ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせ致しました。
リオ視点でのエリドゥ振り返り回です。

とても難産でした……。
リオ書くの難しいよ()



調月リオの独白

 

 

「調月リオ、貴女を次期生徒会長に推薦します。」

 

 

生徒会長の引き継ぎの際、私が前会長に推薦されたのは2年生の夏の事だった。

不思議だったわ、私の他にも良さげな候補は何人も居たから。

自身の能力に疑問がある訳じゃない、会長の仕事だって回せる自信はあった。

 

けれど、私には会長を務めるようなカリスマがない。

「真面目すぎる、融通の効かない石頭だ」なんて、ヒマリから耳にタコができる程に聞いていたくらい。

 

私自身、あまり人付き合いに向いてない性格なのは理解している。

改善しようと努力はしたわ。

けれどコレは身に染み付いた性、治そうとして治るモノじゃなかった。

 

生徒会長に求められるのは判断力とカリスマ性。

人の先陣を切って引っ張る役割は、私に果たせそうにない。

そう思い、推薦を辞退しようとしたのだけれど……。

 

 

「だからこそ、貴女に頼むんです。私情より役割を全う出来る貴女だからこそ。」

「人付き合いはこれからの課題ですね、私も当初は未熟でしたから。」

 

言われた当初は意味が分からず、半ば勢いに押される形で次期会長の座を手に入れてしまった。

折れたのは彼女が《全知》の称号を持っていたから。

彼女の言う事には信憑性がある、私の性格が少しでも良くなるならと会長に就いた。

 

 

前会長が卒業してすぐの事だった。

ヒマリが3人目となる《全知》の称号を手に入れたのは。

彼女は自信満々で、「当然です」と言わんばかりに自慢していた。

嫉妬こそすれ、全員が彼女を祝福した。

 

 

……ヴェリタスは非認可の部活なのだから、容赦なくヒマリを指名すれば良かったのに。

 

 

私よりも交友関係に富んでいる彼女なら或いは。

彼女なら私より上手くセミナーを纏めることが出来る筈だから。

私の胸中に湧き上がったのはそんな羨望と嫉妬だった。

 

でも、与えられた役割は果たさなければならない。

 

 

「私は生徒会長なのだから。」

 

 

そう自分に言い聞かせつつも、疑問は頭を巡る。

何故私なのか?何故ヒマリではダメなのか?

私はずっと、その疑問について考え続けた。

 

言葉の真意を理解したのは、実に約1年が経とうと言うところだった。

仕事も完全に慣れ、順風満帆な学生生活を送っている最中。

 

 

私は人生の山場の前に立っていた。

 

 

名も無き神々の王女、そしてその軍勢。

それが今、私達の手の届く範囲で活動していると。

情報発信元はヒマリから、理解するのに時間は掛からなかった。

 

ミレニアムの近郊にある《廃墟》は、危険が多い。

危険分子が漏れ出ないように24時間監視、探索し《Key》の情報については知っていた。

だが終ぞソレの身元は分からず警戒するだけに留まっていたのだけど……。

 

《王女》もしくは《Key》の起動がトリガーとなったのか、Divi:Sion(不可解な軍隊)の動きが活発化した。

今は稚拙な動きだが、優秀な指揮官が付けば危険度は急上昇する。

 

 

「こんなものが一斉に暴れだしたらミレニアムは……いや、キヴォトスは無事じゃ済まない!!」

 

 

事態が発覚してから早急にヒマリと停戦協定を結んだ。

入学当初から彼女の事は苦手だ、事ある毎に突っかかってくるから。

私の何が気に入らないのか、一片も理解できない。

 

だが今はそんな事も言ってられない。

計画途中に多少のイザコザはあったけど、《Key》のモニタリングは成功。

そして私達は結論を出した。

 

 

「彼女は現在生徒の身分、なら暴走しないように庇護するのがベストです。」

「いいえ、一刻も早く()()するべきよ。アレはロボットなのだから。」

 

 

案の定、結論は真逆となった。

知っていた、彼女がひとつの犠牲も良しとしない善人だなんて。

ヒマリの言うことも理解出来る。

 

生徒を守る事が生徒会長の役目。

なら、1人の生徒と大勢の生徒。

──秤にかけるのだとすればどちらを選べば良い?

 

私にだって彼女が心を持っている事は分かってる。

それでも──アレは人間ではない。

彼女はいつ暴走するか分からない不発弾、この世界を滅ぼす為に産み出されたAIなのだから。

 

この窮地にて解を得た。

長年考え続けてきた、私が会長に選ばれた理由。

 

求められたのは、私情を一切排した冷静な判断だった。

どのような外道に落ちようとも最善を尽くす、それが私の役割なんだと。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

今だから分かる、私は《Key》に恐怖していた。

過剰な自分への《会長の責務》という暗示、そう言い聞かせなければ体が動かなかった程に。

頼る仲間が見えてない時点で、私は間違っていたのかもしれない。

 

そんな体たらくだから、最初の1歩からグダグダだった。

密かに進めていた要塞都市の建造も足踏み。

資金が圧倒的に足りない、自費の全てを切り崩しても予定の1/2も満たず、トキに与えたアビ・エシュフも機能を完全発揮出来ない。

 

 

協力者が要る。

だけどトキ以外には学園内外問わず 、私の味方なんて思いつかない。

そんな藁にもすがる思いで訪ねたのは、かつて敵対した組織の大人だった。

 

 


 

 

廃墟、その奥地にて。

数少ない情報源(美甘ネル)を頼りに、彼との接触に成功した。

骸骨にスーツと現実離れした彼は、部下を引き連れ黙ってこちらの話を聞いてくれた。

 

 

「いいだろう、協力関係を結ぶ。」

 

 

ドローン越しに聞こえたのは、感情が掴めない冷たい声色。

私にとって幸運だったのは、思いの外すんなり協力関係を結べた事だった。

 

不思議な事に彼と話すと本音が漏れ出てしまう。

巧みな話術だった、雰囲気に飲まれたとでも言うのかしら?

話すつもりのなかった内心まで吐露させてしまうのだから恐ろしい。

それが幸をなしたのなら結果オーライね。

 

都市へのカードキーを渡した帰り際、チラリと彼の顔が目に入る。

骸骨に表情筋なんてないのに、その顔は怒っているように見えた。

何か粗相をしてしまったのかしら?

やはり私には他人の心は理解できないわ……。

 

 

「全く、先生は何をしているんだ。相談されるべきは君だろう?」

「まぁ良い、此方としても渡りに船だ。精々利用させてもらうとしよう。」

 

 

「質問、オーナーが何か言ってますがアレは?」

「アレは口実を作って悪人面してるだけっすね、いつもの事っす。」

「理解、オーナーはツンデレなんですね!!」

「どこで覚えたんだそんな言葉………いいから出発するぞ。」

 

 

 

 

次の日、早速彼と合流して都市の開発を再開した。

それからは今までが嘘のように工事が進んだ。

彼の資金力もそうだが、何よりも未知の技術に私は感嘆を漏らした。

 

特に《ISIS》は興味深い、神名のカケラの人工生成は未だに誰もなし得てないから。

アビ・エシュフが完成しトキの戦力も強化され、管制塔も完成間近。

生憎と資金難のせいで碌な報酬が手渡せなかったけど、彼は文句1つ言わなかった。

 

 

「学生が余計な気を使うんじゃない、《Key》との接触自体が大きな報酬だ。」

「キヴォトスの大人の世界は弱肉強食だ、寧ろボッタくる図太さが無いと上手く生きていけないぞ?」

 

 

なんて言葉をかけてくる始末。

報酬にミレニアムで独占してる技術の1つや2つ、要求されると思ってたのに空回りした気分だ。

部下の子が《ツンデレ》って言ってたけどどういう意味かしら?

 

それ以外にも彼の奇行は止まらず、

 

 

「……何をしてるの?」

「何って───料理だが?

「貴方は客人扱いなのよ?料理ならトキが作ってくれるわ。」

「洋食ばかりでは飽きてしまうのでね、今日は天ぷらだ。」

 

「聞き捨てなりませんね、私の料理は食べ飽きたと?」

「ほぅ?なら食べ比べて審査してもらうとしよう。」

「待って頂戴、そんなに食べられないわ!?」

「うぇへへ、余った分は私が貰いますから。な、何なら残してくれた方が……。」

 

 

そこに居るのは不気味な異形ではなく、お節介焼きの大人だった。

ツンデレという言葉が理解出来た気がする。

 

他にもレクリエーションと称してチェスを指したりもしたわ。

彼らが来てから張り詰めていた空気が和らいだように感じる。

それからだ、彼らを警戒するのが馬鹿馬鹿しくなったのは。

 

何故、彼はそこまで親切にしてくれるのだろうか?

ふと気になった私は、単刀直入に聞くことにした。

何となく、この方法なら手っ取り早く聞き出せると思ったから。

 

 

「大前提として私は悪い大人だ。君に言えない計画があり、協力する事による打算もある。」

「えぇ、でもそれだけじゃないでしょう?私は他人の親切を考え無しに受け取れる人間じゃないから。」

 

 

彼は口を閉ざし沈黙する。

はぐらかそうと言うよりは、答えていいのかといった様子だ。

やがて彼は観念したかのように話し始めた。

 

 

「本当に大した理由じゃない、コレは君の背中を押してあげたい私のエゴだ。」

「それは何故?」

「自覚は無かったんだろうが、初対面の君は今ほど見れた面では無かったぞ。」

 

 

思い返すと、食事が喉を通った記憶がほとんどない。

自称悪人に心配されるほどヤツれていたと思うと、自分の管理能力の低さに辟易する。

彼は続ける。

 

 

「《鍵》を破壊する以外の手が不明瞭なのも事実、私は純粋に君の方針に賛成だった。それに加え、子供の身で重い責任を進んで背負おうとしてるときた。だったら、1人くらい肩を持つ悪い大人が居たって良いだろう?」

「………。」

 

「同情では断じてない、あくまで目的の一致からの些細な気まぐれだ。途中で心変わりして『やっぱり止めました』は私も困るからな?」

「……えぇ、心配いらないわ。もう覚悟は決まったから。」

 

 

トキの事は分からない。

私に賛同してるのか、それとも会長だから着いてくれてるのか。

だから彼女は協力者として見ている。

今更確認しようとも思わない、もう充分だから。

 

後ろ指を指されようとも、

たち塞がれ妨害されようとも、

この選択が間違いであろうとも、

 

ただ1人でも私を認めてくれる人、理解者が居るなら───

 

 

「それだけで私は戦えるわ。」

 

 

そう、思っていたのに……。

 

 

 

 

《Key》の暴走を確認後、計画を実施し拉致までは上手くいった。

後は万全を期したこの要塞都市で迎え撃つだけだったのだが、

 

AMASは半壊以上の損害、

アヴァンギャルド君はハッキングで乗っ取られ、

トキはC&Cに足止め、こっちまで手が回らない。

事実上の敗北だった。

 

彼は大人だ、噂の先生の力は躊躇わず行使されるはず。

なら協力は要請できない、リスクが大きすぎる。

障害をくぐり抜けた先生は少数の生徒を引き連れ、まもなくこの場に到着するだろう。

 

 

「上手くはいかないものね……でも、後悔はないわ。」

 

 

せめて彼が逃亡するだけの時間は稼ごう、具体的には今後の《Key》の対処を軸にして。

対策案があれば良し、無ければそこを突く。

 

そんな私の意気込みは真っ向から粉砕された。

 

 

「私こそが───君達の敵だ。」

 

 

私と先生達を遮るように彼は現れた。

 

貴方は悪い大人なのでしょう?

今が逃亡の絶好のチャンスなのに。

何で貴方は庇うように出てきてしまったの?

 

 

「この計画も、彼女の背中を押したのも全て私だ。」

 

 

違う……ッ!!

私はそんな事を望んでない!!

異論を唱えようとした口は、無常にもAL-1Sに塞がれた。

 

 

「違───ムグッ!?」

「シィー後は当機達に任せてください。

 

 

 

彼は一通りの問答を終え、戦場へと足を踏み入れてしまった。

取り残された私はその場にへたり込んだ。

 

 

「行かないと……。」

 

 

彼は全ての責任を掻っ攫おうとしている。

それはダメだ、計画も殆どは彼の協力ありきだったのに。

──私は彼にまだ、何も返せてない。

 

 

運動不足の体に鞭を打つ。

どうやら都市の制御権は彼に取られたらしい。

一応用意していた非常階段を使い、私は柄にもなく走り出した。

 

 

 

 

私が到着した頃には既に終わっていた。

依星ケイが《Key》の役割を放棄した為、脅威なしと判断。

彼は攻撃を収め、撤収するところだった。

焼き払われたビル群が戦いの激しさを伝えてくる。

 

彼がこちらを凝視している。

まさか間に合うとは思わなかったのだろう。

途中私を発見したチームⅤが、車両に乗せてくれたおかげで何とか間に合った。

彼女、リーダーも思う所があったのかしら?

 

珍しく昂った感情のままに歩を進める。

そして完全に帰る気だった彼に詰め寄った。

 

 

「何故、何も言わずに去ろうとしてるの?」

「……。」

 

 

彼は答えずにチームⅤの元へ進む。

まるで私とは初めから何の関係も無かったかのように。

何も言わずに去ろうとする彼を見て、内から何かの切れる音がした。

 

それはほぼ無意識に取った行動だった。

無視する彼の手を取り、精一杯の凄みで話しかける。

 

 

「私も連れてって。」

「ダメだ。君は()()()()だ。」

「──ッこんな庇う真似なんかされても、私はあなたにまだ何もっ」

「何も返す必要はない。強いて言えば、返すべき人物が居るなら1人だけだ。」

 

 

子供のような駄々を捏ねてるだけだった。

それでも彼の気を引けるならと、私らしくない方法を取ったというのに効果は無かった。

 

ハッキリとした拒絶に、手の力が無くなった。

そして彼の手はすり抜け、車両に着くと同時に虚空に穴が空く。

そして此方を向いて、

 

 

「さらばだ先生、ゲマトリアはいつでも君の事を見ているぞ。」

「……()()()()()。」

 

 

誰に謝ったのか、真意が分からないままに彼らはその場から去った。

静寂が場を支配する。

他に意識があるのは倒れたまま動かない先生だけ。

 

 

───ならもう良いか。

 

 

限界だった私は膝から崩れ落ち、恥も外聞もなく縮こまり蹲った。

私はただ貴方に……。

 

 


 

 

それから少ししてエリドゥでの私の処遇を決める会議が始まった。

予想通りというか、私に下された処罰は軽いものだった。

彼に騙されたという事になってるのもそうだが、肝心の依星ケイが罰を望んでいないと。

 

会長を辞めても良かったのだけど、「それだけは止めてください!!」とユウカに縋り付かれてしまった。

トキもどうやら私に着いてくれるそうで、何と言うか素直に嬉しかったわ。

 

 

私への罰は溜まりに溜まった仕事の山を平にする事だった。

そして今、会長室で私は虚空を見つめている。

 

アレからなんとも言えない虚無感が発生して、本当に何もやる気が起きない。

忘れるように山のように溜まっていた仕事も終わってしまった。

やる事はやってしまってるので向こうも注意してこない。

 

 

溜息を吐きながらコーヒーをすする様な毎日。

そんな半分死んでるような生活の中で、唯一正気に戻れる時間があった。

タイミング良く、端末に警報メッセージが飛んでくる。

 

 

()()《廃墟》で異常?」

 

 

あの後も、私は《廃墟》の管理を任されて警報があれば対応することにしている。

大半はDivi:Sionの残党だが、偶に彼らの痕跡を拾うことがある。

それはタイミングが合えばまた彼に再会することが出来るということ。

 

ただの願望だった。

ここに来れば、また彼に会えるんじゃないかという淡い期待。

取り越し苦労になる可能性が高いと言うのに、今度も私は真っ先にAMASを手配、現地へと直行させた。

 

 

そうして私が目にした光景は凄まじいものだった。

広範囲にかけて派手に崩壊した《廃墟》。

何かの実験だろうか、大規模な爆発に巻き込まれたような痕跡が残っていた。

 

 

「実験と言うには滅茶苦茶過ぎるわね……。」

 

 

考えられるのは2つ。

 

1つは高火力兵器の試運転。

これは少し前に痕跡を発見したばかりだ。

レールガンの様な焦げ目の痕跡だったから今回は違う可能性が高い。

 

もう1つは敵勢力に襲われて巻き添えの自爆。

自分達はセーフティエリアに逃げる事で。

そう、例えばあの積み上がった瓦礫山の中とか。

 

何の根拠もないただの直感。

そんな僅かな希望にかけて瓦礫の撤去作業を始めた。

 

瓦礫の量は多く、並の労働力では日を跨いでしまう。

こっそりかつ導入出来るAMASを全て使うしかない。

バレたら叱られるだろうけど、今の私にそんな考えは無かった。

 

今更会長の役職にこだわりがある訳じゃない。

こんなもの、最悪ヒマリに押し付けて辞めてみせる。*1

蜘蛛の糸よりも細い望みでも、それでも私は彼に会いたい。

 

 

そしてその思いは報われた。

 

 

あぁ……

 

 

見つけた。

 

私の求めていたものがそこにあった。

変わらずスーツを着た骸骨の異形はAMASという文字列を見て察した様だ。

隣には仲間なのか、初めて見る生徒がいる。

 

 

深呼吸して心を落ち着かせる。

それでも再会の嬉しさでニヤけるのを我慢しながら、何とでもないように話しかけた。

 

 

「何が起こったのかと見に来てみれば、久しぶりね?」

『……どうやら今日は珍しく運が良いようだ。』

 

 

*1
ヒマリ「!?」





幕間はコレで終わり。

次回は掲示板かRTAパートです。
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