【完結】もしも出木杉が女の子になってしまったら   作:発火雨

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ガールフレンドカタログメーカー

「はぁ~美味しかった。今日のしずかちゃんのクッキー気合いが入ってたな」

 

 しずかの家にお呼ばれし、クッキーをごちそうになったのび太。

 もちろん手作りクッキーは絶品であったし、心なしかいつもよりも量や種類が多く、ドラえもんの分にもとお土産まで包んでもらった。

 

「ドラえもんにも半分上げよう、もう半分は約束したし出木杉にも分けて上げよっと」

 

 この美味しいクッキーを参考にして、さらに美味しいクッキーを作るのだろう。

 互いにどっちの料理が美味しく出来るか競い合う、するとのび太は二人のクッキーを審査する審査員と言ったところか。

 

「こういう周りを幸せにするライバル関係なら大歓迎。今日はドラえもん帰って来てると良いなぁ」

 

 ホクホク顔で家路にたどり着くのび太。

 階段を上がり自分の部屋に入ると誰もいないことを確認する、念のため押し入れの中も覗いてみるがいつもの寝床には誰も居なかった。

 ドラえもんが居ないとわかると、のび太はしずかからもらったクッキーを机の上に置いた瞬間。

 

「た、た、た、大変だのび太君!!!」

 

 引き出しが開いてドラえもんが飛び出してきた。

 勢いよくこじ開けられた引き出しはのび太の腹に当たり、その衝撃でのび太は床に倒れた。

 ドラえもんはそんなのび太を気にも止めず、あたふたと慌てふためきながら叫び続ける。

 

「痛いじゃないか! 一体どうしたの?」

「そんな落ち着ている場合じゃないぞ! あの小づちの影響でとんでもないことになってるんだ」

「えぇ!? もしかして出木杉を元に戻すのはもっと先になっちゃうの?」

 

 出木杉が女の子になってから早い物で数週間が経過していた。

 日常生活に支障はないが、のび太だけが出木杉を元男だと知っているのだ。

 なんというか、負い目があるというか、どうしても気になってしまいかなり出木杉と一緒に居る時間が増えている。

 

 ジャイアンやスネ夫とは出木杉が間にワンクッション挟まってくれるおかげで話も合うのだから良い。

 遊びも勉強も特に困ることは無くなり一見いいことずくめなのだが、肝心のしずかと二人きりで遊ぶ機会が減ってきてるのだ。

 一緒に遊びに誘うのも良いが、出木杉がしたがるような男の子の遊びにはしずかを誘いづらく、勉強会もしているもんだから空いた時間というのがない。

 

 なので今日のクッキーのお誘いを渡りに船というか、久々にしずかと遊べる機会だったのだ。

 

「そうじゃなくてのび太君の未来が変わっちゃってるの! とりあえず原因を探りにのび太君も未来に来て!」

 

 そう言うとのび太の手を引っ張り、引き出しの中で時空間に浮かぶタイムマシンに乗せ、自分も飛び乗る。

 

「一体未来がどう変わったて言うのさ?」

「君の結婚相手がしずかちゃんじゃなくなってるんだ!」

「えぇ! 一大事じゃないか、一体どうして……」

「ボクにも全然わからないよ。とにかく結婚相手を調べて、どうして相手が変わっちゃったのか調べに行こう」

 

 突然の衝撃告白に驚くのび太、だが今は原因の解明が先決だ。

 

「どこまで行くの!?」

「えぇっと、あれじゃないし、これでもないし」

 

 ポケットからいくつものガラクタを放り出しながら、何かを探す。

 野球ボール、茶碗、交通安全のお守り……なんとも関係のない物ばかり出てくるのは毎度のこと。

 

「あっ! あった、普通のアルバム~!」

「普通のアルバム?」

 

 取り出したのはひみつ道具もなにも関係ない普通のアルバムだ。

 

「ほら、ボクが初めてのび太君と出会った時に未来の写真を見せただろう?」

「思い出した! たしか会社が倒産したり、ジャイ子と結婚するというろくでもない写真ばかり乗ってた奴だろ」

「あの写真はボクが君の未来を変えてから無くなったはずなんだけど、これを見てよ」

 

 アルバムを開くとそこには結婚式の写真が一枚挟まれている。

 本来であればドラえもんが来た影響で改変された未来ではのび太の隣にしずかが写っているはずであるが。

 

「あれ、新郎は僕だけど、隣に別の人が立ってるよ」

「そうなんだ、昨日何の気なしに写真を整理してたら急にその写真がアルバムに挟まってて、歴史が緩やかに変化してるんだ」

「でも一体誰だろう、すごく美人な人だけど、僕こんな美人と将来知り合って結婚する未来もあるんだ」

 

 まるで女優のように美人な新婦を見つめているとなんだか照れてくる。

 誰かはわからないが、のび太のことを好きになり結婚してくれる人ということだ、こんな目の覚めるような美人が。

 

「デレデレしてる場合じゃないぞ、代わりにしずかちゃんと結婚出来なくなる! 念のため聞くけど心当たりはない?」

「全然わからないよ、それに大人になった写真だけじゃ名前だってわからないじゃないか」

 

 いくら考えてもこの女性が誰なのかわからない。

 まだのび太が小学生時代には出会っていない可能性もあるだろうし、大人になった写真では見分けがつかない可能性もある。

 

「前にガールフレンドのカタログを出してくれたことがあっただろ? その時にもこんな美人いなかったような気がするけど……」

「とにかく、写真に名前はないけど撮った日付は書いてあるから、この日に行って確認してみよう」

「もう急いで急いで!」

「そんな急かさないで、急いだって行きつく先は同じ時間なんだから」

 

 タイムマシンが時空間を大急ぎで移動し、写真に記載された日付にたどり着く。

 

「ここが、僕が結婚する時代?」

「とりあえず、のび太君のお嫁さんを探してどこの誰なのか確認してみよう。『透明マント』に『どこでもドア』~!」

 

 ポケットから毎度おなじみの好きな場所に移動できるピンク色のドアを取り出し、もう一つ出したのは体を包むマントだ。

 

「誰かにバレたら面倒だからね、透明マントで隠れながらのび太君のお嫁さんを探そう」

「なんだかドキドキしてきちゃったよ」

 

 マントを被り透明になると、どこでもドアのノブを掴みながら行き先を告げる。

 

「大人になったのび太君のお嫁さんのいるところ!」

 

 扉を潜るとどうやらここは結婚式場のようだ。

 色んなスタッフが忙しそうに動き回っており、邪魔にならないよう二人は廊下の端っこにそそくさと移動する。

 

「ドラえもん、こんなに人がいたら誰が僕のお嫁さんなのかわからないよ」

「大丈夫だよのび太君、今日結婚する人ならきっと控室でウェディングドレスを着てるはずだよ。たぶんすぐそばに控室が……あれ、もしかしてあれってしずかちゃんじゃない?」

「どこどこ?」

 

 よく見ると大人になったしずかがオシャレして廊下を歩いている。

 

「なんでしずかちゃんがここに? やっぱり結婚するのはしずかちゃんなんじゃないの?」

「まさかぁ、あの服装は招待客のドレスコードだよ。きっと式が始まる前にあいさつに来たんだよ、あっ、あそこの控室に入る、ボクたちも一緒に入ってみよう」

 

 控室の扉を開くしずかの後ろに引っ付いて二人は新郎新婦の控室に入り込む。

 

「あっ、しずか君。来てくれたんだ」

「もちろんよ、私たち親友じゃない」

 

 中に居たウェディングが似合う美人が嬉しそうにしずかを向かい入れ、二人は親しそうに話し出す。

 

「もしかしてしずかちゃんの知り合いなのかな?」

 

 のび太側が呼んだ招待客かと思ったが、この感じだと新婦側とも仲が良いらしい。

 

「それにしても美人な人だなぁ……」

「もう、のび太君は呑気な事言って。でもたしかに、どこかでアイドルしてるくらいに美人だよね。なんでこんな美人がのび太君なんかと」

「なんかとはなんだ、僕だって将来はしっかりしてモテる男になってるかもしれないだろ」

 

 小声で言い合いをする二人だが、二人とも花嫁が美しいということに関しては意見が一致している。

 

「二人ともお似合いだと思ってたけど、まさか本当にのび太さんと結婚するなんて……」

「うん、僕もまさか小学生の頃はのび君と結婚することになるなんて夢にも思わなかったよ」

 

 ドラえもんが透明マント越しにのび太の腕をつつく。

 

「のび太君、どうも小学生時代からの付き合いみたいだけど本当に心当たりはないの?」

「全然わからないよ」

 

 わからないと答えるが、透き通るように綺麗な声で呼ばれるのび君の言い方に一人だけ心当たりがある。

 でも、まさか、そんなはずはないとのび太はドキドキする。

 

「ねぇ、どこでのび太さんを好きになったの?」

「それはね……僕ってクラスでも浮いてたろ。特に女子との距離感が遠くてさ」

「そうね、だってずっと男の子たちにモテてたし、誰に対しても面倒見が良すぎるんだもの、たぶん嫉妬されてたのよ」

 

 少し遠い目で小学生時代を思い出すように話す花嫁。

 のび太はなんとなく、その目に見覚えがある。

 そして、この声の持ち主に思い至り、顔が真っ赤になるのを感じる。

 だがまだ確信が持てない、そんなはずはないと頭を振るが……。

 

「多分のび君だけが僕を特別扱いしなかったんだ。美人だとか優等生とかじゃなくて、対等な友達としてずっと接してきてくれた。それが最初すごく嬉しかったんだ」

 

 楽しそうな記憶を振り返り、思い出を噛み締めるようにポツリポツリと話し続ける。

 

「僕ってさ、女の子なのに男の子たちと遊ぶの好きだったろ。でも、自分から輪に入れなかったし、どちらかというと言い寄られっぱなしだったから少し男の子が怖くもあったんだ。でも、のび君と一緒に居ると安心出来て、僕が遊びたいっていったら野球にも誘ってくれたんだ。……嬉しかったなぁ、始めて男の子に交じってやった野球。そしたら剛田君や骨川君とも仲良くなれて、一気にクラスに馴染めたというか」

「出木杉さんだってのび太さんにずっと勉強教えてたでしょ?」

「うん、でも僕が教えてたっていうより、のび君が色々気を使ってくれて僕のために一緒に勉強してくれたんだよ。ほら、あの年頃の子供ってどちらかというと勉強は嫌いな方が普通だろ」

「たしかに、でも遅刻も減ったしいつの間にか宿題だって忘れなくなっていったわ」

 

 顔が熱を持ち始め、顔が赤くなっても透明マントのおかげでドラえもんにはのび太の心境は伝わらない。

 

「ねぇ、もしかして最近遅刻も宿題忘れもしてないんじゃない?」

「うん、廊下に立たされることもなくなったよ」

 

 ドラえもんの疑問になるべく冷静に答えるのび太。

 

「のび君って誰に対してもすごく優しいんだ。本当は勉強だってちゃんとすれば出来るし、読書だって楽しめる、それに射撃の腕なんか天才的だし、僕にはない思考の柔軟性もある。でもね、一番好きになったところはやっぱり優しさなんだ。お人好しで、素直で、人の気持ちを自分のことのように考えられる、あれは努力や勉強でどうにか出来るものじゃない、素晴らしい才能なんだってね」

 

 のび太のことを褒めるその顔は本当に愛しい人を想い、慈しむような優しい微笑みだ。

 その笑顔はのび太が見てきたどの表情よりも美しく、そして可愛らしい。

 のび太は花嫁の姿を見て確信する。

 

「出木杉さんが結婚するならのび太さんだと思ったわ。他の色んな人が出木杉さんにアプローチしてたけど、のび太さんの隣にいる時が一番楽しそうだったんですもの」

「本当にかっこいいのはのび太君なんだけどね、でもしずか君も狙ってたろ」

「だってそれまではずっと私の方が仲は良くて、のび太さんの優しさに気が付いてるのは私だけだと思ってたんですもの、急に二人の距離が縮まってたから嫉妬しちゃったわよ」

 

 ドラえもんは声も出ないようで、無言のまま固まってしまった。

 誰も触ってないのに緊急停止のしっぽを引っ張ってしまったみたいに。

 

「うん、ずっとしずか君とは親友でライバルだったけど、まさか同じ人を好きになるなんてね」

「もう出木杉君って言えなくなるのね、野比さん」

「いや、仕事の関係もあるから苗字は今のままでいこうって話し合ったんだ。ほら、僕の名前って妙に男っぽいだろ。それで苦労しないようにって……この名前も笑わなかったし、両親が心を込めて付けた良い名前だねって褒めてくれたんだ」

 

 のび太は花嫁の笑顔と、その口から語られる内容に頭がくらくらして倒れそうになるがドラえもんが後ろから支え何とか控室を後にしようとする。

 

「ねぇ、出木杉さん。のび太さんと結婚出来て幸せ?」

「うん、のび君のお嫁さんになれて、僕は世界一幸せだよ」




普段ならあとがきを長く書き込んでるのですが、今回時間がないので控えさせていただきます

また予約投稿を忘れて、一時間の遅刻となってしまいました
お詫び申し上げます

次でいよいよラスト!
一体どうなってしまうのかこうご期待

次回更新は12/24の21時12分予定です
全然クリスマスイブと掛かってない内容ですが、年内最後の更新とさせて頂きます
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