5年に1度の国勢調査が実施されている。日本の現状と未来を考えるための重要なデータである。懸念されるのは未回答者が増えていることだ。
10月1日現在の住所、性別、職業、勤務地、世帯や住宅の形態など17項目を調べる。住民基本台帳などでは分からない居住や就業の実態把握が目的だ。
外国人を含む全ての国内在住者が対象となる。1920年に始まり、統計法で回答が義務づけられている。
非常勤の国家公務員として雇われた調査員が戸別訪問で調査票を配る。オンラインか郵送、調査員への手渡しで回答する。10月8日までに対応しなかった人には、調査員が再訪して回答を促す。
調査結果は、民主政治の基盤である選挙で区割りの根拠となる。少子高齢化や災害への対策を講じる上で基礎資料になる。企業のマーケティングや研究機関の学術調査などにも活用される。
ただ、95年に0・5%だった調査票の未回収率は増え続け、前回の2020年には全国平均で16・3%となった。東京都では15年に3割に達した。
背景にはオートロック式のマンションの増加やプライバシー意識の高まりがある。調査を装って個人情報を聞き出そうとする不審な行為が確認されており、詐欺への警戒感も広がっている。
回答しない人が増えれば、統計の正確性は損なわれる。データや合理的根拠に基づく政策運営が揺らぎかねない。
近年、非正規雇用の増加や在宅勤務の拡大など労働環境が大きく変わった。外国人も増えている。社会の変化を把握する必要性が、より高まっている。
インターネットを使えば郵送などの手間が省け、集計も効率化できる。政府はネット回答を増やすための広報活動を強化している。
大規模マンションに調査票を郵送で配布する試行も始まった。環境の変化に合わせ、手法の見直しを続ける必要がある。
日本では前例のない少子高齢化と人口減少が進む。課題を解決するには統計の精度を高めることが欠かせない。政府は調査の意義を丁寧に説明し、国民の協力を得る努力を尽くさなければならない。