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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「理研酒は日本酒にあらず…

特色ある発泡酒も各地で生産されている。日本航空とJR東日本が共同開発した発泡酒「山形県産さくらんぼクラフトラガー」=山形市で2025年8月25日午前11時53分、古賀三男撮影 拡大
特色ある発泡酒も各地で生産されている。日本航空とJR東日本が共同開発した発泡酒「山形県産さくらんぼクラフトラガー」=山形市で2025年8月25日午前11時53分、古賀三男撮影
値段の安い合成清酒は長く庶民に愛されてきた。写真は銘柄を隠した合成酒と清酒を見分けるコンクール=東京都八王子市八幡町11の八王子繊維貿易館八王子織物協同組合で1954年11月9日 拡大
値段の安い合成清酒は長く庶民に愛されてきた。写真は銘柄を隠した合成酒と清酒を見分けるコンクール=東京都八王子市八幡町11の八王子繊維貿易館八王子織物協同組合で1954年11月9日

 「理研酒は日本酒にあらず、日本酒に似て、より衛生的なる現代的天の美禄(びろく)なり」。米ぬかからオリザニン(ビタミンB1)を抽出した鈴木梅太郎博士が大正時代に発明した合成清酒の宣伝文句である▲博士が研究員として加わった理化学研究所が特許を取り「利久」などの銘柄で販売された。軍にも納入され、理研の財政を支えた。米騒動をきっかけに米を使わない合成清酒を普及させ、米不足対策につなげる狙いだったという▲日本酒通は眉をひそめるかもしれないが、二日酔いになりにくいと評判は悪くなかった。画家の横山大観は外遊時に船に積ませたという。名著「日本の酒」で知られる坂口謹一郎博士も「天然物にない利点が少なくない」と存在意義を認めていた▲第3のビールを含めた発泡酒はさながら現代版の理研酒。麦芽比率をビールより下げて低い税率の適用を受け、低価格と遜色ない味わいを両立させて売り上げを伸ばした。ところが1年後には酒税法改正で税率が上がり減税となるビールの税率と並ぶという▲税制のゆがみから企業努力で生まれた商品が狙い撃ちされたようでもある。サントリーは改正に合わせ、主力商品の麦芽比率を高めてビールとして売り出す。価格は発泡酒並みという。安いならやはりビールという層をターゲットにするのだろう▲物不足の時代から長く庶民に愛されてきた「利久」は誕生から約1世紀を経た今も健在である。発泡酒も本家と異なる特性を生かして生き残ることができるだろうか。

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