ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで 作:ノートン68
お待たせ致しました。
今回は難産でした。
プロットは出来てるのに、いざ文章を書くとなると難しくなるのはあるある。
「───あ、う?」
奥底へと沈んでいた意識が急浮上した。
瞼を開けると見覚えのある天井が映る。
依星ケイの意識が戻った瞬間だった。
「(ゲーム開発部の部室───痛っ!?)」
体中が痛い。
まるであらゆる方角から銃弾を浴びせられたかのように。
だが今回はその痛みが意識を現実へと引き戻すのに一役買っていた。
意識の覚醒が進むにつれ段々と思い出してきた。
自分が一体どれだけの事をやらかしたのかを。
「(あぁ、そうだ。私は───────)」
それは『鍵』として行動した記憶。
悲痛な表情で何かを叫ぶミドリ達の姿。
天井が崩壊し、曇り空が広がるヴェリタスの部室。
戦闘を行うミドリ達と『無名の守護者』。
戦闘の最中、
「(ネル先輩が
そこには確かな安堵の感情があった。
それと同時に深い後悔の念にかられる。
「(おそらく私はもう、この学園には居られないでしょう。)」
万魔殿(ゲヘナ)であれば別だっただろうが、ここはミレニアム。
学内で問題を起こせばそれなりに重いペナルティが課せられる。
反省部屋(金庫)に居ないという事はそういうことだろう。
ケイの頭にチラつくのは『退学』の2文字。
「(いっその事、もう出ていってしまいましょうか。)」
そろり、とベットから降りて外へ出ようとドアノブに手をかけた瞬間、先に外側から開けられた。
唐突に現れた人物を確認したケイは思わず固まる。
「あっ……。」
「───ケイちゃんが起きてる!!」
・「本当!?」
「よ、よかった。目を覚ましたんだね。」
ミドリに見つかった途端、ゾロゾロと先生とユズも入ってきた。
ふと、1人騒がしいあの子が居ないことが気になった。
「モモイは何処ですか?」
「──ッ!!モモイは………」
・「落ち着いて聞いてね。モモイはあの時の部室の崩落が原因で意識が戻ってないんだ。」
「………。」
それが意味する事を理解したくなかった。
それでもケイの優秀な
──あぁ成程、つまり私がモモイを傷つけたと言う事ですか。
ATRAHASIS計画を進めるのに覚悟はしていた筈。
神秘のアーカイブ化、それは即ちキヴォトスの滅亡を意味するという事。
そしてそれはミレニアムの生徒を殺すと言う事にほかならない事。
それでも、モモイが意識不明だと聞いただけで胸が張り裂けそうになる。
何よりも3人の目を見れば分かる。
憐憫はあれど、怒りは含まれていない。
いっそ怒鳴りつけてくれた方が救われた。
その事実(優しさ)がケイをより一層傷つける。
「(この程度で、この体たらくでは、私はきっと計画を完遂できない。)」
『鍵』は計画を実行しなければならない、他ならぬ王女の為に。
それが使命だと分かっていても、まだ計画とミドリ達が天秤にかけられて揺れ動いている最中だ。
なんの拍子にミドリ側に天秤が傾くか分からない。
そうなってしまうともう、鍵としての自分が死んでしまう。
そうだ、自覚してしまった、認識してしまったのだ。
ケイは、ミドリ達の方が大切だと気づいてしまった。
「(こんな、こんな気持ちを味わうのだったら、人の気持ちなど知りたくは無かった!!)」
しかし、ケイの奥底に存在する『鍵』は違う。
未だATRAHASIS計画の実行を諦めていない。
まるで、自分がもう一人いるかのように囁いてくる。
どんな犠牲を払おうとも、計画を実行せねばならない。
「……全ては私のせいです。」
・「ケイ、落ち着いて………!」
「
「そう、貴女が傷つけた。それは変わらない事実。」
・「誰……!?」
「先生、か、会長が……!!」
現れたのは、ヘイローが無ければ大人だと錯覚してしまいそうな程に、スーツを着こなした黒髪の女性。
彼女こそ、このミレニアムの生徒会長、調月リオだった。
「貴方───そして彼女達に真実を教えに来たの。」
リオから伝えられるのは先生達にとって、信じ難い情報だった。
廃墟から連れてきたそのAIは、世界を終焉に導くための鍵である事。
『不可解な軍隊』Divi:Sion、『名もなき神』、『無名の司祭』など聞き馴染みのない単語がズラズラと出てくる。
当然、急にそんな事を言われても理解できないとミドリはリオを突っぱねた。
「勝手にケイちゃんに変な設定を付与しないで下さい!!」
「しっかり精査した果ての結論よ。その為の『鏡騒動』だったもの。それに───彼女の体の調整には私も携わっていたのよ?」
ここで初めてミドリ達はあの騒動時、会長達の掌の上で転がされていた事を知った。
ケイの体のことも初耳だった。
よくよく考えてみると、『鏡』の件はヴェリタスから持ちかけられたものだった。
ならば、自分たちは彼女達にも利用されたのだろうか。
そんな考えが頭をよぎるが、それはリオの発言で杞憂に終わる。
「……
「また、そんなデタラメを───」
「見たでしょう、ケイが『不可解な軍隊』に接触してどうなったか。」
その言葉にミドリは思わず言葉が詰まる。
本当に申し訳なさそうに、リオは話し始めた。
「C&CやAMASを使って周りのロボットは全員破壊したと思っていたのだけれど、
「えッ、会長が謝罪……!?」
急に謝罪され困惑するミドリ達。
その困惑具合を意に介さず、こう言い放った。
「話を戻しましょう。セミナー会長として、またいつ爆発するかも分からない爆弾を放置は出来ない。だから───解体するのが1番だと思わない?」
「ッ!!」
「ケイちゃん!?」
解体の一言を聞き部屋の外へと駆け出すケイ。
レールガンという重量物を携帯しながらも素早くリオの横を通り抜け廊下へと出る。
何故走り出したのかも分からないまま、ケイはその場から逃走した。
追い縋るようにミドリ達も後を追う。
「(何故私は走り出して……思考回路がグチャグチャで冷静な判断が……。)」
「逃走しても無駄よ。」
・「やめて、リオ。」
「……事実から目を背けるのは思いやりではないわ、先生。」
生徒を極力傷つけたくない先生は、リオを止めようと声をかけた。
必死に生徒が生徒を殺すなんてことあってはならないとリオに訴えかけた。
それでもリオは止まらない。
「それに
何故なら彼女は『無名の王女を支えるサポートAI』なのだから。
リオ視点では、ケイが虎視眈々と計画を企て発動させる機会を伺っていた様にしか見えなかったのも仕方ない。
・「もっといい方法があるはずだ!!」
「そんな方法があるなら是非教えて欲しいわね。」
・「今すぐは無理だけど……それでも皆に相談すれば何とか────」
「いつまでそんな寝言を吐き続けるつもりなの!!」
この時の彼女の言葉は本心そのものだった。
既に被害が出てしまった以上、対策を立てる時期は過ぎている。
現状はリオの味方である
そうなればケイの情報は瞬く間に拡散され、ミレニアムは痛手を負うことになる。
最悪ミレニアムを中心にキヴォトスが滅亡する可能性もある。
そんな事はあってはならない。
「例え全員に恨まれようと、私はこの判断を後悔はしない。」
・「(この子……。)」
先生は気圧されていた、自分よりも一回り年下の生徒に。
ヒマリが見れば「誰?」とでも台詞が零れそうな程にギラついた芯のある目をしている。
今のリオならヒマリを言い負かしかねない圧があった。
それでも先生は諦めない。
何とか説得を試みようと言葉を紡ぎ出そうとした時、リオのタブレットに着信が入った。
──────────────────────
自分はケイなのか、『鍵』なのか分からない中走っていると、道を塞ぐように人影が立っていた。
ケイはその人をよく知っている。
その人は今1番出会いたくない相手であった。
「───ネル先輩。」
「………。」
彼女はケイの姿を確認するや、銃口を彼女に向け発砲した。
そしてケイの後ろにいた
「………何故ですか?」
C&Cはセミナー専属のエージェントと聞いた。
ならばネルは本来ここで自分を捕縛するのが役目のはずだと。
「そんなもん、やってらんねーからに決まってんだろ!!」
ただそれだけの理由でネルはあっさり自分の使命を放棄した。
ケイにはそうあれるネルが眩しく見えて仕方なかった。
「ネル先輩!!」
「いいから早く行け!!」
「違います、後ろッ!!」
5番目のC&C、飛鳥馬トキが今まさにネルの背後に忍び寄っていた。
音もなく忍び寄っていたトキは既にモード2だ。
「分かってるッつ───のッ!!」
「ッ!?」
完璧だと思われた不意打ちはいとも容易く防がれた。
カウンターに放たれた弾幕の嵐を避け距離を取るトキ。
構え直すと眼前に銃を突きつけるネルが居た。
「オラオラオラァッ!!」
「(事前に貰った戦闘データよりも動きが格段に良い!?)」
「チッ、当たんねぇ。」
上体を逸らし、何とかネルの猛攻を凌ぐ。
トキは与り知らない事だがネルの動きは、
だが、それはトキも同じ。
「思ったよりやるじゃねぇか?」
「(あの子の動きに慣れておいて正解でした。)」
「ケイちゃーん、どこーッ!!」
「やっと来たなテメェら。」
ミドリ達がやっとネルの所まで追いついたところだった。
ネルが後ろに指を差す。
「チビなら向こうに行った。」
「──有難うございます!!」
「………。」
追いかけたいが目の前のネルから目を離すことが出来ない。
少しでも気を抜くとやられる、そうトキの勘が訴えかけていた。
このままでは任務を失敗する────。
トキが冷や汗を流し
リオと先生だ。
前にいたミドリの所まで大量のAMASが包囲してきた。
「先生!!──に会長……。」
「……やっぱり裏切ったのね、ネル。」
「はっ、誰が同校の生徒を攫うなんて依頼やるかよ。」
「トキが抑えれないなんて、甘く見ていたわ。」
「あとはチビが逃げきりゃアタシの勝ちだぜ。」
このまま進めば結末は原作と異なったであろう。
そう、原作通りならば。
この場には
「報告、目標を確保しました。」
「テメェ何で此処に居やがる!?」
「え?」
全員の目の前にはケイと瓜二つの少女が居た。
髪型から身長まで何もかも同じな。
彼女はケイよりも機械的な冷たい眼差しをしていた。
「ケイちゃん……じゃない!?」
「ケイちゃんを返して!!」
「注意、それ以上動くとここで彼女を破壊します。」
「!?」
まさかの人質作戦。
唐突な破壊宣言に全員が動きを強ばせる。
ネルも迂闊に近付けないようだ。
完全に形成が逆転したことを悟り、リオは前に出た。
「来ていたのね。」
「回答、オーナーからの依頼で待機していました。」
・「『オーナー』?」
『オーナー』という言葉に聞き覚えのあった先生は何とか記憶の隅から情報を探す。
が、なかなか出てこない。
「帰還を推奨します。」
「そうね、目標は達成したし───失礼するわ。」
「……クソッタレが。」
結局、先生達はリオ達が完全にその場を去るまで、指一本動かすことが出来なかった。
──────────────────────
一足先に帰ってきたAL-1Sは真っ先にオーナーの元へ戻った。
初めての1人作業だったが大成功に終わり、ニコニコ笑顔だ。
「報告、ただいま帰還しましたオーナー。」
「ご苦労だったな。それが例の『鍵』か?」
「肯定、今は気絶状態にあります。恐らく数時間はこのままだと推測。」
「よし、ならばそちらの台に乗せてくれ。」
「了承。えいッ!!」
「ウッ──」
「できるだけ丁寧に。」
大きいタンコブをこさえた『鍵』を放り投げるかのように、台に寝かすAL-1S。
ガンッと大きな音が鳴った気がしたが、気の所為という事にしておく。
「それでもう1つの依頼の方だが、何かめぼしい物はあったか?」
「肯定、いくつかの機械を拝借しました。」
そう言いゴトゴトと見たことも無い機械を並べていく。
ただ兎は見覚えがあるようで反応した。
「うわ、これヒマリ先輩の発明品じゃないですか!!」
「知っているのか?」
「はい、昔に金k…反省部屋へ閉じ込められてた時に何度か。」
セミナーの押収品倉庫が満杯になる時期があったらしく、
そんな時は彼女のいる反省部屋の中へ押し込んでいたのだとか。
金庫に預ける物は貴重品や危険な道具が多いと聞いていたようで、兎はあまりこれらに触れたがらなかった。
それでもオーナーは臆せず機械を弄る。
「うぇえ、もし危ない機械だったらどうするんですかぁ?」
「ここをこうして……こうか?」
「聞いてないし。」
ポンッと何かの起動音の後、ガシャガシャと音を立てて機体は形を変えた。
変形したそれはまるでVRゴーグルのような見た目となった。
「何だか映画の小道具みたい。凄いねミレニアムって。」
「キヴォトス最先端の技術力を誇るだけはあるだろう。興味があるなら実習生として転入させることも出来るが──
「ハハハ………お戯れを、我々の居場所はここです。」
「そ、そうか。」
正体不明の圧を感じつつ、観察していると道具の用途が段々と分かってきた。
まるで機械をルービックキューブの様に扱いながらホモは話題を変える。
「これは他人の精神世界に侵入するための機械だな。」
「どうして分かるんですか?」
「少し弄れば用途の予想はつく。大体だがな。」
「他人の精神世界へ侵入……凄い技術力ですね。」
実際すごいのだ。
ホモ自身、用途が分かるだけで仕組みは全く理解できない。
『全知』の名は伊達ではない。
「良いものを見つけて来てくれたな、AL-1S。」
「エッヘン!」
「早速コレを使って『鍵』の中へ侵入するとしよう。」
「1人で向かわれるのですか?だったら我々も──」
「残念だがこれは一人用だ。危険なら尚更私がしなければならない。」
「………了解。」
渋々といった感じで引き下がるチームⅤ。
ホモは装置を装着し、椅子にもたれ掛かった。
この時ばかりはホモも未知に対しての好奇心を募らせていた。
「さて、上手くいくといいが。」
装置を起動すると心地よい眠気がホモを眠りへと誘った。
今日のMVP AL-1S
もしAL-1Sが『精神世界侵入装置』をヒマリから盗……借りていなければ、ケイちゃんの体を破壊する事になってました。
これはホモ君に肉体と精神が剥離している存在(現セイアなど)と夢で繋がる性質があるためです。
本来はこの性質を生かしてケイの精神世界へと侵入する予定でした。
次回はケイちゃんとホモ君のファーストコンタクト。