ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで 作:ノートン68
お待たせ致しました。
最近投稿頻度が落ちてスマナイ……。
ここ1ヶ月は恐らくこの調子です()
何とか週1以内投稿は継続したいと思う今日この頃。
第一次特別学力試験を落としてしまった補習授業部。
彼女達は合宿の着替え等を買うために、ショッピングに来ていた。
勿論ブラックマーケットではなく、ちゃんとしたショッピングモールだ。
トリニティだけあって物価は高いが、その分品質面は優良なものが出揃っている。
彼女達は補習授業部から交流を持ち出したが、先生やヒフミという潤滑油もあり何だかんだ親睦を深めていた。
補習という名目だが、友達とお泊まりする事が楽しみだという気持ちも少なからず湧く。
それは
「ではこの《ジャモカコーヒー》のフレーバーを1つで。」
なんなら彼女が1番エンジョイしていた。
成績的にも余裕があるので、致し方ない点もあるだろう。
しかし、それ以上に彼女をここまで開放的にさせる他の要因があった。
「どうぞ皆さんもお好きなものを1つ選んでください。」
「わぁッ、ありがとうございま──ってコレは限定の《ペロロ様アイス》!?」
「か……かわいい!私もコレで頼む!!」
「では私はバニラを。手搾り生乳ですってコハルちゃん♡人の手によって無理やり絞られたと考えるとこう、何か熱く込み上げるモノがありませんか?」
「エッチなのはダメ!死刑!!……私はこの《いちご100%》で。」
シスターフッドという色眼鏡をかけていない、分け隔たりなく接してくれる彼女達の存在は大きかった。
仕方の無い事だ、承知の上でこの役に就いたのだから。
すっかりアイスの美味しい
まだ人混みのマシな時間帯、皆仲良く並んでペロペロとしながら。
こんな風にサクラコは、そこそこの距離感で話せるようになった事に喜びを感じていた。
普通の事でも、彼女にとってソレはとても尊いものだから。
基本、サクラコが話しかけると相手は直ぐに去ってしまう。
何故か最大の微笑みを浮かべても*1
改善しようと試行錯誤を繰り返したが上手くいかず、*2悩む日々を過ごした。
だから久しぶりだった、こんなにも楽しい思いをしたのは。
その点だけ
それでいいのか聖職者。
程なくして全員アイスを食べ終わる。
既に着替えなど必要なものを買い揃え、後は自由時間だ。
まだ帰るには早いと、サクラコはさりげなく皆に質問した。
「必要なものは買いましたが、これからどうするのですか?」
「えっと、私はこれから試験合格のご褒美を買いに。皆さんも来ますか?」
「……ソレは私たちが着いて行っても良いんですか?」
「いいですよ?自分の欲しいものを選んで欲しいですし、
「は、はぁ……。」
ヒフミの謎のテンションの上がりように困惑するサクラコ。
真逆に彼女の瞳孔は開き目がガンギマリしている。
サクラコはコレに似た目を知っている。
生活が完全に宗教と根付いてしまい、離れられなくなってしまった信者の目。
サクラコでさえ身震いするような狂気的な信奉。
他の何を犠牲にしても*3信仰するという強い意志を。
短い期間だが、彼女の善良さを知っているからこそ余計に不気味に思えた。
同時に彼女のギラギラとした目から、どのような物を信仰しているのか気になる。
──が、心の中で首を振る。
「(深入りする事ではありませんね。)」
表向きにはキリスト教擬きの信仰者であるサクラコ。
だが彼女は別に異教徒絶対殺すウーマンではない。*4
寧ろ、個人の信仰は自由なものだとさえ思っている。
宗教は人の心を救う。
例え信仰する主が違えども、心の糧になるのであればそれで良いのだ。
直接被害が及ばない限り、異教を信仰しようが無干渉を貫く。
彼女の主は寛大なのだ。
だから今は、ただ彼女の心の平穏を願う。
「貴方にも、主のご加護があらんことを。」
「………???」
当然そんなことはなく、ヒフミが単純にペロロ狂いなだけだ。
濁った目も布教のためのアイデアで少し素*5が出ただけ。
今ここに
因みにヒフミの信仰対象がペロロ様だと気づくまでそう遠くない。
ハイライトが正常に戻ったヒフミは、改めて宣言した。
「では行きましょうか、
大通りを少し進むと端の方にファンシーな看板が立て掛けてある。
でっかいペロロ様の舌には《MOMOフレショップ》と書いてあるのが見えた。
中に入るとペロロ様、またペロロ様、またもやペロロ様、そして時々スカルマン。
普段あまり見ない品という事もあるが、その圧倒的な品揃えの数にサクラコ達は呆然とした。
「あはは…凄いでしょう?ここは隠れた名店なんです!!」
「モモフレンズ。話に聞いたことはありましたが、こんなにも大量に……。」
知る人は知ってるモモフレンズ。
アニメ展開もされているようで、案外影響力は凄まじいモノがあった。
ヒフミによると限定品のようなレア物以外はここで取り扱っている隠れた名店らしい。
「こうしてじっくり見るのは初めてですが、この長い舌なら何処までも舐めれそうですね♡」
「エ駄死!!!」
「仲良いですね2人とも。」
「良くない!!」
「あらあら♡」
コハルはペロロ様を卑猥だとか散々な言いようだが、サクラコはそれ程の忌避感を感じない。
逆にこれくらい不細工だと妙な愛着が湧き始める。
ペロロ様人形を他所に、ヒフミとアズサの2人は少し離れたところに。
モモフレンズに1番興味を示していたアズサはどうかと言うと──
「ヒフミ、この子はなんて言う名前なんだ!?」
「アズサちゃんはソレが気に入りましたか?その子はスカルマンちゃんです!!」
「(恐ろしく早い引き込み……私でないと見逃しますね。ヒフミさんは意外に
滅茶苦茶ハマってた。
特にあの黒い悪魔的デザインの子がお気に入りらしい。
短時間で信者を増やしたその手腕に、シスターとしてのサクラコに戦慄が走る。
ヒフミに才能を見出していると後ろから足音が聞こえる。
振り向くと、騒がしかったのか奥から店員がやって来た。
「いらっしゃいま───せ、お客さま。何か御用があれば何時でもお呼びください。」
「(あら……?)」
店員がチラリと、
アズサを見るが特に反応はない、というかスカルマンに夢中だ。
ハナコも違和感を覚えたのか店員を凝視している。
心做しか、店員が冷や汗ダラダラになってる気もする。
「(気のせいでしょうか?知り合いとバッタリ街で出くわした様な反応でしたが……。)」
「サクラコ様も、どうぞ御一つ選んでください!!」
「えっ、あぁはい……。」
「デハ、ゴユックリー。」
ヒフミにつられて思考を中断する。
店員はイソイソと奥へ戻ってしまった。
楽しい時間が経つにつれ、小さな違和感は買い物を通して薄れ、やがて消え行った。
結局この場で何かを購入することは無かった。
しかしそれで問題ない。
ヒフミがここへ来たのは全員の好みを知るためだったのだ。
──が、外に出ようとすると店員に呼び止められる。
「くじ引き」のキャンペーンを行っているようで、1人1つのモモフレンズのグッズが当たるらしい。
「くじ引きですって皆さん、やりましょう!!」
「ええっと、私は遠───」
「やりましょう!!」
「アッハイ」
ヒフミとアズサはノリノリで、
他3人もヒフミに諭されて参加することとなった。
限定と言う事で、ヒフミの目には微かに炎が見えた。
そして結果
ヒフミはペロロ様を、
アズサはアングリーアデリーを、
コハルはスカルマンを、
ハナコはMr.ニコライを、
サクラコはウェーブキャットを貰った。
不思議なもので、購入してしまうと愛着が湧く。
サクラコは、何を考えてるのか分からない目をした
片手で抱える程度のソレを各々持って帰路へと就く事にした。
時間は既に夕暮れ前、思いのほか楽しんでいたらしい。
「(本当にいい時間でした。)」
普通の学生のように青春を謳歌することは無い……。
そう思っていただけに、このささやかな日常をとてつもなく尊んでいた。
コレが期間限定の泡沫の夢であると知りながら。
「(試験に合格すればこの感覚を味わう事は少なくなるでしょうね。)」
いっそシスターフッドを辞めてしまえばいい。
そんな思考が頭を過ぎるが直ぐに消え去った。
自分が辞めるには色んなことを知りすぎたし、外野が黙って見逃すはずがない。
それにコレは自分の選んだ道だ。
ここで青春欲しさに甘えるほど、サクラコは弱くなかった。
「(名残惜しくはありますが、私もシスターフッドを率いる長として矜恃があります。)」
確かに寂しいと感じる事はあれど、他のシスター達への親愛が消えた訳では無い。
ヒナタは相変わらず物をよく壊すが、自分に対する接し方は誰とも変わらず。
マリーはあの歳で深い慈愛を持つシスターフッドの癒しだ。
そんな感じでシミジミと感傷に浸っていると、コハル達が騒がしい。
スカルマンがどうしても欲しいアズサが、コハルと交渉していた。
「後生だ!コハルの《スカルマン》と私の《アングリーアデリー》を交換してくれ!!」
「い、嫌よ!!」
あれだけ要らないと文句を言っていたコハルだが、どうやらタダでは渡したくない様子。
いや、どちらかと言うと思った以上に愛着が湧いてしまったのか……。
そんな場面にホッコリしつつ、サクラコは空気を読んで黙ることにした。
コハルに散々練習した微笑み*6を向けて見守ってみる。
「!?──うぅッ仕方ないわね……、じゃあその人形に掛けてある
「本当か!!?」
何やら一瞬こちらを見て震えた気もするが、解決しそうなので野暮な事は言わない。
決して打ち解けたと思いきやガッツリ警戒されていた事にショックを受けたとか、そんなことは無い。*7
無いったら無いのである。
「おかしいですね、アデリーペンギンさんにこんな装飾なかった筈です。くじ限定だからですかね?」
「私も見たことない鉱石です、不思議で綺麗な紫色……。」
「では交換だ!!」
二藍、似紫、貝紫、江戸紫。
いずれの紫にも当てはまらない不思議なその鉱石はとても美しく見えた。
パワーストーンだと言われたら信じるくらい
交換したそのアクセサリーを早速首から掛けるコハル。
そのアクセサリーは奇しくも、コハルの桃色の髪とマッチした。
ハッキリ言うと超似合っていた。
「とってもお似合いですよ、コハルさん。」
「あ、ありがとう…ございます……。」
そこからも賑やかに時間は過ぎていく。
良き平穏、良き休息日であった。
だからサクラコは今日も願う、彼女達の幸福と平穏を。
第二次特別学力試験まで───残り1週間。
店員──チームⅤのメンバー3が手渡したソレは、アズサではなくコハルへ手渡った。
あのネックレスは彼女の主が作った逸品で、ただの装飾品では無い。
何故渡さなければならなかったのか、どのような効果があるのかメンバー3は聞いていない。
それを知るのはオーナーと、依頼者の2人のみ。
そして本来は、アズサが持つことを想定して作られたものだという事。
運命の歯車は、また1つ狂う。
あ〜^ガバの足音~^
本当は先生とナギサの邂逅(2回目)も描きたかったんだけど納期的にね……。
次回も引き続き補習授業部です。