─夜・松野家
・・・ぐー・・・ぐー・・・
・・・うーん・・・ちょっと、足邪魔。
くかーっ・・・くかーっ・・・
ふがっ・・・うーん・・・
すーっ・・・すーっ・・・
・・・・・・。なんか・・・・・・
なんか・・・まぶしくない?
「・・・ジジジジジジジ・・・」
・・・うるさいな、セミ?
ううん、この時期に
もうセミは鳴かないかな。
「・・・ジジジジジジジ・・・」
セミって夏だけのイメージだけど
他の時期に鳴くセミが居るにはいる。
でも季節は夏より早い時期だし
この辺に居ることはあんまりないかな。
「・・・ジジジジジジジ・・・」
え、夏以外に鳴くセミっているんだ?
意外!
いるよ。
ハルゼミっていって、
夏になるよりも前に
鳴き出すセミのひとつ。
ん~・・・なぁに?
また虫の話してんの?
ふわぁ~・・・明日にすれば?
そうだね。
じゃあ、また明日。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「・・・ジジジジジジジ・・・」
・・・・・・ちょっとまって!?
さっき夏になるよりも前に
鳴き出すセミの「ひとつ」って言ったよね?
うん、言った。
それって、夏以外に鳴くセミが
色々いるってことだよね?
うん、日本の本州だと
ヒメハルゼミとハルゼミだね。
でも、ヒメハルゼミは
シイやカシの木の森だったり
ハルゼミは松林にしかいないらしいよ。
この辺には、いないんじゃないかなあ。
・・・うちはほら、松がつくから。
あはは、確かに。
え?
一松いま何か言った?
ん~・・・松がなんとかって言ったか?
寝てます。
おやすみなさい。
寝てるって言ってるぞ。
寝てるってしゃべったなら
起きてるでしょ?
・・・ん?あれ。
・・・・・・寝言か、な?
かな?じゃないよね・・・。
もう、なぁに突然・・・
みんな、どうして急に話はじめたの?
うるさいー・・・むにゃむにゃ・・・
何?そのお菓子だか
ハルだかナツだか知らないけどさぁ
そのセミ光るのッ?
光らないね。
そうじゃないなら、明日でいいじゃない。
そうだね。
じゃあ、また明日!
何だよ、その微妙に
ちゃんと聞いてないんだか
聞いてるんだかわからない感じ!
ムカつくなあ、ったく。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・チョロ松兄さん・・・?
電気消しなよ、まぶしいって・・・
うーん・・・まぶし・・・
「・・・ジジジジジジジ・・・」
電気なんかつけてないよ。
セミじゃないの?
ん~・・・?セミはー・・・
・・・光らないんじゃなかったっけ?
ねえ、十四松?
うん。光らないね。
そうだぞ、チョロ松。
セミは光らない。
じゃあ、この明かり何?
なんでもいいから消してよ・・・
まぶしいよー、うーん・・・
(・・・ブゥウウーン)
─松野家・居間
(ザ・・・)TVの音
「マニアックデカ」
《(バーンッ)》
《おい!大丈夫!?》
《なんだこれ!
肉の部位ごとに線が引かれてる!》
《たーすけてぇ~!》
(・・・トントントン・・・)階段の音
誰だよ、テレビつけっぱなしだよ?
《本当に見たんだよ!
あの丘の上の屋敷に・・・》
・・・なんだこれ。ドラマ?
《バイクに乗った男が・・・
殺人鬼に追われて・・・》
(カチッ・・・)・・・あれ?
(カチカチッ・・・)あれ・・・
リモコン壊れた?チャンネルが変わらない。
《そうだ、今日は病院へ行く日だ。
まだ精密検査が・・・》