「安保理が制裁加えない」国際法違反の指摘にギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使は【インタビュー全文公開】
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への侵攻を巡り、6月30日、東京の駐日イスラエル大使館で、ギラッド・コーヘン大使にインタビューしました。民間人への攻撃は国際法に反しているのではないかとの問いに対し、コーヘン大使は「もし国際法に違反しているなら、なぜ安全保障理事会が制裁を加えないのでしょうか」と否定し、「ジェノサイド(民族大量虐殺)という批判は受け付けない」と述べました。米国が拒否権を行使し、ガザ停戦に踏み切れない国連安保理の機能不全と、イスラエルに制裁を加えない国際社会の加害を浮き彫りにした発言と言えます。沖縄タイムスの連載【止まらぬ「虐殺」 イスラエル ガザ侵攻】を補足する形で、インタビューの全文を公開します。(聞き手=大川藍)
ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使インタビュー全文
ハマスの「奇襲」 第三者調査を否定
ー 2023 年10月7日(10・7)のハマスのイスラエル襲撃についてお聞きします。イスラエルは、高いセキュリティー技術を持ち、 諜報能力も高いと聞いていますが、この攻撃を許してしまった理由は何でしょうか。
「それは私も自問自答しているところです。おっしゃる通り、イスラエルは非常に高度なテクノロジーとインテリジェンス(諜報機関)を持っていることで知られています。では、このテロリストたちが何千人とコミュニティに襲ってくるのを、ロケット弾も含めて察知できなかったのはなぜか。答えは実はまだ持っていないのですが、これから調査していくというのははっきり言えます。攻撃の情報はあり、それが起こるかもしれないというのは分かっていたのかもしれませんが、問題は奇襲になぜ気づかなかったのか。インテリジェンスは情報をキャッチすることが任務の一つですが、解釈の仕方も一つです」
「(10・7では)ホロコースト以来最悪の大虐殺が行われましたが、今はそこから学んで、イスラエルの強さを見ていただけていると思います。私たちはこの間違いから学んで改善していかなければいけないという風に思います」
ー10・7のイスラエル側の死傷者は何人ですか。
「被害の統計としては、1200 人ほどが殺害されました。南部の町、あるいはノバフェスティバルという祭りでです。そして 250 人以上がガザに連れていかれて人質となりました。それ以外には何千人という人たちが怪我をしたという風に報告があります。ただ、数だけでは語れないと思うんですね。大変な虐殺行為が行われた。赤ちゃんが殺され、また女性がレイプされ、拷問を受けたという事実がありますので、数だけでは語れない、そういう事件だと思います」
ーメディアでは、イスラエル国防軍(IDF)が市民を殺害したというような情報も出ているのですが、イスラエル軍による死傷者は何人いるのでしょうか。
「1200 人の全ては IDFではなく、テロリストによって殺されているんですね。全員です。兵士は逆に彼らを救おうと頑張ったのですが、救うことができなかったのは国軍の落ち度です。この1200人の中にIDFに殺された人はいません。フェイクニュースが出回っておりますので、ニュースの精査が必要になると思います」
「フェイクニュースの中にはハマスの性犯罪はなかったというものもあるんですね。実際には女性を性を通じて拷問するような場所もありましたし、子どもたちを殺害するよう指令が行われていたということですので、やはりフェイクニュースには注意いただく必要があるんじゃないかと思います」
ー先程、調査するとおっしゃいましたが、フェイクニュースがあるということも含めて、イスラエル側の調査だけではなく外部機関の調査、各国の報道機関を受け入れていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
「私どもは民主主義国家ですし、非常に強い司法の制度を持っておりますので、独自で自分たちの国の中で調査することが可能です。IDFやインテリジェンスが機能しなかったことについて調査するのは国として非常に大事ですし、その結果を国際社会とシェアするのも全く問題ありません」
ー赤ん坊が殺され、女性がレイプされたということをイスラエルが主張する一方で、イスラエル軍が自国民を殺したという情報も錯綜しているので、何が本当のニュースかを調べるためには第三者の調査が必要だという意味です。
「自国民を殺すというのはどういう理由で言われているのですか。兵士たちは自分たちの国民が親であり兄弟であり姉妹です。殺す理由が分かりません」
ーイスラエルメディアの中には、ハマスに人質にとられたが人道的な扱いを受けた一方、ハマス殲滅を狙うIDFがイスラエル市民もろとも射殺したとの生存者の証言を報じたものもあります。
「テロが起こっている間に空軍が抱えたジレンマかもしれません。本来はテロリストのみに攻撃をしないといけませんが、空から爆撃したときに、人質にとられている自国の市民が攻撃された可能性がなかったとは言い切れない」
「あなたはフェイクニュースを見ているのでしょう。IDFによる確認はある程度これまでもしていますが、包括的に調べるには至っていません。戦争が終わらなければ、ここから先の調査には進めません。50人の人質のうち、20人がまだ生き残っています。ハマスが人質を解放し、ガザから武器を置いて去らなければ、先には進めません」
「世界一倫理的な軍隊」強調 攻撃前に“警告”
ーそのハマスとは、どのような組織だと理解していますか。
「テロリスト・ハマスは純粋な悪です。言葉自体は抵抗運動という意味ですが、イスラエル人を滅亡させてイスラエル国家にカリフ(指導者)を立てるといっています。イスラミックステート(IS)と全く同じです。女性をレイプし、赤ん坊を殺すテロリストです」
ーイスラエルはヒズボラに対してもイランに対しても、指導者だけを狙って殺害しています。それだけ高い能力を持つイスラエルが、ガザに限ってはなぜハマスを「殲滅」できていないのでしょうか。なぜ市民を巻き込んで殺すのでしょうか。
「ハマスのリーダーは全員殺害できています。彼らはガザや他国やさまざまなところに潜伏していますが、IDFは確実に殺害に成功しています」
ーリーダーを全員殺害したのなら、ハマスにもう危険性はありません。ガザの市民を殺してまで攻撃を続ける理由はないのでは。ハマスは弱体化しており、これ以上戦争を続ける理由がありません。
「テロリスト・ハマスの残党はカタールにもまだ残っています。では、私たちはなぜ、この戦争を終われないのでしょうか。私たちは彼らにまだ人質をとられています。さらに言いましょう。ガザに人道支援物資を運ぶトラックが入り、人道的に物資を配っていましたが、市民へ贈るべき物資をハマスが盗んでいく行為がおきました。人々に食べ物や薬を与えないためです。テロリストハマスがこうしたことを起こしている間は、戦闘をやめたくても、やめることができないのです」
ー私たちはSNSを見ています。イスラエル側が市民を撃った動画はあっても、ハマスが食料を奪ったという証拠は見当たりません。イスラエルがガザを封鎖しており、人道支援団体もジャーナリストも入ることができないため、何が本当か全く分からない状況です。ハマスが物資を盗んでいるというのなら、ジャーナリストを中に入れて本当の情報を世界に出すべきではないでしょうか。
「ハマスはテロ組織で、民主主義国家に攻撃を仕掛けています。戦争犯罪を犯しているのです。テロリスト・ハマスは市民に銃を向けています。病院やモスク、学校、市民の建物の下に隠れています。民間人を盾にとるのが、ハマスのやり方です。ガザの人々にはもっと普通の生活が必要ですが、ハマスがいるために普通の生活を送れていないのです」
「これに反して、イスラエルのIDFは世界で最も倫理的な組織です。攻撃の前に一般市民の犠牲が最小限に抑えられるよう指令を出しています。例えば、目標の直前でも女性や子供が目の前にいれば、攻撃をやめる権限を兵士一人一人が持っています。意図的に殺すことは決してありません。攻撃する前に何百万枚というリーフレットを落として攻撃すると警告しています。ここまでやっています。さらにポリオのワクチンや、献血のドネーションも提供しています。少しでもガザの人々の苦しみが緩和されるように、私たちは最大限努力しているのです。命を気にかけていなければ、そのようなことはできません。ジャーナリストを中に入れれば戦闘が終わるのでしょうか」
ーその配給所では、たくさんの市民に向かってイスラエル側が発砲し、毎日何十人という民間人が殺されています。明らかに民間人が標的になっています。IDFが倫理的であれば、このようなことが起こることはありません。ガザの人の苦しみをなくすためには、封鎖をやめ、人道支援団体を入れることが一番ですが、あなたたちはそれを拒否しています。ガザを封鎖したまま、人道的な支援を行っていると言われても、信用できません。
「毎日子供が死んでいるとしたら、それはIDFにとっても悲劇でしかありません。私たちは子供や市民が死ぬのを見たいと思っているわけではないからです。あなたが言っているのはハマスが流している嘘です。私たちはガザの人々のために食料を提供しているのに、殺す必要はありません。市民を殺しているのはハマスの方ですが、テロリストは殺しの現場を見せることはありません」
「ガザの苦しみはいつ終わるのでしょうか。それは50人の人質が戻る瞬間でしょう。日本にも(拉致被害者など)人質がいるから分かるでしょう。しかし、イスラエルは何十年も待つつもりはありません。彼らが戻るよう、脅威を排除する活動をしているだけです。我々は戦争を終わりたいと言っているのに、ハマスはそれを拒否しているどころか、新たな10・7を計画しているのです」
ー新たな10・7とは。具体的な計画があるのですか。
「ハマスは、イスラエルが存在することを受け入れないと言っています。ユダヤ人が殲滅されないといけないと言っています。部隊を再編成して、再武装すると公言しています。イスラエルは、これ以上テロリストをガザに存在させるわけにはいかない。ガザから追放するべきで、ガザから過激派がいなくなるのが絶対条件です。ゴルダ・メイア(元イスラエル首相)が言ったように『アラブが武器を置けば平和が訪れるが、イスラエルが武器をおけばイスラエル国家はなくなってしまう』のです」
ー具体的な計画はないのですね。
「ハマスは生き残りをかけて戦っているので、今はまだその余裕はないかもしれません。具体的な計画を把握することまではできていませんが、5年、10年とたてば必ずまたホロコーストを起こすでしょう」
ーイスラエルはガザの住民を南部に集めています。ガザの住民は現在230万人ほどですが、これを(ガザ南端の)ラファに集めると相当な密度になります。イスラエルとしては、ラファの適正人口は何人くらいと考えていますか。
「誰もが自分たちの故郷から追い出されたくないのは当然のことです。移動は民間人を戦闘から守るために行っていることです。人を動かすのは、テロリストが潜伏する場所への攻撃があるためで、人を動かさなければなぜ銃を向けるんだと言われるし、動かせば、なぜ動かしたのかと言われます。私たちは結局何をやっても批判されるのです」
「戦闘エリアをクリアにしなければ一般市民を攻撃にさらします。私たちはできる限りのことを尽くしてハマス壊滅の努力を続けていますが、市民を巻き込まずに戦闘を続けるのはとても大変なことなのです。これらをただちに解決する方法はありません。逆にあなたに解決策があれば教えてください。イラク戦争でも同じく、テロリスト壊滅のための戦争を行いましたが、民間人が巻き込まれないわけにはいきませんでした」
「自由世界諸国がイスラエル支持」攻撃続行の根拠に
ー解決策はあります。今すぐ戦闘をやめて、人道支援団体をガザに入れ、人々に人道援助を行うことです。ハマスが違法なテロ行為をしているのなら、それをジャーナリストに見せることです。ハマスが民間人に紛れているなら、移動させても同じことです。何の解決にもなりません。
「あなたの提案はとてもナイーブです。戦っている相手はテロリストです。悪意に満ちている。女性をレイプしています。生きている子供をケージの中に閉じ込めて焼き殺すような者たちです。ジャーナリストを中に入れて彼らが武器を降ろすでしょうか。アメリカが出した停戦案をハマスは拒否しました。私たちは2年間、終わりのない状況に立たされています。外交が役に立たないこともあるのです。ハマスはガザの住民が死に、市民が苦しむことを望んでいます。外交というものが通用するのならホロコーストは起きていないでしょう。歴史を振り返ればそういうことが多々あります。では、イスラエルは何年も待てるか。待てません。行動を起こして戦いに臨むしかないのです」
ーハマスは自治を認めるなら戦争を終結できると言っています。停戦を拒否しているのはイスラエルです。あなたたちが戦闘を止めれば解決に近づくのでは。
「アメリカもドイツもイギリスも、自由世界諸国がイスラエルを支持すると言っています。イスラエルが民間人を殺しているというのなら、日本もそれに協力しているということでしょうか」
「ハマスは自国の人々が成功していくこと、良い人生を送ることを望んでいません。2005年にガザからイスラエルは撤退しました。ガザの市民と協力関係を結び、イスラエルの中でも仕事をしてもらいました。ガザからイスラエルは撤退しましたが、市民のために、教育施設や工場など、市民が豊かになるものに投資を行ってきました。一方でハマスは、ロケット弾や軍事トンネルなど死への投資を行いました。人質をいまだに解放すらしません。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が解放すべきだと言っているのにも関わらずです。皮肉なことです」
「プレスを中に入れれば、イスラエルが戦闘を止めれば、戦争は終わるのでしょうか。必要なのはプレッシャーをかけることです。昨年夏、非常に残酷なことが行われた。人質の赤ちゃんと女性の遺体がプレスの前で返還されるセレモニーがありましたが、本人ではなかったのです。イスラエルは、ガザにもう一度入って占領するプランは立てていません。ガザの人々はパレスチナで平和に生きていきたいのです。イスラエル政府のポリシーもそうです。IDFはテロリストを殺し、市民を殺しません」
ーハマスが自国の人が死んだり、幸せにならないよう願っているという根拠は示されていません。ハマスを支持する市民もいますし、抵抗の精神は住民に根づいています。2年たってもイスラエルがハマスを壊滅できていない以上、ハマスの「壊滅」は困難です。停戦するのが双方の被害を少なくできる最も良い道だとは思いませんか。
「イスラエルには子どもがたくさんいますが、ガザにもいます。私たちは、子どもたちがテロの恐怖の中で生活せずに済むことを望んでいます。ハマスの圧政から解放されることを願っています。イスラエルでは、子どもたちは平和を学んでいます。しかし解決点は見いだせていない。手と手を携えて平和に共存したいが、外交交渉が通用しないのです。ハマスはアニマルです」
人間性否定の「ヒューマンアニマル」
ーアニマルという表現について、ネタニヤフ首相は「ヒューマンアニマル」という言葉を使っています。またイスラエルの政府高官は「ガザ地区を地球から消し去る」「全員を追放する」「ヨルダン川西岸がガザと同じ道を歩む」と言っています。大使も、そのようなお考えをお持ちですか。
「ハマスはヒューマンアニマルです。まだご覧になっていないかもしれませんが、10・7のハマスによるユダヤ人の大虐殺を記した映像があります。音楽祭で人々が殺され、レイプされる映像です。イスラエル南部の村に入って、赤ちゃんをケージに入れて火をつけて殺すような人たちを、私たちはどう見ればよいのでしょうか。ノバの音楽祭に自由と平和を楽しむためにやってきた人たちの手足を、ハマスは生きたまま切り取りました。映像には過去に比較対象がないくらいの犯罪がおさめられています。ただ、高官の発言は政府の正式なポリシーではありません。ガザを殲滅したいとは思っていません」
ー高官の発言は間違っていますか。
「殲滅したいと思っているのであれば、イスラエルがなぜ人道援助の支援物資を送っているのでしょうか。おかしいでしょう。望んでいるのはイスラエル人の人質の解放と、ハマスが武器を置くことです」
ー入植地の拡大についてお尋ねします。世界の目がガザに向いているうちに、イスラエルはヨルダン川西岸で入植地を広げています。多くの報道があり、地図からも明らかです。これは国際法違反ではないでしょうか。
「イスラエルはキャンプ=デーヴィット合意で、1947年の形に戻そうとパレスチナに提案しましたが却下されました。アラブ諸国やアメリカが賛同したにもかかわらず、パレスチナのリーダーに拒否されたのです。パレスチナは何を望んでいるのでしょう。絶好のチャンスを逃してしまうのがパレスチナです。彼らがよく言うのは『川から海まで』。すべてを自分たちのものにすると言っています。フリーパレスチナ運動とは二国家共存ではなく、一国生存を企図しているのです」
ーオスロ合意ではこれ以上の入植はしないと取り決めました。しかしイスラエルは合意を無視して入植地を拡大し続けています。オスロ合意を守る気はないということでしょうか。
「国際法違反ではありません。紛争の原因となる土地は(旧約聖書では)3500年以上前に、アブラハムがユダヤ人に約束しました。アブラハムがやってきたときにです。もちろん現在は状況が違うし、住んでいる人と共存する必要があります。しかしアッバス議長は、ユダヤ人を殺すことに金を支払うということまでしているのが現状です。ディスカッションできるパートナーがいないから今の状況が改善しません。近年は入植地は拡大していません」
「去年(沖縄県を訪れた際に)これを質問したのは、沖縄タイムスだったでしょうか。インタビューはレバノンの(イスラエル軍がイスラム教組織「ヒズボラ」の構成員を狙ってポケットベルなどを一斉に爆発させた)事件が起きた直後だったため、情報が伝わっておらず、何もお話しできなかったのですが、今ならお伝えできます。あれはヒズボラにイスラエルが仕掛けた、とてもスマートなオペレーションでした。テロリストだけにターゲットを絞って攻撃することができ、それ以外は損害がなかったのです。イスラエルの姿勢はこれで分かるはずです」
「しかし、あの後も市民を巻き込んでいるとして、私たちはなぜか責められる側にいます。何をやっても非難されるのであれば、私たちが武器を置いてアラブに殺されるのを待てということでしょうか。とても偽善的で、皮肉だと思います。中東で何が起きているのか、分かっていない人からの批判です。90年前、ユダヤ人はヨーロッパで大変な虐殺にあい、600万人もの人が殺されました。軍隊も持っていない民間人が殺されたのです。このような悲劇は二度と起こしてはいけないのです」
「滅するなら戦力でできる」
ーまさに今、そのホロコーストがガザで起きています。民間人を殺すのは明白な国際法違反です。
「全否定します。ナチスによるホロコーストとは比較になりません。ナチスは大量虐殺するために人々をガス室に入れて殺しました。映画『シンドラーのリスト』の中では小さな子供がガスチャンバーに入って灰となって出てくるシーンがあり、とても悲劇的です」
「ガザの戦闘はテロと戦うために行っています。イスラエル軍が一般市民を殺す指示を受けたと思いますか。私たちはガザがこの地からなくなることを望んでいるわけではありません。ジェノサイドは純粋なうそです。本当に滅するなら戦力でできるけれども私たちはあえてしていません。食糧支援を行っているのがその証拠です」
「イスラエルが国際法に違反しているのであれば、どうしてG7がイスラエルに賛同するでしょうか。2024年の長崎の平和式典に、残念ながらイスラエルは招待されませんでした。すると、イスラエルを支持するほかの国が次々に参加をボイコットしました。イスラエルがジェノサイドをしているのであればどうして世界は支援してくれるのでしょうか」
「10・7以降、日本政府はいくつかの声明を出しましたが、今日まで一貫してイスラエルには自衛権があり、ハマスはテロリストだと言っています。上川陽子元外務相もイスラエルを直接訪問してくれました。日本は政府としてイスラエルの側に立ち続けています。それでは、日本がジェノサイドに賛同しているのでしょうか。そうではありません」
戦争犯罪なら「安保理が制裁すべきだがやらない」国際法違反を否定する根拠に
ーおっしゃるとおり、日本はジェノサイドに加担しています。G7もそうです。しかし国際連合や国際機関は、市民の殺害も、入植地の拡大も、ガザの封鎖も、すべて国際法違反だと言っています。イスラエルは国際法を守らなくてよいということでしょうか。それとも国連が間違っていますか。
「あなたが間違っている。もし国連が国際法違反というなら間違っている。何度も伝えていますが、ジェノサイドという批判は受け付けません。同じ質問ならもう答えない。国連がジェノサイドというなら拒否する。もし国際法に違反しているなら、なぜ安全保障理事会が制裁を加えないのでしょうか。戦争犯罪なら安保理が制裁すべきですが、それをやらないのは、国際法違反ではないからです」
取材後記
「天井のない監獄」のガザ、現在は“墓場”に
イスラエルは05年にガザから一度撤退した。しかしその後、ハマスが公正な選挙を経て政権を取ったのにこれを認めず、07年に封鎖を強化。人だけでなく物資の搬出入すらできない状況に追い込み、経済が壊滅したガザへ数年おきに攻撃を加えた。フェンスで囲まれ「天井のない監獄」と呼ばれたガザは今、墓場と化している。
大使は23年のハマス襲撃の際に「女性がレイプされ、拷問を受けた」「赤ん坊が焼き殺された」などと述べている。しかし、イスラエルがハマスの残虐行為とする情報には生成AIなどの虚偽の情報も含まれるとされ、第三者機関が現地を調査できない以上、真偽を見極めるのは困難だ。またイスラエルが1200人とする被害者数についても確かな情報はなく、被害者が武装勢力に殺害されたのか、自国軍の銃弾に倒れたのかも不明だ。
ガザ地区は現在、イスラエルにより封鎖され、国連世界食糧計画(WFP)の搬入は部分的な許可にとどまっている。米国とイスラエルが組織する「ガザ人道財団(GHF)」はわずかな食料を求めて群がる人々を射殺した。イスラエル紙「ハアレツ」は、配給地点に集まる群衆を追い払うため、イスラエル国防軍(IDF)が意図的に住民へ発砲するよう指令を出していたとさえ伝えている。
SNSにはイスラエル側がガザの市民を攻撃する動画も多数投稿されているが、大使は「ハマスが市民を殺している」と根拠なく述べた。自国に有利な情報だけ流し、都合の悪い情報を「フェイクニュース」と切り捨てるやり方は米トランプ大統領にも通底する。
イスラエルがパレスチナの人々を人間以下と見なし、人権を剥奪し続けてきた歴史は「ヒューマンアニマル」という言葉に凝縮されている。これはハマスではなく、パレスチナ人全体に向けられた言葉だ。イスラエル高官はパレスチナ人を「人間以下」と呼び、「我々共通の目標はガザ地区を地球上から消し去ることだ」とまで述べている。しかし、大使は本インタビューでこれらの発言を「公式見解ではない」と切り捨てた。イスラエル国内ではガザの民族浄化を行っているとの共通認識があっても、国際社会の理解は得られないことを知っているからだ。
安保理で米国が拒否権発動、犯罪行為を容認
「安保理が制裁しないのは国際法違反ではないからだ」という大使の言葉は強烈に響いた。国連安保理で米国さえ拒否権を発動すれば、どんな犯罪行為も認められると言っているに等しい。主要国首脳会議(G7)はロシアのウクライナ侵略には経済制裁を科しても、パレスチナの民間人虐殺を続けるイスラエルには制裁を加えず、連帯の姿勢を示している。その中には日本や沖縄も含まれている。イスラエルとの取引を続ける企業や、その製品やサービスを利用する私たち自身もまた、虐殺の加担者に他ならない。
大使が都合の悪い質問には正面から答えず「テロリスト・ハマス」のフレーズを繰り返したのも印象的だった。私たちが幾度となくテレビで耳にし、信じ込んできた言葉だ。イスラエルは国際法を守らないのかとの問いに大使は「ジェノサイドとの批判は受け付けない」と述べて席を立ち、振り向くことなく部屋を後にした。
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沖縄タイムスの連載【止まらぬ「虐殺」 ガザ侵攻】はYahoo!ニュースからも購入いただけます。連載5回分を上下に分けており、それぞれ330円です。イスラエルのギラッド・コーヘン大使のほか、パレスチナ大使や識者の発言もふんだんに織り交ぜています。こちらもぜひご覧ください。


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