米国務省や米国の対台湾窓口機関である米国在台協会(AIT)が9月、約半世紀ぶりに「台湾地位未定論」を公式に打ち出し、その意図に注目が集まっている。
第二次大戦期の「カイロ宣言」や「ポツダム宣言」、「サンフランシスコ平和条約」は台湾の最終的な政治的地位を決定しておらず、中国はこれらの文書を歪曲(わいきょく)している-。台湾の中央通信社が9月13日、AIT報道官の発言として報道した。「歪曲」とは「台湾が中国に属する事実を示す」と主張していることを指す。17日には、米国務省報道官がこの発言を「正確な情報発信だ」と是認したと伝えた。
米側の狙いについての代表的な見方は「中国が戦後80年を機にご都合主義で展開している『台湾は中国の一部』という認知戦へのカウンター攻撃」(台北の外交筋)というものだ。
中国は①中国共産党が抗日戦争を主導して勝利に導いた②その結果、カイロ宣言などを通じて日本が台湾などを、当時の合法政府の「中華民国」に返還することが決まった③その後、中国共産党が内戦に勝利し、台湾への主権も「中華人民共和国」が継承した-とのロジックを展開している。
台湾地位未定論は、そうした中国側の主張を法的に否定する。日本はサンフランシスコ平和条約で台湾の主権を放棄したが、どの国に対して放棄したかは明記しておらず、またカイロ宣言などの歴史文書も台湾の政治的地位を決定するものではないというのが未定論の立場だ。
ただ、東京大東洋文化研究所の林泉忠・特任研究員は、米国が言説レベルにとどまらず「重大な戦略的調整」を行っていると分析する。地位未定論は中国の台湾侵攻を念頭に置き、「軍事介入を可能にするための法的環境整備」だと踏み込む。