欧州関連

ギリシャ海軍の近代化、FREMM級を最大4隻取得することでイタリアと合意

ギリシャとイタリアは29日に防衛協定に署名してFREMM級(2隻+2隻)購入で合意した。ギリシャはイタリア海軍が運用中のカルロ・ベルガミーニとヴィルジニオ・ファサンを支援パッケージ込みで計6億ユーロで取得する見込みだ。

参考:Greece and Italy sign agreement for acquisition of up to four FREMM frigates
参考:Frigate sale to Greece turns Italy’s active warships into fast cash

潜在的な顧客が求める緊急性の高いニーズに対応するため「自軍が保有する艦艇を移転する/自国が発注した建造枠を譲る」という手法は珍しくない

ギリシャはトルコが一方的に宣言したEEZ=排他的経済水域内で掘削調査を開始したため軍事衝突寸前まで緊張が高まり、これを受けて海軍の大幅な近代化に着手し、フランスからFDI級フリゲートを3隻調達中、老朽化が進む209型潜水艦の後継潜水艦、FREMM級フリゲート艦、高速哨戒艇の調達も検討していたが、ギリシャとイタリアは29日に防衛協定に署名してFREMM級(2隻+2隻)購入で合意した。

Defense Newsも「両国はイタリア海軍が運用中のカルロ・ベルガミーニとヴィルジニオ・ファサンをギリシャに売却することで合意した」「1隻あたりの取得価格は支援パッケージ込みで約3億ユーロと報じられている」「今回の取引において重要なセールスポイントはスピードだ」「トルコへの対応策を模索しているギリシャにとって今回の取引は新造船建造よりも圧倒的に時間がかからない」「この売却手法はエジプトにFREMM級、インドネシアにパオロ・タオン・ディ・レヴェル級を輸出したの同じ方法だ」と報じている。

イタリア海軍は保有しているFREMM級とパオロ・タオン・ディ・レヴェル級を売却すると直ぐに新たな艦艇を発注しており、ギリシャに売却するカルロ・ベルガミーニとヴィルジニオ・ファサンも汎用型の1番艦と対潜型の1番艦として2013年に就役したFREMM級の古参艦に相当し、この2隻のギャップをカバーするためイタリア海軍はFREMM級の最新バージョン=FREMM Evolution(推定排水量1万トン以上/VLS90セル以上)を追加発注する可能性が高い。

出典:Marina Militare

因みに潜在的な顧客が求める緊急性の高いニーズに対応するため「自軍が保有する艦艇を移転する/自国が発注した建造枠を譲る」という手法は珍しくなく、フランスもギリシャのニーズに応えるため自国分として建造中だったFDIフリゲート2隻を、日本もオーストラリアのニーズを満たすため自国分として新型FFM建造枠を譲っており、英国もノルウェーが採用した26型フリゲート艦の納期を満たすため建造中の3番艦ベルファストか4番艦バーミンガムを譲る可能性がある。

兎に角、安全保障環境が緊迫した中で「短納期に対応できる保有艦艇の移転」は受注を獲得する強力なトリガーとして機能しており、特に海軍の規模が大きく建造サイクルが早い国にとって「保有艦艇の移転」は艦艇の状態を新しく保つのにも効果的だ。

関連記事:イタリアがインドネシアからPPA級哨戒艦を受注、契約額は11.8億ユーロ
関連記事:4ヶ国が競合したノルウェー海軍の次期フリゲート取得、英国の26型が勝利
関連記事:ノルウェーのフリゲート艦調達、候補はFDI、F126、26型、コンステレーション級
関連記事:豪州のフリゲート艦入札、日本勝利の要因は納期に対するリスクヘッジか

 

※アイキャッチ画像の出典:Public domain

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コメント

  • コメント (12)

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    • dd4
    • 2025年 10月 02日

    運用中の船なら、ほぼ間違いなくきちんと動いてるわけだからなぁ
    「新規建造したのは良いけど、受け取ったら欠陥持ちだった」とかそういう話が少なからずある事を考えると、動作保証あるのは結構大きいかもしれない
    確かインドネシアもこのクラスの建造中の船を購入したとか聞いた覚えがあるし、バランス取れた手頃な船だと受け取られてるのだろうな

    12
      • dd4
      • 2025年 10月 02日

      イタリア的には何年も前から能力、特に戦闘力が疑問視されてる(建造時は人道支援などの多用途性重視がトレンドだった)から今のご時世だと精神的に手放しやすいのもあるのだろうし…

      10
      • dd4
      • 2025年 10月 02日

      自分で言ってたなんか変だな、と思ってたら別の船とごっちゃになってた、書き込み内容はほぼほぼ間違い。
      申し訳ないです

      2
    •  
    • 2025年 10月 02日

    トルコとも協力、ギリシャとも商売ってイタリアは何か危ない橋渡ってるな。
    流石にギリシャの被害妄想で、今のトルコによるギリシャ侵攻はないとは思うが。

    2
      • gobu
      • 2025年 10月 02日

      トルコの西側の沿岸部までほぼギリシア領の島々であるというアンバランスさ
      そしてトルコに大きく傾いている国力のアンバランスさ
      双方NATOという枠組みがあるから抑えられているけど
      やはり危ういのでは?

      第三者的な立場から見れば軍事的に競争するのではなく
      ギリシア側が宥和政策取った方が良い気がするんだがね
      そこは歴史的な対立があるから無理なんだろうね

      3
      • PAC3
      • 2025年 10月 02日

      事変が発生しても幸いNATO諸国間の話ですので、戦闘行為を拡大しないために双方に対して支援はしないという感じで行くんじゃないかな
      恐らく双方への武器売却でその一文は入れていると思う

    • 無印
    • 2025年 10月 02日

    >FREMM Evolution(推定排水量1万トン以上/VLS90セル以上)
    いつの間にこんなに大きく、重武装に変わったんだろ…?
    後、砲は何門装備されるのか
    イタリア艦は砲の数が魅力

    6
      • kitty
      • 2025年 10月 02日

      え?最近の艦船の砲熕兵器は、高速単装砲1門じゃねえのって調べたら、FREMM級は、あのサイズで、ちゃんと127mmと76mmを1門ずつ積んでいるんですね。
      どっちの単装砲も他国で多数採用されていますが、ふつうはどちらか1門です。
      正直、どういう理由なんだとは思いますが、イタリアの売りモノだから、デモンストレーション用に両方積んだんじゃないかとか思っちゃいますね。

      7
    • タルト
    • 2025年 10月 02日

    本邦は潜水艦を毎年1隻進水させ、その度に1隻前線から退かせている。運用期間20+α年は他国に比べると短いと記憶してるので、どっか欲しい国いないですかね。1番古いのじゃなくても15年くらいのを売却できないですかね。(前線の最古参:おやしお型3番艦が25年、練習艦:4番艦、5番艦で、おやしお11番艦(おやしおの最終)が17年)

    3
    • 山田さん
    • 2025年 10月 02日

    こちらのサイトを見ていて、ギリシャって海空に結構力を入れてるなーと感じるのですが、この二カ国って国境接してるんですよね。
    キプロス島を念頭に軍備整えてるのだろうことは分かるのですが、ドローンや正面装備に多額の投資を行い、数量でも優勢なトルコ陸軍をどうやって国境で止めるのか、ギリシャの防衛戦略が気になります。

    2
    • Kaeru
    • 2025年 10月 02日

    ハンガリーやトルコみたいに、NATO内で明確に対立する国が出始めてるけど今後どうなるんだろ

    • daishi
    • 2025年 10月 03日

    いくら船種の定義がないとはいえ、FREMMの次世代バージョンが「排水量1万トンを超えるフリゲート」だとしたら海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)と同じでネタにされそうですね。
    護衛艦は命名基準にCGとCVMが追加されたのでもうネタになることはなさそうですが。

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