清隆君と帆波ちゃん13
何とかノルマ的に書き上げました。
明日はよう実7巻入手予定なので読書優先で投稿しません。
今回の話でクリスマス編は終わります。
よって、区切りが良いので7巻読み終わった後の予定ですが、
・椎名編のアフター話を書く
・坂柳ヒロインの話を書く
・他に書きたい短編を書く
多分そんな感じになります。
明日はひよりちゃんが一杯出てくると嬉しいなと思いつつ仕事を全力で終わらせて定時で帰る所存です。
皆さんも7巻堪能した後で会いましょう。ノシ
- 267
- 244
- 13,595
「疲れたな」
俺は現在、パーティー会場の外のソファーに一人座っていた。
豪華ホテルと遜色の無いそのつくりは、柔らかい絨毯が床一面に広がっており、その壁際には休憩できるようにソファーが設置されているのだが、その座り心地のよさといったら。
思わず、もうこのまま終わるまでここに居ようかなと誘惑される程。
あれから暫くの間帆波を探していたのだが、目立つ容姿のグリーンのドレスを発見することは適わなかった。
もしかすると生徒会の仕事に戻って裏方にいるのかもしれない。
それにしても不思議な気分だ。
今年、入学をはたして最初の挨拶に失敗し、友人と呼べる人間が居なかった俺だが、気がつけば多くの人間に声をかけられていた。
慣れていないので疲れてしまったのだが。
「悪くなかったな……」
自然と俺の頬が緩むのを感じた。
「何が悪くなかったの?」
突然背後から声が掛かる。
「今。綾小路君笑ってた?」
俺がのけぞらせて後ろを見ると。
「いいや。笑ってない」
櫛田がそこにいた。
「えー。笑ってたよ絶対。おしかったなー。写真とっておけば良かったよ」
まるで珍しい動物の写真を撮り逃したかのような悔しそうな口ぶりに。
「そんな写真とっても俺を脅す材料にはならないぞ」
俺は櫛田の考えを先回りした。
「別にそんなんじゃないのになぁ」
不満げな顔を櫛田はすると隣に腰掛けてきた。
「はい。飲み物。清隆君も喉渇いたよね?」
「ありがとう。それよりも清隆ってやめないか?」
今は冬休みだから良いが、新学期そうそうにこいつに名前で呼ばれるとクラス内で質問攻めにあう。
「それは。私なんかには名前で呼ばれたく無いってこと?」
特に気負うことの無い純粋な質問。
「そうは言わないが、櫛田は人気者だろ? 学校で問い詰められたら肩身が狭い」
「そんなの仲良くなったって素直に言えばいいと思うよ。それとも清隆君は後ろめたいことでもあるの?」
そう言って距離を詰めてくる。櫛田胸が押し出されて俺の身体に触れる距離だ。
「好きにしてくれ」
「うん。そうする。清隆君も名前で呼んでくれていいからね」
そう言ってくる。
「それは断固拒否だな」
「えーっ。佐倉さんや長谷部さんは名前なのに?」
「それは綾小路グループのメンバーは下の名前で呼び合うという鉄の掟のせいだから」
「じゃあ私もそのグループ入るよ」
間髪いれずにそう答えた。だが……。
「悪いけどこのグループは少数精鋭なんだ。あまり人数を増やすと抜けると宣言してる奴もいるんでな」
啓誠あたりは櫛田が入ってきたら抜けてしまうだろう。折角気負わずに付き合える友人なのだ、できれば今の関係をくずしたく無い。
「じゃあ。桔梗グループ作るからそっちに清隆君が入るってのは?」
「掛け持ちはちょっとな……メンバーはどうするつもりだ?」
「私と清隆君のみだよ」
可愛らしい笑顔でそう宣言する櫛田。それ、もうグループの必要無いだろ。
「悪いが遠慮しておこう」
そんな事が池にばれたら又面倒くさいことになる。
「そういえば、櫛田は友達と過ごさなくていいのか?」
パーティー開始から結構な時間が経った、お陰で俺もひと段落つけているのだが、櫛田は交友範囲が広いからまだまだ友達と話したり無いと思ったのだが。
「それがさ。皆カップルになってたりして私はお邪魔虫になってるんだ。行く先々で付き合ってる報告されたり、振られた男の子から声かけられたりして……」
あ。いかんなこれは……。爆発する予兆だ。
案の定、櫛田の顔が近寄ってくる。これは周りに聞こえないように愚痴るやつだ……。
俺は櫛田の笑っていない目を見た瞬間、愚かな質問をした自分を後悔した。
帆波Side
おかしい。どれだけ探しても清隆君が見つからない。話しかけてくる友達と適度に会話を切り上げながら探し回った。
パーティーフロアには見当たらなかった。もしかしたらトイレかもしれないと思って入り口も見張りながらだったけど戻ってくる人は居なかった。
「もしかしてもう帰っちゃったのかな?」
でもそれは無いか。あと少ししたらオリエンテーリングの順位発表と表彰があるんだし。何でも賞金のほかにサプライズプレゼントもあると南雲会長は言っていた。
清隆君の事だから優勝に絡むとおもうんだよね。
サプライズプレゼント後で見せてもらいたいなー。
「後は外の談話室ぐらいかな」
私は清隆君がいるかもしれないと思って会場の外に出てみた。
そこには果たして予想通りというべきか清隆君が居た。
やっと会えたよ。本当にもう。彼女に散々探し回らせておいて自分は座っているなんて。
そんな事を考えながら私は清隆君に近寄っていく。
「えっ? 桔梗ちゃん」
清隆君は一人ではなかった。隣に座っているのは先程まで一緒に話をしていた桔梗ちゃんだった。
胸の奥がざわつくのを感じる。桔梗ちゃんとは学校が始まってすぐに友達になった。誰にでも分け隔てなく優しく、明るい女の子。高校にはこんなにも社交的で裏表が無く、非の打ち所が無い人が居るんだと思った。
そんな桔梗ちゃんが清隆君とペアを組んだと聞いた時、私は今と同じように胸がざわめいた。
「何話してるんだろう?」
遠くから見た感じ、桔梗ちゃんが清隆君に話しかけてそれに答えている様子だ。
だけど、清隆君も普段の学校での態度よりも砕けて見える。前に学校で二人で居る時を見たことがあるけど、あんなに距離は近くなかった。
もしかすると昨日のイベントで仲が良くなったのじゃないだろうか?
そう考えると私は胸を押さえる。先程から気分が重くなっていくのが解った。別に変な事は無い。二人はクラスメイトなのだから。
きっと、クラスの事で盛り上がってるに違いない。だけど…………。
「なんで……?」
桔梗ちゃんが笑顔を消して清隆君に顔を寄せていく。そして清隆君はそれを避けることもせず受け入れた。
桔梗ちゃんの顔が清隆君の耳に寄る。そして何かを伝えると、清隆君は呆れた様子で答えた。今何を言われたの?
もしかして、告白だろうか?
そう考えると私はその場に居るのが怖くなってしまった。気がつけばその場から後ずさると会場に逃げ込んでしまった。
清隆Side
あれから散々櫛田の愚痴を聞かされた。
相変わらずストレスを溜め込みすぎる奴のようだ。もしかすると協力関係になったからと言って俺をストレスのはけ口につかってやしないだろうか?
俺としては是非やめて欲しい所なのだが、それでもいきなり櫛田の本性を見せてしまうとDクラスのパワーバランスが崩される可能性があるからな。
俺一人のストレスで済むなら仕方ないだろう。
「いよいよ発表するみたいだね」
現在、俺は櫛田と共に会場に戻ると壇上を見つめている。
先程、アナウンスがあって、どうやら昨日のオリエンテーリングの結果を発表するらしい。
恐らく、帆波はもう裏方に居る事だろう。結局まともに会話すら出来なかったな。
『宴もたけなわではございますが、予定の時刻になりましたのでこれよりオリエンテーリングの結果を発表いたします。名前を呼ばれたペアは二人そろって壇上へとお越し下さい』
壇上では司会がマイクを片手にしゃべっている。
見たところ、学校の生徒でも教師でもない。今日の為に雇ったプロの司会だろう。
『今回のクリスマスオリエンテーリング。全部で52組が参加いただきました。誠にお疲れ様でした。さて、先日の冷え込む中、オリエンテーリングで外を走り回り苦しい思いをされたかと思います』
司会の口上に何人かの生徒が首を縦に振っている。どうやら本当に寒かったらしい。
『ですが、お熱い二人の前には寒さなど吹き飛んだことだと思います。そんな熱い二人の頂点を今より発表いたします」
実際の所、熱いカップルは入賞すら出来ないと思うのだが……。
『それでは5位の発表です。獲得点数13点。平田洋介さん・柴田颯さん。壇上へお越し下さい』
どうやら平田達も入賞したらしい。男同士のペアという事で最速でスポットまで走ったのだろう。まさに足で掴んだ勝利という奴だ。
「すごいね。平田君」
「ああ。あいつらにしか出来ない作戦だっただろうな」
しかし、5位で13点か。俺達は20点だからな。上位は後ひとつのスポットを取れるかどうかで入れ替わっているようだ。最初の稼ぎが効いているのだろう。
『続きまして。4位の発表です。獲得点数15点。堀北鈴音さん・須藤健さん。壇上へお越し下さい』
「うおおおおおおおおお。鈴音えええええ。やったぞおおおおおおお」
「す、須藤君落ち着いて。やかましいわよ?」
「うっ。すまん」
嬉しそうな須藤の声に続いて冷たい堀北の声が聞こえた。尻に敷かれてるなぁ。
「すごいよ。これでDクラスから3人もだよっ!」
櫛田は嬉しいのか俺の腕を引っ張る。
「まあ。ガチで勝ちに行ったからな」
元々俺が見ていた雑誌は堀北に貰った物だ。もしかすると途中から法則に気付いていたのかもしれないな。
「よう。お前ら」
皆の視線が壇上に注がれる中、近寄ってきたのは。
「龍園か」
「くっくっく。どいつもこいつも大した点数じゃねえな」
後ろには伊吹が付いてきている。何処か疲れた表情をしていた。
「そういうお前はどうなんだ?」
「俺達は21点だ。お前らの点数は?」
「…………20点だ」
どうやら点数の調整を間違えたらしい。だがまあ仕方ない。今回は3位に入っていれば赤字になる事は無いのだから。
「桔梗。どうやら俺達の勝ちのようだな?」
俺の言葉に龍園は勝利を確信した。
「龍園君。クラスメイト使ってスポットを複数占拠してたんだよね? ちょっと卑怯じゃない?」
悔しいのか櫛田がむっとした顔で龍園を攻め立てる。
「何がいけない? オリエンテーリングはグループの力が試される。参加していないメンバーがたまたまスポットに現れてそこでたむろしちゃいけない理由なんて無いだろ?」
スポットの中には範囲が狭いものがいくつかあった。
ゲームセンターのプリクラがスポットだったり、ブランド店の試着ルームだったりと。龍園はそういうポイントをクラスメイトを利用して独占したのだ。
「だっ、だからってそんなやり方で勝っても嬉しいの?」
「落ち着け櫛田。ルールに書いてないし、そもそも今回のは試験じゃない」
悔しいのは俺も同じだ。だけど、運営側が認めてるならそれはここで問いただしても仕方ない事だ。
「はっはっは。なんとでも言えばいい。勝負は勝つことが全てだ。しょせんは鈴音の金魚の糞だったな。足が速くても稼げるポイントなんてたかが知れてる。大事なのは頭を使う事だ」
勝ち誇る龍園に俺は何も言い返せなかった。櫛田は俯くとプルプルと震えている。よほど悔しかったのだろう。
『それでは3位の発表を行います』
「そら。お前らの番だろ? さっさと壇上に上がる準備をするんだな」
楽しげな声で俺達を煽る龍園。
『3位は獲得点数21点 龍園翔さん・伊吹澪さんです。壇上へお越し下さい』
「なっ! なんだとっ!?」
龍園の焦る声がする。その目は信じられないモノを見るように見開かれており。
「まさかっ! 演技だったというのか?」
俺に向けられていた。
「いや。俺は確かに20点取ったはずだぞ」
優勝のぎりぎりになるように調整したつもりだった。龍園がそれより点数が高かったのは完全に計算外だったのだ。
悔しそうに壇上へ向かう龍園たちを見送る。
俺は先程まで俯いていた櫛田と目を合わせた。ワインレッドの瞳が鋭い輝きを放つ。
「確かに20点だよ。清隆君の中ではね」
「どういうことだ櫛田」
俺は疑問に思ったので口にする。
「清隆君。目立つのが嫌で途中からわざと点数とらないようにしたでしょ?」
完全に図星だった。俺は優勝しないようにそれで居て龍園に負けないようにぎりぎりで点数を調整していた。
櫛田が雑誌のデートコースに誘導しようとしているのに気付いてからは要所でスポットを外す場所を選択していたのだ。
「それって目立たないようにする為だよね? 私はそれに気付いていたからこそ虚偽の点数をでっちあげたんだよ」
そんな事が可能なのだろうか?
「いくつかのスポットで出遅れてポイントが取れなかったよね? それはどうしてだったか覚えてる?」
櫛田の疑問に俺は答える。
「今回のゲームはペアで行うものだった。まず一人が認証して続くもう一人が認証する。そこで初めてポイントをもらえるはずが、競争に負けたからだろ?」
だからこそ俺は20点だと思っていた。まさか……。
「だけどそれってペアの相手にも見えないんだよね。気付いてなかった? 私が実はいくつかポイントをへそくりしてた事に」
そういって櫛田は悪戯な笑みを浮かべる。どうやら完全に手玉に乗せられていたらしい。
「最初にいったでしょ? 賞金が欲しいって。だから目立たないとか言う余裕は無かったの。だけど、清隆君。強引に連れて行ったとしてもまともに認証してくれないと思ったんだ。だから一つ演技してみたの」
なるほど。どうやら櫛田は一枚上手だったようだ。
「実際の点数はいくつなんだ?」
「32点だよ」
何てことだ。今回のスポットは8回。つまり最大点数は40点だ。これだけとれは圧倒的に優勝で間違いない。俺はまんまと櫛田にしてやられたというわけだ。
「敵を騙すにはまず敵からってね」
「お前は本当に恐ろしい奴だな」
今なら思う。味方にしなければもしかすると俺はそのうち消されていたんじゃ無いだろうかと。
『それでは2位と1位を同時に発表します』
どうやら呼ばれるようだ。いつまでもこうして入られない。1位をとってしまったのは仕方ない。どのみち目立つのだ。早いか遅いの違いなのだから俺も覚悟を決めよう。
櫛田は嬉しそうに俺の隣に並ぶ。笑顔がらんらんと輝いていて楽しそうだ。きっと賞金で何を買うか考えているに違いない。
『2位は獲得点数32点 綾小路清隆さん・櫛田桔梗さん。1位は………………なんと満点です。栄光の1位に輝いたのは――坂柳有栖さん・椎名ひよりさん。二ペアとも壇上へお越し下さい』
壇上へ上がると、そこにはアイスブルーの瞳を持つ少女とスカイブルーの瞳を持つ少女が居た。
Aクラスの支配者。坂柳有栖とCクラスの隠し玉。椎名ひよりだ。
「あらあら。綾小路君。残念でしたわね」
壇上に上がってきた俺に対し、坂柳が声を掛ける。
「お前。その足で参加したのか?」
俺はもっともな疑問を口にする。
「問題ありませんでしたわ。椎名さんに補助してもらいましたので」
そう言って椎名を見る。
「綾小路さんも手を抜かなければもう少し面白い勝負になったのでしょうけどね」
椎名のその一言で疑問が氷解した。
「つまり。最初から読みきっていたという事か?」
「そのとおりですわ」
俺の疑問に坂柳が答える。
「学校側の意図を見抜いていた私は同じ結論に達している椎名さんをペアに誘いました。結果は見ての通りです」
まさかの満点。これを超えるのは事実上不可能だった。
可能性としてはわざと外した公園のイベントか。あれをおさえれば勝てたな。
「凄いよね。二人揃ってイベントの意図を見抜いちゃうなんて」
櫛田も二人を褒め称える。普通なら優勝できる点数だったが、龍園からの収入もあるし別にいいのか?
『それでは。今壇上に上がっているペアには賞金が贈られます』
まあ。なんだかんだで苦労もしたが、結果だけ見れば美味しいイベントだったな。そう俺が終わった気分でいると。
『――そして。壇上のペアの皆さんには正月を学園の外の温泉で過ごせる【温泉旅行宿泊権】が与えられます』
その瞬間。会場がわっと沸いた。
何故ならこの学校は敷地外への移動を基本的に認めておらず、外部への出入りは部活などごく一部の例外を除くと不可能だからだ。
だからこそ、温泉街とはいえ外出許可がでるというのは人によっては喉から手が出るほど欲しい権利だった。
こうして手に入れた権利。その事が原因で俺はこの先面倒な事に巻き込まれて行く事になるのだが、この時の俺はそんな事に気付いては居なかった……。
毎度最高の仕上がりですね!!次はもう少し一之瀬とのイチャイチャを加えて欲しいです!!楽しみにしてます!!