清隆君と帆波ちゃん11
休みだから一杯書けると思ったのにネット小説読み漁ってたら時間が過ぎていた。
ストックが無い恐怖。
お陰で伏線の張り方が雑になりました……。
内容的にはR-18に届かないようにしてます。
それに、何故かR-18のチェックが入れられない模様。
年齢公開してないからだろうか?プロフの年齢では超えてるのに……。
とりあえず、書き上げた分を投稿していきます。
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「私。学校辞めようかと思ってるの」
夕日を背景に櫛田はそんな言葉を口にした。
「それは……俺や堀北がお前の正体を知っている事に関してか?」
俺の言葉に櫛田は首を縦に振る。
「今だと龍園君もだね」
そうだな。俺と堀北を排除する為にこいつは龍園と組んだのだった。
「私はね。ただ自分が可愛いだけだった。それは今も変わらないよ」
櫛田は自嘲気味に笑うと話しはじめた。
「誰かより優れている自分が好きで。他人より劣っている自分が嫌い。だから私は人より優れている部分を積極的に磨いたし、それで負けている相手には他の部分で勝つ為に頑張ってきた」
それが櫛田という少女の描いた願望だったのだろう。他人より上に。それは誰もが持っている願望だが、人は壁にぶつかるとそこで妥協をするのが当たり前だ。
だが、櫛田はそうしなかった。負ける事を認めず、努力して。それでも届かない場合は相手を褒めて持ち上げ、その裏で悔しさを滲ませる。
「だけど。それももう限界に来ている。綾小路君。堀北さん。龍園君。どれも私には手に負えない人間ばかり。そんな人たちに囲まれたまま私は今の生活を維持できないの」
櫛田は追い込まれていた。その瞳はストレスで擦り切れているようで弱弱しく、俺を見て微笑む顔に力は無い。
「なんだか……疲れちゃった」
そう言って櫛田は黙り込む。肌寒い風が吹く。俺には櫛田がその風にさらわれて何処かへ飛んでいくのではないかと思えた。
「櫛田。お前は俺に慰めてもらいたいのか?」
俺の言葉に櫛田は顔を上げる。その顔は悲痛な顔で、痛い所を突かれたという表情が見て取れた。
「前に言ったな。お前は俺を退学にすると。だが、それは不可能だ。お前程度にはそんな事は出来ないさ」
「言ってくれるね。私のブレザーにはあんたの指紋が付着しているんだよ? それを証拠として提示すれば――」
「それだけどな、俺の協力者がすり替え終わってるんだ」
俺の言葉に櫛田は目を見開く。
「先月だが、お前の部屋に何人か女子生徒が制服で訪ねた事があっただろ? その時にブレザーを摩り替えた」
「そっ。そんな事できるわけがっ!」
櫛田は動揺している。もちろんそんな事はした覚えがない。だが、今の櫛田はそれを完全に否定できない。
「友達が多いってのは良い反面。悪い面もある。そいつは俺が櫛田の事を教えてやったら喜んで協力してくれたぞ」
「あんた……話したの?」
櫛田の目が俺を睨みつける。ルビーのような輝いた瞳は鋭く、俺の瞳を見ていた。
「俺だっていつまでも脅されている程馬鹿じゃない。相手が俺に対する急所を握っているのならやり返すさ。それでどうする? どの道お前は退学するんだろ?」
今の櫛田には正真正銘打つ手が無くなった。俺を動かす証拠は消滅し、俺の裏切りにより正体がわからない女子に自分の本性を知られた。つまりは完全に積んでいる状態だ。
これから先の生活で櫛田は俺や龍園にその第三者に怯えて暮らさなければならない。
「そっか。私はもうとっくに終わってたんだね」
全てを諦めたのかむしろ清清しい顔を櫛田はしてみせた。
「俺から一つ聞いていいか?」
「なに? 何でも聞いていいよ」
「お前は何故、俺達を退学させようとした?」
「そんなの私の本性が知れ渡ったら私が破滅するからでしょうが」
まるで頭の弱い人間を見るように櫛田は言う。
「俺はそうは思わないぞ」
俺の言葉に櫛田は何も言わず続きを促す。
「誰だって裏表ぐらいある。そして知られたくない過去もな。この学校の生徒は特にそういった側面が強い。だからこそ櫛田が裏の顔を見せたぐらいで破滅するとは思えないんだ」
「そんなのあんたの思い込みかもしれないでしょ!」
確かにそうだ。そんなのは俺が勝手に思っているだけで、実際問題、櫛田が本性をだしたら批難する奴もいるだろう。
「じゃあどうする? 中学までなら騙せたかもしれないが、お前は今、破綻している。この先も嘘を付き続けて自分をすり減らす。そんな価値は何処にも無いぞ」
「そっ、それは………………」
思えば傾向はあった。プールでの帰り道。船上試験直後。櫛田は物言いたそうな視線を俺に向けてくることがあった。恐らく櫛田は悩んでいた。
俺は当時は他人の心に向き合うことは無く。その変化に気付く事は無かったが……。
「俺の元に付け櫛田。悪いようにはしない。DクラスがAに上がる為にはお前の協力が必要だ」
そう言って手を差し伸べる。ここで櫛田が退学したところで喜ぶ人間は居ない。それこそDクラスはまとまりを欠いて崩壊する可能性も高い。
櫛田は迷っている。今の状況に疑問を感じ、今までの自分を見つめなおしているのだ。
人は変化する。堀北が他人の助けを必要と認めたように。櫛田もそうだ。自分が良く見られたい為にあそこまで演技を出来る人間が他にいるだろうか?
演技とは言え、救われた人間がいるのならそれは本物と変わらないのではないか?
俺だってそうだ。初めてクラスメイトとして仲良くしてくれた櫛田を当時は天使かと思ったものだ。
「あ、綾小路君は私に退学して欲しくないの?」
先程までと違い、顔を赤らめて見つめる櫛田。そんな彼女には本心を言う。
「正直な所、それも仕方ないと思っていた所だ。だけど、お互いに歩み寄る余地があるのならお前という人材はDクラスには必要だからな」
これで満足だろう。Dクラスの必要な人間と持ち上げることで、櫛田の承認欲求を満たしてやる。だが……。
「…………あんたやっぱり最低の人間だ」
何故か裏櫛田になって睨みつけてきた。何がいけなかったというのか?
「でも…………そこまで言うなら仕方ないな。私も協力してあげるよ」
そう言って笑顔を向けてきた櫛田。その笑顔は今までの中で一番ではないが、自然で不思議と俺も口元が緩んだ。
こうして、俺と櫛田は契約をした。
「ふえぇぇー。今日は疲れたよぉー」
テーブルに突っ伏して疲れを訴えるのは俺の彼女。帆波だ。
「お疲れ様。大変だったろ?」
俺はそんな帆波が可愛くてついつい頭を撫でてやる。
「うん。大変だった。龍園くんが色んな場所でトラブル起こすからそのたびに調停役として駆り出されるし。他にも問題を起こすカップルが居たから仲裁に乗り出して……どうしてか皆はめ外すんだもん」
どうやらかなり参っている様子だ。無理も無い。周りが楽しく過ごしているのに仕事をさせられたんだからな。
「そういえば清隆君。オリエンテーリングはどうだった?」
帆波の探るような口調に俺は。
「……ん? そこそこ良い点は取れたと思うぞ」
櫛田の本性うんぬんについてはいずれ相談する事になるだろうが今はまだ早い。
「むっ。それって櫛田さんとのデートが楽しかったという事?」
なにやら不機嫌そうになった帆波の言葉を反芻する。
「楽しかった……のか? なんかやたらと色々連れまわされて疲れたけどな」
「何処に行ったのさ?」
睨み付けるような帆波に俺は今日取った行動を教えてやる。まずはブティックに行って……。
「それって完全にデートコースだよねっ!」
憤慨する帆波に対する言い訳は用意してある。
「そんなわけ無い」
「だって……私が仕事してるのに……そんな羨ましい」
そんな事を言われてもな……。そもそも今回のオリエンテーリングの主旨が………………。
「もしかして気付いてなかったのか?」
「何がよっ!」
「今日のスポットに選ばれたのってこの雑誌の紹介場所からなんだが」
そう。俺が途中で気付いたのはスポットの法則だ。この街のクリスマス特集を組んでいる雑誌。今日、櫛田が選んだのは雑誌で紹介されている店ばかりだったのだ。
一度雑誌に目を通している人間なら気付いてもおかしく無い。
「そうだったのっ!? じゃあ得点は?」
「だからさっき言ったろ。そこそこだったって。聞いてなかったのか?」
実際にレストランでは俺は認証できたが、櫛田に聞くと負けてしまったといっていたからな。
「ありゃ。やっぱり人が多いから仕方ないか」
龍園との勝負があるからそれなりに頑張ってみたが、人事は尽くしたので後は天命を待つのみ。
「まあ良いじゃないか。それより、結果は明日発表されるんだろ?」
リアルタイムで加算されていたのだから結果はすでに出ているのだろうが。
「うん。明日のクリスマスパーティーで発表になるよ」
どうやら明日のお楽しみらしい。もちろん帆波も結果はしらないようだ。
「ふふふ。清隆君が優勝だといいなー」
「いや。多分それは無いと思うんだが……、いくつか争奪戦に負けたし」
午後のスポットは他のペアも居た為、完全に取ることは出来なかったからな。
「それにしてもあーあ。皆がカップルになって楽しんでたのに私だけつまんなかったな」
そう言って愚痴をこぼす帆波。
「何処かに私の事優しく労ってくれる男の子居ないかなー?」
もし仮にそんな奴がいたとしたら実力で排除するところだが。もしかすると神埼あたりにいつも甘えているのか?
そうすると一度決着をつけなければならない。
「清隆君? 話聞いてる?」
「もちろん聞いてるぞ」
主に神埼との決着方法について考えながらだが。
「とりゃ」
突然、帆波が襲い掛かってきた。俺は抵抗する間も無くベッドに押し倒された。
「帆波?」
押し倒されたせいで、帆波を見上げるように見る。彼女から零れ落ちる髪が俺の頬にかかりくすぐったい。
その紫色の目は半眼となり俺の事を睨んでいた。
「私は。清隆君に優しくして欲しいんだよ?」
「そうだったのか。もう少しはっきり言ってくれればわかったんだが」
帆波の言い回しが変だとは思っていたが、俺もまだまだ修行が足りないな。
「本当に。普段は良く頭が回るのにどうしてこういう時は鈍感なんだか……」
そう言って不満げな表情をする。
「いつも悪いな。帆波にばかり言わせてしまって」
帆波は俺に対して素直な気持ちをぶつけてくれるが、俺は今までと変わらない。心の中では帆波を大事にしたいと思っているが、態度で表せているかというと疑問だ。
「それが清隆君だからね。仕方ないよ。それより私こそ清隆君に迷惑掛けてない? 嫌な事ならちゃんと言ってくれればやめるから」
途中で不安そうな表情になる帆波。普段はあれだけ自信満々なのにこういう表情を見れるのは彼氏の特権だろう。
「安心しろ。俺は帆波がどんな事をしても好きだから」
「清隆君……」
俺の言葉に帆波は感激したらしい。
徐々に帆波の顔が近づいてくる。身体は完全に俺に覆いかぶさり、豊かな胸が押しつぶされその感触が俺に伝わってくる。
最も俺にはそれを楽しむ余裕が無かった。帆波は俺に対し頬を合わせると頬ずりをしてきたからだ。
上半身に感じる帆波の豊満な胸の感触と重み。そして頬に感じるのはマシュマロのようにやわらかくも暖かい帆波の頬の感触。
「やっぱりこうしてると落ち着くなぁ」
安心しきって身体を預けてくる帆波。対する俺は今、極度の緊張状態にあった。
帆波は気付いていないが、色々な部分を刺激されたせいか、下半身がやや気まずい状態になっている。
こうして堪えてはいるのだが、精神はぎりぎりで踏みとどまっているなどと考えると俺も健全な男子なんだと認識を新たに出来た。
「帆波。出来ればちょっと離れて」
先程。俺の意思を尊重すると帆波は言った。それならばと思って提案する。
そんな俺の言葉に帆波は顔をひょこりと上げて目を合わせると――。
「清隆君。大好き」
そう言ってキスをしてきた。
ブツンッ
何かの音が切れた気がした。
帆波からされる唇を合わせるキス。それでも恥ずかしいのか帆波は顔を赤くしている。
そんな憂いを帯びた蕩けた瞳を見せられては――。
「んんぅっー!!」
俺は強引に帆波の唇を奪った。 帆波の声にならない声があがる。
次にしようとしたのは帆波が身体を離そうとする。
だが。俺が頭を掴んで離さないので距離を置けずに居るのだ。
俺の舌が帆波の唇に触れる。帆波は顔を真っ赤にして混乱しながらもそれから逃れようとする。
だが、その仕草自体が俺の男心に火をつけたのか、唇をくすぐり我慢できなくなった帆波が口を開くと一気に蹂躙した。
舌と舌が絡まり、帆波の口からあえぎ声にも似た何かが聞こえる。
俺は一端唇を離し帆波を見る。
「きよ……たか……?」
目じりに滴がこぼれ、不安そうな顔をしている帆波。そんな帆波を俺は――。
「きゃっ!」
マウントを取るように俺は帆波と位置を入れ替える。帆波を組み敷く。
口を開く事無く帆波を見つめる。そして右手が帆波の胸に触れる。ボリュームがあり、暖かい。そして柔らかいそれは俺の掌から零れ落ち、その存在を主張していた。
「やっ……」
俺が胸に触れると同時に帆波の声が聞こえた。だけど、頭に靄がかかっているかのように。どこか現実離れした光景に脳が考える事をやめたかのごとく深く考えられない。
ふにふにと俺は右手を動かしその感触を楽しむ。
「やっやっやぁ」
俺が揉むのに反応して帆波の声が上がる。それを俺は面白いと感じてしまった。
そこで俺は初めて帆波がどんな顔をしているのかが、気になり彼女を見た――。
「帆波?」
そこで見た顔は、果たして俺の想像とは違っていた。目には涙を溜め、耐える様に顔を背けた帆波が居たのだ。
「平気……だから……」
その消え入りそうな言葉に霞が掛かっていた頭が冴えてくる。
そして完全に冷静になった俺は、帆波の上からどくのだった。
「その。すまなかったな」
ベッドの上で気まずい沈黙が支配する。
「……うん」
帆波はそれだけを呟くとまた黙ってしまう。
俺は、そんな帆波に対して何もいう事が出来ないでいた。女と付き合った経験は初めてだ。
自分の中にこれだけの感情が隠れていたという事も今日始めて知った。だからこそ感情をもてあまして先走った結果、帆波が傷ついた。
「俺は。俺が思っているよりも帆波が好きなのかもしれない」
だからせめて言葉にする事で、その感情を把握しようと試みる。
俺のその言葉に帆波は顔を上げると俺の方を見上げてきた。その瞳は不安そうに揺れている。
「俺は訳あって感情を制御する訓練を子供の頃からされてきた。そのお陰もあって大抵のことには動じないし、感情が動かない。俺はそういう風に作られていた」
「作られるなんて……そんな機械みたいな」
帆波の顔が歪む。事実なのだが、そんな俺に対して正直な感想を言ってくれる。
「実際そうだった。この学校に来るまで……、いや。帆波にあうまで俺は他人の事なんてなんとも思っていなかった。クラスメイトが騒いでいるのも「元気そうだなー」としか思わなかったし。堀北がやっきになってAク
ラスを目指すも「精々頑張ればいい」と冷めた目線でしか見ていなかった」
いいかえれば他人なんて自分にとって都合の良い駒か悪い駒のどちらかで説明できる程度の存在だった。
「だから帆波が好きだと素直に実感出来た時。俺はようやく人間として感情を取り戻せたと思ったんだが……」
結果。俺は帆波を大事に出来なかった。自分の感情を優先し、嫌がる帆波を無視して事に及ぼうとしてしまった。
結局は今までの自分のままという事だ。
「それはちがうよっ!」
だが、そんな俺に帆波は声を掛けてくれる。
「私。ずっと見てたから。清隆君がこれまでどんな学校生活を送ってきたか」
そう言う帆波は先程までと違い俺に恐れを抱いていなかった。いつもの表情。いつもの声。俺が一番好きな帆波。
「私が千尋ちゃんの告白を傷つけずに断ろうとした時、私の事を窘めてくれた。「人に告白するのはそんな簡単な覚悟で出来ることじゃないから真剣に受け止めてやれ」。私あの時の清隆君の言葉が今もしみついてるか
ら」
帆波はそういうと胸に手をやる。まるでそれが大切な宝物とでも言うように。
「それから、須藤君の退学の件でも尽力してた。清隆君の内心は私にはわからないけど、私にはクラスメイトを信じて無罪を証明しようと頑張っている姿が映ったよ?」
それも堀北が煩いから仕方なくやっただけだ。後はBクラスとつながりを持つことで先々への布石とする為というのもあったな。
「無人島での行動や、豪華客船での軽井沢さんへの対応。その後の体育祭やペーパーシャッフルにも全て清隆君は周りを気遣った行動をしてるんだよ? 私みてたもん」
それは帆波の勘違いだろう。俺は今まで全て俺の為に行動してきた。他人の目から見た俺なんて…………。
「清隆君の言いたいことはわかる。他人がどう思っても自分がそう思っている以上はそうなんだって。でもね、それは清隆君だけに言える事じゃないから」
どういうことだ? 俺は初めて帆波のいう言葉に疑問を感じ、そして目を合わせた。
「私だって。周りが言うほど良い人なんかじゃない。自分の目的の為に周りを巻き込んで、そしてその仮定で周りが私を評価してくれているだけだよ」
「そんな事は無いだろ? 帆波は俺なんかにも優しく声を掛けてくれたし」
「それは勘違いだよ清隆君。私は最初、君という存在を不気味に思ったんだよ。無表情で何を考えているか解らない。だけど、Dクラスの中で唯一何かを持っていそうで今後厄介な敵になる可能性がある。だから私は近づ
いたの」
帆波の言葉を聞いて俺は驚いた。確かにやたらと探るような視線を感じていたが、帆波がそんな事を考えていたなんて。
「だけど。今の私は清隆君に恋をしている。それもその切っ掛けがなければもしかすると接点が無いまま3年間過ごしていたかもしれない。そう考えると、始まりは関係なかったのかなと思う」
「俺も……帆波が近寄ってこなければ話す事は無かっただろうな」
自分の性格を考えるに、明るく目立つ人間にわざわざ声を掛けるとは思えない。
「だから清隆君。自分の評価なんて気にしちゃ駄目なんだよ。私は清隆君の優しさに救われた。そんな清隆君は自分に感情は無いという。じゃあ私は私の中の清隆君を肯定する。だって、それが私が好きになった清隆君
だから」
帆波の言葉が染み込むように心に広がり、暖かい物が流れていく。それと同時に改めて俺は彼女の包容力を実感した。
確かに、俺にとっての帆波は優しく、頭が良く、スタイルが良く、料理が上手な女の子。そこらに居る女子では太刀打ちできない普通の女の子だ。
帆波がどれだけ自分を卑下したところでその評価は変わらない。
「ありがとう。そう言ってもらえると楽になる」
いつしか俺は素直にお礼を言っていた。
「ううん。私こそありがとうだよ」
それは何に対するお礼なのか解らない。だけど、ひとまずこう返しておこう。
「どういたしまして」
「それで……どうしよっか?」
暫く時が経ち、そろそろ深夜に差し掛かる時間。普段であれば帆波はとっくに部屋に戻っている時間なのだが。先程までの恥ずかしい行為のせいか未だに部屋に戻るタイミングを逃していた。
「どうって?」
「だっ、だからっ! 続き。する?」
そう言って顔を真っ赤にして上目遣いで見上げてくる。
「いや。やめとく」
「私が嫌がったから? 平気だよ。さっきのはいきなりだったから吃驚しただけだし」
そう言って俺に詰め寄って来る。そんな帆波に対して。
「時間。もう遅いだろ? 明日も仕事なんだから帆波もゆっくり休まないとな」
「えっ……少しぐらいなら……でも……………………………………わかった」
内心の葛藤があったのか最後は納得してくれた。もしこれで「少しだけなら」といわれても少しで終わるつもりは無い。だから今日はこれで良いのだろう。
「そうだな。俺の方はいつでもいいから。今度は帆波が良いと思ったらしてくれればいい」
正直自分から仕掛けて涙目になられるのは今回で懲りた。同じ轍を踏むまい。
「そっ、それって私から誘わなきゃいけないってことだよね?」
そう言って帆波は狼狽する。この純真さを考えると初体験を迎えられるのは卒業後かもしれないな。最も、今は焦る必要は無い。その時を楽しみに待つという楽しさがあるのだから。
帆波が帰ると、心地よい疲労が訪れ俺はベッドへと倒れこんだ。先程まで横たわっていたせいか、帆波の匂いが残っている。
その匂いに俺は安心するとそのまま眠りへと落ちて行った。
帆波も清隆もお互いのことを想っているからこそ 素の自分を見せられるのでしょうね。 そしてヤるのかなと思ったのですがこれだと まだまだ先になりそうですねぇw 今回の作品も面白かったです! 次の投稿楽しみに待ってます!