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曽我さんのように、10月1日実施のNHKニュース・防災アプリの「NHK ONE」統合に、多くの不満の声が上がっている。僕もウィジェットがなくなって残念に思ってるんだけど、こうなった背景には実は新聞協会からの、強力な圧力が関係していることを忘れてる人が多いと思ったのでまとめてみた。 ・ウィジェットでニュースが読めなくなった ・海外からアクセスできなくなった ・以前より明らかに不便になった こうなった背景には、NHKと新聞業界との10年以上にわたる深刻な対立がある。テレビも新聞も詳しく語りたがらない、日本のメディア構造そのものに関わる問題。 ■ すべての発端は新聞協会の「民業圧迫」批判 新聞業界は長年、NHKのネット展開に強く反対してきた。その理由は明確。 ①紙の部数減少で苦しむ新聞社は、有料デジタル記事で生き残りを図っている ②一方NHKは年間約7000億円の受信料という、市場競争とは無関係の安定財源を持つ ③「その巨大な資金で高品質なニュースを無料配信されたら、我々の有料記事は売れなくなる 電子版有料化を図りたい新聞協会にとって、無料で充実したテキストニュースを提供する「NHK NEWS WEB」や「ニュース防災アプリ」は、自らのビジネスの根幹を破壊しかねない脅威。新聞協会は「NHKのネット業務が際限なく拡大する」と懸念を表明し続けた。 ■ 転機は2024年、必須業務化という「悲願」と「取引」 対立が最も激化したのが、NHKのネット配信を「任意業務」から「必須業務」に格上げするかどうかの議論。 新聞協会は猛反対したが、政治的な折衝の末、2024年5月に改正放送法が成立。NHKのネット配信は「放送と同じ本来の仕事」になった。 しかし興味深いのは、表向きの対立の裏で、NHKはネット文字ニュースの大幅縮小を受け入れる、そして新聞協会側はNHKのネット必須業務化に一定の理解を示す形になり、NHKと新聞協会が暗黙のバーターとも言える形で折り合ったこと。 実際、共同通信の報道では、新聞協会が2024年3月に「範囲限定を評価」して必須化を容認しているし、NHKのネット業務を議論する有識者会議で会議終了後に文言が密室で書き換えられるなど、不透明な形で水面下での調整が進められ、「民主主義を担うメディア同士が談合まがいの調整をした」との批判も出ている。 ■ NHK内部には葛藤も しかし一方で、NHK内部でもこの方針転換には強い不満があった。 週刊誌の報道では、関係者が「月間4億PVを取る日本最大のウェブメディアNHK NEWS WEBが…ふざけるなという気持ちになる」と落胆の声を漏らしたと報じられている。 NHKが望んだ変更ではなく、外圧によって押し込まれた側面が強いことが伺える。 ■ なぜアプリを作り替えなければいけなかったか NHKが必須業務化を達成したのなら、なぜサービスが使いにくくなったのか?と疑問に思うところだが、ここに今回の”からくり”がある。 法律上の位置づけが「任意業務」から「必須業務」に根本的に変わったため、古い枠組みで作られていた「NHKニュース・防災アプリ」を継続することができなくなり、NHKは新しい「必須業務」の枠組みに沿った「NHK ONE」へと厳密に切り替える必要があった──これが、10/1にならないと切り替えできなかった理由として考えられる。 そして「必須業務」になったことで、サービス提供の論理も放送と同じでなければならなくなった。 ①公平負担の原則 放送が受信料を払っている人に届けられるのと同様に、「必須業務」となったネット配信も、その費用を負担している人(=受信契約者)に提供するのが筋である、という理屈 ②民業圧迫批判への回答 サービスを「受信料契約者限定」にすることで、新聞協会が叫び続けた「無料で市場を破壊する」という最大の批判をかわすことができる ③制約の具体化 サービスを受信料契約者限定にしたことが、無料で使えるウィジェット機能によるニュース配信の廃止、海外からのアクセス制限につながった つまりNHKは、「必須業務化」という長年の悲願を達成する代わりに、新聞協会からの強力な圧力による“暗黙の取引”で、サービスに大きな「箍(たが)」を嵌めることになったということかな、と。 これが、テレビも新聞も詳しく報じない(報じたくない)今回の変更の本質。ジャーナリズム、報道機関として地域の新聞社が大事なのも確か。かといってNHKの政治ジャーナルとか面白かったし、そういうコンテンツが駆逐されるのは納得がいかない。どっちが正解か判断が難しい。
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曽我太一 Taichi Soga
@soga_taichi
NHKの新アプリ、放送どころかニュース記事すらも海外から見られなくなった。海外在住者は疑義等々、色々あるとして、海外出張中、海外旅行中の人ですら、ニュース記事を見られなくなり、NHKでは研修現地で何が起きているか見られなくなるということ。これが公共メディアとは。
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