ロシア軍の前進ペースは鈍化しているもののザポリージャ州フリアイポレ方面だけは例外で、DEEP STATEもRYBARも「ロシア軍がフリアイポレ方面で前進した」と報告し、Kyiv Independentも2日「ロシア軍がドニプロペトロウシク州南東部への前進を強化している」と報じた。
参考:Russia presses advance in Dnipropetrovsk Oblast, threatening Ukrainian supply lines
参考:Мапу оновлено
参考:Хроника специальной военной операции за 2 октября 2025 года
ザポリージャ州フリアイポレ方面の防衛ラインが数週間以内に大きく崩れる可能性は限りなく低いものの、強固な防衛ラインを迂回する布石が着々と進行している
ロシア軍は前進ペースは8月以降に低下し、最も大きな戦力を集中させているポクロウシク方面ではほぼ攻勢が行き詰まり、他の方面も6月~7月と比べると大幅に前進ペースが鈍化しているものの、唯一の例外はドネツク州と接するドニプロペトロウシク州南東部とザポリージャ州北東部=ノヴォパヴリヴカ方面で、ウクライナ軍参謀本部も9月15日「効果的な指導力の欠如によって領土と人員の損失が生じたため第17軍団のシレンコ司令官と第20軍団のキトゥギン司令官を解任した」と発表したが、DEEP STATEは「そんなことがあり得るのか?」と述べて「領土損失の原因は別のところにある」と示唆していた。

出典:Сухопутні війська ЗС України
DEEP STATEは2日「ロシア軍の前進ペースはほぼ半減した」「9月の領土損失は259㎢で5月以降最も少ない数字だ」と報告し、ノヴォパヴリヴカ方面については「依然としてここが問題だ」「衝突回数の割合はポクロウシク方面の約半分なのに領土損失の割合は全体の約半分を占めている」「最近の人事による状況改善を期待できない」と指摘。
DEEP STATEはザポリージャ州フリアイポレ方面について1日~3日までに「ロシア軍がヴォロナ川沿いで支配地域を広げた」「ロシア軍がステポヴェ方向に支配地域を広げた」「ロシア軍がテルノヴェ方向に支配地域を広げた」「ロシア軍がカリニフスケを占領した」「ロシア軍がO-0510沿いで支配地域を広げた」「ロシア軍がノヴォイヴァノフカ南郊外で支配地域を広げた」「ロシア軍がオルヒフスケを占領した」「ロシア軍がポルタフカ集落に侵入した」と、RYBARも「ロシア軍がノヴォリホリフカ郊外まで前進した」「ロシア軍がポルタフカ東郊外に前進した」と報告。
Kyiv Independentも2日「ロシア軍はウクライナ軍の補給ルートを混乱させるためドニプロペトロウシク州南東部への前進を強化している」と報じ、ザポリージャ州フリアイポレ方面の見通しについてウクライナ軍やアナリストの言及を紹介している。
“Black Bird Groupのカステヘルミ氏は「ロシア軍がドニプロペトロウシク州の州境にある集落を約10個ほど占領しているが、まだ重要な防衛拠点まで距離があるため状況の急速な変化は確認されていない」「この地域におけるリスクの1つはザポリージャに通じるN-15とドニプロに通じるP-85が交わるポクロフスケとフリアイポレを結ぶ道路が遮断されることだ」「既にロシア軍はポクロフスケから11マイルの位置に到達しているため、まもなくポクロフスケはFPVドローンの射程に収まるかもしれない」「この地域の問題は他方面と比較して人員が極端に不足している点だ」と指摘した”

出典:Минобороны России
“ウクライナ軍のトレグボフ報道官は「ロシア軍がドニプロペトロウシク州の集落を幾つか占領しているのは事実だが、もう木々の葉が少なくなっているため広大な平原を踏破してパブログラードのようなドニプロペトロウシク州の主要拠点に迫ることは困難だ」「ロシア軍は兵力を集結させて攻撃を仕掛けるものの、後からウクライナ軍の反撃で押し戻されるためロシア軍の前進テンポは戦略的なものではない」と言う”
“ロシア軍の前進テンポはDEEP STATEのマップで確認でき、彼らは前線の動きを正確に追跡し、ウクライナ軍よりも早くロシア軍の突破を報告することが多い。それでもトレグボフ報道官は「ロシア軍が過去数ヶ月間で獲得した領土は徒歩で移動できる範囲だ」と指摘したが、ウクライナ人アナリストのパブロ・ナロジニー氏は「ロシア軍がドニプロペトロウシク州とザポリージャ州の州境に近いヴェルボーヴの制圧を試みている」「あと15kmほどドニプロペトロウシク州内に前進すればドンバス地方におけるウクライナ軍の補給ルートに脅威を与えるかもしれない」と指摘した”

出典:Alexey Tolmachov/CC BY-SA 4.0
ザポリージャ州フリアイポレ方面の防衛ラインが数週間以内に大きく崩れる可能性は限りなく低いものの、フリアイポレ方面の強固な防衛ラインを迂回する布石が着々と進行しており、ウスペニフカを失ってP-85経由の移動が困難になるとフリアイポレへの補給が複雑化し、フリアイポレまで失うとオレホボの防衛ラインが怪しくなり、オレホボまで失うと固定化されていたザポリージャ州の防衛ラインが崩壊して来年の今頃にはザポリージャの安全が直接脅かされているかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
すでにP-85まで10Km、限定的な妨害は始まっているかもしれませんね。
ウクライナコントロールマップで見ると本当にこの辺りはウクライナ軍の部隊が少ない事が分かります。
そしてこの辺りに布陣している第110機械化旅団や大統領旅団第3機械化大隊へは手当てがされたのでしょうか······
ロシアの進軍速度はクピャンスク、コンスタンチノフカ郊外、ポクロウシクと各要衝で市街戦に突入しているので速度は当然落ちるでしょうね。
特にクピャンスクがもう保たない感じにしか見えないので川向こうの広大な包囲箇所も含め酷いことになりそうですね。
おそらく一番厳しいのは、シヴェルシクかと思われます。
クピャンスクは北部にロシア軍が定着に成功しましたが結局、軽歩兵集団に過ぎず迂回浸透する事に優れていても突破力に欠けており迂回不可能な市内の防衛線を攻略出来るかどうかが不明です。
その為、クピャンスク市街地戦そのものがドローンによる支援があれば軽歩兵だけでも大都市の攻略が可能なのかの試金石と言った状況です。
対するシヴェルシクは、市街地にこそ取り付かれていないものの長年、ロシア軍を阻んできた東部の要塞化された高地複数と北部の森林帯を失い川沿いの低地しか残されていません。
未だに市街地戦になっていないのはロシア軍が補給路のヤムピリを攻略することで後背を遮断するアプローチを選んでいるからというだけといった状況です。
フリアイポレにせよクピャンスク、シヴェルシクにせよ共通しているのはウクライナ軍の反撃が去年度並みに弱い事で予備戦力の大半をポクロウシク北東部での戦闘に費やしている事のしわ寄せが多くの戦線に及んでいるのは確かかと思われます。
クピャンスクはどうなるか興味深いですよね、何となくですが単純にウクライナ側の兵員が不足し過ぎなだけではとも思います、戦う人間足りないは戦略戦術以前に守り様も無いでしょうから厳しい戦いですね。
ウクライナ軍、最近はドローンや巡航ミサイルなどの長距離攻撃で大きな戦果を上げていることから、注目はそれらに集まってますが肝心の陸戦においての劣勢の根本原因である兵士不足の改善はどうなっているのでしょうか?
ロシア軍の前進が鈍化してる間に出来るだけ多くの動員を行って訓練して前線に送り込む必要ありますが、こちらの動員強化と訓練促進は何かしら明るい話はないのでしょうか。
そのウクライナの動員した人員は今ちょうどポクロフスクの大釜で溶かされている真っ最中です。
>長距離攻撃で大きな戦果を上げていることから
>何かしら明るい話はないのでしょうか
ウクライナ側はそういう映える戦果出すことにばかり全振りしてきたツケが今の戦況なので。
残念ながらないと思います。ウクライナ指導層、特にゼレンスキーはネガティヴな情報は聞きたくない人です。その下にいる人たちも見栄えや受けを狙った作戦は立てますが、地道なことは嫌がります。
とうに充実させるべきだった人員増加は進まず、クルスクで多くの兵力を無駄にしました。このような戦略的欠陥も大きな問題ですが、最大の問題はウクライナ人は戦いたがらない人が多いのです。国外に避難したウクライナ人に募集かけても人が集まらないそうです。
会社などの組織と同じですね。
上層部が、『自分の保身のため』中間管理職に責任を押し付けて左遷するやつです。
保身のために、見苦しいことをやっているようでは、リスペクトする価値ないなと感じてしまいます。
中間管理職に押し付けての左遷でしょうね。
極めて興味深いのは、ウクライナ軍は自分たちの損失がいかに少ないか。主張していることです。どうやら、戦果を出せないので、これぐらいしかダメージがないと喧伝することに必死なようですね。必要なのはそれではないのですが。
確か、国際政治学者の東野氏がロシアが池乃メダカのように「もうこれぐらいにしといたるわ!」というくらいボコボコにするみたいな軽薄な発言していました。現在、「もうこれぐらいにしといたるわ!」になっているのはどちらでしょうね?
第二次世界大戦後、世界最強レベル・世界最大レベルの戦いをやってるわけですからね。
損害がでるのも普通なわけで、仰るように損害が少ないという主張、ちょっと無理があるなと。
ロシアは未だにウクライナ程度の弱小国にすら勝てないwとか日本のネット上で言われ続けているけど、ウクライナ自体が元から弱小国どころか人口・資源・軍事力共にロシア除けば東欧最強(旧ソ連圏2位)の軍事大国だと一体何度言えば。
そこから西側が全面支援して10年近く強化してきた訳で。
ロシアと戦争しているのになぜロシアを除いて比較してしまうのか…
日本だって中国以外のアジア諸国の中では上位の軍事力とアメリカの後ろ楯を持ってるけど中国軍と比べたら格差は明らかでしょ
ウクライナが弱いという前提の話しは、仰る通り不思議に感じています。
ウクライナ陸軍は、西側の中でも、アメリカ陸軍に次ぐ強さと思いますよ。
世界中から、武器弾薬・装甲車両・対空火器を含めて、とんでもない量も集まりましたからね。
(良し悪しは置いておいて)ウクライナの損害許容度は、アメリカや西欧大国を圧倒的に上回っているわけで、世論の面での継戦能力も高いなと感じています。
>極めて興味深いのは、ウクライナ軍は自分たちの損失がいかに少ないか。主張していることです。
動員数に差がある以上、キルレシオがソレ以下だと破綻してしまいますので、そういう主張をするしか無いのでは?
実際、破綻して無い以上は3対4程度なんだとは思います。
人口比から見てかなりキツイとは思いますが「まだヤレル」以外の言いようが無いでしょう。
社長は会社で一番安全なところにいて座り心地の良い椅子に座ってるから会社の危機にどこまでも鈍感、そんな一般論で済めば良いんだけど
実際は何人犠牲が出ようが一日でも長く続けることが儲けにつながるという構造なので……
仰る点、理解できます。
『風が吹けば桶屋が儲かる』いつの時代・どんな逆境でも変わらないわけですが、戦争でこの構造を見れば残念に感じてしまいますね。…
両軍とも今はポクロフスクの『決戦』に注力していて他戦線は手薄かつ、ドニプロ州はそれでもなおロシア側が前進できるぐらいにウクライナ側の陣地も防衛線も殆ど無いだけじゃない?
ロシアは開戦以降ずっと少なかった兵数がようやく追い付いて、全方面で地道に兵力削る戦いに終始しているだけでしょう。
ウクライナ側が兵力薄く弱くなったところが押されてそこが集中していると勘違いされているだけ。
ポクロフスクやコンスタンチニフカの守りが固いなら
防備の薄いドニプロ方面へ注力というのは合理的
占領エリアを広げておけば後で交渉の材料にもなる
特にポクロフスクの方が落ちたら、同市は今度はそのままロシアが北ドネツク及びドニプロ・ザポリージャ方面攻める拠点となる。地図見れば分かるけど、それぐらいの要衝。
しかし1枚目の写真の機材のpip-boy味よ。
ちゃんと液晶パネルの令和最新型なんでしょうけど。