ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで 作:ノートン68
お待たせ致しました。
やっぱり多少原作をなぞると時間が掛かりますね。
今回は5人目の補習授業部員が明らかとなります。
ツッコミどころあるかも知れないけど、生暖かい目で見守ってやってください()
ナギサと話した翌日。
天気は晴れ、燦々と照らされる太陽の光は人体に酷だ。
そのため先生は早朝からトリニティ学園の教室を訪れていた。
目的は補習授業部 部長との待ち合わせだ。
補習授業部は特例的な部活だが、部活動であることに変わりないため部長が存在する。
基本的に先生は部長と連携して活動するので、他の4人を一緒に迎えに行く事にしたのだ。
指定された教室へ足を踏み入れると、
背負うペロロリュックサックには何が入っているのか、とても重量感の溢れる揺れを起こして彼女は向かって来る。
そんな【普通の学生(自称)】である彼女は、居心地悪そうに目を泳がせていた。
トップバッター:阿慈谷ヒフミ
「テスト期間を間違えてペロロ様のゲリラライブに参加してました……。」
【……。】
「あぅぅ、そんな冷たい目で見ないで下さいぃ……。」
入部理由
・ブラックマーケットへ無断外出しているとの噂あり
・彼女と思わしき人物が犯罪組織の
・以上の2点から不穏分子と判断
脅威度:高
ナギサから明確な敵判定を貰ってない先生は、誰がどう言った理由で入部するのか裏の事情を既に知っている。
「競走だと言うのならば、フェアであるべきでしょう?」
とはナギサの言である。
ヒフミの場合は覆面水着団などが事実のせいで、弁明できると同時に擁護しづらい。
なんならブラックマーケット云々も事実だ。*1
先生は彼女が裏切り者ではないと断言できる。
ヒフミとは
彼女の性格なら逆にエデン条約を推奨する筈だ。
だが疑心暗鬼のナギサではそう割り切る事は難しいだろう。
なまじ親しい仲だからこそ、疑いが強くなってしまってるのかもしれない。
そんな事を考えてるとも露知らず、ヒフミは先生に声を掛ける。
「と、とにかく他の子達にも声をかけに行きましょう!」
部員はまだ4人も残っている。
1人は正義実現委員会の部室で、
もう1人も正義実現委員のため、彼女と一緒に居るだろう。
先生達は正義実現委員会の部室前まで足を運んだ。
「あぅぅ、あんまり来たくはなかったのですが……。」
気持ちとしては、悪い事をしてないのに警察署へ入る謎の感覚に近いのかもしれない。
……キヴォトスにこの例えが理解出来る生徒がいくら存在するか。
フェイスマスクを被った水着集団が一瞬頭にチラつくが直ぐに追い払う。*2
ドアの前で躊躇ってるヒフミの代わりに先生は中へと入る。
すると先生達は1人の小さな正義実現委員と出会った。
彼女……下江コハルは小動物的威嚇をしながら先生達の目的を尋ねてきた。
「正義実現委員会に何の用?こっちも暇じゃないんだけど!!」
「人探しをしているんです。えっと、ここに閉じ込められてると聞いて……。」
「え、それってもしかして……?」
どうやら心当たりがあるらしい。
───そうやって先生達がコハルと話している途中だった。
ソイツ……
ニヤニヤと何を考えてるのか分からない笑みを浮かべたソイツは、
この場にそぐわない格好、【スクール水着】を着た彼女はごく自然に先生達へと声を掛けてくる。
「こんにちは、もしかして私の事をお探しでしたか?」
「「【!!?】」」
二番バッター:浦和ハナコ
「え、は、何で!?どうやって牢から出てきたの!?」
「鍵は開いてましたよ?……あら、大人という事は先生ですね。もしかして補習授業部の?」
【(すごい、直ぐに私達の正体を当てるなんて。)】
【(それよりも────なんで水着なんだ?)】
入部理由
・入学初期からティーパーティー候補と呼ばれる程の才女だったが、今では奇行三昧に勤しんでいる。
・上層部の機密情報を幾つか握っていて、その頭のキレから危険度が高い。
・それ以上に彼女が何を考えているのか全く理解できない。
・万が一彼女が裏切り者であれば被害は甚大だろう。
危険度:極高
察しの良さから彼女の頭の良さは伺い知れる。
以前の才覚が明るみになっていた頃を知る人物であれば、彼女を疑う気持ちも分かる。
「彼女の数々の奇行は全て演技で、狡猾にエデン条約を止めようと画策している。」
そうナギサは疑ったのだろうか。
だが少なくとも演技だと先生は思わない。
なぜなら──
「うふふ♡S○X!!!」
「死刑〜〜〜ッ!!」
「あわわわ、どうしましょう……。」
これが彼女の、本心からの行動だとしか思えなかったから。
経験*3と勘だが──不思議とそう感じたのだ。
ハナコが大声で隠語を叫んだせいで場の雰囲気は混沌としている。
どうやって事態を抑えようか……。
そう思案していると、外からゾロゾロと足音が聞こえる。
正義実現委員の2人、ハスミとマシロが帰ってきたのだ。
「ただいま帰還しました。ッ脇腹が痛む。」
「私は早くお風呂で汚れを落としたいです……。」
「シュコーッ、シュコーッ……、ここが本拠地か。」
暴行事件の現行犯を連行してきたところらしい。
ガスマスクを付けた白い少女は、悪びれもせずに先生達の前へと現れた。
両手に付けられていた筈の手錠は、オモチャのチャクラムと化していた。
下手人──アズサもボロボロだが、ハスミ達も酷く傷ついている。
この二人相手にここまで損害を与えるとは、相当な手練だろう。
三番バッター:白洲アズサ
「惜しかった、あのダブルSGの生徒*4が来るまで弾をもっと温存しておくべきだった。」
【……。】
「シュコーッ、シュコーッ……。」
「えっと……。」
入部理由
・彼女は最近転校してきた。以前の学校についての情報は不明。
・背景の不明な彼女がこの時期に転校してきた事はとても無関係とは思えない。
・彼女に関しては更なる情報精査が必要だろう。
危険度:高
ここに彼女の戦闘力を加味すると、危険度は極高へと上昇するだろう。
正直ナギサから渡された資料の中では、1番怪しい生徒だ。
だが実際にその人となりを見なければ分からない事もある。
ヒフミ達の状況も元に戻ったようだ。
ハスミに2人の補習授業部入部を承諾してほしい旨を伝えると、二つ返事で快く承諾してくれた。
こういう時、シャーレの権力の有用性を再実感する。
「あははっ、良いじゃない!!悪党と変態の組み合わせ!そこに『バカ』の称号なんて、私なら羞恥心で死んじゃいそう!!」
『ペロロ狂い』、『変態』、『暴行容疑者』。
なるほど、字面だけ見ると関わりたくない。
だがそんなことを言われたヒフミは怒ることは無く、逆に気遣うような調子でコハルに話しかけた。
「えっと、その、大変申し上げにくいんですけど……4人目はコハルちゃんです。」
「…………え゛ッ!?」
四番バッター:下江コハル
入部理由
・彼女に限り不審点は存在しない。
・しかし参謀役でもあるハスミ副委員長は、ゲヘナに対し憎悪を抱いていると触れ込みが有り。
・彼女は正義実現委員会が暴走しない為の人質。
・彼女は飛び級の為に1つ上の学年テストを受けるも不合格。
危険度:低
彼女に関してはただの被害者だ。
容疑者でもないのに此処へ放り込む容赦のなさに、ナギサの心労を察する事ができる。
それだけ親友の死*5が重く、ナギサを変貌させてしまったのでしょう。
彼女に関しては純粋に補習の手伝いをすれば問題ないだろう。
『ムッツリスケベ』加入
そんな事で残す部員はあと一人。
ヒフミへ先に補習授業の教室へ戻るように言伝て、先生は1人で聖堂へと向かった。
大きく清掃の行き届いた大聖堂、中へ入ると1人の生徒が祈りを捧げている。
彼女こそシスターフッドを率いるリーダー。
先生が近づくと
「ようこそおいでくださいました先生。今日は如何様なご要件で?」
【実はね……】
シスターフッドから、補習授業部入りする生徒がいる旨を伝える。
……話している途中のことだ。
人伝に聞いた話では、サクラコは近寄り難い気難しい印象の生徒だと聞いていたが……。
こうやって先生が話している間も、親しみのある笑顔で会話を聞いてくれている。
【──そんな訳で補習授業部に入部して欲しいんだ。】
「分かりました。……しかし残念なことです、シスターフッド内から補習対象者が出るとは。」
本当に残念そうにため息混じりにそう零すサクラコ。
それを見て先生は【あぁ、やっぱり……】と意味深げに呟く。
そして重い口からその言葉は発せられた。
【……ごめん、君なんだ。】
「?……すみません、もう一度お聞きしても?」
【補習授業部のメンバーは、君なんだ。】
「嘘ですよね?」
まさか自分だとは思ってもいなかったと、クールな雰囲気は消え去り爆慌てのサクラコ。
あまりのテンパり具合に「そのリアクション、もうコハルで見たよ。」とは茶化せない。
時間を置き少し冷静になったのか、深呼吸をしだすサクラコ。
「いけません、こんな時は深呼吸です。
五番バッター:歌住サクラコ
「落ち着きました。それは何かの間違いですよ先生、もう一度確認する事を推奨します。」
【確かに答案は合ってたよ。けど名前記入欄が……。】
「………………あ゛っ!!」
【その、元気だして?】
「うふ、うふふふふ。どのような顔をして
入部理由
・シスターフッドへの牽制目的が1つ。
・これに関しては入部理由として弱く、彼女はリーダーでもある為、退学後の混乱などリスクの方が大きい。
・それでも推して進めたのは、彼女がとある新興宗教に傾倒しているとの噂が流れていたからである。
・その名も「機械神教」。
・事実、以前まで気難しい印象だった彼女が急にニコニコと人当たりの良い表情をしだし、不気味がる生徒も多数。
・武力、発言力、指揮力、情報力、どれをとっても無視できる生徒ではない。
危険度:高
※彼女の成績は改竄してません。*7
講壇にしなだれ掛かる様に崩れ落ちるサクラコ。
ショックで白目を剥いてる彼女をよそに、先生は思案する。
「機械神教」
最近流行りだしたレッドウィンター発祥の新興宗教。
特に難しい戒律などはなく、ただ質問すればAIが答えてくれるという、宗教かどうかも分からない組織。
AIに思考を操作されるホラー映画の様な状況が出来そうだが、そんな恐れは無いと先生は断言出来る。
なぜなら教祖と思わしきAIが明確な線引きをしていると思われるからだ。
どんな質問でも真面目に回答はする、かと言って依存しないように直接的な回答は控える。
今日の晩御飯にオススメの献立は答えるが、生徒の進路に絡む事には一切明言しない、でも本当に困ってそうならさり気なく助言をする、そんなスタンス。
ぶっちゃけ、先生1人で解決できる案件が減るので有難い事この上ない。
先生が気にしているのは教祖の名前だ。
かつてエリドゥで死闘を繰り広げたあのロボットの名前。
【(どう考えても彼が絡んでいるよねコレ。)】
長考にふけりそうになり先生は頭を振る。
考えるのは後だ、今は目の前の生徒が優先だ。
完全に思考停止してるサクラコをおんぶして、先生は補習授業の教室へと向かった。
当然その姿は何人かの生徒に見られており、後日噂される事になる。
歌住サクラコが、
『覚悟』加入完了
その後、紆余曲折ありながらも何とか全員がテストに集まってくれた。
数時間の復習を挟みテストを行う。
ここで全員合格すれば、晴れて補習授業部は解散だ。
復習風景を見ていたが、サクラコもハナコも教えるのが上手い。
困っているアズサに丁寧に教えてくれている。
ヒフミは元々テスト自体は普通に解ける為、心配はないだろう。
コハルにもしっかり同じ学年範囲のテストを用意した。
特にサクラコは、早く戻りたいと言う思いから燃えている気がする。
【(私、必要だったかな?)】
そう先生は思いつつ、第一次特別学力試験を開始する事にした。
チラリと問題用紙を見たが、特に細工などは無くそれどころか範囲も狭く基礎的なものばかり。
そして60点以上であれば合格、ハッキリ言って破格の救済措置だ。
カリカリとシャーペンの走る音がする。
ヒフミ、サクラコ、アズサはスラスラと解いている。
コハルは少し筆の進みが怪しいがそれでも何とか答案を埋めているようだ。
ハナコも──既にペンを置いている。もう答案が解けたのだろうか?
1時間後、長いようで短い試験時間が終わりを告げる。
全員の答案を集め直ぐに採点する。
専用の機械に通せばものの数分で採点が終わる。
「き、緊張しましたが、思ったよりも簡単な問題でしたね。」
「え!?そ、そうよね!!」
「うん、かなりの手応えだった。サクラコとハナコのお陰だ、ありがとう。」
「お役に立てたのなら嬉しいです。その調子だと皆さん大丈夫そうですね。」
「……うふふ♡」
サクラコがほっと胸をなで下ろしている。
補習授業部解散の条件はこの試験は全員合格する事。
自分だけが回答できても意味が無いのだ。
先生はこっそり答案を見て───そっと答案を元に戻す。
【じゃあ結果発表といこうか。】
「はい、お願いします!!」
ヒフミ:72点───合格
「何だか無難な点数ですが、良かったです!」
「えぇ、この調子ならきっと──。」
サクラコ:100点───合格
「100点ですか!?」
「うふふ、当然です。」
「流石ですサクラコ様!!」
「様……様ですか。」
「……?」
アズサ:44点───不合格
「「……はいぃっ!?」」
「ちっ、紙一重だったか。」
「いやいや、結構足りてないですよ!?」
「仕方ありません。まだ2回チャンスは──」
コハル:11点───不合格
「コハルちゃんんんん!?」
「やっ、その……!かなり難しかったし……。」
「凄く簡単でしたよ!?小テストレベルですよ!?」
ハナコ:2点───不合格
「「2点!!?」」
「逆に何が正解だったんですか!?というか待ってください、ハナコちゃん物凄く勉強ができる感じでしたよね!?」
「確かに私、そういう雰囲気があるみたいですね?」
「ハナコさん……。」
ヒフミとサクラコの奮闘も虚しく、
第一回の試験は不合格となってしまった。
第一次特別学力試験の結果
ハナコ───不合格
アズサ───不合格
コハル───不合格
サクラコ───合格
ヒフミ───合格
補習授業部の合宿が決定した!
時刻は既に夜、先生は重い足取りでシャーレへと戻った。
部屋に入り、いつものソファへと体をダイブさせる。
今までの補習授業部のやり取りで分かった。
彼女達は全員が善良だ、ヒフミ達は言わずもがな。
ハナコやアズサはよく
だからこそ分からない。
先生はこの中に裏切り者が居ると到底思えなかった。
【もう全て諦めて皆に本当の目的を言う?ダメだ、それじゃナギサにヘイトが向かっちゃう。】
【でも今のままじゃ時間が無駄になる。ハナコに至っては確実にわざとだろうし。】
【それに彼女達、なんだかんだ楽しそうだったからなぁ……。】
いずれ暴露するとはいえ、タイミングは今じゃない。
汚れ役は自分一人で充分だ、何とかいい案がないか重い頭で考える。
【(ダメだ、疲労で瞼が重い……。)】
トリニティで付きっきり仕事をしたからか、それともソファの魔力か。
先生は睡魔に抗えず瞼をゆっくりと閉じた。
「やぁ、君が先生だね?」
【!?】
意識を覚醒させるとそこはトリニティのテラスだ。
寝ぼけてこんな所で寝てしまったのか?
ゆっくりと体を起こそうとするが──動けない。
思考も何だか上手くまとまらない。
「ここは夢の中、白昼夢のようなものだと思っていいよ。慣れないと思考は難しいだろうから、今から私が言う単語だけを覚えていてくれ。」
目の前の謎の少女は椅子に座り言葉を続ける。
少しくらい待って欲しい。
こっちは何が何だか理解できないのだから。
【君の名前は?】
「私の名はなんだっていい。余計な事を覚えられてはこっちが困る。」
【………。】
どうやら教える気はないらしい。
無言になると彼女は語り出す。
「
「ミカを助けてやってくれ。」
「今はこれだけでいい、この一言だけは必ず覚えるんだ。」
ミカ?
誰だっけ……?あぁ、確かティーパーティーで──
ダメだ思考を回そうとすると途端に鈍くなる。
「もう時間か。いいや、彼のように長時間滞在できるのがおかしいんだった。」
「最低限の仕事はさせて貰ったよ、またいつか会う時は名乗らせてくれたまえ。」
【ミカを助ける……ミカを助ける……ミカを、ミカ───】
やがて先生の視界は段々と狭まってくる。
少女の正体は分からない、だが生徒の頼みであるのならば答えない訳にはいかない。
瞼を閉じると、段々と夢が遠ざかっていくように感じる。
目を覚ますとそこはシャーレの一室であった。
身につけたままのシャツはシワでヨレヨレだ。
【何か大事な夢を見ていた気がする。】
夢であったはずの生徒、彼女の姿はおろか声すら思い出せない。
しかしコレだけは覚えていた。
【ミカを助ける。】
明日から合宿が始まる。
ヒフミ達は合宿の為の服などを買いに出かけたらしい。
なら今日はティーパーティーに顔を出すことにしよう。
何かが変わる、そんな漠然とした予感があった。
次回はヒフミ達の買い物の風景から。
引き続き小説パートでお送りします。