インド太平洋関連

韓国がAEW&C入札の結果を発表、勝者はL3HarrisのGlobal6500-AEW

韓国が進めているAEW&C追加取得からE-7Aが脱落したため、Saabが提案したGlobal EyeとL3Harrisが提案したGlobal6500-AEWの一騎打ちとなり、防衛事業庁は30日「両提案の評価に大きな差はなかったが、より高い得点を獲得したGlobal6500-AEWを採用する」と発表した。

参考:약 3조원 투입해 항공통제기 4대 2032년까지 추가 도입

日本人にとってEL/W-2085は馴染みがないだけでイスラエル空軍、モロッコ空軍、イタリア空軍、シンガポール空軍、米海軍が採用している

韓国の防衛事業庁はAEW&C追加取得に関する競争入札を2023年に開始、これにBoeingがE-7A、SaabがGlobal Eye、L3HarrisがGlobal6500-AEWで応じたものの、どの提案も韓国の要求要件=性能、価格、納期などを満たすことが出来ず、これまで実施された2回の入札で勝者は選定されていない。

出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Mark Goss

この件についてAviation Weekは7月「E-7Aの価格が高騰して韓国政府の予算=26億ドルに合わせて提示価格を調整することが出来ず、6月30日に締め切られた3回目の入札に提案を提出できなかった。韓国の調達規則ではプログラムに割り当てられた予算を20%以上超過する提案は評価対象外になる。そのため韓国が入札の要件を変更されない限り、AEW&C追加取得はGlobal EyeとGlobal6500-AEWの間で争われる」「3回目の入札でSaabとL3Harrisの提案が拒否されれば4回目の入札にBoeingが復帰するかもしれない」と指摘。

過去2回の入札で「具体的にどの部分の要件を満たせなかったのか」は不明だが、韓国空軍はE-7AとGlobal Eyeの能力を比較して「常時360度の監視能力でGlobal EyeはE-7Aに及ばない」「Global Eyeは前方と後方の監視能力に死角が存在する」「この欠点をカバーするにはジグザクに飛行する必要がある」と指摘したことがあるものの、Global Eyeの性能が「空軍の要求要件を下回っている」とは述べていないため、入札の勝者が選ばれないのは総合的な提案内容が一定のラインを越えこないからだろう。

そして防衛事業庁は30日に3回目の入札結果について「Saabが提案したGlobal EyeとL3Harrisが提案したGlobal6500-AEWの評価に大きな差はなかった。Saabは契約条件や取得費用で、L3Harrisは運用適合性、韓国産業界への貢献度、運用維持費用で高い得点を獲得し、評価項目別の点数を総合した結果、L3Harrisの提案が最も高い得点を獲得したため、Global6500-AEWを4機調達することにする」と述べ、Global6500とEL/W-2085を組み合わせたGlobal6500-AEWの採用が確定した。

韓国の防衛装備品輸入にはオフセットガイドラインが設定されており、AEW&C追加取得の入札者は「契約額の50%=約13億ドル」の価値をもつオフセットを提案しなければならず、L3Harrisの提案は韓国空軍が運用しているシステムへの適合性、オフセットを通じた韓国産業界への直接投資や間接投資、Global6500-AEWの運用維持コストで高い評価を受けてSaab案を上回ったという意味で、G550とEL/W-2085を組み合わせたG550-AEWはイスラエル空軍、モロッコ空軍、イタリア空軍、シンガポール空軍、米海軍が採用しており、Global6500-AEWとの違いはプラットフォームだけでサイズ感はほぼ同じだ。

出典:L3Harris Global6500-AEWを提案するためIAI、大韓航空、LIG Nex1と結成したコンソーシアム

日本人にとってEL/W-2085は馴染みがないが、シンガポール空軍はアップグレードされたE-2Cの後継機として、米海軍はミサイル追跡機の後継機としてG550-AEWを採用しており、Global Eyeとの差もAEWとしての能力以外の要素なので、Global EyeとGlobal6500-AEWは韓国空軍が要求する能力ラインに達していたのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:L3Harris

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コメント

  • コメント (13)

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    • 匿名希望係
    • 2025年 10月 01日

    むしろE-737導入時のリベンジですな(当時はG550AEW&Cのほうを予算面などで求めていた)>G-6500AEW&Cの採用

    E-737を欲しい国に売り飛ばしてG6500で統一してもいいのでは?

    6
      • 戦略眼
      • 2025年 10月 02日

      E-737は、ちゃんと飛べるようになったのだろうか。
      新型機を入れるより、既存機をキチンと運用できるようになることが先だと思うが。

      1
        • 名無し
        • 2025年 10月 02日

        輸送機も警戒機も同じような機種が複数入り乱れて滅茶苦茶になってるから整理したほうが良いよね
        しないと現場が更に崩壊しそう

        1
    • たすと
    • 2025年 10月 01日

    これからはF-35がAWACSの代わりになるって話はどこ行ったの

    6
      • hoge
      • 2025年 10月 01日

      小型機としては滞空時間もセンサーの性能も破格だけれども、所詮小型戦闘機に過ぎないので、物理的に無理だと思われ…
      熟成させるのに時間をかけすぎて、周りの状況が大きく変わってしまった。

      2
        • 全てF-35B
        • 2025年 10月 02日

        Block4で実現する機能でしたからね。
        今後は、ドローンに代替されたりネットワークで実現するかもしれません。
        戦闘機ですら役割が変わりそうですからね。

        2
      • バーナーキング
      • 2025年 10月 02日

      脅威度の高い領域ではそういう運用も考えられる、早期警戒(管制)機ありきのドクトリンを見直していく、E-3の直接後継機を新規に開発はしない、というだけで今すぐ早期警戒(管制)機を廃止する、みたいな話ではないので…

      3
    • nachteule
    • 2025年 10月 02日

     Fー35持っていないと話にならないし一機あたりのお値段も高価でレーダーにしても照射範囲は限られてステルスなのに存在暴露のリスク負ってまで照射するのかってのはある。それにマルチロール機だからって早期警戒の任務与えたら他任務への転用も難しいだろう。
     様々な機体で出来るのは間違いないけど本来すべき任務に支障の無い範囲でやらせるとしたらどこまでの事が出来るんだろうね。

    1
    • kitty
    • 2025年 10月 02日

    EL/W-2085は機体側面のAESAアレイで、どうやって常時360度の監視能力をと思ったら、尾翼に前後方向のレーダーを追加してあるのね。
    特徴的な丸いレドームを背負った新機種は今後出ないのですかね。

      • AKI
      • 2025年 10月 02日

      まあ、前後方向の探知距離はどうしても短くはなりますが、旋回してカバー。

      1
    • 匿名希望係
    • 2025年 10月 02日

    正直当時の韓国は、E-737やめてC-130AEW&C調達するべきだと思った(母機の維持がしやすいために)

    • PAC3
    • 2025年 10月 02日

    周囲が敵国ばかりなお国なだけに能力が落ちても機数を揃えるを優先なのでしょうね、小型で巡航速度は早そうなので案外扱いやすいのかもしれません

      • hoge
      • 2025年 10月 02日

      落とされる前提だとスペックは必要最低限であるのが最も合理的
      特に1機当たりのオペレーターの数を抑制しないと
      西側の高スペック主義ってとことん実戦に向いてなかった感

      1

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