ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで 作:ノートン68
お待たせ致しました。
RTA風と言ったな?あれは嘘だ(ゴメンネ)
今回はテンポを優先して急遽小説パートに変更です。
詰め込みまくったのでいつもより文量多いですが、よろしくお願いします。
調印式の悲劇を表すかのように、曇天から移り変わり雨がそぼ降っている。
エデン条約のテロ開始から凡そ2時間後、テロ首謀校のアリウス分校は容赦なくトリニティへ侵攻を開始していた。
アリウス側は
その中で一番の指揮権を持つアリウススクワッドは、古聖堂を通るルートで侵攻していた。
理由は単純にユスティナ聖徒会の強化に当たるため。
不死に近い聖徒会を持って有利に事を進めたアリウス側だが、ヒナの戦力を確認し認識を改めた。
聖徒会の復活には数十秒のインターバルが挟まる。
休憩時間を更に短くする為に戒律を更新するべく、スクワッドは歩を進めていた。
その歩みが古聖堂を目の前にして停止する。
人影が見える、それも6人。
その中でも特に見しった顔にサオリは声を掛けた。
「まだ諦めないつもりか──アズサ。」
「例え虚しくても諦めないと決めた、だから私はサオリを止める。」
「そ、そうよ!貴方たちの目論見はここで止めてみせるんだから!!」
「知っているぞ
【生憎と、生徒達の卒業を見届けるまで死ねないんだ。】
立ち塞がるは先生と補習授業部の面々。
アズサは以前の戦闘による傷が癒えてないのか、包帯やガーゼで痛々しい様子だ。
されど目は死んでおらず、そこに迷いはなかった。
……非常に面倒な状況だ、仲間に囲われて増長してる訳では無さそうだが。
「忘れたのかアズサ?人殺しの業を背負ったお前では、光側には居られないことを。結果的に殺してなくても同じだ。お前は一生、殺すという選択肢に呪われ続ける。」
ナギサ拉致作戦の一部始終は聞いている。
アズサが殺人という選択肢を取ったと、そこに付け入る隙があると睨んで容赦なく突く。
「……1人だけだったら、折れてたと思う。もう戻れないって諦めてた。せめてサオリ達は止めるって自暴自棄になってた。」
サオリ達アリウスを止めることを諦めることは無い。
例えボコボコに打ちのめされても、殺人という選択をしたとしても。
でも補習授業部に残る事は諦めていただろう。
自分には相応しくない場所だと、1人で抱え込みそのまま心は沈んでいた。
今回、そうはならなかった。
1つは先生が意識を失っていない点。
1つは、サクラコが早々にアズサが悩んでいると見破った点。
「私の正体は『覆面水着団』のリーダー、ファウストです!!」
「私だって『歩く18禁でも規制する怪異』なんて言われてますよ♡」
「私は、その、『ジャッジマン』って呼ばれてるし……!」
「私は『トリニティの暗部』とか『ユスティナ過激派』だったり……私だけ多くないですか?」
【私も『妖怪足舐め太郎』って言われたことあるよ。】
「……舐めッ!?」
「どうですかアズサちゃん!これでも世界が違うって、私達と一緒に居られないなんて言えますか!?」
更にもう1つ付け加えるなら、彼女達は決してアズサを離さなかった。
これに尽きる。
すぐ戻って来れるように、一緒にいると約束した。
「全て曝け出して尚、居てもいいって、一緒に居たいって言ってくれたんだ。」
「………。」
「それだけで私はまだ足掻ける、サオリ達を止めて日常に帰ってみせる!!」
【一応言うけど、投降する気は有る?】
「……冗談、それに私がただ無駄話をしたと?」
ユスティナ聖徒会が続々と顕現する。
徐々にその数は増え続け兵力は圧倒的にアリウススクワッドの有利に。
サオリの持つ通信機から『侵攻開始』の声が漏れ出た。
このタイミングで、アリウス全軍の侵攻が開始されたのだ。
「全員揃ってるなら好都合だ、お前が培ってきたものを全て虚無に帰してやる。」
「それは無理ですね。」
「私達が合格したのも、これまで頑張ったのも、無かったことにはならない!」
「今度こそ私達でケリをつける、サオリ……私達は負けない。」
「私達で、か───
直後、サオリ達を中心に爆炎が広がる。
聖徒会の何体かは燃えたが、上手く避けたスクワッドは全員無事だ。
無傷で煙から飛び出したサオリは背後を睨みつける。
煙は思った以上にすぐに晴れた、視界が良好になると4人の人影が見える。
サオリ達を挟むように背後の射線には小型のドローンが浮いていた。
額に数字の書かれた目出し帽を被ったヘンテコな奴らがそこには居た。
トリニティでもゲヘナでもないソイツらは、恩を返す為だけにこの場へ降り立った。
「もうッ、シロコ先輩が合図待たずに撃つから!!」
「ん……。」
『ま、まぁ改めまして……対策委員会、今度はヒフミさんの事を助けに来ました!!』
「な〜にウチのリーダーを泣かせようとしてるのかな?で、先生を撃った子は誰?」
アビドス対策委員会、現着。
「う、噂に過ぎないと思ってましたが、本当に居たんですね……。」
「リーダー、格好はあれだけど全員やり手だよ。舐めて掛かると痛い目に遭う。」
「……問題ない。」
相手の戦力が未知数でも問題ない。
無限の兵力がある自分達が負けるはず無いのだから。
それに奴らと違ってサオリ達は先生さえとれば良い。
見たところ彼が全員の精神的な支柱だ。
指揮能力が高いようだが所詮はヘイローを持たない大人、幾らでもやりようはある。
そんな算段をするサオリの元に無線が入り込む。
何やら焦った様子で、尋常ではない状況だと窺い知れる。
補習授業部とアビドスの面々を警戒しつつ応答する。
「こちらスクワッド、どうした応答しろ。」
「聞いてないぞ!何も無いと思ってたのにこんな化け───ガガッ……」
「話と違うぞ!2校の主力は削れたはずじゃ──アグッ!?」
「……は?」
チームⅠ:カタコンベ内
このチームが最も不運だっただろう。
何せ目的地に着く前に襲撃を受け、半分壊滅状態へと追いやられたのだから。
部隊の中でも優秀な部類に入るアリウス生徒達は、聖徒会を見やる。
だが聖徒会は動かない、ソイツが
粘液を撒き散らし、数多の触手を畝らせるソイツはチームⅠへにじり寄る。
「うおおおッ糞!!弾が効いてる気がしない!!」
「攻撃の手を休めるな!気を抜くと一瞬でやられるぞ!!」
「一体なんなんだこの化け物は……!?」
完全にホラーの画を作ってるソイツの名は《パンちゃん》。
ゲヘナの下水から遥々トリニティまで流れ着いたソイツらは、合宿場を去った後に力を貯め巨大な一体の生物として活動していた。
元が食べ物だからなのか、地下通路の気温湿度は居心地が良かったらしい。
ソイツに知能があるかなんて分からない。
縄張りを侵されたと感じたのか、偶然にも《パンちゃん》はチームⅠと戦闘を始めていた。
いや、戦闘と呼べる状況では無かった。
アリウスで化け物退治の仕方など教わっていない。
「触手!?避け──ウブッ!!」
「……畜生ッ!!」
ユスティナ聖徒会は機能せず、戦闘ではなくもはや蹂躙。
助けを求める通信をする暇もなくチームⅠはこの日壊滅した。
チームⅡ:トリニティ自治区地上
「ギャハハハハ!!」
此方も同じく蹂躙劇が開幕していた、アリウス生徒は漫画のように顔を壁にめり込ませて居る。
地上に出たところを待ち伏せされるかのように襲撃を受けたチームⅡが最初に見た光景はツルギの顔面ドアップであった。
そこからはツルギが暴れまくり、次々にチームⅡは兵力を削がれていった。
《神名のカケラ》で強くなったと実感を得た先にコレだ。
トラウマは避けれないだろう。
「ミサイル着弾による傷がある筈なのに、なんでそんなに動けるんだ!?」
「傷ぅ?そんなもの──もう治ってる!!」
「ツルギ程ではありませんが私達も動けます。指揮を任せますよイチカ。」
「了解っす、じゃんじゃん暴れてきて下さいっす!!」
「もっとだ……もっと破壊させろォ!!」
「これが《歩く戦略兵器》……!!」
凡そ善側のセリフでは無い言葉を発しながら、ツルギは進撃の手を緩めない。
無限湧きする聖徒会はハスミ達が最小限に掃討。
残りは着々とアリウス生徒を狙い、戦局は正義実現委員会が握った。
チームⅤ:同じくトリニティ自治区地上
此度の侵攻にはチームⅤも参加していた。
相手が誰であろうと今回は最終的に《敗走》という形で撤退する予定だったが……。
予想外の因縁の相手に、チームⅤは作戦を変更しようとしていた。
「リベンジマッチか……。」
「前は引き分けっすからね、今回は負けないっすよー。」
「何でしょうかね、彼女達とは縁がある様です。」
「お、オーナーに確認してみますね?」
「ななな、なんで《蒼獄の傭兵》が来るのよー!!?」
「クフフッ、付けてるのはガスマスクだけど、近くなら流石に見分けつくようになったよね♪」
身元不明者からの依頼で、カッコよく先生を助けたと思ったのもつかの間。
その場を離れる際、秒で彼女達はヒナとかち合った。
いつもならすぐに逃避行が始まるのだが、便利屋を見るや否やヒナは頭を下げて懇願してきた。
「どうか力を貸して欲しい」と。
風紀委員長が頭を下げたのだ、ただ事では無い。
加えてアルの根っからのお人好しに加え、珍しく仕事を完遂してテンションが上がっていた事が相乗効果を生み出した。
はい、二つ返事で受けました。
その結果コレである。
「どうするの社長、逃げる?」
「バカ言わないで、受けた依頼を投げ出すアウトローが何処に居るの!!」
「流石ですアル様!!」
「……リーダー、オーナーからの許可がおりました。『あまり無理しないように』との事です。」
「な、ならユスティナ聖徒会は切っておきますね?」
一応、便利屋がオーナーの依頼を受けてこの場に立っていると知っているが、手加減など考えていなかった。
彼女達の強さは知っている、むしろ胸を借りるつもりで挑むべきだと。
「色々と聞きたいことはあるけど後よ、依頼を遂行するわ!!」
「チームⅤ、戦闘開始だ!!」
チームⅥ、Ⅶ:同じくトリニティ自治区地上
学園から最も近い出口へと繋がるルート。
恐らく一番の激戦区になると予想され投入されたのは2班。
トリニティ側も必死に守りに入ると思われたその戦いは、たった
「どうしてお前がここを守っている……!!」
「アッハハ!無理無理〜、この先には行かせないよ☆」
「うん、そうだな……ナギサ、次は向こうの座標に頼む。」
『了解いたしました。』
ティーパーティー筆頭、聖園ミカ。
同じくティーパーティー筆頭、桐藤ナギサ。
そしてティーパーティー現ホスト、百合園セイア。
本当の意味で手を取り合う事はなかった三派閥が協力し、学園を守っていた。
軽い異常事態である、3人個人の仲は良くとも派閥争いはバチバチであったが為に。
ミカが前線で暴れ、おぶさったセイアが予知と勘で指示を出し、ナギサが砲火後ティータイムでユスティナ聖徒会を蹴散らす。
付き合いは長くとも一緒に戦線を共にする事は無かったが、その連携は板に付いていた。
ミカに殴られたアリウス生徒がまた宙を飛んでいく。
「さぁ、ドンドン行くよー!!」
「(ひとまず、君が調子を取り戻してくれてホッとしてるよ。)」
牢屋で改めてミカ対面した時、いつもの明るさは消え失せていた。
表面上はいつも通り取り繕うとしていたが、長年の付き合いで見抜けない訳がなかった。
無理やり作ったその笑顔の奥で、ミカが何を考えてるのか今なら手に取るように分かった。
セイアには理解出来た。
彼女の苦悩が、嫌悪が、悲観が、憤怒が。
そして罪悪が。
云わばミカは、罪悪に潰される手前の状態。
暴走状態は止まったとはいえ、彼女は自暴自棄になっていた。
調印式をぶち壊そうとし、ホストをも手にかけようとした自分が許されるはずないと。
差し伸べられる手を跳ね除け、罰だけを受け入れる準備をしている。
「(非常に面倒くさいモードに入ってるな、話が進まない。)」
何処で覚えたのか、セイアは原作の数倍図太くなっていた。
最終的にミカの事も悲劇のヒロインぶって悲観的になっていると判断した。
それがFOXの逆鱗(?)に触れた。
「フンッ!!」
「!?!?!!?」
「見くびるなよミカ、私は君に怒る事はあっても1度だって恨んだ事なんて無い。」
生涯で最初で最後と言えるほどのフルスイング。
思いっきり張り手をミカにぶちかましたのだ。
突然の事にミカも頬を抑えて目を白黒させている。
そんなミカを気にせずに近づくセイア。
「これで私を襲った分はチャラだ、だから早速力を貸してくれ。」
「でも、私は……。」
「エデン条約でのやらかしは今後どうにかすれば良いさ、そこはナギサに任せればいい。*1罪滅ぼしって訳じゃ無いけど今は君の力が必要なんだ。」
差し伸べられた手はミカの頬よりも赤く腫れていた。
それでもミカの中で何かが変わったのだろう。
ひとしきりの間をもって、ミカがようやく手を取ったのを確認してセイア達は牢から飛び出した。
その後も色々あったが、他ならぬホストであるセイアが決めたという点。
一種の奉仕活動として扱うと働きかけてくれたナギサの献身がいちばん大きいだろう。
かくして、ティーパーティー三位一体の力は解き放たれた。
襲ってきたアリウス生徒を殴り飛ばしながら、ミカは言葉をこぼす。
「……本当に良かったのかな?」
「被害者の私が許すって言ったんだ、文句は言わせないさ。こういう時の為の権限だよ。」
「それ、絶対に違うと思うんだけど……フフッ。」
「どうしたんだい?」
「変わったよねセイアちゃん、前みたいに小難しい話がなくなってドストレートにものを言う様になったなって。」
「年長者からのお節介さ、治すのには苦労したけどね。」
『ちょっと?私抜きで楽しそうにしないでください。』
楽勝ムードが漂う中、セイアの勘が警報を鳴らす。
セイアと同じく小柄な彼女は、
ホモの夢で散々みたその面影をセイアが忘れる筈もない。
「ッ!!やっと来たか!!」
「状況を把握、あの二人を倒せば良いのですね?」
「あの子は──気を付けるんだミカ!!」
ガスマスクをつけた少女は、他のアリウス生徒とは違う雰囲気を発していた。
セイアは知っている、彼女とミカの相性はあまり宜しくないと。
ホモの狙いがトリニティを潰す事ではないと理解はしているが、彼が大ポカをやらかす可能性も十分にある。
緊張で押し黙るセイアにミカが諭す。
「大丈夫だよ、3人揃った今なら誰にも負けない自信があるじゃんね☆」
「挑発、
ここから10分間、ミカ達は死闘を繰り広げる事になる。
そして
アリウススクワッド:古聖堂前
ここ一番の激戦区。
アビドスの増援が入ったにも関わらず、スクワッドはそれを押し返す勢いで五分五分の戦いを演じていた。
1度でも判断をミスった方が食われる、そんな戦いだ。
銃声は止むことを知らず、砂煙が立ち込め、未だ雨が降り続け、お互いに気を抜けない最中。
それでも一般生徒でしかない少女は宣言した。
「アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です。
そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌いなんです。
それが真実だって、この世界の本質だって言われても、私は好きじゃないんです!
友情で苦難を乗り越え
努力がきちんと報われて
辛いことは慰めて、お友達と慰めあって……!
苦しい事があっても、誰もが最後は笑顔になれるような──
そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!
誰が何と言おうとも、何度だって言い続けてみせます!
私たちの描くお話は、私たちが決めるんです!
終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!
私たちの物語……
【ここに宣言する……私達が、新しい
──曇天が晴れる。
少女の勇気ある宣言が事態を急変させた。
加えて先生が自分達が新しいETOだと戒律を
これにより、この場にETOが2つ存在することになった。
完成度が高かろうとも所詮は複製、予想外の事態にあってはバグるしかない。
「……リーダー、ユスティナの統制がおかしくなってる。」
「こ、混乱してますね。聖徒会が消えたり現れたり……。」
「知ったことか!!」
立場が逆転しようともサオリは吠える。
捻じ曲げられた信条が支えだった彼女がソレを失えば、真逆の答えを目の前で憎しみの、不信の世界が覆されたら。
彼女の中の芯はブレていく。
まともでは無い精神状態で彼女の隠密に気づける訳が無かった。
怨敵に忍び寄った少女は容赦なく放銃する。
そしてただ1人に向けて盾を激しく《bash》した。
狙われた
間違いなくソイツは殺意を込めて殴ってきた。
「お前だな、先生を撃ったのは?」
「ッお前は──」
暁のホルスが照準を定めた。
そこに先生の知ってるホシノの面影は無い。
ここに前・対策委員長、もしくはヒナが居れば間違いなく気付いただろう。
以前のような守備に重きを置いた動きでは無い。
荒々しく、されど的確に俊敏に。
過去のホシノの側面が強く出ていた。
「まだだ、終わりじゃない……ッ!!」
ユスティナ聖徒会も半数が機能不全に陥ったが終わりでは無い。
アリウス側は抗う、全ては虚しいと信じているがために。
決着は近い。
そんな熱戦の続く古聖堂の地下深く。
双頭の木人形は《経典》を手にその様子をモニタリングしていた。
その様は天を仰ぐように両腕を伸ばし、啓示を受けたかのうような。
彼に表情筋があれば間違いなく感涙に咽び泣いていただらう。
「素晴らしい」
「ただの生徒という記号でしか無かった彼女の言葉が、激情が、信念が、この世界の不信に打ち勝ったという証明に他ならない!!」
「彼女の言う事を聞くことが癪だったが、ここに来て正解だった。」
「あんなに良き物語を魅せられては、私もお披露目しなくては矜恃が廃るというもの。」
「今度は其方の番だ、先生。貴方の輝きを見せてくれ。」
「一堂に集まりし観客達よ、そしてホモよ。今一度、喝采の準備を──」
秘密裏に舞台を整えた芸術家は装置を起動した。
佳境を迎えるに相応しい輝きを求めて。
描写は省きましたが、ヒナ委員長もその他大勢も戦ってます。
次回も恐らく小説パートです。
後2話で終われるか……?