自分では、計算したこともなく空理を言う「ド文系」の人ではないか。需要と供給の二つも正確に予測し、当てるのは神業だ。
筆者もしばしば需給見通しや価格予測を安易に求められる。需要と供給の二つを当て、価格を予測するのはかなり難しい。そんなに簡単に分かれば、先物市場で大もうけができる。もしうまく予測できたとして、そんな貴重な情報をただで提供するはずないと、筆者は答えている。
本コラムで、需給が見通せれば、価格はほぼ分かると書いた。しかし、その需給を予測するのは難しい。その上で、農水省がやらされた需給見通しを述べたい。なお、役人による需要予測に基づく需給調整の許認可行政というのは禁じ手だ。2000年くらいまでに各省庁で横行していたが、それ以降はやめたはずだ。需要予測を強要される農水省はある意味で気の毒だ。
ともあれ、精緻さを要求されて出したのが、25/26年主食用米等生産量728万~745万トン(玄米)、主食用米等需要量697万~711万トン(同)という見解だ。
これが正しいなら、かなり、米価は低下する。過去データから回帰式で推計すると、20%程度低下すると試算できる。
実際の販売価格は、5月に5キロ当たり4200円程度から7月には3500円程度まで下がったが、その後上昇し、今では4200円程度に戻っている。こうした最近の推移から、米価は高止まりするという民間の予測が多い。
農水省の需給見通しはちょっと当たりそうにない。生産はこれまでの傾向から過大で、需要はやや過小になっていると言わざるを得ない。筆者の米価の見通しはやや高止まりするとしておこう。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)