AT Protocol コミュニティシステム - コアコンセプト整理
最終更新: 2025年10月1日
バージョン: 1.0 - コアコンセプト確定版
📍 ビジョン
「世界とつながっている、居心地のいい小さな広場を、インターネット上に無数に作る」
🎯 解決したい課題
背景:3年間のMisskey運営からの実感
Fediverseの構造的問題
- 小規模サーバー: 過疎化 + 発見されにくい + 宣伝力不足
- 大規模サーバー: 交流困難 + 運用負荷(連合通信) + 個人運営の限界
- ActivityPub: 実装がシステムごとにバラバラ、メンテナンス性が悪い
現代の居場所問題
- X(Twitter): 人が多すぎて安心して話せない、文脈が無視され喧嘩になる
- Discord: クローズドすぎて入ることができない、発見されない
- 求められるもの: オープンだが適度に分割された、安心できる居場所
本質的な課題
「適切なサイズの居場所」が存在しない
- コミュニティは人が増えると居心地が悪くなる(Dunbar数の問題)
- でも小さすぎると過疎って死ぬ
- 既存プラットフォームは、この「適切なサイズ」を維持できない
💡 コアバリュー
「適切なサイズの居場所を、動的に維持し続けるコミュニティプラットフォーム」
- 人が少なすぎる → 自動的に他と統合される(テーマフィードの統廃合)
- 人が多すぎる → 自然に分かれる(細胞分裂モデル)
- 常に「ちょうどいい」を保つ
物理空間のメタファー:昔の公共空間の再現
広場・教会・図書館が持っていた特徴
- 適度な規模: 顔見知りができる程度の人数
- オープンだが秩序がある: 誰でも来られるが、暗黙のルールがある
- 世界とつながっている: そこにいても孤立していない、より大きな何かの一部
- 目的が多様: 雑談もできるし、真面目な議論もできる
これを失った現代のインターネット
- X(Twitter): 世界最大の広場だが、人が多すぎて怒号が飛び交う
- Discord: 快適な個室だが、外から見えない
- Mastodon小規模サーバー: 心地よいカフェだが、誰も知らない路地裏にある
🏗️ システムの全体像
ネットワーク化された小さな広場
Bluesky(世界)
↓
┌───────────────┴───────────────┐
│ │
コミュニティA コミュニティB
(プログラミング) (デザイン)
│ │
├─ Web開発 ├─ UI/UX
├─ 機械学習 └─ グラフィック
└─ ゲーム開発
各コミュニティは:
- 小さい: 顔が見える規模(50-200人)
- オープン: Blueskyユーザーなら誰でも参加できる
- つながっている: 親コミュニティや、より大きなBlueskyエコシステムと接続
- 動的: 人が増えたら分かれ、減ったら統合される
🌟 5つの価値提案
1. 適切なサイズ
- 顔が見える規模(50-200人)
- 親密さと活気のバランス
2. 発見可能性
- Bluesky経由で誰でも見つけられる
- 小規模コミュニティも埋もれない
3. 世界とのつながり
- 孤立しない、外の世界が見える
- グローバルとローカルの橋渡し
4. 動的調整
- 大きくなったら分かれ、小さくなったら統合
- 常に最適な状態を維持
5. 移動の自由
- DIDで複数の広場を行き来できる
- コミュニティ移動のコストが低い
🔑 なぜAT Protocolなのか
既存プラットフォームとの比較
| プラットフォーム | 問題 | AT Protocolでの解決 |
|---|
| Mastodon小規模サーバー | 過疎、発見されない | Bluesky母集団から流入、自動統合 |
| Mastodon大規模サーバー | 人が多すぎる、運用負荷 | 自動分割、インフラ共有 |
| Discord | クローズド、入れない | オープンだが適度に分割 |
| Reddit | 分裂が痛い、再集結が必要 | DIDで移動コスト0 |
AT Protocolの3つの強み
1. Blueskyという母集団(30M+ユーザー)
- 世界とのつながりを保証
- 小規模コミュニティでも発見される
- Misskeyの小規模サーバー問題を解決する鍵
2. DID(分散ID)
- アカウントがコミュニティから独立
- サーバー移行のコストがない
- 複数コミュニティに同時所属できる
- 分裂しても「また集まればいい」が簡単
3. Custom Feedsの柔軟性
- 同じインフラ上で複数の「居場所」を作れる
- テーマごとに動的にフィルタリング
- 過疎ったら統合、盛り上がったら分離が容易
4. ActivityPubの問題を回避
- 実装が統一されている
- 連合通信の負荷が軽い
- メンテナンス性が高い
🌊 「世界とつながっている」の実現方法
浸透膜としてのコミュニティ
完全にクローズドでもなく、完全にオープンでもない。外の世界が適度に見える仕組み。
1. レイヤー構造
Layer 3: Blueskyグローバル(世界)
↓ 重要な話題が浸透
Layer 2: 親コミュニティ(プログラミング全般)
↓ 関連する投稿が浸透
Layer 1: サブコミュニティ(Web開発)
↓ メンバーの投稿
Layer 0: あなたのフィード
各コミュニティのフィード構成
- 80%: コミュニティ内の投稿
- 15%: 親コミュニティや関連コミュニティからの「おすすめ」
- 5%: Blueskyグローバルからの「話題」
→ 孤立しない。常に世界の息吹が感じられる。
2. 「広場の窓」機能
各コミュニティに「窓」を設置:
- 「今、Blueskyで話題になっていること」
- 「親コミュニティの最新投稿」
- 「関連コミュニティのハイライト」
→ 物理的な広場で、窓から外の通りが見えるように
3. クロスポストの再定義
単なる「同じ投稿を複数箇所に」ではなく:
- 「この投稿は世界に共有する価値がある」というシグナル
- コミュニティ内部から、外の世界への「発信」
→ 広場から通りへ声をかけるような感覚
🔄 細胞分裂モデル(成長の4段階)
全体像
Phase 0: テーマフィード(親の一部)
↓ 人が集まる(15人、2週間、30投稿)
Phase 1: サブコミュニティ(半独立)
↓ 独自文化が形成(50人、2ヶ月)
Phase 2: 準独立コミュニティ(技術的独立、緩い連携)
↓ 完全に別方向(100人、4ヶ月)
Phase 3: 完全独立 or 決裂
基本思想
分裂は成長の証
- コミュニティは大規模化すると、なじめない人が出てくる
- そこから自然に派生して新しいコミュニティが生まれる
- これを「ネガティブ」ではなく「ポジティブ」な成長として支援
常に最適なサイズを維持
- Phase 0-3を通じて、「ちょうどいい」規模を保つ
- 過疎ったら統合(自動アーカイブ)
- 盛り上がったら分離(昇格)
🎨 ユーザー体験の例
ケース1: 新規ユーザー
1. Blueskyで「プログラミング」と検索
→ 「プログラミング全般コミュニティ」が見つかる
2. Starter Packから参加
→ 自動的にフォローすべき人、見るべきフィードが設定される
3. テーマフィードを眺める
- 「Web開発の話題」が面白そう
- でも「機械学習」も気になる
→ 両方を気軽にフォロー
4. 居心地がいいと感じたら
→ サブコミュニティに正式参加
ケース2: コミュニティの成長
1. 「Web開発」テーマフィードが盛り上がる
2. システムが昇格を提案
→ 「サブコミュニティに昇格しますか?」
3. サブコミュニティとして独立
4. さらに成長
- 50人を超える
- 「React」「Vue」で意見が分かれ始める
5. 自然な分裂
→ 「React開発」「Vue開発」に分かれる
→ でも親の「Web開発」とはつながっている
ケース3: 世界とのつながり
1. サブコミュニティ内で議論
2. フィードの20%は外の世界
- 親コミュニティから:「TypeScript 5.0リリース」
- Blueskyグローバルから:「Vercelが新サービス発表」
3. 投稿をクロスポスト
- 「これは世界に共有したい」
→ 親コミュニティやBlueskyグローバルに流れる
4. 新しい人が流入
→ コミュニティが成長
🔍 次に詰めるべき論点
1. 浸透膜の設計
- どの程度、外の世界を見せるべきか?(80-15-5%は適切?)
- ノイズと情報のバランス
- ユーザーがカスタマイズできるべきか?
2. 発見可能性の具体化
- Blueskyユーザーが、コミュニティをどう見つけるのか?
- Custom Feedとしてリストされるだけで十分?
- おすすめアルゴリズムは必要?
3. 「居心地の良さ」の定義
- 具体的に何が「居心地」を作るのか?
- モデレーション?規模?文化?活動頻度?
- これを測定・維持する方法は?
4. 適切なサイズの検証
- 50-200人という数字は妥当か?
- 文脈依存?(雑談=小、専門的議論=大?)
- Dunbar数との関係
5. 自動調整の受容性
- 統合や分割を「システムが提案する」のは押し付けがましくないか?
- ユーザーは自分の居場所が変化することをどう感じるか?
- どの程度、ユーザーの同意が必要?
📊 既存コミュニティとの差別化まとめ
| 要素 | Reddit | Discord | Mastodon | このシステム |
|---|
| 規模の最適化 | ✗ 大規模化が放置 | ✗ 分裂は手動 | △ サーバー単位 | ✓ 自動調整 |
| 発見可能性 | ✓ 高い | ✗ 低い | ✗ 低い | ✓ 高い(Bluesky経由) |
| 世界とのつながり | △ 部分的 | ✗ クローズド | △ 連合のみ | ✓ レイヤー構造 |
| 移動コスト | ✗ 高い | ✗ 高い | △ 中程度 | ✓ 低い(DID) |
| 運用負荷 | - 企業運営 | △ 個人負荷大 | ✗ 連合負荷大 | ✓ 軽い |
| 柔軟性 | △ サブレディット | △ チャンネル | ✗ 硬直的 | ✓ Custom Feeds |
🚀 このコンセプトの新規性と魅力
新規性
- 動的サイズ調整: 既存プラットフォームにない「適切なサイズを保つ」自動化
- 浸透膜モデル: オープンとクローズドの中間を、レイヤー構造で実現
- 細胞分裂の構造化: 自然発生的な分裂を、システムが支援・管理
- AT Protocol活用: DIDとCustom Feedsの組み合わせによる独自の価値
魅力(ユーザー視点)
- 安心して話せる: 人が多すぎず、少なすぎず
- 孤立しない: 世界とつながっている感覚
- 発見される: 小規模でも埋もれない
- 自由に移動: コミュニティ間を気軽に行き来
魅力(運営者視点)
- 運用負荷が軽い: インフラ共有、連合負荷なし
- 過疎対策不要: 自動統合で解決
- 成長が簡単: Blueskyからの流入
📝 結論
このコンセプトは、単なる「コミュニティ管理システム」ではなく、
「インターネット上に、昔の公共空間(広場・教会・図書館)を再現する試み」
である。
AT Protocolの特性(DID、Custom Feeds、Bluesky母集団)を活かすことで、既存プラットフォームでは実現できなかった「適切なサイズの、世界とつながった居場所」を作ることができる。
これは、3年間のMisskey運営で直面した構造的な問題を解決するものであり、同時に現代のインターネットが失った「居場所」を取り戻す挑戦でもある。
次のステップ
- 浸透膜の設計を具体化
- 発見可能性の仕組みを詰める
- 適切なサイズの仮説検証
- プロトタイプ開発(Phase 0から)