ロシア関連

ロシア軍の自爆型無人機に新機能、移動目標への攻撃が可能なGeran-2が登場

イラン製の自爆型無人機=Shahed-136は予め座標が判明している静止目標のみを攻撃可能だが、Telegram上に投稿された映像には新型Geran-2が燃料タンクを運ぶ列車を攻撃する様子が映っており、ロシア人が独自の改良を施したGeran-2に移動目標に対応したバージョンが登場した。

参考:Russian Shahed Drones Begin Striking Moving Targets
参考:Russia Using Long-Range Drones To Attack Ukrainian Trains: Official

新型Geran-2に有効性が認められれば数ヶ月以内に「同じタイプのFP-1」がロシア軍占領地域やブリャンスク州、クルスク州、ベルゴロド州で確認されるだろう

イラン製の自爆型無人機=Shahed-136は予め座標が判明している静止目標のみを攻撃可能で、飛行ルートも事前に入力されたプログラムに依存し、カメラも衛星通信も搭載していないため目標に到達したかどうかも外部からの観測に頼っており、ロシア人曰く「オリジナルのShahed-136にはアンチスプーフィング対策すら施されていない」と言うが、ロシア人が独自の改良を施したGeran-2はアンチスプーフィング対策が施され、ウクライナのモバイルネットワークに接続できるようになり、サーチライトの光に反応して回避行動を行う機体まで存在する。

但し、大部分のGeran-2は生産効率を優先するため基本セットのみのシンプルな構成だが、一部の変種に新たなバージョン=移動目標に対応したGeran-2が登場して注目を集めており、Telegram上に投稿された映像には新型Geran-2が燃料タンクを運ぶ列車を攻撃する様子が映っている。

ウクライナのディフェンスメディアは1日「電子光学センサーと通信機能を備えたGeran-2が初確認されたのは6月で、機体内部から映像処理や自律的な目標の検出に使用されるNvidia Jetson Orinが発見された。この機体はウクライナのモバイルネットワークに接続して通信を行うのではなく、見通し通信を中継する無人機を経由して地上管制システムから制御されており、この特性はShahed-236のものに類似し、地上オペレーターの制御範囲は220kmだ」と指摘し、走行中の列車攻撃はチェルニーヒウ州ボブロヴィツァ付近で発生しているためブリャンスク州からの制御が可能という意味だ。

ロシア軍が走行中の列車攻撃に使用した新型Geran-2の詳細、これをどうやって制御したのか、機体との通信をどう確保したのかは想像の域を出ないものの、静止目標ではなく移動目標を攻撃可能なGeran-2の登場は自爆型無人機の可能性を広げることに繋がり、War Zoneも「制空権の確保に失敗したロシア軍は後方地域における移動目標への攻撃能力が限定的なので、この任務をGeran-2で部分的に代替できることは非常に有益だ」と警告したが、同時に「ロシア軍にできることはウクライナ軍にも可能だ」と指摘している。

移動目標に対応するシーカーを搭載した兵器システムは他にもあるが、制限は多くても移動目標を攻撃可能なGeran-2の利点は「市場で入手可能な技術やコンポーネントで構成され入手性が優れている」という点につき、生産効率を優先する基本セットのGeran-2より高価になっても「高性能なシーカーを搭載する専用システム」よりは相当安価だろう。

出典:Efrem Lukatsky

どちらにしてもShahed-236の特性に類似した新型Geran-2は「移動目標を攻撃可能な万能兵器」から程遠いものの、静止目標しか攻撃できないGeran-2と見分けがつかないため、防御側は移動目標を攻撃可能なGeran-2しかもしれないという前提で行動を余儀なくされ、安全だと考えられてきた後方地域での移動に制限をもたらしかもしれない。

そして新型Geran-2に有効性が認められれば数ヶ月以内に「同じタイプのFP-1」がクリミアを含むロシア軍占領地域やブリャンスク州、クルスク州、ベルゴロド州で確認されるだろう。

関連記事:F-16によるShahed-136迎撃は簡単ではない、機関砲での迎撃は非常に危険
関連記事:ロシア軍の無人機発射数が6月に過去最高を記録、まだまだ増加する可能性
関連記事:ロシア人ミルブロガー、イランは他者の教訓を学ばなかったため無力
関連記事:ロシアはミサイルを1950発以上、自爆型無人機や囮無人機を計1.2万機保有
関連記事:ロシアのShahed生産は1年前なら月300機程度、現在は同数を3日以内で出荷

 

※アイキャッチ画像の出典:ТЕЛЕКАНАЛ ЗВЕЗДА

ロシアのガソリン不足は悪化し続け、依然として製油所への攻撃も阻止できない前のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    20日夜もセバストポリで防空システムが作動、3日間連続で無人機が侵入か

    白昼に黒海艦隊司令部を無人機で攻撃されたセバストポリでは夜も防空システ…

  2. ロシア関連

    マリウポリで降伏したウクライナ兵士は約1,000人、上級指揮官の姿はなし

    ドネツィク人民共和国の代表は「これまで降伏したウクライナ軍兵士の中に上…

  3. ロシア関連

    潜水艦ではなく「潜航可能な巡視船」を発表したロシア、顧客の要求に応じて魚雷も搭載可

    ロシアの潜水艦設計を担当しているルビーン中央設計局は今月12日、海外の…

  4. ロシア関連

    プーチン大統領、ドネツクとルガンスクの独立を承認する法令に署名

    ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナからの分離・独立を主張するド…

  5. ロシア関連

    ロシア国防相、ウクライナとNATOが宣言した反攻作戦の阻止に成功した

    設定された目標と結果を見れば「ウクライナ軍の反攻作戦は失敗した」と表現…

  6. ロシア関連

    クレムリンを支持するロシア人、再教育をウクライナ人に施し同化を強制

    クレムリンを支持する人々は「キーウ政権から解放を望むウクライナ人が存在…

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP