ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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Q.なんでこんなに遅れたの?
A.仕事が忙しすぎて執筆の時間が……orz

作者と陸八魔アルが腹を切って謝罪します。
流石に今週からは最低週一投稿に戻れるはず……
遅筆なだけでプロット自体は腐る程にあるので(震え声)

今回は内容詰め込んだので、ちょっと長いです。



悪魔顕現

 

場所はエリドゥ西大通りの地下通路付近。

トキとC&Cが激戦を繰り広げている頃、先生一行は現在劣勢を強いられていた。

 

 

・「モモイとミドリは前方への弾幕を絶やさないで!ユウカは奇襲の警戒!ヒビキとウタハは他方向のAMAS掃討を!」

 

「うぅー、素早すぎてもう見失っちゃった……」

 

「気を抜いたらその瞬間ダウンするわよ!」

 

 

先生達が地上へと足を踏み入れた時、地上は大量のAMASに封鎖されていた。

それらは全てキヴォトスに存在しないステルス機構を備えた機体達で、ヴェリタスの索敵を掻い潜ったのだ。

よって先生達は思わぬ形で奇襲を掛けられることになった。

だが、劣勢の原因は別にある。

 

確かに兵力差は著しく本来であれば敗走は避けられなかったが、先生の指揮とヴェリタスのサポートもあり着実に数を減らす事に成功する。

もはや烏合の衆と化したAMASでは先生達の歩みを止めることは出来なかった。

 

順調すぎた時点で警戒すべきだった、もしくは焦りがあったのかもしれない。

有象無象の中に隠れた彼女(AL-1S)の存在に誰も気付くことはなかった。

 

劣勢の原因はAL-1Sによる二段構えの奇襲攻撃。

ヴェリタスの監視を掻い潜るスピードと隠密性を以て攻撃は成功した。

 

最初の一発目は先生へ。

これはアロナがバリアを張り完璧に防いだ。

 

続く二発目、三発目は驚きで固まっていたユズとコトリへ。

ユズは額に被弾し気絶、コトリは脇腹に被弾し悶絶した。

 

更に四発目はヒビキへ放たれた。

しかし、弾丸は動き出したユウカの防御により弾かれた。

 

その間たったの2秒。

短時間でいきなり二人の戦力を失ってしまった。

ユウカがこの場に居なければ全滅の恐れもあっただろう。

 

 

・「相手はAMASの影に隠れて常に奇襲を狙っているから、周りのAMASを片付けていこう!」

 

「追加される分よりも多く倒さないと!!」

 

『こっちも最優先でタスク回すから頑張って!!』

 

 

先生の指揮もありなんとか立て直したが、いつ突破されるかと冷や汗が流れる。

元々遭遇時に別れる予定だったがあのスピードだ。

散り散りになったとしてもすぐ各個撃破されるに違いない。

 

 

ここは苦しくとも一丸でAL-1Sを炙り出す作戦が良い。

そしてモチベーション維持は先生の腕にかかっている。

先生は己を鼓舞する意味も含めて強く叫んだ。

 

 

・「踏ん張りどころだよ!!」

 

 


 

 

「……はぁ」

 

 

一方のAL-1Sはと言うと、任務に対してあまり気乗りではなかった。

多対一は別に良い、自身の頑丈さなら苦にならない事は分かりきっている。

不満なのはただ一つ、わざと負けて撤退せよという点。

 

根本的に負けず嫌いな性格のAL-1Sには気持のいい内容ではない。

オーナー直々の任務でなければ放りだしていただろう。

思わず溜息が洩れるが、流石に任務を開始すると真面目に作戦を実行した。

 

まずは兵力の多い相手戦力の削減を行った。

初動で先生を含めて半壊させる予定だったが、脱落者はたった2名。

オーナーから『シッテムの箱』による防衛機能は聞いていたが、愛銃の威力でも貫けない程とは恐れ入る。

 

それに事前情報になかった前衛太もも(ユウカ)が居た。

2発も撃ち込めばシールドを破壊できるだろうが、厄介な事に変わりない。

そして直接戦闘向きのパーティと言えない戦力で自身と渡り合う先生の指揮能力はAL-1Sも認めざるを得ない。

 

 

「(指揮能力に限って言えば、オーナーより上かもしれません)」

 

 

後はどうやって退場するかだが……。

そう悩んでいた時、AL-1Sの端末に連絡が入った。

 

 


 

 

脅威はAL-1Sだけではない。

奇襲を受けヴェリタスがAMASの制御権のハッキングを試みたが、見たことのない暗号で解読に時間がかかっていた。

また、AL-1Sが現れたと同時にヴェリタスのサーバー内に侵入者が現れたのだ。

 

 

「侵入スピードが速すぎる!」

 

「早くウイルスを根絶させないと……」

 

「ごめん先生、一時的にそっちのサポートが出来なくなる!!」

 

 

ヴェリタスのセキュリティは企業クラッカーでも入り込むことが困難な堅牢さを誇る。

だが、この侵入者は簡単に入り込みサーバー内を荒らしまくっている。

マキ、ハレ、コタマの3人でやっと勝負できるレベルの実力者。

 

もはや人でなく、件の預言者(ケセド)のようなチートAIの再来かと思わせるほど。

そんな侵入者の正体とは一体誰なのか────

 

 

「にはは!!そんな速さじゃ追いつきませんよ〜。」

 

 

その正体は『白兎』 黒崎コユキ。

 

彼女は異能と呼んで差支えないレベルの暗号解読能力を有している。

彼女にセキュリティは意味をなさず、機密情報は道端に落ちたお金のような物。

そんな彼女の天性の才能に加えて、彼女がサーバー内に散布しているウイルスも時間稼ぎに貢献していた。

 

 

「オーナーも太っ腹ですね、こんな面白いオモチャまで貸してくれるなんて!!」

 

 

コユキはオーナーから見たこともない様なウイルスを手渡されていた。

内部データを独自の暗号に変換し、拡散する性質を持つオーナー曰く、嫌がらせ用のウイルス。

それが超速でばら撒かれているのだから、ヴェリタスにとっては堪ったものではない。

 

そしてこのウイルスにはもう一つ面白い性質を持っていた。

こちらは時限式になるため今は確認できない。

 

 

「次はどこを弄くってやりましょうかね。……ん?」

 

 

あのヴェリタスに一泡吹かせてご満悦な兎。

そこに水を差す様に連絡が入る。

端末は『帰還せよ』とだけ書かれた短文を受信していた。

 

 

「(ちょっと名残惜しいですけど、退散しますか)」

 

 

手早く退散の準備を済ませ、通信室を後にするコユキ。

以前の彼女なら退き際を間違えて痛い目を見ていたであろう。

オーナーという存在が彼女をより優秀な人材へと変貌させていた。

兎はオーナーがこの後見せてくれるであろうモノを想像し、さっさとその場を離れた。

 

 


 

 

AL-1Sのヒットアンドアウェイ戦法に神経を削られつつも、前進する先生達。

ユウカを先頭に守りを固めジリジリと前進していた。

牛の歩みだが、着実に進んでいる。

 

ゆったりと、しかし激しい攻防の中で余裕ができた先生が初めに異変に気づいた。

今までのAMASによる攻撃が嘘のように弱まり、自身たちとの距離が開いている。

 

まるで何かの為に道を譲るように。

警戒していると眼前にモニターが展開された。

ヴェリタスのものではない。

そこにはあのセミナー会長が映っていた。

 

画面越しだからか、表情からは感情が読み取れない。

感じているのは悲嘆か、それとも純粋に怒りか。

 

 

『もうここまでやって来てたのね……』

 

「会長!!」

 

・「君を止めに来たよ、リオ」

 

『止めに来た……ね』

 

 

注意を自分に向けさせる作戦だろうか。

話を聞きつつ、警戒を怠らない先生達に諭すようにリオは続ける。

 

 

『警戒は無駄よ。彼女(AL-1S)ならもう帰ったから』

 

・「帰った?」

 

『彼女たちは協力者。事を始め、大きくした私が決着をつけるのが道理でしょう?』

 

 

言われてみれば、先程まで重く伸し掛かっていた重圧感が薄れている。

しかし、油断出来るはずもない。

気にせずリオは続ける。

 

 

『それにしても、貴方達全員の理解を得られなかったのは残念よ。特にユウカ』

 

「考え直して下さい会長、ケイちゃんを殺害するなんて絶対間違えています!!」

 

『いいえ。正解では無いのでしょうけれど、決して間違いでもないわ』

 

 

いつものリオとは思えないほど芯の強い声だ。

その姿勢は間違いなくミレニアムの会長として相応しいものだった。

 

 

『私はミレニアム生徒会長の責を背負っているの。たった一人のために世界を巻き込むなんて許容できないわ』

「それは……」

 

 

他者に有無を言わせない凄み。

上に立つ者として、才覚が顕著に現れている。

その姿は最早大人を思わせるほどで───

 

 

違うんだリオ、それは子供が背負うべき物では無いんだ。

 

 

そう言えたならばどれだけ良かっただろう。

だが既に袂を分かち覚悟を決めたリオには届かない。

もうやり直すには何もかもが遅すぎた。

 

 

「難しい話はいいからケイちゃんを返して!!」

 

『貴方は確か……ケイに直接攻撃された貴方なら分かるでしょう?』

 

「分かんないよ!私はただケイちゃんを取り戻したいだけ!!」

 

『そう、理解する気が更々ないのね……』

 

 

心底残念そうに顔を曇らせるリオ。

そうなったのも束の間、すぐにいつもの仏頂面に戻った。

話し合いはもう終わりだ。

 

 

『メールを見たでしょう?取り戻したいなら管制室まで辿り着いてみなさい』

 

『先……、通信……復……た。先生!すぐ近くに大きなエネルギー反応が!!』

 

「どうやら切り札をまだ残していたみたいだね」

 

 

AMASで開いた道から現れたのは、人より二回り大きいドローン。

悠々とキャタピラを回転させその独創的なデザインの奴は姿を現した。

その姿に対する先生達の内心は奇しくも一致した。

 

 

『────アヴァンギャルド君、発進!!』

((((ダサい………))))

 

 


 

 

そこからの流れはおおよそ原作通り。

アヴァンギャルド君はその高性能さを遺憾なく発揮するも、チヒロ達による『鏡』のサポートを受け無事に撃退した先生たちはリオが待ち受ける管制室タワーへと向かった。

 

度重なる戦闘でグロッキーとなったエンジニア部とユウカは途中で離脱した。

そこからの道中に現れるのはマチマチな数のAMASだけ。

最早先生達の歩みを止める存在は居ない。

 

原作と異なるのはトキとC&Cの戦闘に決着が付いてないところだろう。

AL-1Sとの戦闘で勘を取り戻したネルとアビ・エシュフ装着状態のトキの戦闘力はほぼ互角。

何せ互いの攻撃が全く当たらない。

 

他のメンバーは終始ネルのサポートに徹したのもあり、膠着状態であった。

C&Cの任務は先生達を管制室ゴールまで届けること。

現時点で既に任務は成功していた。

 

コタマの誘導に従い最上階へと駆け上がる先生達。

最上階はエリドゥを見渡せるほど高い位置まで伸びていた。

彼女のナビゲートがなければ迷っていたかもしれない。

 

そして奥へ入ると全面モニターだらけの部屋となっていた。

隅の方には見覚えのあるドローンの彫像が飾られていた。

モモイ達はここが管制室だと確信する。

 

 

「着いた!!」

 

『この階の何処かにケイちゃんが居るはずです』

 

「そう、ケイなら奥の部屋に居るわ。」

 

 

コツコツとモモイ達に近づく影──リオと直接対面する状態となった。

見たところAMASの様な兵器・武器は見当たらない。

 

 

「会長……まだ戦うつもり?」

 

「いいえ、ここに辿り着いた貴方達にそんな事をする気は無いわ」

 

 

自身の計画が水泡に帰すというのに不思議と清々しい。

文字通り保有する戦力を全て注ぎ込み、その上でここまで到達されてしまった。

トキを呼ぶこともできるがそれは無粋というもの。

あの不利な状況を打破した先生達なら、ケイを任せても平気だろう。

 

 

「………認めましょう、私の負けよ」

 

 

あっさりとそう言い放つリオに面食らう先生達。

勿論リオも思う所が全く無いわけでは無い。

リオは協力者に対して申し訳無さを感じていた。

契約を果たせなかった事だけが心残りだったのだ。

せめて自分の意志を尊重してくれた彼らだけは安全にここから離れられる様に、できるだけ時間を稼ごう。

 

 

「約束事は守るわ、来なさい」

 

「モモイ?それに皆まで………」

 

「ケイちゃん!!」

 

 

奥からドローンに連れられたケイが現れる。

既に意識は覚醒しており、モモイ達の姿を見て珍しく驚きの表情を見せた。

見た感じ心身ともに大きい影響はなさそうだ。

 

嬉しさのあまり駆け出すモモイ達。

再会のハグをしようと近づくが、それは思いもよらない物に阻まれる事になる。

 

不意な顔面の強打。

まるで見えない壁に阻まれる様に先へ進めない。

モモイは思わず轢かれたカエルのような声が漏れ出てしまう。

 

 

「うぎゅッ!?」

 

「何これッ、見えない壁みたいなのがある!」

 

「う、後ろのドアも閉まってる!?」

 

「そんな……まさかッ!?」

 

 

急いでリオも先生達の方へ駆け寄る。

少し進むとすぐに硬い感触が手に伝わる。

かなり注視すると向こうと一枚の壁に阻まれている。

 

この分厚い防弾ガラスの壁は、シェルターとしてエリドゥ全域の建物に実装している。

だがシェルター機能をこんな場所につけた覚えは無い。

それもリオが気づかないレベルで隠蔽された代物。

 

現在ケイとリオが一緒にいる状態だ。

モモイたちからすれば眼の前まで出されて急に引っ込められた様なもの。

当然モモイからブーイングが来る。

 

 

「ちょっと!ここに来て卑怯すぎない!?」

・「……いや、あれはリオも焦ってない?」

 

 

ダメ押しと言わんばかりに、一瞬管制室のモニターが全て落ち、再度復活した。

絶対に何かがおかしい。

更に同時にチヒロの通信が乱れ始めた。

 

 

『いっ……な…が……応答………──────』

「エリドゥのシステム全体が……ハッキングされた?」

 

 

膨大な量の技術力と資金を使って敷いたセキュリティがいとも容易く破られた。

デカグラマトンでさえ数分は凌げる自信作をあっさりとだ。

こんな芸当ができるのはただ一人、作った本人にしか不可能だ。

思い浮かべたのは大元の作成者である骨男。

 

しかし一体何故このタイミングで……

裏切るならもっと良いタイミングがあったはず。

ケイをどうしても破壊したかったら問答無用でチームⅤも投入すればよかったのに。

 

リオが協力者の骨男──ホモに連絡を取ろうとしたとき部屋の中央、ケイの近くに闇より暗い穴が開いた。

そして穴から二人の人物が出現した。

 

片方はAL-1S、もう片方は見たことのない人物───常識的に考えて、動かない筈の骨がそこには居た。

 

 

「はじめまして先生、私はゲマトリアの一員。

そこの憐れな生徒を誑かした元凶であり─────

 

君達の敵だ」

 

 

ゲマトリアという言葉を聞いた瞬間、先生の警戒度がマックスまで跳ね上がった。

そして死の一文字が頭をよぎる。

骨の男、オーナーからとてつもなく濃い死の気配を感じるのだ。

 

 

「もう少し粘れると思っていたが無理だったようだな」

 

・「……貴方が、ケイちゃんの破壊を進めた張本人?」

 

「そうだ。この計画も、彼女の背中を押したのも全て私だ」

 

「違───ムグッ!?」

 

シィー……

 

 

いつの間にか背後に回っていたAL-1Sに口を塞がれ言葉を中断させられてしまう。

 

 

・「私達はリオと約束したんだ、部外者にケイとの再会を邪魔される筋合いは無いと思うけど?」

 

「それもそうだ。AL-1S、『鍵』を向こうに返してやれ」

 

「了解」

 

「ッ!!」

 

 

ガラス壁に指を何回か触れさせるとケイと先生達を阻んでいた感覚が消え去った。

壁がない今、骨の男に対して攻撃できる絶好のチャンスだ。

 

──それでも動けない。

この男の得体のしれなさに無意識に張った警戒を解くことが出来ない。

男の一挙一動が目から離せず、引き金を引くことが出来ない。

 

 

「さて、契約は『鍵』を渡すまで。そこから後は自由だ、当然私達もな?」

 

・「皆、戦闘準備!!あの娘のスピードには注意して───」

 

「まずは場所を移す」

 

 

コツリと杖を軽く床に小突く。

すると先生の足場の感覚がフッと突如消えた。

 

異変を感じ下を見ると、先生は絶賛タワーから落下中だった。

常人が死ぬ高さからの紐なしバンジーに先生の肝が急速に冷える。

 

 

 

管制室の床にできたワープ穴から悲鳴が聞こえてくる。

全員がワープ穴に落とされたのを確認すると、ホモは行動を開始した。

前に人一人が入れる程度のワープ穴を開く。

 

 

「君はそこで観戦してると良い」

 

「特等席ですよ」

 

 

拘束を解かれ地面にへたり込むリオ。

困惑が頭を支配し思うように言葉が出てこない。

 

 

「そこまで不思議なものか?子供に心配される程、落ちぶれてはいないというだけの話だ」

 

「肯定、後は当機達に任せて茶でもしばいて下さい」

 

 

なんてこと無いように話しながら、二人もワープ穴へと入っていった。

リオはそれを見送ることしか出来なかった。

 

 


 

 

落下した結果を言うと、先生はそのまま地面に衝突することは無かった。

放り出された直前にフワリとした無重力が先生を包み、気がつくと先生は少女に抱きかかえられていたのだ。

 

 

「なんでアンタ達が空から降ってくるんだ?」

 

・「ネル!!」

 

「すごーい、ラピ◯タみたーい!!」

 

「無事ですか、先生!!」

 

 

ケイは無傷で着地できたようだ。

いわゆるお姫様抱っこで救出された先生は、あたりを確認する。

 

どうやらトキとC&Cの戦闘場所へ落とされたらしい。

一緒に居たモモイ達の姿は近くにない。

程なくしてホモとAL-1Sが登場した。

 

 

「出やがったなクソチビ共!」

 

「多勢すぎるので彼女(モモイ)たちは別の場所へ転移させた。向こうも戦闘を開始している頃だろう」

 

「何故ここに貴方が……」

 

「状況は見ての通り、済まないが目的のためにリオは拘束した。私は『鍵』を破壊する」

 

 

その台詞を聞いただけで、トキは全てを察知した。

同時に自分がどう動く事を期待されているのかも。

 

 

「……会長救出のため、貴方を敵と見なします」

 

「優秀だな君は。だがアビ・エシュフの演算機能は切断させてもらう」 

 

「よく分からねぇが、味方って事でいいんだよな?」

 

「えぇ、すんなりとは受け入れできないでしょうが……」

 

・「全然気にしないよ。皆は自由に動いて、私が合わせるから」

 

「………」

 

・「ケイ?」

 

 

ケイは精神世界でのやり取りを覚えていない。

それでも無意識のうちにホモに恐怖を抱いていたのか体が震えていた。

 

 

「あぁ、そう言えば武器はまだ返していなかったな」

 

・「……何のマネ?」

 

「教える気は無い、忘れているようだが私は敵だぞ?」

 

 

空中にできたワープ穴から光の剣が落ちてきた。

ケイの反応に違和感を覚えた先生はケイに語りかける。

 

 

・「何がとは言えないけど、大丈夫?」

「──問題ありません。私は……王女を止めます」

 

 

以前から頼もしかったケイが今は小さく見える。

嘘をついているのは明らか。

 

しかし原因もわからず、すぐ戦闘の始まる現状では何も解決できない。

戦闘に向けて張り詰めていく空気をよそに、神妙な面持ちでネルが発言する。

 

 

「……てめぇらはチビ(モモイ)達の援護だ、何か嫌な予感がする」

 

「あっ、それは私も思ってた!」

 

「成る程……先生、この場はリーダーと任せて構いませんか?」

 

・「任せて!!」

 

 

感じるのは天変地異の前触れのような予兆もないのに不思議と確証のあるあの感覚。

この場にいてはあの二人が危ないと直感したのだ。

 

 

・「任されたからには、すぐに押し切らせてもらうよ。」

「ほぅ。」

 

 

大人のカードを取り出した先生。

あの二人が言うのだから何が厄ネタがあるのだろう。

多少ルール違反スレスレでもやり切る必要がある。

眼の前の男は必ず自分の脅威として立ちはだかる。

 

そんな先生に驚くことなく淡々と情報を分析するホモ。

なんなら興味深そうにカードを凝視していた。

 

 

「大人のカードか、黒服から聞いているとも。ゲマトリア内でも様々な憶測が飛び交っているが、私はこう考えている。

 

それは通常のカードと同じ機能を備えつつ、先生の時間を消費することで、いついかなる時も絆を育んだ生徒の分身を呼び出す事ができる。

命を賭す過程でその神秘と強靭さを上昇するおまけ付きでな。

言わば、一種の物語強制閉幕装置(デウス・エクス・マキナ)だ。

まともに取り合えば敗北は必至だろう。

 

しかし自己犠牲の上に成り立つ力ほど脆いものはない、それを君に教えよう」

 

 

ホモは懐から何かを取り出し掲げた。

 

 

神名十文字(デカグラマトン)は10人の預言者とパスを拓き新たな『天路歴程』を開始した。だが模倣するだけではナンセンスだ。だから私はその逆、奴らが神を証明するなら私は悪魔を証明してみせよう」

 

ホモが取り出したのは球体状の何か。

先生は知る由もないが、これは『廃墟』から捕獲・分解したケテルのコアだ。

何をする気か分からないが碌な事ではなさそうだと言うことだけを感じとる。

 

 

「本来ならば預言者達が必要だが、今回に限りAL-1Sという反則が使える。奴の存在証明にはAL-1Sと鍵、両者の許可が必要だった」

 

「リソース名『ケテル炉心部』の全体リソース確認。」

 

 

区切るように都市中に乾いた音が響く。

カリンがホモを狙撃したのだ。

しかし射線を把握されていたのか、ワープ穴により弾はホモを襲うことは無かった。

ホモは言の葉を紡ぎ続ける。

 

 

「『鍵』の代行者として告ぐ、現時刻を以て()()()()()A()T()R()A()H()A()S()I()S()()()()()()

 

「承認、()()()()()A()T()R()A()H()A()S()I()S()()()()

 

「なぁッ!?」

 

 

何故この骨男がプロトコルATRAHASISを。

そんな疑問をぶつける間もなくホモは続ける。

 

「『鍵』は王女の手に在らずとも、方舟は用意された」

 

名も無き神々の王女(AL-1S)が承認、ここに新たな聖域(サンクトゥム)が舞い降りん───」

 

「奴は神秘であり、恐怖であり、知性であり、激情でもある」

 

 

10の悪徳より生まれしそれは、理の埓外にいる存在。

ある意味この存在は神名十文字の恐怖(テラー)と捉えることも可能だろう。

 

 

「顕現せよ────クリフォト」

 

 

今ここに、悪魔が顕現した。

 

 




解説:クリフォト

デカグラマトンが自身の神性を証明するための過程を参考にホモが顕現させた人工悪魔。
正式名称はクリフォトにより到来した悪魔。
この一時の為に顕現した悪魔は、エリドゥの演算機能によって存在を補強されている。

本来はビナーのような覚醒した預言者が必要だが、無名の王女の力で無理やり顕現させた。
本来王女の力の権限は鍵の協力が不可欠だが、内部データを盗み取っていたオーナーは代弁者として自身が変わりに申請を行うことで、プロトコルATRHASISを稼働。
その為か完全体の神聖十文字よりも大幅に弱体化を受けていると予想される。
しかし構成時にオーナーの潜在意識を介しての権限発動で■■の要素も多少備えているため、戦力としてみれば十分すぎるほどに脅威。

オーナーの想定より不完全とは言え、その力は強大。
触れたものを蒸発させるレーザー攻撃が主となる。
他にも多彩な初見殺しを連発してくるので注意されたし。(電撃警棒、光学迷彩etc……)
また時間をかけると再生するので速攻で倒すのが吉。
戦闘を行う先生達は死闘を覚悟するべし。

外観はケテルの核を触媒に顕現したため、姿形は面影を残している。
■■の要素の影響か、装甲の色は宇宙色となっている。
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