ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせしました。

小説パートでカイ視点となります。
よろしくお願いします。



幕間の物語5
獼猴の暗躍


補習授業部が発足する少し前の事である。

百鬼夜行の中でも賑わう歓楽街の一角で、2組の女子生徒が甘味処に座していた。

 

ただの女子生徒ではない、1人は此処では場違いなチャイナドレスに白のロングコートを羽織っている。

知る人が見れば中華風の装いから、彼女が山海経の生徒だと断言できるだろう。

 

そしてもう1人は腕は包帯でグルグル、身体中にガーゼを貼り付けており、常人が見れば「すわ!虐待か?」と心配になりそうな格好をしている。

服装も着物でマシそうに見えて、その横の防御力はセクシーフォックス(百合園セイア)以下だ。

 

そんな異常な服装の2人が対面している状況、普通なら通報の1つ位入りそうなものだが、客も店員も平然としている。

 

なんなら店員はチャイナドレスの生徒、申谷カイ(指名手配犯)から注文を受けている。

彼女は普通に観光を楽しんでいた。

逆に対面する形で顔を引き攣らせてる生徒、箭吹シュロはげんなりとしていた。

 

 

「どうしてこんな事に……。」

「頼まないのかい?」

 

 

シュロにとっては不本意な、2人きりのお茶会が開催されていた。

元々彼女はホモにコンタクトを取るために、一行を尾行していたのだ。

 

何故ホモに会いたがってるのか?

理由は彼女の活動方針からである。

 

 

彼女は花鳥風月部の部員で、風流と称して百鬼夜行滅亡を目論む中々にヤバい部活動に所属する生徒だ。

厄介な事に、彼女たちはソレを目論むに値する力を持っている。

それが《怪書》の存在。

 

原作では《稲生物怪録》の力を用いて怪異を作り出す、ソレらや本人には攻撃が通らないなど、明らかに生徒の持つ力の範疇を超えていた。

 

その怪書の作成にはシュロが携わっているのだが、モノを書くにはネタが要る。

早い話が彼女はスランプに陥っていた、筆が中々進まない。

故に、彼女が影に潜み行う街の観察は日常化していた。

 

そんな悩める彼女の目に入ったのが、ヘルメットを被った大人の男性──ホモである。

常人が見ても違和感は持たないだろうが、シュロは違った。

 

怪書を作製するにあたって、感じ取れるようになった怪異の気配。

この世ならざる者と言うべき気配をホモから感じ取ったのだ。

 

さすれば善は急げと観察を開始したシュロであったが、中々話しかける隙がない。

彼を守るように囲っている青ヘルメット団が邪魔で近づけなかったのだ。

(更にホモが本能的に厄介事から回避していた。)

 

それでも我慢強く観察を続けること数分。

連中の内の1人が居ないことに気づいた時にはもう遅かった。

 

 

「君、ちょっとだけ私とお話しようか?」

「ピィッ───」

 

 

背後に周り肩を組んできた彼女は、裏では有名な七囚人の1人であった。

タイマンに自信の無いシュロに選択権はない。

そのまま流されるままに近くの甘味処に連行されたのが今までの経緯である。

 

幸いにもカイからは敵意を感じない。

かと言って油断もできない、裏で彼女の悪名はそこそこ轟いていた。

 

 

「頼まないなら勝手に決めるよ?きんつば2つで。」

「……要件は何です?手前様はかの有名な《五塵の獼猴》さんですよね。」

「おや、知ってる人が居るなんて珍しいねぇ。察し通り()()()の筋に深い子だったか。」

 

 

シュロの警戒心はMAXだった。

ネームバリューもそうだが()()()()()()()()()()()()()()()()、尾行を簡単に見破られたり、尾行されても撃退することは無く、話し合いの場を設けるなど理解不能な行動が多い。

不可解な存在、それがカイへの第一印象。

 

だからこれから発せられる言葉には、何を言われても動じない自信があった。

そこに投下されたのは、想像よりも大きい爆弾であった。

 

 

「君は《花鳥風月部》だよねぇ?聞きたいことがあるんだ。」

「……なんで百鬼夜行の上層部しか知らないような情報を手前さんが?」

「私というか、隣にいたピンク色ツインテの子だよ。彼女にかかれば大抵の情報は道端に落ちてる財布と同じさ。」

 

 

前言撤回、ヤバいのはあの集団全員だった。

自分は思ったよりもヤバいところに首を突っ込んだのだと確信した。

早く帰りたい、そんなシュロの気持ちがより一層強くなる。

そんな彼女を気にも止めず、カイは話を進めていく。

 

 

「君が私達を尾行してた理由なんだけど、ヘルメットの彼で合ってるよねぇ?彼について知ってる事を教えてあげるから相談に乗って欲しいのさ。」

「何を考えてるんです?手前さんの仲間の情報を売る行為ですよ?」

「彼の為なら()は何でもするさ、それが愛というものだろう?」

「…………。」

 

 

彼の情報を貰える、その甘言にシュロは食いついた。

毒を食らわば皿までと言う、個人的に彼が怪異の気配を放つ状態になった経緯が気になる。

 

創作家としてのプライドがシュロを奮い立たせた。

愛だのなんだのと言った言葉が少し気になるが、些細な問題だろうと思考の隅へ追いやる。

 

 

「えぇ、えぇ!!良いでしょうとも、洗いざらい聞かせて頂きますよ。」

「契約成立だね?まず彼との馴れ初めからだが──」

 

 

それが彼女の本日最大の後悔になるとも知らずに。

 

 


 

 

「──結局のところ、前の世界が滅亡したのはあのアバズレが元凶だと思うんだよ、君もそう思うよねぇ?」

「アッハイ、ソウデスネ。」

 

 

聞かされたのはシュロの期待していたものとは違う惚気話であった。

前世の──という下りから怪しい感じはあったが、そこから続いたのは(ホモ)との馴れ初め。

 

序盤の話の甘ったるさに、早くもギブアップの手が上がるところだった。

それでも耐えられたのは、後半の悲劇(トラジディ)があったから。

 

冬の坂を転がり落ちる雪玉のような、どうしようもない負債の積み重なりによる悲劇。

最後まで()()()()()を選んだホモの転落する様は中々に滑稽で風流を感じた。

書きたいジャンルはまた別なのだが、下拵えの参考になるレベルで収穫にはなった。

 

 

「いや、確かに生徒会長に担ぎ上げた私達にも責任の一端はあるよ?あんなにヤバい女だとは思わなかったんだ。

 

──彼女は愛に飢えた怪物だった。」

「愛、コワイデスネー。」

 

 

興味深い内容もあった。

《宇宙図書》や《色彩》なる超常の存在達。

 

荒唐無稽な話であるにも関わらずとも、シュロにはそれが真実であると確信めいた自信があった。

今ここで知れたのは値千金だろう。

 

それでもシュロの精神は限界だった。

大して知らない奴の愚痴を長々と聞かされるのだ、無理もない。

 

更に言えば飽くまでシュロの書きたいものは百物語、怪談のようなおどろおどろしい話。

対してカイの話は群像劇からなるお涙頂戴の悲劇譚。

圧倒的なコレジャナイ感、それでも自分が承諾した手前止めるに止められなかった。

 

故に反応が九官鳥レベルに落ちるのも当然の事で……。

流石に長く話しすぎたと気づいたのか、愚痴をそこそこに切り上げてカイは本題に入る。

 

 

「つまり私は、色々無茶し過ぎた彼の魂の状態が知りたいんだよ。」

 

 

現時点でホモの魂は不安定である。

常人なら形ある魂の輪郭がボロボロ過ぎて、半生半死の状態にあると言っても過言では無い。

今も普通に生きてるのが不思議な程に。

 

そう、()()()()()()()()()()のだ。

カイの杞憂でその時は訪れないのかもしれないし、ある日なんでもない日にポックリ逝ってるかもしれない。

ホモがそこに気づいてないとは思えないが絶対は無い。

 

そんな未来、カイが許容できる筈がなかった。

願い続けて幾星霜、転生(?)までして再会したのに死にましたでは成仏しきれない。

 

だが個人で調べるには限界があり、解決の糸口は未だ見えず。

何でもない様に振舞っておきながら、カイは焦っていた。

 

 

「私は天才だが万能ではなくてね、(ヘイロー)についてまで詳しくない。だから別の筋からの意見が欲しかったのさ。」

「……まぁ、ある程度仮説は立ちましたけど。」

「本当かいそれは?」

「手前も魂について心得はないです。ので、今から話す事は仮説だと言う事を忘れないでください。」

 

 

別に無視したって良かったのだが、シュロにも美学はあった。

施しは受けず、貸し借りを作らないというポリシーが。

遠回りではあったが収穫はあった、ならばその分のお駄賃は払うと。

 

 

「手前が勘違いした要因でもあるんですがね、彼は在り方が曖昧なんですよ。」

「ふむ?」

 

 

シュロの回答は的を射ていた。

先生だった時の自分、ゲマトリアとしての自分。

ホモのキヴォトスでの在り方は揺らめいている最中である。

 

ホモの定義する先生は、全員を救ってしまうような救世主だ。

ホモは半ば諦めているが、無駄だ無理だの言いながらも目の前で生徒が困っていれば止まれない。

しかし羨望はすれど、今ホモに先生を目指す気は無かった。

 

逆にゲマトリアとしてはどうか?

人体実験を他人で行う等そこそこの悪さはしている。

だが黒服やベアトリーチェと違い、進んで生徒を食い物にする策は取らない様にしてきた。

非情になりきれない甘さがまだ、ホモにはあった。

 

そんなチグハグであやふやな在り方は魂にまで作用する。

ホモを怪異の類と間違えたのも、それが原因だとシュロは考えた。

そしてカイもその説に筋が通っていると納得していた。

 

 

「成程ねぇ、在り方を定着させればあるいは……。」

 

 

柄にもなくひとしきり考え込んだ後、きんつばを平らげる。

そして懐から幾らかの金銭を机の上に乗せ立ち上がった。

 

 

「いやぁ参考になったよ、コレ私の連絡先ね?」

「ちょっt──また消えましたか。」

 

 

言いたい事だけ言ったカイの姿は、既にシュロの視界から消えていた。

未だにカラクリは理解不能だが、シュロの興味は既にそちらになかった。

 

机の上に置かれた紙を手に取り一瞥する。

そしてクシャリと紙を握り潰した。

 

 

「二度と会いたくないですよ、手前さんみたいな滅茶苦茶な奴。」

 

 

大層不服そうな顔をした彼女は同じように金銭を机に置き店を後にした。

店内のドアに付いた予鈴が鳴るが、誰も見向きしない。

初めからそこには誰も居なかったかのように。

 

ビリビリと細かく破かれた紙は店内を舞い、風によって外へと運ばれ消え入った。

 

 


 

 

「思いがけない収穫だったねぇ、これで一歩前進するよ。」

 

 

思い悩んでいたところに光明が差し、ルンルンと拠点へ戻っていた。

勝手に抜け出した事を怒られるだろうか?

 

 

「(それはそれでアリだよねぇ。)」

 

 

怒られる=構ってもらえるの等式が成り立ってるカイにとってそれは問題になり得ない。

そんな事を考えながら(勝手に持ち出した)お土産を片手に拠点の扉を開けた。

 

 

「ただいm───

「クソッ何だコイツ、全然捕まえられない!」

「なんかこう、猫みたいにニュルッとしてます!!」

「提案、かくなる上はコレで……。」

「オーナーが死んじゃうっすよ!?」

 

「ズズッズビッ……あ゛る゛し゛と゛に゛ょ!!

「帰ったかカイ、早速なんだが助けてくれ。」

 

 

扉を開けたら、なんか増えていた。

覚えのある神秘を持つソイツは、号泣しながらオーナーに縋り付いている。

ホモのスーツは涙やら鼻水やらで台無しになっている。

 

リーダー達が引き剥がそうとするが、滑るようにして拘束を逃れている。

無駄のない無駄な動きだ、軽く感動さえ覚える。

 

 

「警告、オーナーから離れてください!!」

「AL-1Sよ、力ずくは、良くない。私の骨が折れる……ウッ。」

「オーナーッ!?」

 

 

阿鼻叫喚の状況をじっくり堪能したカイはそこでやっと行動した。

「そうか、君もか」と独りごち、現状を変えるべくホモに抱きつくソイツに話しかけた。

 

 

()()()()、君の名前は?」

「……にぇ?そうだ、まずは名乗るべきだった。

 

()()()部長、千鳥ミチルだよ。」

 

 





ほのぼの回でしたね!!

次回はまたRTA描写に戻ります。
多くてあと3話で調印式編は終わる予定です。
ミチル視点はまた後ほど……。
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