厳しい自然条件に挑み、辿り着いた悲願の米づくり

新潟の食を語る上で欠かせないのは、何と言っても米。

北前船が、新潟で最も多く仕入れていたのも、米でした。現在、新潟の米は生産量が全国一位※1 で、なおかつ「魚沼産コシヒカリ」などのブランド米の知名度も高いため、「米どころ」という言葉は、新潟の代名詞となっています。

代掻き(2017-04-30) - 作者: 杵鞭 範雄出典: Beautiful Rural Views Photo Gallery of Niigata City

先人の苦労と努力があってこその「米どころ」

古くから米作りをしてきた新潟ですが、最初から今のように、多くの人に愛されるおいしい米をつくることができたわけではありません。安定した米作りができるようになり、「米どころ」として知られるようになったのは、コシヒカリのおいしさが見直されはじめた昭和50年代のこと。それまでには、実にさまざまな苦労と大がかりな土地の改良が重ねられました。

亀田郷湿田地帯で田舟を使っての稲運搬(1951) - 作者: 本間 喜八新潟市の食文化

新潟の米農家を最も苦労させたのは、湿地ゆえの水はけの悪さ。越後平野は、日本一長い信濃川と最大級の流量を誇る阿賀野川が流れているため、雨や雪で河川の水量が増えたり、たびたび大河が荒れ狂い洪水が生じたりした影響で、米が採れない年もあったというほどです。

耕地整理(1952) - 作者: 本間 喜八新潟市の食文化

海抜0メートル以下の低湿地だった「亀田郷(かめだごう)」は、一歩足を踏み入れれば、一気に胸まで浸かってしまうほどの泥田。農民は、「地図にない湖」と呼ばれていたその泥田を舟で移動しながら、過酷な農作業を行なっていました。また、農業用水の排水先として利用されていた潟も、雨が降ると氾濫して、排水が田に流れ込んでしまうということもしばしばでした。

そこで、潟の水を日本海に流す人工的な川を引いたり、水を集めて信濃川や阿賀野川に配する大規模排水機場を作ったりするなど、大掛かりな土地改良事業を行ってきました。先人たちが水と土にまみれながら劣悪な環境と戦い、不屈の精神で乾田化に取り組んだことによって、やっとのことで、今のような米作りがしやすい土壌を開拓することができたのです。

湛水地に於ける稲刈り(1951) - 作者: 本間 喜八新潟市の食文化

しかし、新潟米は、昭和の初めまで、鳥ですら見向きもしない「鳥またぎ米」と呼ばれ、評価が低い米でした。病虫害に負けない強さを持ち、食味もいいものを目指して何度となく品種改良がなされ、昭和37年に新潟県が旗振り役として展開した「日本一うまいコメづくり運動」によって、ようやく生産者の注目がコシヒカリに集まりました。

そして、そこから徐々に、多くの生産者が食味や品質の良さを重視するようになり、試行錯誤、切磋琢磨しながら、諦めずに米作りを続けた結果、新潟のコシヒカリは今、世界でも有数のプレミアムライスと認められるほど、おいしい米の象徴として不動の地位を獲得するまでに成長しました。

ピカリ産直市場 お冨さん 新潟産の米(2019)新潟市の食文化

おいしい米が当たり前だからこそ進化し続ける

新潟のコシヒカリの魅力は、水分を含んだもっちりとした食感と弾力、そして甘さだと、古町の老舗料亭 鍋茶屋の料理長、中島元吉さんは言います。 「鯛めしや牡蠣めしなど、季節に合わせて新潟の海の幸と合わせた炊き込みご飯をお出ししていますが、秋の新米の時期には、土鍋で炊いた白米をシンプルにお出ししています。手塩にかけて育てられたお米独特の甘みと、粘り気のあるもっちりとした食感を存分に楽しんでいただけたらうれしいですね」

ピカリ産直市場 お冨さん 様々な食べ方の米(2019)新潟市の食文化

また、新潟の産直野菜を多く取り扱い、さまざまな産地や種類の米を量り売りで買うことができる「ピカリ産直市場 お冨さん」の店長、後藤百合子さんは、新潟のお米の進化をこう語ります。

「新潟ではコシヒカリが有名ですが、新品種として登場した『新之助』も大粒でふっくらと炊き上がるのが特徴的で人気があります。新潟のお米は、農家さんの努力で日々進化しているので、どんどんおいしいものが出てきています。ここではお好きな量で買っていただけるので、食べ比べをして、お気に入りを見つけていただくのも楽しいと思います。

また、最近では健康志向で玄米をお求めになる方も増えていますし、炊く直前に精米をするのが一番おいしいからという理由で玄米で買うお客様も増えてきました。よりおいしく食べていただくのにオススメしているのは、お米と同じ場所のお水で炊くこと。お米が育った場所の水で炊いてあげると、お米そのもののおいしさがより引き出される気がするんです」

日本一の長さを誇る信濃川新潟市の食文化

ピカリ産直市場 お冨さん 多様な品種の米(2019)新潟市の食文化

おいしい米として確立している新潟米ですが、今のようになるまでには、厳しい自然環境と先人の苦労、そして弛まぬ努力があったのだと思うと、白く光り輝く一粒一粒にありがたみを感じずにはいられません。

米がたくさん採れることで、日本酒作りや米麹を使う味噌作りも発展し、お土産としても人気の高い煎餅や「笹団子」をはじめとする和菓子も多く作られるようになりました。しかしそれは、苦労しながら農作業をし続けた先人たちの絶え間ない奮闘と実りへの切なる願いの表れ。「一粒の米も粗末に扱わない」という精神が、米をさまざまな形へ加工しながら、無駄にすることなくありがたくいただく文化を発展させたのです。

家庭料理の原風景(2018-05) - 作者: misato.新潟市の食文化

イタモチ(2019)新潟市の食文化

提供: ストーリー

協力:
鍋茶屋
ピカリ産直市場 お冨さん

執筆:内海 織加
編集:林田 沙織
制作:Skyrocket 株式会社

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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