ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせいたしました。

書きたい事を詰め込んで7000文字越えです()



ソレはソレとしてナギサは泣かす

本来生徒は皆帰宅し、静かなはずのトリニティ校内。

しかし、校舎本館の周辺は物々しい雰囲気が漂っていた。

 

それもその筈、正義実現委員会が厳戒態勢に入っているからである。

エデン条約に必要な重要書類を保護するという、他ならぬナギサ本人の指示で。

 

戒厳令さえも出している徹底ぷりだが、これ見よがしに固められた守りは(ブラフ)

本人は用意していたセーフティハウスの1つ、別館の屋根裏部屋に引きこもっていた。

 

そしてその部屋では、ナギサが現在進行形で()()()()いる最中であった。

ハナコとアズサが2人がかりで、椅子に固定していく。

 

 

「タイミングはアズサさんにお任せします。」

「………分かった。」

 

 

勿論、これも作戦の内だ。

 

まず自力で直ぐに解けるように拘束したナギサを「拘束した!」と、アズサがアリウスの部隊に情報を流す。

そして駆けつけたアリウスの部隊へ、隠れていた補習授業部が奇襲するというシナリオだ。

 

作戦立案は全てナギサ。

彼女は篭城戦での対抗を考えていた。

 

ここまでの道のりには、数多くのブービートラップも設置してある。

少しでも消耗させたアリウス部隊を削ってしまおうという魂胆だ。

 

因みに囮役も本人が買って出た。

頼もしい仲間ができた事で、余裕の生まれたナギサは改めて肝が据わっていた。

 

が、何やら雲行きが怪しい事になっている。

 

 

「ハナコさん、縄の縛りが少々きつくありませんか?」

「いえいえ〜♡」

 

 

何だか縄が凄くキツいような予感がする。

いや、手首に痛みが走る程に堅実に縛られている。

そして縄は手首だけではなく足首、そして胴体にまでも巻かれていく。

 

完全な簀巻きで、見た目はもはや蓑虫だ。

そこまでされて、ようやくナギサは疑問を呈した。

 

 

「手だけじゃなくて胴体まで……やっぱりおかしくないですか!?」

「いえいえ〜♡」

「これが用意した猿轡と目隠しだ、完全に外部情報を遮断できる。」

「ンムゥ〜ッ!!?」

 

 

おかしいと気づいたところで遅かった。

ナギサの力では、雁字搦めになったロープを引きちぎることは出来ない。

それこそ、何処かのゴリラ(ミカ)でもなければ。

 

 

「ついでに、この隠し味も追加しますね〜。」

「ソレを使うのか……。」

「ンンッ!?(冷たいッ!!そしてヌメヌメして気持ち悪い、一体何をかけられて!?)」

 

 

追い討ちと言わんばかりに、謎の液体をかけられるナギサ。

体の自由はきかず喋れもせず、感覚も視覚を奪われた状態。

これからアリウスが攻めてくるという緊張感もあり、張り詰めた神経はより強くナギサに刺激を与える。

 

猿轡で息苦しく、ヌメヌメが気持ち悪い。

嫌悪の方が強い筈なのに、この感覚は一体……。

 

 

「それでは囮役、頑張ってくださいね♡」

「ンンーッ!!(待ってください!こんなザマ、誰かに見られたくありません!!)」

 

 

無慈悲な宣告の後、足音2人分は外へと出ていってしまった。

残りは立つことも儘ならない、芋虫と化したナギサ1人。

 

 

何処かの廃墟から親友の爆笑する声が聞こえた気がした。

 

 

別館から出た2人は、()()の作戦の為に指定位置に向かう。

特にハナコは上機嫌の様子だ。

 

 

「ふふッ♡ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願いしますね?」

「了解、これでアリウスも襲撃を急ぐに違いない。……ところで()()()()()、使って大丈夫だった?」

「あれは勝手な仕返しと言いますか、ちょっとくらいはおしおきをしておこうかと。衛生的には問題なさそうだったので大丈夫でしょう。」

 

 

ナギサにかけた謎の液体、その正体は冷蔵庫でキンキンに冷えたパンちゃんの粘液

一度煮沸したソレは粘性を失うどころか更に独特なヌメヌメは強化され、完全な兵器利用が可能な代物へと変貌を遂げていた。

 

アレを纏っていればアリウスは回収に確実に失敗する。

まさに一石二鳥のおしおきで、ハナコの顔はニコニコしている。

 

流石に訓練を受けたアズサでも引く仕打ち。

ハナコの笑顔が怖く感じてきた。

アズサはハナコを怒らせることは、今後も避けようと決心した。

 

 

「一旦ここでお別れ、あとでまた合流地点で会おう。」

「はい、また後ほど!!」

 

 

 

 

 

 

 

屋根裏のセーフティハウス。

静寂に包まれたその空間をぶち壊す程の音で、入口の扉は蹴り破られた。

そして中に入ってくる何人ものアリウス生徒。

彼女達チームⅢはターゲットを捕縛する為に部屋へ豪快に侵入した。

 

 

「セーフハウスにてターゲットを確認、捕捉します!!」

「既に縛られているな、先客がやったのか……どちらにせよ好都合だな。」

 

 

メンバーに椅子に括り付けられ横たわっているナギサの回収を命じる。

不気味な程に都合が良いが、気にする暇は無い。

ここから正義実現委員会にバレずに逃走する必要がある。

 

そんな事を考えていると外で活動中の別部隊から連絡が飛んでくる。

どうやら尋常じゃない状態らしく、銃声と悲鳴が通信機越しに漏れている。

 

 

『こちらチームⅣ!スパイが裏切り奇襲を受け……グァアッ!?』

「スパイめ、()()()裏切ったか!だがターゲットはもう手に入れて──」

 

 

既に予想していた事実に驚きを見せない司令塔。

彼女はそう呟きターゲットの居る方を見やると驚きの光景が目に入った。

 

 

「何だこれ、ヌルヌルして全然掴めない!?」

「クソッ、滑って全く力がこもらない!!」

「こんの……うおっ!?」

「おい、そんな勢いで転んだら粘液が──グアッ!?」

「ンンーッ!!?」

「不味い、武器を持つどころか立つことさえ……。」

 

 

ターゲットにかけられた謎の粘液でてんやわんや。

掴めそうなところでバランスを崩し落とされ、床に頭を強打したナギサからは叫びとも取れる声が漏れ出る。

 

そして攫おうとしていたメンバーも粘液に塗れ、ナギサと同じく立てない状況に陥る負のスパイラル。

四つん這いになりバランスをとる事さえも、困難極まりない。

 

あらゆる訓練を受けてきたアリウス生徒達だが、こんな状況の特訓なんてしたことは当然ない。

パニックになり、悪手をとるのも時間の問題だった。

 

 

「一体どういう事だコレは!?」

「助けてくださいリーダー!!」

「コッチによるな!触れるなッ!止め────

 

 

状況は混沌(カオス)を極めていた。

リーダーを失い統率の取れなくなったメンバーは、助けようと向かい次々と犠牲者を増やしていく。

まるで害虫ホイホイのように、地獄絵図が広がっていった。

 

受身を取る際に手放されたトランシーバーは、無情にも既に手の届かないところに投げ出されてしまっている。

報告が無いことに疑問を持った部隊がその場へ投入され犠牲者は増える一方だ。

 

一方、この惨状を作った元凶(ナギサ)はと言うと──

 

 

「(あぁっ、知らない生徒にこんな屈辱的な姿を見られるなんてッ!)」

 

 

彼女も彼女で新しい扉を開こうとしていた。

そこから先は地獄だぞ。

 

目隠しで外からは分からないが、その表情は薄く赤くなり恍惚とした表情を浮かべているかもしれない。

 

覗き見していた何処ぞのFOXは若干引いた。

ナギサは泣いてもいい。

 

 


 

 

トラップで残りの別動部隊も削り、体育館へ追い込んでは仕留めていく。

ナギサトラップも上手い具合に働いたのか、予想を遥かに下回る数で難なく撃退する事ができた。

そして今、最後の一人が崩れ落ちた。

 

楽に倒せたように思えるが勘違いしてはいけない。

アリウス生徒は全員強い、全員が『神名のカケラ』による強化を受けているから。

 

強さだけならそこらの生徒より数段上だ。

ならばなぜ負けたのか?

答えはアズサの存在と先生の指揮だ。

 

元々『神名のカケラ』は才能のない者でも一定以上の神秘まで強化する為に開発されたものだ。

お手軽に大多数を強化できるのが強みだが、その強化幅は劇的なものではない。

ソレ単品では天才のレベルには到底辿り着けない。

 

アズサはその部類であった。

更に訓練も怠らず、同じく『神名のカケラ』による強化も受けている。

並大抵の努力では凡人は彼女を超えることは出来ない。

 

加えて先生の指揮も合わされば、まさに鬼に金棒といったところ。

数を減らし、消耗したアリウス生徒が勝てるはずもなかった。

 

 

「コレで全員だ、けどまだ増援が来るはずだから気を抜かないで。」

「大丈夫、ハスミ先輩に連絡を入れたからもうすぐ来るはず!」

 

 

直後、ドカリと扉が豪快に開かれぞろぞろと入ってくるアリウス生徒。

さっきの倍以上は確実に居る。

 

彼女達は直ぐに戦闘を始める訳でも無く、入口からまっすぐ道を開けて待機していた。

コツコツと等間隔に靴を鳴らしながら、ゆっくりと奥から人影が入ってくる。

そしてコハルのセリフを嘲笑うかのように、黒幕が姿を顕にした。

 

 

「それは無理だよ?だって今、権限をフル活用して足止めしてるからね!!」

「……ミカさん。」

「あれれ?リアクションが薄いなぁ。もしかしなくてもバレちゃってるねコレ☆」

 

 

本物の裏切り者、聖園ミカ。

既に情報を掴んでいたので驚愕はしなかったが、代わりに緊張が走る。

アズサも直感で感じ取った──ミカの底知れぬ強さを。

 

対するミカは自然体で、まるで補習授業部など意に介してない様子だ。

世間話でもするかのような気楽さで、ミカは少し困ったような顔をしながら勝手に話し始めた。

 

 

「ナギちゃんの所に行ったけど何アレ?粘液まみれで放置プレイなんて酷くない?」

粘液まみれ!?放置プレイ!!?

「えぇ?ナギサ様に何してきたんですかハナコさん!?」

「少々お灸を♡」

【こ、怖い……。】

 

 

ミカへ情報が流れることを危惧して別案を主軸に動いていた補習授業部一行だが、他4人はナギサの扱いについて詳しい内容を知らなかったのだ。

ミカの裏をかく形で作戦は成功したから結果オーライだろう。

 

 

「拉致を諦める訳では無いようですね?」

「うん、どちらにしろ直ぐに回収はできないなら、先にスケープゴートを確保しておこうかなってね?」

「私達にテロの首謀者の濡れ衣を着せようと?」

「そーゆー事☆」

 

 

人数的には大分不利だ。

しかもあちらは個々に差はあれど、全員が『神名のカケラ』で強化を受けている。

対してコチラ側でまともに戦り合えるのは、アズサとヒフミ程度。

更に向こうにはミカが居る。

 

こうなってしまうと閉鎖的な環境が不利に働いてしまう。

先生の指揮があれど、少し厳しい状況へと追い込まれた状況だ。

 

 

「無駄な抵抗しないで言う事聞いてくれると助かるんだけど?」

「無駄ではありませんよ。」

「うん?」

 

 

突如、ミカの後方……体育館入口の外から澄んだ声が聞こえる。

聞き覚えのある声、というか忘れるはずがない。

この場、状況下で唯一動ける集団のリーダー。

 

 

「今日も平和と安寧が、皆さんと共にありますように……。」

「大聖堂から新手です、数は軽く20人!」

「へぇ、貴女が動くんだ。」

 

 

既に体育館を包囲するように、何人もの修道服を着た生徒が待ち構えていた。

その中の代表者が1歩前へ出る。

シスターフッドの長、歌住サクラコだ。

 

 

「……そっか、唯一独立組織のシスターフッドだけは戒厳令を無視して行動できる。けどそれに伴うリスクはガン無視なの?」

「問題ありません。正義実現委員会を見習って巡視を行ったところ()()()()体育館が騒がしいのを聞きつけただけで、シスターフッドやティーパーティー云々は関係ありません。」

 

 

屁理屈だ。

だがそれが許される程の異常事態なのは確か。

そもそも独立組織のシスターフッドを御せる組織は、今のところシャーレ程度。

彼女たちを止める相手はココには存在しない。

 

 

「それに友人を救うのに理由が必要ですか?」

「あははっ、随分仲良くなったみたいだね浦和ハナコ?」

「それはもう、たいへん弄りがいがあって愉k──とても素晴らしい人ですわ♡」

「ティーパーティーの聖園ミカさん、ティーパーティーの他メンバーへの傷害未遂であなたの身柄を拘束します。」

 

 

形勢はまさに大逆転。

力関係的には五分五分に持ち込んだといったところ。

しかしそれは勝敗の話。

 

例え勝てたとしても、ミカはスケープゴート作戦を使えない。

加えてシスターフッドが介入した為、纏めて潰すレベルの完勝をしなければミカの目的は達成不可能となる。

それでもミカは余裕の笑みを崩さない。

 

 

「流石にシスターフッド追加で相手は骨が折れるなぁ……なんて言うと思った?思っちゃった?」

「事実私たちの優勢だと思いますが。」

「私も切り札くらいは用意してるんだよね。出番だよチームⅤの皆☆」

 

 

出てきたのは3()()のアリウス生徒。

姿は他の生徒と余り変わらないが、異様な雰囲気をまとっている。

勘のいい奴なら、彼らを一目見ただけで一筋縄ではいかないと悟るだろう。

 

 

「先生の指揮能力の高さは脅威の一言だけど、流石にこの人数を一斉に指揮するのは無謀じゃんね?だからそこにつけ込む。」

【ミカ……。】

「気をつけて皆、彼女達はアリウスの中でも腕利きの部隊。先生の指揮があっても完全に勝てるとは言い難い。」

「そこまでですか!?」

 

 

他ならぬアズサだからこそ知っている。

彼女達の強さ、そしてその特異性を。

もう1人の大人(ゲマトリア)が手塩にかけて育てた精鋭だと言う事を。

 

皆がチームⅤを警戒してる中、ハナコはミカについて注目していた。

それはほんの少しの違和感。

 

 

「(ミカさんはここまで計算高いような人物でしたか?)」

 

 

頭が悪い訳ではないが、彼女はどちらかと言うと感覚派な生徒だとハナコは思っていた。

それがこうもガラリと印象が変わるものだろうか?

或いは隠していたのか。誰かからの入れ知恵か。

 

 

「じゃあ、始めよっか☆」

 

 

軽いノリでミカは手を上げ────。

それと同時に体育館の窓ガラスを突き破り、榴弾がぶち込まれた。

 

 

「あのシャーレの先生だからね、多少のズルは許して欲しいな。」

「今だ!突撃───グハァッ!!?」

「……火力高すぎるの頼んじゃったな。」

 

 

突然ぶち込まれた榴弾で混乱するかと思いきや全員冷静だった。

チームⅤが現れたと同時にアズサが《奇襲の可能性大》とサインした事が幸いしたのだ。

アズサは塵と煙幕で咳き込みながらも、既に2人のアリウス生徒を倒していた。

 

 

「ケホッケホッ、視界が悪いのは向こうも同じ。ならこの間にできるだけ減らさないと。」

「よく覚えてるじゃないか。」

「な───グッ!?」

 

 

死角から現れたリーダーに驚愕し慌てて腕を交差させる。

次にアズサの体を襲ったのは重い衝撃。

体育館の壁を突き破り外へ蹴り飛ばされた。

後方へ飛び衝撃を緩和したと言うのに、腕は未だ痺れている。

 

タンブルウィードのように地を転がり距離をとるアズサ。

立ち上がった時には既に射撃準備が完了しており、リーダーに向かって発砲した。

 

 

「随分と器用だな。」

「当たらない!?」

 

 

しっかり狙っているのに当たらない。

弾丸が自ら避けていくかのように錯覚するほどに。

恐ろしく無駄の無い動きでどんどんと距離を詰めるリーダー。

 

 

「(間違いない、前に見た時よりもずっと強くなってる!!)」

 

 

いくら生徒でも殴られると痛いし、豆粒のような銃弾でも当たれば傷つく。

それ故のどれだけ被弾せずに近付けるかの動きだ。

一体どんな訓練を受けると、ここまでの動きができるようになるのか。

 

アズサと同じく、リーダーもまた己の成長を感じとっていた。

 

 

 

「(格段に動きが良くなっている!!嘘のように体が軽い!!)」

 

 

 

思い出されるのは、二週間も前の事。

オーナーへ土下座へ近いレベルのお辞儀をしてまで、とある頼み事をしていた。

 

 

「恐れながら『瞬』なる歩法をご教示いただきたく。」

「滅多に我儘を言わない君の事だ。できれば叶えてやりたいがな……。」

 

 

オーナーは乗り気ではなかった。

というのも彼が教えられる技術を覚えるには、生徒が耐えられるグレーゾーンな修行が多いからである。

 

リーダー達は今のままでも充分強い。

できれば技術は教えずにゆったりと、強くなって欲しいオーナーは難色を示した。

既に基本的なCQC、銃火器全般の使用方法、戦闘指揮を教えているのだから。

 

 

「そもそもどこで私が教えてくれると……。」

「カイが自慢しにきたので(に教えてもらいました)。」

「(あの子か……。)」

 

 

最近の話である。

なぜそんな話になったか覚えていないが、オーナーに直接師事して貰わないのかという話題だった。

 

『私は既に教えてもらったがね!m9(^Д^)』(意訳)

 

リーダーは静かにキレた。

 

 

「君にはまだ伸びる余地がある、後は基礎能力を伸ばしていくだけだ。地道だが大事なことだぞ?」

「それでは遅いのです。」

「あぁ、この前のアレ(チェルノボグ戦)だな?奴は例外だ。」

 

 

ならリーダーが焦る気持ちも分かる。

全く手も足も出ず、見ているだけの無力感。

オーナーも味わった事があるだけに、その気持ちは痛いほど分かった。

それでも、どうしても《殺しの技術》を教える気にはならなかった。

 

 

「……ダメだ、一朝一夕で身につけた半端な技術は諸刃の刃になる。それに付け焼き刃はあのレベルには届かなくなる。」

「そう、ですか…。」

 

 

”だが”とオーナーは付け加えた。

逆に言えばソレ以外ならなんだって教えれる。

 

 

()()()()()()訓練なら一緒にするか?」

「オーナーも一緒という事ですか!?」

「そうだ、最近落ち着いてきたし私が指導する。」

「オーナーと一緒、つまりマンツーマン……。」

「善は急げだ、今からレッドウィンターに()()。防寒着を準備しておくように。」

「はい!!」

 

 

レッドウィンターという過酷な環境下での訓練だろうか。

極寒の雪山にはよくクマも出現すると聞く。

 

 

「(どんな訓練でも、オーナーと一緒ならなんだって耐えられる!!)」

 

そんな決意とは裏腹にオーナー(くそぼけ)は振り向きざまに確認を取ってきた。

 

 

「時にリーダー、君にスケートの経験はあるか?」

「──スケート?」

 

 

 

 

あの後結局、特訓には全員着いてきた。

やはりクソボケはクソボケであった。*1

 

しっかり訓練は受けて、霜焼けが出来るほどに滑っていたリーダーは怒っていい。

だがその努力は確実に実を結んでいた。

 

彼女から無駄な《力み》が無くなっていた。

 

銃弾を避け、隙を見つけては放銃。

派手な動きは必要ない、ただ冷静に目標を削る狩人と化していた。

無駄のない動きで淡々と追い詰める。

 

アズサも何とか凌いでいるが時間の問題だろう。

1発の弾丸が頬を掠めていく。

既にお互いの射程距離まで入っている。

 

 

「悪いがもう少しだけ付き合ってもらう。」

「(──強いッ!けど、諦めない!!)」

 

 

アズサの勝ち筋はただ1つ。

別館へとリーダーを誘い込む事だ。

 

長い鬼ごっこが始まる。

 

*1
だから滅びた





【悲報】ナギサ様、新たな扉を開く【緊縛ローション放置】

引き続き次回も小説パートです。
Vol.2決着。
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